境界線の向こう側 〜配信中の銀色の聖女を、俺だけが穢す〜 作:与次郎
視界を埋め尽くしたノイズが収束した先で、零は「そこ」に立っていた。
配信画面という窓から覗いていた景色とは一線を画す、圧倒的な情報量の世界。ルミナ・ステラの配信サーバー内に構築された、白銀の仮想聖域。
そして、零のわずか数センチ先には、銀色の長い髪を背中に流した「獲物」が背を向けて佇んでいる。
(……見つけた)
零は獲物を驚かせぬよう、音もなく右手を伸ばした。
まずは、その輝く銀髪にそっと指を滑らせる。
冷たいデータの感触を予想していた零の指先に伝わってきたのは、驚くほど柔らかく、絹のように滑らかな「本物の髪」の感触だった。指の間をすり抜ける一本一本の毛筋が、官能的な重みを伴って掌を愛撫する。
「は……っ」
零の喉から、熱い呼気が漏れた。
想像を遥かに超えている。このアバターには、星野光莉が抱く「理想の自分」という執念に近い情念が、プログラムを超えた生命力を与えているのだ。
零はさらに一歩、その背に密着するまで距離を詰めた。
ドレスの生地越しに、彼女の細い肩へ両手を置く。
華奢な肩のライン。その下に隠された鎖骨のくぼみ。指先に力を込めれば、薄い皮下脂肪の下にある、生身の瑞々しい肉の弾力が指を押し返してくる。
(これが……ルミナ・ステラの、
零は、彼女のうなじを隠す銀髪を、掌でゆっくりと掻き上げた。
露わになった白磁のような首筋。無防備に晒されたその場所に、零は鼻先を寄せ、深く息を吸い込む。
仮想空間のはずなのに、そこには確かに、清潔な石鹸の香りと、女特有の甘い体温の匂いが混じり合って漂っていた。
零の瞳が、征服欲にぎらりと濁る。
「光莉……お前の理想は、こんなにも淫らな感触をしているのか」
まだ彼女の意識に声は届かない。
だが、零がその首筋に熱い息を吹きかけ、指先で鎖骨の縁をなぞるように這わせると、アバターの身体が微かに震えた。
現実世界で配信を続ける光莉が、説明のつかない「熱」に戸惑い、肩をすくめた証拠だ。
零は満足げに唇を歪め、そのまま手をゆっくりと下ろしていく。
ドレスの背中のラインをなぞり、細い腰のくぼみ、そしてその下にある豊かな曲線の始まりへと。
零は、自身の指先に集中した。
「境界接触」——
その名の通り、彼は今、仮想と現実の薄皮一枚隔てた境界に触れている。
零は背後からルミナの首筋に顔を寄せ、その柔らかな銀髪を指で遊びながら、もう片方の手を大胆に前へと回した。
ターゲットは、白と銀のドレスに包まれた左胸。
清楚を体現するその衣装は、零の指が布地を押し下げた瞬間、あまりに容易くその「神域」を明け渡した。
(……見つけた)
掌全体で、その重みを根元から掬い上げる。
指の間から溢れ出す、熟れた果実のような弾力。アバターとしての完璧な造形に、光莉自身の生々しい肉の熱が「同期」し始めているのを、零は確信を持って感じ取っていた。
彼は親指の腹を使い、ドレスの薄い裏地越しに、その頂点を探り当てる。
まだ柔らかく眠っている突起を、逃がさないよう優しく、かつ執拗に円を描いて転がした。
「……っ」
その瞬間、仮想空間内のルミナが小さく肩を跳ねさせた。
配信画面の向こう側で、聖女の「旋律」が乱れる予感がした。
──
(……え? なに、これ……っ)
ASMR用の高性能マイクに向かって囁いていた私は、あまりに唐突で、あまりに生々しい「感覚」に言葉を失った。
左胸が、熱い。
まるで、誰かの大きな掌に、下からじっくりと持ち上げられているような……。
防音室には私一人。衣装のインナー以外、私の肌に触れるものは何もないはずなのに。
(気のせい……。そう、ただの血行不良か何かで……あ、っ……!)
否定しようとした思考は、先端を襲う「指先」の感触に容易く粉砕された。
コリ、と。
指の腹で、最も敏感な場所を丁寧に解きほぐされるような刺激。
信じられないことに、ブラジャーのカップの中で、私の胸の先がぐんぐんと熱を持ち、硬く尖っていくのが分かった。
『……皆さんの、疲れを……癒して、あ……げ……』
台詞が、途切れる。
必死にマイクから顔を逸らしたが、漏れ出たのは「聖女」にはあるまじき、熱を帯びた吐息だった。
心臓が警鐘を鳴らすように跳ねる。
画面の向こうには二万人以上の視聴者。
それなのに、私の胸は、正体不明の「手」によって、今も淫らに形を変えられている。
(やめて……お願い、誰なの……? 触らないで……そこ、そんなに……っ)
掌の圧が増し、胸の谷間まで指が滑り込んでくる。
揉みしだかれるたびに、下腹部の奥がキュウと疼き、認めたくない「快感」の萌芽が背筋を駆け上がった。
──零視点
零の唇が、冷たく歪んだ。
アバターを介して伝わってくるのは、光莉のパニック。そして、彼女が必死に堪えようとしている「声」の震え。
彼は仕上げと言わんばかりに、左胸の先端を親指と人差し指でぐいと摘まみ上げた。
「光莉。お前の『清楚』が、俺の手の中でこんなに硬くなってるぞ」
届かぬはずの声が、境界線を越えて彼女を侵食していく。
零はルミナの耳元に熱い吐息を吹きかけながら、さらに深く、その柔肉に指を食い込ませた。