「あっ、忘れてた」
明美は、バスルームに行く途中で車椅子を押す手を止めた。
「なんです?」
「先に、お金をもらってもいいかな。前にやり逃げ去れたことがあって」
「それ、よく聞きますよ」
「まぁ、キミは逃げようと思っても、捕まえられるけどね」
大きなお腹を突き出して、笑っている明美を見ていると、なにか不快な気持ちになった。
「その前に、逃げる気もないし。騙す気もないですけどね」
「ああ、ごめん、ごめん。悪気はなかったんだけど」
「はい、約束のお金」
ボクは、車椅子のシートバックのポケットから財布を出して約束の金額を渡そうとした。
「これって、ここでキャンセル出来ますか?ホテル代は持ちますから」
「いや、それはやめてよぉ。もう、わたしの裸も見せてあげてるんだし」
「あなたが、勝手に脱いだんですけどね」
世の中には、妊婦さんとやりたい趣味の人もいるのは知っている。しかし、ボクはそんな趣味は持ち合わせていない。困っていると言うから会ってみると、お腹が大きくてパチンコのためにお金が欲しいなんて聞かされると、いささか不満な気持ちもある。
「そんな意地悪みたいなこと言わないでよ。明日、新装開店なんだからお金がいるのよ。気持ちよくさせてあげるからさ。生だよ。生で出来るんだから」
ボクにとっては、興味もないことだし、魅力のある言葉でもなかった。しかし、ここまで来て引き下がるような感じの女性ではないだろう。こんなことで揉めるのはイヤだし、諦めることには慣れている。
「わかりました。はい、どうぞ」
恥じらうこともなく、どこも隠そうとはしない、裸の明美にボクはお金を手渡した。
「ありがとう。これで明日、勝てるかもしれない」
「よかったですね」
「やっぱり、生は魅力あるよね」
そこにしか自分の魅力を認めることが出来ないのだろうなぁと思いつつ、ボクも何の魅力も持ち合わせていないのだなと自己嫌悪した。
お金を受け取った明美は、ソファーの上に投げてあったバックにお金を入れていた。真後ろから見ると、妊婦とは思えない細身で小さなお尻をしている。あのカラダに、もう一つの命が宿っていると思うと不思議な感じがする。無垢の命を抱いているのに、外の世界はどこも汚れに満ちている。隔絶された清い世界には、行き続けることなど出来ないのであろうことに哀れを感じざるを得ない。
「さあ、お風呂に行きましょうね」
また、どこかで聞いたような台詞回しが聞こえた。車椅子を浴槽に横付けすると、ボクを軽々持ち上げて、浴槽横のスペースに腰を下ろさせた。
「お腹、大きいのに大丈夫ですか」
「慣れてるからね。車椅子から移乗させるの。それに、キミは軽いし。ちゃんと食べてるの」
「食べないと、生きていけませんからね」
「まあ、それはそうだけど。カラダ、洗うわよ」
明美は、スポンジにボディーソープをつけ、ボクのカラダを洗い始める。目の前に、ひときわ存在感のある色の濃い多くな乳首が視界を横切る。目のまだよく見えない赤ん坊に、おっぱいがどこにあるかわかりやすくするためになっているのだと思うと感心する。
手を伸ばし、その乳房に触ろうとすると
「ダメですよ。後からね」
と、はぐらかされる。テキパキと体を洗われ、だんだん下の方に場所が移ってくる。
「ここは、特別に手で洗ってあげるね」
そう言うと、手にたくさんの泡を纏わせてボクのペニスに触れてくる。大きさを確かめるように、両手で包み込んでお尻の方まで手を突っ込み洗われる。
「結構立派なのね」
「そこは、痩せてませんからね」
「ああ、そうね。ここには脂肪とか付かないしね」
明美は、ペニスを握って何度も手を動かせて念入りに洗ってきた。それに応えるように、ボクのペニスは大きさを増していった。
「わっ、大きくなってきた」
「そりゃあ、それだけ触られれば、気持ちいいですから反応もしますよ」
「だよね。でも脊椎損傷の人のを洗ったことあるけど、やっぱり無反応だったわ」
「そうなんですね。ボクは自分のことしかわからないから」
「泡を流すわよ」
そう言うと、シャワーを手に取りお湯で泡を流し始めた。泡で包まれていた、大きくなりかけのペニスも姿を現した。