「あんた、だれなの?」
「わたしは、瑞樹さんの彼女の咲恵と言います」
リビングのドアが、壊れんばかりの勢いで飛び込んできたのは咲恵だった。あんなに怒って大声を上げているのをボクは初めて見た。
「咲恵さん」
「瑞樹さん、約束通りにわたし帰ってきましたよ。間に合ったようで良かったです」
裸同然の萌と、まだ服を着ているボクを交互に見て、咲恵は安心したように言った。
「咲恵・・・ああ、瑞樹を放ったらかしにして仕事のためだと言って、どこか遠くに行ったっていうのはあんたか」
「違います。わたしは、ずっと瑞樹さんのことを想って心配していました」
「へぇ、あんたがいない間に、わたしは瑞樹と一緒にいたんだから」
「萌さんだって、瑞樹さんを捨ててほかの男のところに行ったって聞いてますけど」
「それは、いろいろと事情があって仕方なかったんだよ。でも戻ってきて、瑞樹と仲良くしようとしてたのに、あんたが邪魔するから」
ボクのジーンズに手を入れたままの姿勢で、萌は咲恵を睨みつけた。
「萌さん、瑞樹さんから離れてくださいよ」
「イヤだよ。瑞樹はほら、わたしのおっぱいを揉んで乳首も舐めてくれたんだよ。だから瑞樹のおちんちんだって大きくなってるんだから」
萌は、ボクのペニスを握っていた。しかし、この騒動でボクのペニスは硬さを失っていた。それを理解して萌は、再び硬くさせようとペニスを握っている手を小刻みに動かして刺激を加えていた。
「その手を離してください」
持っていたキャリーケースを置き去りにして、咲恵はボク達の前に立ちはだかった。ボクのジーンズの開けられたファスナイーから突っ込まれていた手を引き抜いた。
「なにするの」
手首を持たれて腕を振られた萌は、足をふらつかせて後ろに下がることになった。咲恵はボクを背にして、
「大丈夫ですか。瑞樹さん」
と声を掛けた。
「ごめん、でも、まだ大丈夫だったから」
「よかったです」
咲恵は振り返り、片膝を着いてボクのジーンズのファスナーを閉めた。その時、ボクのペニスが勃ってないことをさりげなく確かめられたような気がした。
「なんであんたが邪魔するんだよ。せっかく瑞樹と、お風呂に入ろうって言ってたのに」
「話をする前に、その格好を何とかしてください。ちゃんと、服を来てください」
「この家にいる時は、わたしはこれが普段着なんだよ」
「わたしが、困るんですよ。恥ずかしくって」
「だけどさぁ、このおっぱいを瑞樹は大好きなんだよね。いつも、優しく触ってくれて乳首も舐めてくれるんだよ」
そう言うと萌は、両手で自分の乳房を持ち上げて立派な谷間を作って見せた。
「ねぇ、瑞樹、そうでしょ」
ボクは、二人の女性を前にして、何と言っていいかわからずうつむいた。
「わたしだって、瑞樹さんに『おっぱいキレイだね』って言われてキスされたことくらいあります」
萌に対する対抗意識がそう言わせているのだろうが、言った本人の咲恵も顔を真っ赤に紅潮させていた。
「あんたみたいな、華奢なカラダで瑞樹が喜ぶとは思えないんだけど。わたしのカラダ全部、瑞樹のモノだもんね」
萌は何を思ったのか、履いていたボクのボクサーパンツをスルスルと脱ぎ捨てた。キッチンの灯りに中に、萌の生まれたままの姿が浮かび上がった。瞬きするのを忘れてしまいそうな、生々しくも美しい萌の姿がボクの網膜に映り込む。
「あんたには、瑞樹にこんな姿を見せる勇気も根性もないでしょ」
天井から照らされる一点の灯りのため、萌のカラダに浮き出た陰影が、より一層グラマラスさを醸し出していた。
うつむいていた咲恵は、両手をぎゅっと握りしめたかと思うと、顔を上げて言った。
「わたしだって、そんなことぐらいできるわよ」