「わたしね、今まで生活にあまり起伏がなかったの。だから、記念日とか記念のモノとかは大事にしたいのよね」
ボクは、心地よい倦怠感を味わいながら、律子の横に寝転んでいた。
「ほんとに、いるんですね。まあ、想い出を捨てるのはいつでも出来ますからね」
射精を終えたペニスは、落ち着きを取り戻しだんだんと平時の大きさに戻りつつあった。ボクは起き上がり、白い精液で満たされたコンドームに手をかけた。
「わたしがやりますよ」
横で律子の体を拭きに来ていた節子が、後始末を申し出た。ボクと律子の間に座って頭を下げているペニスに手を伸ばした。ペニスの根元を持ち、もう一方の手で精液がこぼれないように引き抜いたコンドームの口をしっかり縛った。
「精液が付いてるから、ちょっと拭いておきますね」
節子はボクのペニスを握り、濡れタオルでやさしくなぞるように拭いた。律子からは死角になっていることをわかっているのだろう。拭きながら、ペニスを握った手を上下に動かした。驚いたような顔をしているボクに、節子はわずかに微笑んで見せた。
「律子さん、本当に取っておくの」
「だって、初体験の戦利品だもの。小さな密閉容器にでも入れてそこの冷凍庫に入れておいて」 律子は、自分の部屋にある小型の冷蔵庫を指差して言った。
「はいはい、言いだしたら聞かないんだから」
ボクのペニスから手を離して、戦利品という名が与えられたモノを持って立ち上がった。あれ以上、刺激されていたら勃起してしまいそうだったので、膝を立てて少しだけ硬さを身に纏ったペニスを隠した。
「瑞樹さん」
急に声をかけられて、律子の方を向く。
「はい」
「瑞樹さんは、また来てくださるんですよね」
「そうですね。呼んでいただければ、ご希望には応えようとは思ってます」
「よかった。このまま捨てられると悲しいですからね」
ホッとしたような顔をした律子に、ボクは条件を付け加えた。
「前に言ったかもしれませんが、女性と会うのを許してもらう代わりに同じ相手とは二度会わないでと彼女達との約束があって。ただし、律子さんは障害者って言う特別な事情があるので、この約束からは除外していいという話でした」
「それは、聞いてるわ」
「それで、約束を除外することについて、今日の状況も説明しなきゃならないんです」
律子は、少し考えて言った。
「状況説明によっては、三人目の彼女になれるということですよね」
「そうですね。出来れば彼女達も、律子さんに会ってみたいと言ってましたし」
「今度は、わたしが面接を受ける側になるってことかしら」
まあ、そうとられてもおかしくはないとボクは思った。
「そんな、難しく考えなくてもいいですよ。彼女達は、あなたに興味があるだけですよ。女として」
律子は、母親にカラダを起こしてもらい改めて言った。
「今日、瑞樹さんとエッチして、改めて思ったの。障害も似ているしお互いの状況もわかってる人と知り合えて本当に良かったと思ったの。わたしのこともやさしくしてくれるし、ここで瑞樹さんを逃したらいけないって思ってるのよ」
「ちょっと、買い被りすぎだと思いますが、ありがとうございます」
「だから、彼女さんたちを納得させて三人目の彼女になれるようにして欲しいの。お願い」
起き上がったボクに、真剣な顔をして頭を下げた。
「わかりました。彼女達にちゃんと説明して、相談してみますね」
律子は、ホッとしたように肩を降ろした。
「あとこれは、わたしのわがままだと思って聞いてね」
「なんですか」
「瑞樹さんさえよければ、わたしと一緒にこの家で暮らせたらしあわせかなって思ってるの」
思いも寄らない提案に、ボクは少し困惑した。咲恵も萌も、出来ればボクと一緒に暮らしたいと思っているのは、薄々気がついている。だからこそ、律子と一緒に暮らすなどと言えば反発するだろう。律子の気持ちを傷つけないように、言葉を選びながら応えた。
「律子さん、それはあくまで希望ということで聞いておきます。今、それを彼女達に言うのは時期尚早でしょうから」
「そうよね。わたしが焦りすぎたことを言ってしまったわ。ごめんなさい。でも、お泊まりくらいならどうかしら」
「まあ、その辺も相談してみます」
食い下がる律子に、はぐらかし気味にボクは言った。
「別に、すべてを正直に報告しなくてもいいんじゃないかしら」
カラダを傾けて、ボクの耳元で律子は囁いて、妖しい表情で微笑んだ。
それから、各々風呂に入った。先に律子が入って、次にボクが入ることになった。本当は、一人で入りたかったのだが、慣れない場所ということで節子が手伝ってはいることになった。必要以上に手伝ってくれる節子は、ボクのカラダを洗いながら言う。
「今日は、律子がありがとうございました。でも、見てるだけのわたしは淋しかったわ。わたしには、いつこれをくれるのかしら」
と、ボクのペニスを握りしめて言った。