咲恵と萌には、いずれ律子に会わせないと話が収まらないようだ。今、一番問題なのは節子のことかもしれない。咲恵達は、話題の中心にはしていなかったけれど、律子との関係がうまくいってこれから長く付き合うことになれば節子とも会わなければならない。節子にしてみれば、ボクはちょうどいい性の欲求のはけ口だと思われているだろう。節子は、咲恵達との約束除外の範疇からは外れている。咲恵達に、節子との関係を知られては大きな問題になるだろう。そのことを薄々感づいていて、節子は秘密の関係を迫ってくるだろう。継続的な女性との関係を、これ以上増やすと、ほころびが生じて収拾がつかなくなるかもしれない。表に出ない分、節子との関係は注意が必要だ。
あれこれ考えているうちに、あっという間に一週間が過ぎてしまった。
「やさしくしてあげないとダメですよ。でも、あんまりやさしくするのも複雑な心境です」
「ちゃんとしてあげてね。でも、咲恵ちゃんとわたしが彼女だってことは忘れないこと」
前日、咲恵と萌からありがたいエールを送られて、状況は理解しているけれど、内心では昇華し切れてないことを改めて心に刻んで眠りについたのだった。
当日の朝は、緊張しているのかいつもより早く目が覚めてしまった。あまり食欲は無かったが、ちゃんと朝食を摂り、身支度を調えて家を出る。約束の駅で電車を降りて、先日と同じ待ち合わせの場所で待っていると、節子が運転する迎えの車がボクの前で止まった。
「おはようございます。瑞樹さん。早いですね」
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
節子は、リアゲートを開けてリフトを降ろしボクを車に乗せた。節子からは、特別な話もなく淡々と車を進めて律子のいる家に着いた。
「おはよう。瑞樹さん」
「おはようございます。律子さん」
エントランスまで出てきて、迎えてくれた律子と共に客間に入った。
「今日はよろしくね」
「はい」
ボク達は、少し緊張気味に言葉を交わす。
「さて、まずは二人でお風呂に入りましょう。もちろん、お母さんにサポートしてもらうんだけど、あくまでもお母さんがいないものだと思って、行動して欲しいの。普通のカップルがやるように、なるべくならしたいことはして、して欲しいことを二人でする。この前提で臨んでほしいの」
「わかりました。では、恋人が二人だけの部屋で最初にすることをしましょう」
「何をしましょう」
「最初は、抱き合ってキスじゃないですか」
「そうよね。わたしたちは、そこからスタートだわね」
ボクは、律子に近づいて車椅子をすれ違う形で横に並べて、なるべくお互いのカラダが近づく体勢を取った。
「じゃあ」
ボクは、両手で律子の肩を抱き、律子も自由になる右手を背中に回した。触れ合った胸に、お互いの鼓動を感じて顔を近づける。
「律子さん、目を閉じて」
ボクは、鼻がぶつからないように顔を傾けて、律子の唇にキスをした。
「こんな感じなのね」
「はい。感想は後にして、もっとキスを楽しみましょう」
初めは、軽く唇を重ねていたのだけれども、緊張で硬くなっていた律子の唇もやわらかくなり、ボクはそっと舌を差し入れた。戸惑いを見せていた律子の舌も、ボクの舌と絡め合うようになっていた。慣れてくると、律子も積極的に舌を絡めてくるようになり、少し息が荒くなったところで唇を離した。
「熱いわ」
と言うと、律子はまた唇を求めてきた。ボクは、片方の手を肩から外して、ブラウスの上から隆起した乳房を手のひらに収めた。乳房の大きさを確かめるように、ゆっくりと膨らみをなぞってゆく。やわらかく揉むように指に力を入れると、熱い吐息が口移しにボクの中に流れ込んだ。
「ああっ」