境界線の向こう側 〜配信中の銀色の聖女を、俺だけが穢す〜 作:与次郎
一方、静寂と薄暗さに支配された密室の奥で、天峰零はモニターの青白い光だけを浴びながら、静かに目を細めていた。
大画面のモニターには、光莉のスマートフォンからリアルタイムで複製・同期された、みずきとのDMのやり取りが冷徹に映し出されている。
零は無精髭の生えた顎を細い指先でゆっくりと撫で、その無機質な瞳の奥に、どろりとした深い愉悦を浮かべた。
「夏川みずき……。光莉の、一番大切な親友、か」
画面の片隅には、彼女のアバターである「陽ノ川ひまり」の設定資料も開かれている。
零の唇の端が、ゆっくりと歪んだ形に吊り上がっていく。
第一部で星野光莉という「聖女」の精神を徹底的に破壊し、完璧な所有物へと作り変えた達成感。それは零の底なしの欲望を満足させるどころか、さらなる強固な意志をへし折るための、極上の飢えへと変貌していた。
「光莉があれほど必死に隠蔽しようとしている『俺の痕跡』を、早くも嗅ぎつけている。親友想いで、負けず嫌いで、行動力がある……。ふっ、素晴らしいな」
零はレザーの椅子に深く身体を沈め、キーボードを叩く指先をピタリと止めた。モニターの光に照らされたみずきのメッセージを、冷たい視線で見つめる。
【みずき】
なんか……声がいつもよりエロかったような?(笑)
「純粋な心配、純粋な正義感。……だがな、夏川みずき。その美しく気高い感情こそが、お前を俺の深淵へと縛り付ける、絶対に外れない鎖になる」
零はゆっくりと息を吐き、自らの能力の感覚を現実世界へと広げていく。
境界潜航の触手は、すでに光莉という確固たるパスを媒介にして、みずきの周辺の空間へと微かに染み出し始めていた。まだ直接の干渉はできないものの、みずきが抱く「焦燥」と「無自覚な身体の火照り」の残り香が、能力の波長を通じて零の手元へと甘く伝わってくる。
「星野光莉という果実が『完成された極上の毒』なら、次はお前のその弾けるような輝きを、徹底的に泥で汚してやる番だ」
零はモニターに映るみずきのプロフィール写真を拡大した。
ライトブラウンの髪、ふっくらとした健康的で愛らしい頬。Dカップの豊かな胸を包むカジュアルな服の奥から、瑞々しい生命力が溢れている。その「太陽」のような眩しさが、零の冷徹なサディズムを激しく、狂おしいほどに刺激した。
「まずは光莉という猟犬を使い、お前を自らこちらへ歩かせよう。そして、ゆっくりと時間をかけて、その眩しい自尊心を快楽の泥で塗り潰す。お前のその瑞々しい身体を、俺の指先一つでしか絶頂をプログラミングできない『ただの肉の器』に書き換えてやる」
暗闇の中で、零の低く満足げな笑い声が、獲物を待つ蜘蛛の鼓動のように響く。
「夏川みずき……お前がどんなふうに泣き叫び、どれほど淫らに歪んでいくか……。存分に、楽しませてもらうぞ」
太陽の天使を地獄の底へ引きずり下ろすための冷たい罠は、すでに彼女の足元で、音もなくその口を開けていた。