「なぜ、あなたはボクとエッチがしたいと思うのですか」
もうすでに決まっているかのような言い方に、ボクはイラついて律子に聞く。
「瑞樹さんは、エッチがしたくないのですか」
「質問に質問で答えるのは良くないですよ」
律子は、クスッと笑ってボクを見る。
「失礼しました。わたしはあなたと同じ障害者です。もちろん、あなたと同じように性的欲求もあります。わたしは、あなたと同じようにオナニーもするしエッチなビデオも見ます。わたしとあなたの違いは、わたしは女、あなたは男。そして、わたしは未経験、あなたは経験者。ちがいますか?」
「いや、概ね合っていると思いますよ」
「女のわたしから、エッチをしたいとお願いするのは、おかしいでしょうか。瑞樹さんもおわかりでしょうが、なかなかチャンスがないんですよね。サイトで、瑞樹さんが車椅子使用者だと知って、わたしの前にそびえ立っていたハードルが、グッと下がった気がしたんです」
律子の言うことは、ボクも当然わかっている。人生において、出来ない事が多いということは、やってみたい欲求が強うという事だと思う。物欲にしても性欲にしても、ガマンしていることが多いほど求める心も強くなるモノだ。障害者は、決して聖人君子なのではない。抑圧されているからこそ、欲求はより大きくなるはずだ。お互いを理解し合える環境なら、お互いを補完し合えると思うのは当然だろう。ただ、お互い障害があるからこそ、だれかの手を借りなければ出来ない事がある。先日の、咲恵と萌と三人でした時のようなサポートがあれば、出来ることは広がるだろう。
「律子さんの仰ることは、ボクもパートナーを見つける上で苦労しましたからわかります。女性なら、なおさらでしょう」
「そうなのよね。わたしも、瑞樹さんくらい動けるなら、もっと選択肢も広がったと思うんだけどね」
「それは、ボクじゃなくてもよかったのにって聞こえますよ」
「あははは、ごめんなさい。そういう意味で言ったんじゃないのよ」
手を口に当てて、笑っている律子の姿は無邪気な少女のように見えた。
「わかってますよ。現実問題、ボク達だけだとエッチするのも苦労しそうですが」
「彼女さんとは、いつもどうやってエッチしてるの?」
「気持ちいいほど、ストレートに聞きますね」
「わたし、口達者で耳年増って、女友達に言われてるのね。フェラもやったことないのに口だけ上手いってなんなのって言いたいけど」
「笑えます」
「そう、ウケてくれてありがとう」
「ボクは、がんばれば正常位も出来ますけど、彼女たちは騎乗位でがんばってくれてます」
そこで、律子は一瞬不思議そうな顔をして聞いてきた。
「彼女たちって、3Pでしたことあるの」
「ありますよ。ひとり増えると、出来ることも広がりますから」
「例えば」
「うーんっと、ボクを支える彼女がいたら、もう一人の彼女と座位も楽に出来ましたよ」
「そうよねぇ。手伝ってくれる人というか、3人で出来るって理想だわ」
「で、お母さんも一緒にっていうことになるんですよね」
「わたしの状態を一番わかってるしね」
ボクは、水滴を纏ったグラスを手に取り、アイスティでのどを潤した。
「あのぉ、律子さんがエッチをしたいことに対して、お母さんはどう思ってらっしゃるのですか?」
「うーん、最初はもちろん反対されたわよ。なに言ってるのって怒られたし」
「でしょうね」
「でもね、何年もかけて説得してきて、ようやく最近は相手次第だねっていうところまでは来てるのよ」
「まだ、完全に理解は得られてないってことですか」
律子は、深いため息をひとつ突いて、言葉を吐き出した。
「今回、うちに来てもらったのも、まず相手をお母さんが見たいって言ったからなのよ」
「やっぱり、ボクは面接されてるんですね」
「まあ、そうなんだけど。わたしは、瑞樹さんでいいと思ってるの。最初の男として」