「咲恵さん、それは使えないよ。だって、それは咲恵さんを守るものだから」
「だって、それじゃあ」
ボクの意地なのかもしれない。これは、自分に対しての罰なのだと胸の中で言い聞かせる。
「わたし、明日には帰っちゃうんですよ。わかってます?」
「ごめん」
「わたしが、護身用だと言ってゴムを持ってるのがいけなかったんですか」
咲恵は、手に持っていた四角い包みをボクに投げつけた。
「わたしが悪いんですよね。瑞樹さんから、勝手に離れていったのはわたしなんですから」
逆行でシルエットになってしまった咲恵は、両方の手を握りしめて立ちすくんでいた。
「本当はわたし。萌さんが許せないんです。瑞樹さんに助けてもらっておきながら、好きな男の人が出来たからって、こんなに簡単に家を出て行ってしまうなんて。それで、どんなに瑞樹さんが傷ついているかわかってるんです。わたしも、同じように瑞樹さんから離れてしまった。でも、わたしはずっと、瑞樹さんのことを思ってました。だから、様子がおかしい瑞樹さんのことを放っておけなくて、何もかもほったらかしにして帰ってきたんです」
「わかってる。咲恵さんが悪いんじゃないんだよ」
瞳から溢れる涙を拭いもしないで、膝を折りボクの胸に倒れ込んだ。小さく震えている咲恵の肩を抱きしめて、ボクの体中で包み込む。
「わたし、もし瑞樹さんが幸せそうに萌さんと暮らしているなら、諦めようと覚悟して来たんです。それなのに、瑞樹さんは一人で淋しそうにしてた。わたしが、何とかしなくてはって思ってんです。瑞樹さんが思っている以上に、わたしは淋しかったんです。だから・・・」
「わかったから、咲恵さんが無理しなくてもいいんだよ」
「ほんとは、明日帰りたくなんてないんです。会社も辞めたっていいと思ったんです。でも、母と弟のこともあるし、わたしが仕事をしないといけないんです。会社には事情を話して、こっちに戻してもらえないかとお願いしてるんですけど、すぐにはどうしようもなくて」
咲恵は、背中に手を回してきつくボクに抱きついた。
「ほんとうに、萌さんなんかに瑞樹さんを渡したくないんです。だから、わたしのカラダを瑞樹さんに刻みつけておきたかったんです」
咲恵の熱い涙が、ボクの胸を伝って流れていく。
「もう泣かないでよ。咲恵さんの気持ちはよくわかったから」
咲恵は、ボクを抱きしめたまま、顔を見上げて言った。
「じゃあ、せめて瑞樹さんの味を覚えて帰りたいです」
「味?」
「瑞樹さんの飲ませてほしいんです。お願い」
咲恵は、自分の言っている言葉が恥ずかしいのだろう。再び顔をボクの胸に埋めた。
「だって、萌さんには飲ませたことあるんでしょ」
「うん、まぁ。無理矢理にねだられて飲まれたことはあるかも」
「だったら、わたしもいいですよね」
「そんなに、萌と張り合わなくてもいいんじゃないかな」
「別に、張り合ってるわけじゃないんですけど、萌さんが飲んでて、わたしが飲んだことないっていうのがくやしいだけなんです」
素直に認めてあげるべきなのかボクが迷っていると、咲恵は体重をかけてあっけなくボクを押し倒した。
「いいですよね」
そう言うと、ボクの返事もなくカラダをずらして、ペニスを手で起こし口に含んだ。一生懸命に頭を上下に振っている咲恵の姿を見て、ボクのペニスはすぐに反応して硬くなっていった。ペニスをしゃぶる音と咲恵の吐息が混じり合って、ボクは快感の絶頂へと導かれた。
「あっ」
咲恵の口の中に、溢れ出した精液に驚いて声を上げた。
「うーん」
口の中のモノをこぼさないように、唇をすぼめて顔を上げた咲恵は複雑そうな表情をボクに見せてゴクリと喉を鳴らした。
「こんな味なんですね。瑞樹さんのって」