寝室に招かれた彼は綺麗にメイキングされたベッドの端に座り、暖房をつけてるチサカに向かって半ば冗談交じりに尋ねる。
「体、洗いっこする?」
「!!」
チサカは赤面。一度ぱっと顔を逸らし、リモコンを四段ボックスの上に置く。
「私が先にシャワーする。忍くんはあとからでいい?」
「いいけど、そこに立ったまま、服を全部脱いでくのを見せるのが条件」
「…………裸になれってこと?」
「難しい?」
「……。……ううん」
チサカは先に上から脱いで、ブラジャーに包まれた小ぶりな胸を見せる。下は、セットになってるショーツ。
「……変?」
何がとは聞かない。体の線か、下着か、或いは動作についてなのか。
「全然」
「……」
彼女はブラジャーのホックを外して胸を露にすると、今度はショーツを脱ごうと前屈みになる。その際、胸の房が重力に従って垂れた。
絞られたように勃っている胸の先端、淡い色の乳輪。忍は、かたくなってるそこを直接摘んでくにくにと揉み扱きたい気持ちに駆られた。思わず、指をぴくっと反応させるくらいに。
チサカがショーツを脱いで背筋を伸ばすと、毛を綺麗に剃った恥丘、割れ目の先頭部分が丸見えになった。少しだけ開いてる脚のあいだから僅かに盛り上がっているやわらかな股間の肉も見えると、さすがの忍もボクサーパンツのなかの膨らみをかたくする。
チサカは(もういい?)と思い、脱いだ衣服を拾い上げて両腕に抱えた。
「バスルームに行ってくるね?」
忍は此方に向けられた尻の割れ目を、ドアが閉まる直前までじっと眺めて見送った。
(疑ってなけりゃ、神様からのでかいクリスマスプレゼントだと思えたのにな)
残念がる男の溜め息が、はあ、と零れた。
*
体を洗い終えたチサカは、バスタオルを体に巻いて戻ってきた。それも肩紐付きの着る系。輪になってる紐に腕を通すだけで体をシュッと細く見せるパーティー用ドレスみたいになるデザインだ。
(そりゃ、言われなきゃ裸にはならねぇよな)
先程見えていた股の部分が綺麗に隠れる丈。胸の先端が浮き出ないタオルの厚み。
裸でもなければ普通のバスタオルでもなかったことに忍はがっかりしなかったが、またもや現実に戻された気分にはなった。
「バスルームに案内するね。付いてきて」
「おう」
チサカは脱いだ服を置く場所は何処で、ボディソープはこれ、スポンジは嫌で無ければあれを使ってなど親切に教えた。
「わからないことあったら呼んで」
「了解」
忍はチサカが脱衣所から出て行ったのを見届けてから、空気中に漂う匂いを嗅いだ。
(…………自分なら選ばない、甘ったるい桃の香りがする)
匂いの正体は、恐らくボディソープ。
(明日、先生からツッコまれそうだな。誤魔化せる何かを食べて面接に挑むか)
忍は上から順に服を脱いだ。ボクサーパンツと靴下は指定された籠の端にかけ、それ以外は皺をあまり付けないようハンガーに。備え付けのラックにかけたらバスルームへ入り、シャワーを軽く浴びてから、ボディソープの泡を手のひらに乗せて体を洗う。
(恋人や夫婦でもないのに、同じスポンジ使うとか有り得ねぇ)
使用許可は出てるが、自分の変なポリシーから使う気が起きない。チサカと一緒に体を洗う流れになっていたら?素手を選んだ。泡が付いたきめ細かい肌に手を滑らせてみたいから。
しかし、時間に余裕があれば?
ボディブラシの形をした、マッサージ用と称した突起付きの道具を購入するのもいいだろうと、忍は妄想。あのやわらかな股関に当てて前後にゆっくり撫でて善がらせたり、上半身を優しく撫でて感度を上げさせる。それも有りかもしれない。
「…………」
忍は、少し気分が高まってきた雄の象徴を掴んだ。手の動きは遅めで、扱くように、だが、丁寧に洗う。
(…………彼奴、どんな風に喘ぐんだろ)
高校卒業後、チサカに彼氏ができたのを知ったのは、共通の友人を通してではない。フランスに滞在中、現地の友人がスマホを手に駆け寄ってきたときだった。
『なぁなぁ、忍!俺、有名人になったら、この子にお願いして写真集を出したい!』
忍は隣りに座った友人に画面を見せられ、ぴたっと静止。
『な?可愛いだろ〜〜。でも、チサカは彼氏が居るから無理だぞ』
自分の恋人でも知り合いでもないのに、友人は嬉しそうに画面をスライドさせていく。
寝耳に水だった忍は目を見開いたまま恍けた風に、
『彼氏……?』
と、訊ねた。
友人はSNSに投稿済みの写真一覧から一枚を選び、画面いっぱいに表示させる。
『え〜〜と、日本語で古風って言うのか?大和男子?』
色違いの作業用エプロンを付け、腕をくっ付けて仲良く並んで立っている一組の男女。男は陶芸家で、彼女よりも歳上。髪は染めておらず、体育会系っぽい顔でガタイが良い。
あとから検索したインタビュー記事には、「写真のセンスが無い自分の代わりに、SNSに投稿する器を撮影してくれないかとチサカさんに依頼したのが始まりでした」、それから仲を深めていったと書いてあった。
そう。忍は今日再会するまでのあいだ、チサカに彼氏が居るのを知っていた。過去系になってるのを知らなかっただけ。
彼はシャワーの栓を捻り、体を撫でながら泡を落としいく。
(抱いてみた結果、一線超えてないのが嘘だったら?)
ーーあの陶芸家の男は、無骨な指を穢れていない彼女の狭い部分に挿し込み、イヤらしい動きで刺激して潮を吹かせたのか?
ーー指で散々喘がせたそのあとは猫が背伸びするような姿勢にさせ、猛々しい物を根本まで押し込み、両手で腰を掴んでぱんぱん!と強く穿ったのだろうか?
ーー初めて受け入れる苦しみが甘美に変わり始めた頃を狙って攻める速度を変え、悦びの末に果てて悶える彼女の内壁に締め付けられ、煩悩を持って行かれる快感も…………。
そんな淫らな妄想が終わったのは、濡れてるマットの上に白濁を飛ばした瞬間だった。
*
忍が乾いたタオルを一枚、腰に巻いた姿で寝室に帰ってくると、ベッドの上でうつ伏せになっていたチサカは慌ててスマホの画面を閉じて正座。
咄嗟の反応に怪しさを感じた忍は彼女に近付きながら、揶揄い気味に尋ねる。
「待てなくて動画を漁ってたのか?」
実際は、誰かに連絡してたのではないかと内心疑ったが、チサカは頬を赤らめておずおずと画面を見せてきた。
「……うん」
自分たちよりやや歳上と思しき若い男女一組が顔にモザイクをかけて、裸の姿で写っているサムネイル。出演者は日本人。タイトルは『再会した彼に初体験をあげて、めちゃくちゃにして貰いました』という、女視点のかなりシンプルな物だった。
「空いてる時間使って、その、失敗しないようにって、思って」
忍はスマホを受け取り、ほかに開けた画面が残ってないかこっそり確認したが、疑いの種になる物は無かった。
カメラレンズを、照れているチサカの顔に向ける。
「撮られたいわけじゃなく?」
「……。忍くんだけが……、視聴するなら……」
「ち◯こ、シコっていいわけ?」
「……」
生々しい表現に煽られたチサカは耳まで赤く染め、潤んだ目をして小さく頷いた。
忍は、スマホのレンズを向けたまま要求する。
「裸になって、ベッドの上に仰向けになって足開いてみ?」
チサカがタオルを脱ぎ、膝を立てて開脚すると、忍はスリッパを脱いでベッドに上がった。
やわらかな股間の色は薄めで、特に弄ったことが無いのか初々しさがある。
「さっきチサカが再生してた動画、男のち○こが挿入されてるとこ映ってた?」
「…………うん」
忍が撮影時のカシャカシャという軽い音を連続で立たせるだけで、チサカの入口から微量の蜜が垂れる。
「女の人は、何かえっちなこと言ってたか?」
場面を思い出したことで、濡れてる入口が物欲しげに締まる。
チサカは唇を薄く開け、微かに声を震わせながら教えた。
「…………イク、イクって、言ってた……」
「ほかは?」
「………………おち○ぽ、大好き。……わ、ッ……私のま○こ、おち○ぽ好きって……言ってた…………」
(それ、どう考えても初体験動画じゃないだろ。さては、タイトルに騙されて開いたな?)
忍は写真を保存せず削除し、スマホをサイドテーブルの上に置いてから、腰に巻いてあるタオルを外した。
現れたのは、乳輪の色よりも濃く強調された色。勃ってる男の芯の先端の穴からは、透明のカウパー液が滴のようにぷっくり出ている。
チサカが男のそれを視界に入れたのは人生で二回目だったが、恋人から襲われそうになって未遂で終わった一回目と違って恐怖心は無かった。寧ろ欲しいと乞いたくなる形に映る。
「オレのは先が濡れてる。わかる?」
「せぇし?」
「違う。我慢汁……、カウパー腺てやつ」
忍はチサカの両脚のあいだに自分の体を割り込ませ、覆い被さって唇を重ねた。
彼女が瞼を伏せてから体を動かし、かたくなってる雄の形を覚えさせるように前身へ擦り付けると同時に、カウパー腺を塗り付ける。
ベッドが小さく軋む音。
馴染ませる、互いの体温と素肌の感触。
忍は唇を離し、頬を染めてぽうっと蕩けているチサカの、色香のある表情を見下ろした。