※この作品はR-18です。

境界線の向こう側 〜配信中の銀色の聖女を、俺だけが穢す〜   作:与次郎

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41:染み付いた痕跡、暗闇で嘲笑う蜘蛛

 

「今日も太陽が沈んでいく時間だね……。ルミナちゃんとひまりの夏の秘密、楽しんでもらえたかな……? ひまりの光が、みんなの心のどこかに、残ってくれたら……嬉しいな。明日も太陽が昇るように、また、会おうね……!」

 

 夏川みずきは、引き攣ったプロの笑顔をアバターの後ろに張り付かせ、最後の挨拶をやり遂げた。

 マウスを握るガタガタと震える指先で、ようやく「配信終了」のボタンをクリックした瞬間、彼女の全身から完全に骨が抜けた。

 

「はぁっ……! あ、はぁ、はぁ、はぁっ……!」

 

 画面が暗転した途端、みずきは配信椅子に深く崩れ落ち、獣のような荒い呼吸を漏らした。

 耳の奥では、まだ心臓の音がドラムのようにうるさく鳴り響いている。

 何より最悪なのは、自分の身体だった。衣服の下――胸の先端はジンジンと不快なほどに自己主張し、下腹部の奥は、未だにドクドクと不気味な脈動を繰り返している。椅子のクッションには、自分が強制的にイかされた証拠である大量の愛液が、じっとりと冷たいシミを作っていた。

 

(終わった……やっと、終わった……。でも、なんで……なんで私の身体、こんなに濡れて……っ)

 

 みずきは両手で顔を覆い、声を殺してボロボロと涙を流した。

 一人になった瞬間、得体の知れない恐怖と、世界中に自分の淫らな呼吸を晒してしまった羞恥心が、一気に彼女の心を圧潰した。

 その時、ヘッドセットのイヤホンから、静寂を切り裂くように光莉の声が響いた。

 

『ひまりちゃん、お疲れ様……。今日の配信、ものすごい同接数だったよ……。……でも、配信中、ずいぶんと様子が変だったね。服を何度も擦り合わせて、お口からはあんなに淫らな声を漏らして……。今、下の下着、どうなっちゃってるの……?』

 

 ゾクッ、とみずきの背筋に冷水が浴びせられた。

 光莉の声は優しかった。けれど、その声音は熱病に浮かされたように甘くとろけ、彼女自身もまた裏で激しく息を乱している気配が伝わってくる。その残酷な問いかけは、みずきが最も隠したかった「肉体の恥部」を、正確に指先でなぞるようだった。

 

「……っ、あ……う、うん……。なんでも、ない……。ちょっと、体調が……」

 

 声が掠れて、まともな言葉にならない。

 そんなみずきの絶望を味わうように、光莉のねっとりとした、狂気を孕んだ吐息が鼓膜を揺らす。

 

『なんでもないわけないよね……? あんなに喘いで、何度も絶頂を堪えるみたいに腰を跳ね上げてたじゃない……。ねえ、ひまりちゃん。本当のことを詳しく話してくれてもいいんだよ? 私は、あなたの『一番の親友』なんだから……ふふ』

 

 親友。その美しい言葉が、今の光莉の口から出ると、まるで逃げられない底なし沼へ誘う呪文のようにしか聞こえなかった。みずきは確信した。配信中のあの悍ましい愛撫は、間違いなく光莉が、あるいは光莉の後ろにいる「何か」が仕掛けた罠なのだと。

 

「……今は……ちょっと、本当に疲れてるから……っ。ごめん、また、後で話すね……っ!」

 

 みずきは逃げるように通話終了のボタンを叩きつけた。

 ヘッドセットを剥ぎ取り、デスクの上に投げ捨てる。

 静まり返った部屋の中で、みずきは湿った下着の不快感に耐えながら、膝を抱えて激しく震えていた。

 大切な親友を救おうと飛び込んだはずの配信。しかし、そこで待っていたのは、親友の裏切りと、自分の肉体を玩具のように弄ばれた現実だけだった。

 

「光莉ちゃん……嘘、だよね……? なんで、どうして……っ。怖い……怖いよぉ……っ」

 

 太陽の天使は、暗い部屋の片隅で、自分の身体に刻まれた淫らな痕跡に怯えながら、ただ孤独に泣き崩れることしかできなかった。

 

 

 ――だが、通話が切れたその瞬間。

 別の場所にある、薄暗い密室のモニターの前で、一人の男が狂気的な笑声をあげていた。

 

「ハハハハ! 素晴らしい……最高だ、夏川みずき! 画面の前で必死にあがきながら、その実、俺の『境界潜航』の指先に蹂躙され、世界中に極上の喘ぎ声を垂れ流す。これ以上ないほどの調教の初舞台だな!」

 

 天峰零は、手元のグラスのアルコールを喉に流し込み、モニターに映るみずきの配信アーカイブ――彼女が絶頂した瞬間の歪んだ表情を、何度も巻き戻して再生した。

 

「光莉の誘導も見事だった。親友の手によって、じわじわと追い詰められる恐怖。……精神の絶望は、肉体の感度を何倍にも跳ね上げる。直接対面での調教の時には、お前がどれだけ極上のメスとして鳴くか……今から本当に楽しみだ」

 

 暗闇の中で、支配者の瞳がドロリと邪悪に輝く。

 すでに蜘蛛の巣は完全に囚人を絡め取っていた。みずきがどれだけ抗おうとも、次なるステージで彼女の身も心も、完璧に零の奴隷へと堕とされる未来は、もう確定しているのだった。

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