いつものと言うべきなのだろかと、迷ってしまうほどの見慣れたホテルの前に着く。
「ここです」
「そう」
短い会話の後、エントランスの自動ドアの前に立つ。スモークガラスのドアが開き、ボク達は黙って中に入る。ヘアをチャージしてエレベーターに乗り、目的の部屋に入る。
「へえ、こんな部屋があったんですね」
初めて自分から口を開いた明美は、バリアフリーになっているトイレとバスルームを見て言った。
「いつも、この部屋でやってるの」
「いつもというわけではないですが、ここが便利ですし慣れているので」
「段差もないし、お風呂も広くていいわ」
「あの、聞いてもいいですか」
「ええ、いいわよ。でも、ノド渇いたからなんか飲みましょう」
明美はそう言って、冷蔵庫を開けて中にあったミネラルウォーターのペットボトルを手に取った。
「ストローとかないけど大丈夫」
「はい」
「じゃ、フタだけは開けてあげるね。ここに置くけどこぼさないようにね」
明美は、ボトルの蓋を開けてテーブルの上に置いた。ボクは、置かれたペットボトルを手に取り、一口だけ水を飲んだ。彼女もソファーに腰を下ろしミネラルウォーターに口をつけた。
「で、何を聞きたいの」
「ああ、何ヶ月なのかなと」
「これ?もう少しで8ヶ月に入るところ」
明美は、カラダが細めなのからか、お腹もそれほど大きくはなく8ヶ月だとは思えなかった。まあ、ボクの身近なところでは妊婦さんなんていないから、はっきりとはわからなかった。
「どうして、最初に妊婦さんだと教えてくれなかったのですか」
「最初に言ってたら、キミは会ってくれてた?」
「いえ、会わなかったと思います。少し怖いですから」
「でしょ。それにキミが車椅子だって言ったから、ちょうどいいかと思って」
「ちょうどいいって?」
「こんなお腹だし、正常位は厳しいんだよね。キミってどうせ騎乗位でやるんでしょ」
「まぁ、そう言われれば正常位は難しいですし、妊婦さんならなおさらですよね」
「でしょ。それにキミにだって、メリットもあるし」
「メリットとは」
「今なら、生で出来るしさ。いいでしょ。生でしたことないでしょ?」
決めつけられた言い方をされて、内心少しおもしろくはなかったが、生でしたことあるなんて言うといろいろ聞かれてしまいそうなので乗っかっておくことにした。
「まぁ、そうですね」
「でしょ。生でやる機会なんて、これからないかもしれないんだからお得でしょ」
明美は、一人で納得したように身を乗り出して言った。
「でも、なんで妊婦さんなのに出会い系なんてやってるのですか」
「そりゃ、お金に決まってるでしょ」
それが、当たり前だと言わんばかりにキッパリと言い切った。
「お金に困ってるんですよね」
「うん、まぁ」
「違うんですか」
「お金が欲しいのは事実だし」
「なんのためにお金が必要なんですか」
「パチンコ」
「はぁ」
「わたし、パチンコ好きなの。今、出産休暇中だし、時間あるからやり放題だし」
「そのためのお金なんですか」
「なに。いけないの?それよりお風呂入りましょう。洗ってあげるから」
明美は、バスルームに行きお湯を入れだした。
「はい、脱がしてあげるからね」
と言って、ボクの服を慣れた手付きで剥ぎ取っていった。そして、自分もワンピースを脱いで大きく張り出したお腹を晒した。あっという間に、自分のブラジャーとショーツも脱いで真っ裸になった。ボクの目に飛び込んできたのは、茶褐色になった大きな乳輪と飛び出た乳首だった。
「さあ、お風呂に行きましょうね」
車椅子を押しながら言った明美の言葉が、妙に職業的にボクの耳を震わせた。