境界線の向こう側 〜配信中の銀色の聖女を、俺だけが穢す〜 作:与次郎
翌日の深夜1時48分。
天峰零は、外界の音を遮断した薄暗い自室で、再びモニターの青白い光に身を浸していた。
画面には、数分後に開始を控えたルミナ・ステラの配信スケジュールが映し出されている。待機所にはすでに数千人のリスナーが詰めかけ、聖女の降臨を今か今かと待ちわびていた。
零は無精髭の生えた顎を指でゆっくりとなぞり、冷徹な瞳でその狂騒を見つめる。
彼の指先には、昨夜の感触が、呪いのように、あるいは甘美な蜜のように、まざまざと残っていた。
ドレス越しに揉みしだいた胸の弾力。指の間で熱く硬くなった先端の質感。そして、仮想空間というフィルターを透過して伝わってきた、星野光莉の「震え」。
「……ふっ」
零の唇が、愉悦を含んで歪んだ。
昨夜はまだ、挨拶代わりの「接触」に過ぎない。境界線の向こう側にいる彼女に、自分の存在という「毒」をひと滴垂らしてみただけだ。
だが、そのわずかな干渉だけで、あの清楚を極めた聖女は無残に乱れた。
(……境界接触であれだけの同期率だ。ならば、今夜はもう少し踏み込んでも壊れはしないだろう)
零は椅子に深く背を預け、ゆっくりと目を閉じた。
胸の奥で、黒く粘り気のある欲望が鎌首をもたげる。
これはもはや、単なる好奇心ではない。
ルミナ・ステラという虚像を剥ぎ取り、その奥に潜む「星野光莉」という生身の女を、自分だけの色で塗り潰したいという、剥き出しの支配欲だった。
(何万人ものファンが『聖女』と崇めるその身体を、俺だけが泥棒のように弄り尽くす……)
その想像だけで、零の下腹部は重く熱い拍動を刻み始めた。
清楚であればあるほど、神聖であればあるほど、それを卑猥な形へ捻じ曲げる快感は増していく。
時刻は深夜2時。
画面の中で、銀髪の聖女が静かに、そして神々しく微笑んだ。
『こんばんは……今夜もお越しいただき、ありがとうございます。ルミナ・ステラです。ふふ、皆さんと一緒に、ゆっくり癒やしの時間にしましょうね』
その穏やかな声が、零にとっては開戦の合図だった。
彼は右手をゆっくりと握りしめ、魂を電子の海へと沈めていく。
「境界潜航(Boundary Dive)……発動」
視界が激しく歪み、次の瞬間、零の意識は再びあの「白銀の聖域」へと滑り込んだ。
目の前には、何も知らずに微笑む獲物の背中がある。
「さて……今夜は、昨夜よりも深く、教えてやろう」
零の冷たい笑い声が、誰にも聞こえない仮想空間に静かに響く。
零は、ルミナ・ステラの背後数センチという、吐息が届く距離に立っていた。
配信は始まって数分。画面の向こうのリスナーたちは、彼女が紡ぐ「癒やし」という名の幻想に酔いしれている。だが零の目には、そのアバターがまとうドレスの裾、その奥に隠された「獲物の肉体」しか見えていなかった。
(昨夜は胸までだった。……今夜は、もっと深い場所を暴いてやる)
零は迷わず右手を伸ばした。ターゲットは、ドレスの深いスリットから覗く、白く滑らかな太ももだ。
指先が触れた瞬間、ストッキングの繊細な繊維越しに、吸い付くような柔肌の弾力が伝わってくる。零はそのまま掌を密着させ、太ももの内側——最も柔らかく、女が隠したがる禁域へと、ゆっくりと這い上がらせる。
そして、抵抗を許さぬ力強さで、彼女の両膝を左右へ大きく割り開いた。
──星野光莉視点
(……っ!? な、に……っ?)
穏やかな微笑みを浮かべていた私の顔が、一瞬で強張った。
配信椅子に座っているはずの私の両足に、ありえない「巨大な熱源」が割り込んできたのだ。
目に見えるものは何もない。なのに、太ももの内側を、男の人の大きく無骨な掌が、じっくりと、粘りつくような愛撫で撫で上げている。
「ん……っ、あ……」
反射的に声が漏れそうになり、慌てて唇を噛みしめる。
だが、見えない侵食は止まらない。強引に膝を押し広げられ、ドレスの裾が捲り上げられていくような、絶望的な開放感。股間の付け根、最も敏感な場所に指先が近づくたびに、ゾクゾクとした不快なほど甘い痺れが下腹部を突き抜けていく。
(やだ……誰かが、私の脚を……! 開かされて、触られて……っ!)
必死に脚を閉じようと力を込めるが、まるで鉄の枷で固定されているかのように動かない。
それどころか、執拗に内腿を撫で回し、時折爪を立てて柔らかい肉をなぞられる感触に、私の身体は裏腹な反応を返し始めていた。
『……今夜の、メニューは……っ。あ、……少し、お耳の掃除から……ふぅ……』
セリフが、途切れる。
マイクが拾ったのは、癒やしの囁きではなく、熱に浮かされた女の「乱れ」だった。
コメント欄が、期待と困惑で急速に加速していく。
『ルミナ様、今なんか色っぽくなかった?』『なんかモジモジしてる? 可愛い』『今日のASMR、マジでやばい予感がする』
(見ないで……! お願い、誰も見ないで……!)
画面の中の私は、優雅な聖女の姿のまま。けれど、現実の私は脚を大きく開かされ、見えない指先に内腿の肉を弄ばれている。
その屈辱的な構図に、胸の奥が熱く、ドロドロと溶け始めていた。
──零視点に戻る
零は、ルミナの股間に顔を寄せるほどの距離で、その反応を余さず観察していた。
太ももを割り、その付け根を指で執拗に弄るたびに、アバターの身体がビクビクと微細に震え、同期した現実の光莉が腰を浮かせているのが手に取るようにわかる。
(……いい。昨夜よりも、さらに感度が上がっているな)
零の瞳に、暗く濁った興奮が宿る。
まだ、これは前戯に過ぎない。彼はさらなる蹂躙を求め、その指を「真実」の場所へと滑らせていった。