境界線の向こう側 〜配信中の銀色の聖女を、俺だけが穢す〜 作:与次郎
──星野光莉視点
配信終了の暗転と共に、私は防音室の冷たい床に崩れ落ちた。
指先一つ動かす気力さえ残っていない。太ももの内側は熱く濡れ、下腹部の奥にはまだ、あの太く硬い熱杭に掻き回された「物理的な違和感」が不快なほど鮮明に居座っている。
(……はぁ、はぁ……っ、う……ぅ……)
私は吐き気を堪えるようにして顔を覆った。
今、何が起きていた? 身体を乗っ取られ、意識をどこか遠くへ追いやられ、ただの肉穴として蹂躙された。あの感触は、絶対に現実(リアル)のものだった。
私は震える手でスマホを掴み、配信のアーカイブを開いた。
再生ボタンを押すのが怖い。けれど、見なければならない。自分がどれほど無様に、世界に向けて「メス」を晒していたのかを。
画面の中で、私が魂を込めて作り上げた「銀色の聖女」が、配信机に無残に押し倒されていた。
「……あ……、あぁっ……! んんっ……!」
スマホのスピーカーから流れてきたのは、清楚なルミナの声ではなく、快感に理性を焼き切られた女の、淫らで濁った喘ぎ声だった。
激しいピストンに合わせてルミナの身体が無様に跳ね、銀髪が乱れ、そして——私の呼吸が止まった。
(……うそ……あれが、私……?)
映像の中のルミナから、意志の光が消えた。
瞳が虚ろになり、焦点が合わなくなる。なのに、後ろから激しく突き上げられる衝撃に合わせて、その顔はこれ以上なく淫らに、だらしなく崩れていく。
眉を寄せ、潤んだ瞳を彷徨わせ、さらには舌をわずかに覗かせて——「イキ顔」を、衆人環視の中で晒し続けている。
(やだ……やだやだ! ルミナが……私の理想が……あんな、ただの人形みたいに……っ!)
私が必死に守り、誰にも穢させたくなかった「高潔なルミナ・ステラ」が、そこにはいなかった。
画面に映っているのは、正体不明の「何か」に後ろから深く貫かれ、されるがままに子宮を突かれ、意志さえ奪われて快楽だけを貪る、一匹の雌犬のような姿だ。
プライドが音を立てて粉々に砕け散る。
自分が大切にしてきた価値観が、見えない指先一つ、熱杭一本によって、ドロドロの愛液と共に泥沼へ引きずり下ろされた。
(誰なの……? どうして、私のルミナを……私を……こんな風に、壊していくの……っ?)
スマホを抱きしめ、私は床に額を擦りつけて泣いた。
映像の中の「虚ろな自分」が、今の現実の自分を嘲笑っているような気がした。
─零視点
零は自室の暗闇の中で、アーカイブを繰り返し再生し、光莉が今まさに感じているであろう「絶望」の気配を、芳醇なワインのように味わっていた。
(……どうだ、光莉。自分の『神聖な自分』が、俺の玩具として完成されていく姿は)
零の瞳に、深い、底知れない満足感が浮かぶ。
彼女が大切にしていた偶像を、最も卑猥な形で上書きしてやった。その屈辱こそが、彼女の精神を俺に従順な器へと作り変えるための最高の潤滑剤になる。
「これで、お前はもうどこにも行けない。……ルミナ・ステラは、俺のものだ」
零は冷たく、そして確信に満ちた笑みを浮かべた。
彼女が流す涙も、その絶望も、すべてが次なる「支配」への礎でしかなかった。
──星野光莉視点
どれほどの時間が過ぎたのだろうか。
アーカイブを再生し終えたスマホの画面は、とっくに暗転している。それでも私は、防音室の床で丸まったまま、動くことができなかった。
(……消えない。熱が、ずっと……奥に残ってる……っ)
下腹部の奥底、さっきまで熱杭が執拗に叩きつけていた場所が、疼くように脈打っている。
それは単なる身体的な余韻ではない。あたかも、目に見えない「鎖」をそこへ打ち込まれたような、圧倒的な被支配感。
震える指先で、まだ火照りが引かない股間に触れてみる。指に絡みつく愛液の粘りけが、画面の中で「空っぽの人形」に成り果てていた自分を思い出させ、胃の奥がせり上がるような嫌悪感に襲われた。
(私は……もう、元には戻れないの……?)
聖女として、みんなに愛される光の中にいた「星野光莉」。
けれど、境界同期という名の暴虐によって暴かれたのは、誰よりも深く、淫らに熱を欲しがる「女」としての本能だった。
配信を閉じ、マイクを切っても、私の身体には「誰かの痕跡」が刻まれている。
鏡を見れば、そこにはまだ恐怖に震えながらも、どこか熱に浮かされた瞳をした自分が映っていた。
(あの感覚……あの、頭が真っ白になるほどの衝撃……。もし、また……次があったら……)
拒絶したいはずなのに、脳の片隅で、あの暴力的なまでの快楽を反芻している自分がいる。その事実が、何よりも恐ろしかった。
──零視点
零は、消灯した部屋で最後の一服を吐き出した。
手元には、光莉の「境界同期」中の生体データが、美しい幾何学模様となって表示されている。
「期待以上だ……。意識を切り離しても、肉体はこれほど鮮烈な反応を返すとはな」
モニターの中で静止画となったルミナ・ステラを見つめる。
乱れた銀髪、虚ろな瞳、そして凌辱の証として赤く染まった肌。
それは世界で唯一、自分だけが知っている「聖女」の真実の姿だ。
境界同期(Phase 2)は完成した。だが、これはまだ通過点に過ぎない)
零の視線は、すでにその先のフェーズへと向いていた。
単にアバターを通じて犯すだけではない。光莉の精神そのものを、現実と仮想の区別がつかないほどの快楽の迷宮へと幽閉し、彼女の人生すべてを自分の管理下に置く。
プライド、道徳、理性。
そんなものがドロドロに溶け去り、彼女が自ら「もっと壊して」と縋り付いてくるその瞬間まで、実験は終わらない。
「さあ、光莉……。次はどんな顔で、俺を迎えてくれる?」
零はマウスをクリックし、データを保存した。
暗闇に浮かび上がる彼の口角は、獲物をじっくりと壊していく快悦に、深く、深く、歪んでいた。