「そんなにしてるんですか」
ボクは、突っ込んではいけないと思いながら、つい口から言葉として出てしまった。
「瑞樹さんも、結構ストレートに聞いてきますよね」
「すみません。律子さんのお話を聞いていると、ボクも大胆になってしまって」
「まあいいわ。わたしも、生身の処女を奪ってくれるだろう人には、言っておくべきことは伝えておきたいと思ってたから。普段、誰にも話したことないことを瑞樹さんには言ってるから」
「わかってます。そのくらい言わないと、ボクが承諾しないと思ってらっしゃるのでしょう」
「そうね。障害者で箱入り娘のお嬢様みたく思われたくはないのよ。わたしだって」
律子は、車椅子のシートバックに背中を預けて、レースのカーテン越しの青空に視線を移した。
「お母さんに、大事にされてることはいい事だと思いますよ。ボクは、母親に愛されなくて傷ついた心を持っている女の子を知ってますよ。なにがしあわせなんて比べられないけど、律子さんを大事にしているお母さんを誇ってもいいと思いますよ」
「ありがとう。それはわかっているの。それでも、普通の女の子のように生きてみたい時があるのよね。わたしひとりじゃ、なにも出来ないこともわかってるくせに」
「じゃあ、お母さんを納得させて、本当の意味で処女を捨てましょうよ」
「その前に、瑞樹さんをやる気にさせないといけないわよね」
「まあ、そうですね」
やってしまえばいいじゃん、と思うボクがいるのも確かだ。
「さっきの質問に答えるわ」
「そうだったですね」
「初めて、わたしの中に入れてから何回か試したわよ。最初は、異物が入る抵抗感があったんだけど、だんだん気持ちがよくなっていくことに気がついたの。わたしも、中でも快感を得られることがうれしかったわ。興味本位で、入れてるところがよく見えるように鏡を置いてみたの。男性器の形をした偽物を、出し入れしてるとちゃんとした愛液が溢れてくるのが見えたわ。ネットで見つけた女の子のあそこのアップの動画と同じように濡れていたわ。
『わたしだって、ちゃんと感じて、気持ちよくなって、こんなにびしょびしょに濡れるんだから』
って、心の中で叫んだわ。でもね、無機質で冷たいモノで感じてる鏡の中の世界が、全部偽物の世界に見えてしまったの」
律子は、車椅子を移動させてボクの前に進み出た。突然、ボクの右手を取り律子自身の左の乳房に押し当てた。
「ほら、わたしは生きてる生身の人間でしょ」
「はい。ちゃんと、律子さんの心臓の鼓動が伝わってきますよ」
押しつけられたボクの手には、律子の乳房が収まっていた。初めて男性に触れられたであろうことに、小さくカラダは震えていた。
「はじめてなの」
「わかってます」
「どう」
「やわらかいです」
「小さい?」
「ボクの手には、ちょうどいい大きさかと」
「あなたの手は、大きくないものね」
「そんなに小さくはないと思いますよ」
「揉んではくれないの」
「まだ、なにも決まってませんし」
「案外、意気地無しなのね」
「律子さんだって、ボクのペニスを握ってくるくらいやらないと、小心者だと思ってしまいますよ」
「わたしのおっぱい触って、興奮してる?」
「少し、硬くなってます」
「じゃあ、握ってもいいの」
「ダメです」
「なんだ、あなたの方が小心者じゃない」
その時、ドアをノックする音が部屋に響いた。
「はーい」
律子は、ボクから離れて元の位置に車椅子を戻した。
「お茶のおかわりがいるんじゃないかと思って」
そう言って、母親が部屋に入ってくる。
「そうね。おやつの時間だし、なにか持ってきてよ。お母さん」
「待ってて。クッキーがあったから、それを持ってきて上げるわ」
空になったグラスを持ち、母親は部屋を出て行った。
「こんな感じなのかしら。高校生の彼氏が部屋に遊びに来た時って。スリルあったわね」
笑いながら、律子が言う。
「この部屋って、盗聴器とか隠しカメラとかないですよね?」
「あーわからないわよ。うちのお母さん、心配性だからわたしの体調チェック用にあったりして」