「本当に、わたしたちだけで出来ると思っているの?」
「まあ、前準備はしておいてもらわないといけないかもですが」
「その前準備って」
「お風呂に入れてもらって、ベッドの上に寝かせてもらっておくくらいでしょうか」
「そっかぁ」
納得したように、律子は頷いた。
「あっ、律子さんが気にしないのであれば、お風呂は省略しても構いませんよ。その方が、律子さんの生の匂いも嗅げるし、律子さんの生の味も堪能出来るし」
「まあ、なんていやらしいことを仰るの。瑞樹さんって、かなりの変態さんなんですね」
ボクは、冗談のつもりで言ったのだったが、律子は思いがけない言葉に刺激されたのかもしれなかった。
「ふたりの彼女にも、たまに変態って、言われますけどね」
「わたしも、ボディーソープの香りではなくて、そのままの瑞樹さんを味わってみたいです」
このままだと、本当にその方向で話が進みそうな雰囲気なので、軌道修正を試みる。
「アブノーマルな試みは、エッチになれてから試した方がいいですよ」
「えー、期待したのになんかつまらないわ。初めての体験で、動物的なオスとメスがぶつかるみたいな強烈な想い出もいいと思ったのに」
「抵抗感は、ないのですか」
「目の前に、洗ってないあなたのモノを出されて、咥えてみてって言われたら拒絶するかもしれないし、その匂いに萌えたりするかもしれない。いつも、お母さんに綺麗な体に保たれていると、汚れてみたいっていう願望もあったりするかもしれない」
「わからないでもないですけど」
「夜、オナニーするじゃない。気持ちが入ってると愛液で濡れたりするのよね。その指についた匂いを嗅いでしまうの。臭いんだけど、でもどこかでそそられるような感じがするの」
「フェロモンの香りでしょうか」
「でもね、夜中にお母さんが来てトイレに連れて行ってくれるんだけど、パンツにシミとかあると換えてくれるのね。たぶん、匂いがしてるんだと思うの。それが、なんか残念だしはずかしいのね。朝まで、その匂いを嗅いでみたいような」
「なかなかの、変態さんですね」
「そうね」
ふたりは、ドアの向こうにも聞こえるような声で笑った。
「じゃあ、わたしたち、今からでもやれるんじゃない」
「ですね。結局はそんなもんなんじゃないのでしょうか。ふたりがやる気なら、どうやってでもすると思うんです。それが、エッチビデオに出てくる普通のやり方じゃなくてもです」
「わたしが、構えすぎてるのかしら。頭ばかりが先行して」
「でも、どうやってでもやる前に、お互いの理解も必要だし、お母さんの説得も必要です。この家でやるのであれば。出来れば、ふたりの間に少しの愛があれば最高なのですが」
「やっぱり、簡単にはいかないわよね」
律子は、不安そうな表情に変わりボクをみた。
「お母さんに、話をしてみましょう。ちゃんと、律子さんの気持ちを伝えればわかってもらえると思いますよ。ボクも一緒に説得させてもらいますから」
その時、再びドアをノックする音が部屋に響いた。
「遅くなって、ごめんなさい。クッキーよりケーキの方がいいかと思って、近くのケーキ屋さんに行って買って来たの」
律子の母親は、トレーにケーキとアイスティのグラスを乗せて部屋に入ってきた。
「お母さん、話があるの」
「わたしに?」
「お母さんも一緒に、お茶しませんか」
「じゃあ、お茶とケーキを持ってくるわ」
母親は、足早に部屋を後にした。
「大丈夫かしら?」
「お母さんも、女性なのだから、きっと律子さんの気持ちをわかってくれますよ」
「そうよね。ここでがんばらないとね」