境界線の向こう側 〜配信中の銀色の聖女を、俺だけが穢す〜 作:与次郎
──零視点
零の指先に、ルミナの胸の先端が小豆のように硬く、熱く、屹立していく感触が伝わってきた。
「境界接触」の精度が、零の興奮に呼応するように高まっていく。
(いい反応だ、光莉……。お前の身体は、頭で考えているよりもずっと正直だな)
零はさらに大胆に、ドレスの胸元を押し下げて、アバターの「肌」により深く指を食い込ませた。
谷間を割るように指を滑り込ませ、柔肉を下から大きく掬い上げる。掌の中で溢れるその質感を楽しみながら、彼は空いたもう片方の手で、ルミナの首を背後から優しく、だが逃げ場を奪うようにホールドした。
そして、白く無防備な耳元へ顔を寄せ、湿った呼気を長く吹きかける。
現実世界の光莉の鼓膜が、ありもしない風の音に震えるはずだ。
「……逃げられると思うな。お前のその清らかな喘ぎも、震える指先も。全部、俺が引き出したものだ」
届かぬ呟きは、零自身の独占欲をさらに狂わせる。
彼は親指の腹で、硬く尖った先端を押し潰すように、ゆっくりと、しかし執拗に圧迫した。
──星野光莉視点
(……っ!? あ、あぁ……っ!)
もう、誤魔化しようがない。
首筋を這う熱い吐息の感触。そして、耳の奥までゾクゾクと痺れさせるような、誰かの「気配」。
左胸は、もはや乱暴と言えるほど激しく揉みしだかれ、谷間まで指で掻き回されている。
(やだ……誰かが、そこにいる……。見えない誰かが、私を……っ)
配信画面の中のルミナは、私の動揺をそのままトレースするように、肩を震わせ、瞳を潤ませている。
コメント欄は、かつてないほど沸き立っていた。
『ルミナ様……?』『今の吐息、エロすぎないか?』『なんか……めちゃくちゃ感じてる顔してる……』
やめて。見ないで。
私は「聖女」なの。みんなを癒す、汚れなき存在でいなきゃいけないのに。
なのに、乳首を指で摘ままれ、クイと引っ張られる衝撃が走るたび、私の口からは、私自身の知らない、甘ったるい掠れ声が溢れ出してしまう。
「は……っ、ん、んぅ……あ……」
マイクが、拾ってしまう。
私が、配信中に。何万人もの前で、誰とも知れない透明な指先に、胸を好き勝手に犯されている音を。
恥ずかしくて、死にそうだった。
でも、それ以上に——指先が胸の先端を転がすたびに、身体の芯が熱く溶け、脳が快感の麻薬に浸されていくのが、何よりも恐ろしかった。
(バグじゃない……。誰かが、私のなかに……入ってきてる……)
恐怖と快楽の境界線が、音を立てて崩れていく。
私は必死に、震える手でマイクのミュートボタンを探したが、愛撫の波はそれを許さなかった。
──零視点
零は、光莉が今まさに、配信者としてのプライドと、女としての剥き出しの快感の間で引き裂かれていることを確信した。
(泣け、光莉。もっと乱れて、その綺麗な仮面を俺のために汚して見せろ)
彼はルミナの左胸を最後に強く、押し潰すように揉みしだき、その指先で頂点を弾いた。
同期した感覚が、彼女の脳を激しく揺さぶったはずだ。
零は満足げに目を細め、静かに**「境界接触」**を解除した。
モニターの向こう側。
配信画面の中の聖女は、涙で潤んだ瞳を彷徨わせながら、真っ赤な顔をして、震える唇を必死に結んでいた。
「……ふっ。初日の挨拶としては、十分だな」
零は椅子に深く背を預け、闇の中で静かに笑った。
「境界接触」を解いた後のワンルームは、耳が痛くなるほどの静寂に包まれていた。
モニターの青白い光だけが、零の満足げな横顔を照らしている。画面の中では、ルミナ・ステラが「機材トラブルのため、本日はここで終了させていただきます」と、震える声で配信を切り上げようとしていた。
彼女の視線は定まらず、その頬はまだ熱を帯びたように赤く染まっている。
配信が暗転し、「オフライン」の文字が表示された瞬間、零は低く喉を鳴らして笑った。
(いい声だったぞ、光莉。あんな淫らな喘ぎ、リスナーには贅沢すぎるくらいだ)
彼はキーボードを叩き、配信データのログを解析し始めた。
アバターを介した干渉は、予想以上に彼女の精神を揺さぶったようだ。精神が摩耗すればするほど、彼女の「境界」は脆くなり、零の潜航を容易に受け入れるようになる。
零は椅子の背もたれに深く身を預け、虚空を見つめた。
「次は胸だけじゃ済まさない……。お前の聖域を、一滴残らず俺の色で染め上げてやる」
彼の瞳には、単なる欲情を超えた、底知れない征服欲が渦巻いていた。
──星野光莉視点
配信を終え、機材の電源を落とした防音室の中で、私は崩れ落ちるように椅子に突っ伏した。
心臓の鼓動が、まだうるさいほど耳元で鳴っている。
左胸に残る、あの生々しい「手のひらの熱」が、今も消えない。
(……なんだったの、一体……。あんなの、絶対におかしい)
私は震える手で、自分の左胸をそっと押さえてみた。
ブラジャーのカップ越しに感じるのは、私自身の体温。そこには誰の手もない。なのに、つい数分前まで、確かにこの場所を「誰か」が蹂躙していたのだ。
指先で摘ままれ、引っ張られ、耳元に息を吹きかけられた。
その感触を思い出すだけで、下腹部の奥が不自然に熱くなり、じわじわと嫌な汗が背中に滲む。
(バグ……そう、きっと最新のVR機材のバグ。あるいは、最近の寝不足が原因の幻覚……)
自分に言い聞かせるように呟くが、喉の奥まで熱を帯びた感覚が、その言い訳を拒絶していた。
清楚で、神聖で、みんなの癒やしでなければならない私。
その私が、あんなにも多くの人の前で、見えない指先に翻弄され、情けない声を漏らしてしまった。
羞恥心で胸が潰れそうになる。
だが、その奥底で——あの執拗な愛撫を「拒みきれなかった身体」への恐怖が、暗い泥のように私の心に溜まっていく。
(……明日が来るのが、怖い)
震える指先で顔を覆ったが、闇の中に溶け込んだあの冷たい「誰か」の気配は、いつまでも私の肌にこびりついて離れなかった。
──零視点
零は最後にもう一度、真っ暗になった配信画面を指先でなぞった。
Phase 1:境界接触。
それは、聖女を堕落へと誘う最初の「触手」に過ぎない。
これから始まるのは、彼女の肉体も、精神も、そして「ルミナ・ステラ」という存在のすべてを奪い尽くすための、甘く残酷な儀式だ。
「おやすみ、光莉。いい夢を見ろよ……俺に穢される夢を」
零は冷たい微笑を浮かべたまま、静かに部屋の明かりを消した。
境界線の向こう側では、絶望へと続く秒読みが始まっていた。