境界線の向こう側 〜配信中の銀色の聖女を、俺だけが穢す〜 作:与次郎
夏川みずきは、配信椅子に深く沈み込んだまま、指一本動かすことができずにいた。
自室の照明は落とされたままで、ただ電源を切り忘れた大型モニターの青白い光だけが、涙と微かな唾液の痕跡で汚れきった彼女の顔を冷酷に照らし出している。ヘッドセットを外した耳の奥には、まだ配信終了時のBGMと、数万人のリスナーが狂喜乱舞していたコメントの残響が、幻聴のようにジクジクと張り付いていた。
(……終わった……終わったんだ、本当に……)
みずきは両手で顔を覆い、ゆっくりと細い息を吐き出した。だが、その唇は小刻みに、哀れなほど震えている。
終わったはずなのに、身体の芯が、まだ悍ましいほどに熱く、重く、疼き続けているのだ。
特に、見えない掌で容赦なく鷲掴みにされた胸の先端は、衣服の生地が微かに擦れるだけで、脳髄が痺れるような快感を返してくる。そして何より、数万人の前で強制的に絶頂を迎えさせられた下腹部の最奥は、未だに淫らな脈動を刻み、収縮を止めようとしなかった。
みずきは恐怖に身を震わせながら、そっと自分の太ももに手をやった。
デニムのショートパンツの隙間から覗く内ももの肌は、冷めやらぬ愛液でじっとりと濡れそぼり、配信椅子のレザーシートには、湿った大きなシミが広がっている。
気のせいでも、疲れのせいでもない。あの配信中、間違いなく『実体を持たない何かの指』が、自分の服をすり抜けて、秘部を直接、嬲り回していたのだ。
震える指でマウスを握り、みずきは恐る恐る、今しがた終了したばかりの配信アーカイブを再生した。
画面の中で笑っている、陽ノ川ひまりとルミナ・ステラ。
一見すれば、いつも通りの仲睦まじいVTuberのコラボ配信だ。しかし、中盤以降――胸を爪弾かれ、秘部を押し潰されていた時間帯の自分のアバターは、明らかに異常だった。時折、言葉の途中でビクッと肩を硬らせ、吐息を漏らし、瞳をトロンと潤ませて腰を小さく揺らしている。
『ひまりちゃん声やばいww』『今日のコラボまじで神回』
画面の横で高速に流れていくリスナーたちのコメントの数々。
みずきは胸を鋭利な刃物で抉られるような屈辱に、ポロボロと涙をこぼした。みんなを元気にしたいと願って守ってきた「陽ノ川ひまり」の姿が、画面の裏で、見えない何かに良いように弄ばれていたという現実。その事実が、彼女のプライドを無残に叩き割っていた。
(光莉ちゃん……。光莉ちゃんは本当に、何も知らなかったの……?)
その名前を脳裏に浮かべた瞬間、みずきの背筋に冷たい戦慄が走った。
配信中、自分が快感で狂いそうになって助けを求めた時、光莉は心配するような声で、けれど確実に自分の退路を断つように、『もっと可愛い声、たくさん聞かせて?』と囁いた。あのタイミング、あのセリフの妖艶な響き――。
いつも自分を優しく包み込んでくれていた親友の笑顔の裏に、底の知れない真っ黒な潜んでいる「何か」、みずきは自分の身体の火照り以上に、激しい恐怖に襲われるのだった。
------
配信終了から、すでに1時間が経過していた。
夏川みずきはバスルームのタイルに手をつき、溢れるシャワーの熱い湯に身を委ねていたが、水圧が肌を叩くたびに、あの見えない指先が肉を捏ね回す生々しい感覚がフラッシュバックし、悲鳴を上げてのけぞってしまう。結局、身体をまともに洗うことすらできず、着替えただけのパジャマ姿でベッドに這い上がり、暗い天井を凝視していた。
そのとき、枕元でスマートフォンが短く震えた。
画面に浮かび上がったのは、最も恐れ、そして最も待ち望んでいた名前だった。
【光莉】
みずきちゃん、まだ起きてる? 配信お疲れ様。
ちょっと様子が気になって。もし起きていたら、お話しできるかな?
みずきは心臓をひっぱたかれたように跳ね上げ、端末を強く握りしめた。白くなる指先が小刻みに震える。不信感で引き裂かれそうな胸の奥で、「光莉ちゃんだけは違うと言ってほしい」という願いが勝ち、弾かれたように通話ボタンをタップした。
「……もしもし、光莉ちゃん……っ」
『あ、みずきちゃん。よかった、繋がって。……本当に、大丈夫だった……?』
受話口から響く声は、いつものように穏やかだった。けれど、その響きの底には、昼間のカラオケボックスで聞いた時と同じ、どこか湿り気を帯びた粘り気のある熱がドロリと混ざり込んでいる。
「うん……なんとか、大丈夫……だよ。光莉ちゃんもお疲れ様……」
『本当に……? だって配信中、ひまりちゃん、何度も言葉を詰まらせて、すごく苦しそうにしていたじゃない。腰をガクガク震わせて……。ねえ、みずきちゃん。私には隠さなくていいんだよ?』
「え……っ、それは、その……ただの緊張、で……っ」
『嘘。緊張で可愛い口から、あんな掠れた声が出たりしないわ。私たちの仲なんだから……何があったのか、全部、言ってごらん?』
親身に甘く諭すような揺さぶりが、限界を迎えていたみずきの防波堤を容赦なく叩き割った。一人で抱えきれない恐怖が、堰を切ったように涙となって溢れ出す。
「……光莉ちゃん、私、私ね……っ! 本当に変なことが起きてたの、部屋には誰もいないのに……っ!」
『うん……変なことって、なぁに……?』
「いきなり、衣服の上からじゃなくて、直接……胸をガシッて掴まれて……っ。すごく強い力で、揉まれて……っ、あんなの、気のせいじゃない……っ!」
『……へぇ。胸を……そんな風に、乱暴に揉まれちゃったんだ……。それで、他には? 胸だけじゃ、あんなに何度も腰を跳ね上げたりしないよね?』
受話口の向こうで、光莉が小さく、湿った吐息を漏らす気配が伝わってくる。みずきはその不穏な熱に気づく余裕もないまま、パニックのままに恥部を搾り取られていく。
「下のほうまで……っ、下着の中に、指が入ってきて……っ。一番ダメなところを、強く擦られて……っ。私、みんなの前なのに……我慢できなくて、最後、頭が真っ白になって、イっちゃったの……っ! 怖かった、怖かったよぉ、光莉ちゃん……っ!!」
数万人の前で公開処刑のように絶頂させられた絶望をすべて吐き出し、みずきはベッドに顔を埋めて激しく泣きじゃくった。
しかし、受話口から返ってきた親友の声は、優しさの皮を被った、おぞましいほどの「淫らな愉悦」に完全に支配されていた。
『そっか……怖かったね、みずきちゃん。でも、そんなに弄ばれて、数万人のリスナーの前で、堪えきれずに絶頂しちゃうなんて……ふふ、みずきちゃんの身体、本当はすっごく感じやすくて、エッチな素質があるんだね……』
「え……? 光莉、ちゃん……? 今、なんて……っ」
みずきの涙が、ピタリと止まった。耳を疑うような言葉。受話口から響く光莉の声は、もはや心配する親友のものではない。完全に獲物を罠にハメ、その絶望を内側から楽しんでいる、冷酷な調教助手のそれだった。
『私、みずきちゃんの力になりたいの。だから、これからもその身体がどんな風に感じたか、私にぜーんぶ、詳しく教えてね? 大丈、夫……私はいつだって、みずきちゃんの『味方』であり、その身体を導いてあげる先輩なんだから……ふふ、あははは……っ』
甘くとろけるような狂気を孕んだ光莉の笑い声が、みずきの脳髄を恐怖で凍りつかせた。
通話が切れたあとも、スマートフォンを握りしめるみずきの指先はガタガタと震え続けていた。信じていた唯一の親友の底知れぬ変貌。みずきは、自分がすでに逃げることのできない巨大な蜘蛛の巣の深部へと、自ら絡め取られてしまったことを、本能的に理解し始めるのだった。
------
天峰零は、外界の光を完全に遮断した薄暗いコントロールルームで、豪奢なレザーシートに深く身体を預けていた。
彼の正面に並ぶ大型モニターには、数万人の前で公開処刑を遂げた二人の少女の「その後」が、克明に映し出されている。
画面の1つには、通話を終えてベッドの上で膝を抱え、蹂躙された太ももに顔を埋めて泣き濡れている夏川みずき。そしてもう1つの画面には、自室のベッドでスマートフォンを握りしめ、胸を激しく上下させている星野光莉の姿。
「ククク……素晴らしい。期待以上の壊れっぷりだ。実にいい表情をする」
零の唇の端が、サディスティックな愉悦に歪んだ。
彼はグラスの琥珀色の液体を一口含むと、おもむろに『境界潜航』の能力をさらに深く発動させ、光莉の脳髄へと直接、支配者の冷徹な低音を叩き込んだ。それと同時に、遥か遠隔から、光莉の衣服の奥の最も敏感な割れ目へと、実体のない「見えない指先」を容赦なく突き立てる。
「あ、うぁッ……!? れ、零、さん……っ、はぁ、はぁっ……!」
光莉の身体がベッドの上でビクンと艶っぽく跳ね上がり、美しい銀髪がシーツに乱れた。
みずきをハメた「ご褒美」と言わんばかりに、零の見えない愛撫が光莉の秘部を容赦なく抉り、一瞬にして彼女の思考を快楽の泥沼へと引きずり込んでいく。衣服の布地をすり抜け、直接粘膜をグニグニと蹂躙する実体のない指先の感触に、光莉は太ももを震わせ、呼吸を忘れた口元から伝う湿り気をシーツに落として身悶えした。
「見事な誘導だったぞ、光莉。お前が優しく寄り添うフリをして、汚された感触を自白させたおかげで、みずきの心には二度と修復できない亀裂が入った」
「はい……っ、はい、零さん……っ! ああんっ、みずきちゃん……可哀想に、私の言葉に縋って……っ、誰にも言えない恥ずかしい告白を、全部、自分で口にしちゃいました……ひゃぅっ! ぁ、そこ、強い、です、零さ……んっ!」
みずきへの狂おしいほどの罪悪感。しかし、それを最高の燃料にするように、零の遠隔愛撫は光莉の肉体からドロドロとした愛液を溢れさせ、彼女の顔をさらに淫らに、醜く歪ませていく。
「まだ完全に壊れてはいないからこそ、ここからが本番だ。光莉、お前は今後も徹底的に『優しい親友』を演じ続けろ。みずきの不安をすべて吸い出し、『私だけが味方だ』と思わせながら、ゆっくりとあいつの精神を削り取るんだ」
「はい……すべて、零さんの、仰る通りに……っ。みずきちゃんの心を……私と同じ、零さんのおもちゃに、してみせますから……。だから、もっと、もっと……私を、激しく、イかせて、おねが、い……っ!」
涙を流しながら、支配者の遠隔レイプに腰を激しく振り、絶対服従の快楽に狂う光莉。
零はモニター越しにその従属の美をじっくりと味わい、次なる「調教」の舞台へ向けて、囚われの天使・みずきをハメるための罠を、さらに冷酷に組み上げていくのだった。