「ボクを、からかうようなことはやめてくださいよ」
鈍い電動モータの音をさせて、素知らぬ顔で元の向かいの席の位置に戻った律子に文句を言った。
「からかうなんて、失礼なことをするわけないでしょ。少しだけ、お試し期間も必要かなって思ったのよ」
「じゃあ、そういう風にちゃんと言ってくださいよ。驚くじゃないですか」
「男の人って、胸を触らせてあげたら、乳首つまむとか揉むとかしてくれるのかと思ったのに何にもしないんだもん。もっと、グイグイ来るのが、当たり前だと思ってた」
「それ、どこ情報ですかぁ」
「えっ、えっちなビデオ」
やっぱり、と聞いてて思い肩を落とす。
「童貞の高校男子レベルですね」
「悪かったわね。瑞樹さんだって、ついこの間までそんな感じだったんでしょ」
「まあ、それはそうですけど」
「その、余裕をわたしにも分けてちょうだいよ。同じ障害者でも、男性はその辺どうにかなるからいいわよね。女性は、なかなか簡単じゃないわ」
「ボクも、最初は苦労したんですよ。まあ、運がよかったのか、いい彼女と巡り会えたのは事実ですけど。お金を出せば、ボクみたいなヤツでも相手してくれる女性がいますからね」
律子は、ボクの言った言葉に素早く反応した。
「わたし、お金を出す用意はあるのよ」
「ちょっと待ってください。それは、ボクがお金を出す方ですから」
「わたしのカラダに、お金を出す価値ってあると思ってるの?」
「律子さんは、お金が欲しくてボクと、エッチしようとしてるんじゃないことはわかってますよ。でもね、世の中の女性はお金に困ると、最後に自分のカラダに価値を与えてしまう人がいるものですからね。ボクも、そういう女性が最初でしたから」
「わかっているわ。年配の女性が、若い男性にお金を出して相手してもらうこともあるって。わたしの場合、ハンデが特殊でしょ。それに誰でもいいってわけじゃないし。わたしの障害のことわかってくれてる人がいいと思ってるし、対等な関係でいられそうな気がして。変な言い方だけど」
「気持ちは、理解出来ます」
「じゃあ、わたしとセックスしてくれるのね」
前のめりになる律子を制して、ボクは改めて言う。
「問題は、お母さんの理解が得られるかです。まだ、完全に説得は出来てないんでしょ」
「そうね、わたしひとりで出来るなら、今からでもやりましょうって言うんだけど」
「案外、ボク達だけで出来たりしたりして」
ボクが言った言葉を、反芻するように考え込んで律子は言った。
「わたし、自分で服脱げないし」
「それ、ボクが脱がしてあげればいいのでは」
「わたし、自分でパンツ脱げないわよ」
「ボク、パンツ脱がすの好きですよ」
「わたし、アレを入れてもらう時。なにも出来ないわよ」
「普通、女性は受け身だから、なにもしなくてもいいんじゃないかな」
「瑞樹さんが、大変じゃないの?」
「まあ、それはそうですけど。それは、お互い様なんじゃないかと。ふたりがエッチしたかったら、なんとかやってしまうもんですよ」
律子は、再び考え込んでいる。
「でも、瑞樹さんは最初の女性とはどうやったの」
「騎乗位でしたね」
「ほら」
「それは、ただ楽な方法を選んだだけですよ」
「楽な方法?」
「そう、手っ取り早くて楽な方法」
「女性が?」
「そうです。何の感情も抱いてない相手だからですよ。今の彼女とエッチする時、処女だったんですけど、ボクは彼女のために正常位を選びました。彼女と彼女の初めてが大事だったから」
律子は、真っ直ぐににボクを見て言った。
「わたしとやる時も、正常位でしてくれるの?」
「あなたとボクが望むなら」