夢でよかったと思う一方で、恐ろしい夢を見てしまったと改めて思った。咲恵が帰って行ってしまったことは、心にぽっかり穴が開いたような寂しさをボクに与えている。それと共に、萌のボクに与えた影響力の大きさを改めて確認させた夢だった。もし、本当に萌が帰ってきたとしてボクは咲恵との約束を守れるのだろうか。犯されるような快感をボクにもたらす、萌に抗えるのだろうか。
ゆるゆると起き上がって、夢精で汚れてしまった下着を替えるため車椅子に乗り移る。新しい下着を出して、カラダを傾けて片側ずつお尻を浮かして青臭い匂いのする下着を脱ぐ。
咲恵の口にたくさんの精子を吐き出して間がないというのに、べったりと下着に張り付いた精液を見て不安になる。
「あんな夢を見て、こんなに出してしまうなんて」
ボクは、萌と出会い、カラダを重ねるようになってから性欲というものが強くなってしまった気がしている。咲恵は、それを鋭く感じ取って、ボクが萌のカラダに溺れてしまうのを恐れているのかもしれない。ボクも、萌の強引なアプローチに対抗出来るか自信がない。咲恵も、それをわかっていて、ボクにキツく約束をさせたのだろう。
咲恵からは、毎日のようにメールが届く。他愛もない日々の出来事を言い合うのが日常なのだけれども、時々、咲恵は約束を忘れないように聞いてくることがある。
「あのぉ、溜まってきてませんか?」
「えっ、なにが」
「男の人って、アレが溜まってくると悶々としてくるんだと本に書いてありました」
「また、女性週刊誌情報かな」
「いいじゃないですか、私の貴重な情報源なのですから」
「じゃあ、女の子だって欲求不満になる時あるでしょ。そんなときどうするの」
「えっとぉ、それは自分でする・・・のかなぁ」
「でしょ。男だって同じさ」
「瑞樹さんもするのですか?そのぉ・・・」
「咲恵さんはどうしてるの」
「瑞樹さん、質問に質問で返すのはよくないんですよ」
「はいはい。しますよ。マスターべーション」
「そ、そうなんですよね。やっぱり」
「ん?どうしたの」
「いえ、わたしが一緒にいたら、そんなもったいないことさせないのになぁって思って」
「ははは、もったいないって」
「だって、その瑞樹さんの情熱というか熱量を無駄にさせないのになって」
「ボクだって、咲恵さんとエッチが出来るなら、そっちがいいよ」
「ほかの女の人と会ってないんですか」
「そりゃあ、そんなことしたら咲恵さんに悪いと思うし」
「あれから、萌さんからの連絡はないんですか?」
「もちろんないよ。ボクのことなんて忘れて、彼氏と仲良くやってるんじゃないのかな」
「わたしとの約束、覚えてますよね」
「覚えてますよ」
「じゃあ、もし女の子のカラダが欲しくなったら、サイトで探してもいいですからね」
「咲恵さんは、嫉妬とかしないの」
「えっ、もちろんそれはくやしいですし、考えたくないですけど」
「ですよね」
「だけど、瑞樹さんがいっぱいため込んで、そんなときに萌さんが帰ってきたら、ガマン出来ずにエッチをしてしまいそうで。そっちの方が、絶対に嫌なんです」
「わかってるよ。もし萌が帰ってきても、誘惑には負けません。そして、すぐに咲恵さんに連絡します」
「ほんとうにですよ」
「その時は、咲恵さんが帰ってきてくれるんでしょ」
「そうです。そしてわたしとエッチをするんですよ」
「萌に見せつけるの?」
「瑞樹さんが、許してくれるなら。わたしも、そのくらいの覚悟はしてますよ」
「本気なんだね」
「本気ですよ」
「だから、そういうリスクを低くするために、あまりため込んでほしくないんです」
「わかった。そんな状況になったら、咲恵さんに相談するから」
「はい。待ってますから」