「認めていただいて、ありがとうございます。でも、本当にボクでいいのかなって気持ちは、今でもあります」
「処女の女性って、そんなに男性にとって重い意味を持つことなの」
「どうなんでしょう。人それぞれなんでしょうね。ただ単に通過点という人もいますからね」
律子は、思いついたように体を少し前のめりにして聞いてきた。
「初めてって言う、そのぉ、初めて男性を受け入れるって女性と経験したことあるの?」
「ありますよ」
「それは、貴重な体験よね」
「まあ、そうですね。その人は、今の彼女のひとりですよ」
「その女性を、成長させていくって感じなのかしら」
処女という共通点のある咲恵に、律子は興味を持ったみたいだ。
「彼女は、興味本位で指をあそこに、恐る恐る入れてみただけという人でしたね。だから、慎重に事を進めていった感じでした」
「わたしのように、実践主義でおもちゃを入れてみました。みたいな人じゃなかったのね」
「そうですね。興味はあって女性週刊誌とかの記事で勉強はしてたみたいですが、実際に指を入れるのも怖かったらしいですよ。まだ若いですし、どこか少女のような人でしたから」
「まあ、わたしは、もう薹の立ったおばさんですからね」
少し、不満そうに律子はため息と一緒に言った。
「いえ、律子さんも十分お若く見えますよ」
「慰めを言われたくないわ」
「そんなつもりではありまえんよ。ボクにもわかりますから。じっとしていては、どんどんと時は過ぎてゆくばかりですし、健常者と違ってチャンスも限りなく少ないですし。出来ない事が多い障害者だからこそ、性的な欲求も興味も強くなりますよね」
「わたしは、人一倍出来ることが少ないから、そういうことへの興味も強かったと思うの」
ボクは、律子という女性がなにを求めているのか興味が湧いてきた。
「この際だから、こちらからも率直に質問させてもらっていいですか」
「どうぞ」
「ご自分の性器って、ちゃんと見たことありますか?」
「もちろん、あるわよ。子供の頃から、自分でトイレにも行けなくて紙オムツをしていたの。でも、物心が付く頃にはやっぱりおむつにすることが不自然に感じてきたの。だから、お母さんにお願いして普通の子供用のかわいいキャラクターのパンツをはかせてもらったの。もちろん、手がかかるようにはなったけど、お母さんはトイレに連れて行ったくれたわ」
「はい」
「そうなると、どうなるかわかる?」
「だいたい」
「自分で、あそこも見られるようになるし、自分でパンツに手を突っ込んで触れるようになるのよ。自分が女の子だって自覚するの。お風呂とかは全部、お母さんに入れてもらってたから大きくなったらこんな風になるんだなった思ってた」
「お父さんとは、お風呂に入ったことないんですか」
「父親は、仕事が忙しくて、わたしは構ってもらった記憶はないわ。もちろん、お風呂なんて一緒に入ったこともないわね。今も、仕事で海外にいてめったに家には帰ってこないしね」
律子は、ボクの方に身を傾けて小声で言った。
「よそに愛人がいるのよ。直接にはお母さんは言わないけれど、噂によるとわたしには腹違いの兄弟がいるみたい。わたしがこんな体だから、夫婦関係も終わってしまったんだと思うの」
「そうなんですね」
「父親も、わたしが不憫だと少しは思ってるらしくて、お母さんとも離婚せずにこの家にいられてるわけ」
律子は、おどけて言っているみたいだけれど、どこか寂しそうに見えた。
「じゃあ、実際の男性のカラダって見たことないんですか?」
ボクは、重大なことに気がついたように聞いた。
「そうね。自分のパソコンを手に入れる前は、男の人のカラダってどんなものかわからなかったわ」
「わたしね。学校にも行かなかったの。勉強は家庭教師の先生が教えてくれてたの。それも女性ばかり」
にっこり笑った律子の瞳は、少し潤んで見えた。
「それって」
「そう。生身の男性のカラダは、まだ見たこともないし、触ったこともないの」