貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話 作:ぽぶきち
「そこまでにしませんか。覗き見に異能を用いるのは、健全とはいえません」
そこにいたのは、包帯を巻いた女性。
警護官のスーツ。
見たことがある、確か、
「高柳君の、警護官」
「覚えておいででしたか」
「いま、山田さんと高柳君はいっしょにいるの?」
「……私からは、なんとも」
体育教師と同じ。
それは、肯定と同義だ。
「何をするおつもりですか」
「少し彼に聞きたいことがあるんだ」
「逢瀬を邪魔するというのですか」
「うん。バカなおせっかいで終わるなら、それが一番いい」
ずっと地面をみつめていた彼女の瞳が、初めて僕たちを映す。
「どうしても?」
「うん」
「わかりました。では、武力行使で止めるしかありません」
彼女は、すっと息を吸って、唱えた。
「
『
『
『さらしながるる』
」
僕は
それでも、何かが変わったことが感じ取れた。
圧力が増したような、機械をいじってなにか致命的なボタンを押してしまったときのような。
僕は、彼女に近寄ろうとした。
僕が触れれば、
しかし、その前に呉井さんに肩を掴まれる。
「呉井さん? どうして」
「ぶつかるところでした。前をご覧ください」
そう言われて、前方を確認する。
特になにかおかしいところはない。普通だ、いや、違う、それより手前だ。
透明ななにかがある。
「ガラス?」
「おそらくそうです」
呉井さんが氷の剣を顕現させ、ガラスに向かって振るう。
しかし、ガラスはびくともせず、氷の剣が砕けた。
周囲を見渡すと、視認しづらいが、うっすらとガラスの壁が四方にめぐらされている。
僕たちは、おそらくあの高柳君の警護官の異能によって、ガラスの立方体のなかに閉じ込められたのだ。
透過率の高いガラスの向こう側で、無表情な包帯の警護官が地面を見つめている。
呉井さんが彼女に語りかけた。
「なぜあの男性の言うことを聞くのですか? あの男性は
「…………だとしても、私は高柳様の警護官です」
呉井さんの声色は、説得ではなく、確認のようだった。
呉井さんを見つめる。
────打開策、あるんだよね?
そういう目線だ。
────あるには、あります。
彼女のアイコンタクトに、僕は安心した。
呉井さんがそういうのなら、大丈夫だ。
────僕を、向こうに連れて行ってくれる?
彼女は、もう一度氷の剣を構えた。
紫の氷剣を。
「何度やっても……」
包帯の警護官が呟く。
しかし、
キキン、と音が鳴った。
ガラスの壁が割れた。
「川良!」
「はいっ!」
僕の背に、メグの放った熱風が乗る。
そのまま推進力で押し出された。
割れたガラスの隙間から押し出される。
僕の進行方向には氷の道ができていた。
それを滑って、曲がる。
E棟、4階の踊り場に向かって。
「ッ」
包帯の警護官が僕を再度閉じ込めようとするが、それを呉井さんに阻まれる。
ガラスで自分を防護したようだ。
どうやら、一度に複数のガラスの立方体は作れないらしい。
「本気で、斬っていなかったのかッ」
彼女の焦りと悔しさの滲んだ声を聞きながら、
僕は4階の踊り場から廊下に転がり込んだ。
ごろごろと床を転がる。
多分だけど、後で呉井さんがめちゃくちゃ落ち込むと思う。
少なからず怪我を負わせてしまったと自罰的になるのではないだろうか。
僕がいいと言ったのだから気にしないでほしいけど、呉井さんは気にするだろう。
メグの炎を背中に浴びたはずだが、まったく痛くはない。
おそらく呉井さんが炎の熱を直接徴収して普通の風に変えたのだと思う。
僕はいま4階にいるが、ここに山田さんと高柳君がいるとは限らない。
だがなんとなく、低い階にはいないんじゃないかという考えがあった。
だから、4階に誰もいなければ上の階へ向かおうと思う。
さらにいえば、僕は見ていなかったけど、呉井さんはあの警護官がどこから降りてきたのか見ていたんじゃないだろうか。
動体視力が良いから、十分にあり得る話だ。
バコン。
音が聞こえた。
右側の、少し前の部屋だ。
ドアは他のものと変わらない。
強固だが、そこまでカスタムされているわけではなく、ドアノブを握った感じだと容易に開く。
一応蝶番を見たけど内開き。
蹴破ろうと思ったが、少しして気づく。
もしかして、鍵をかけていない?
♢
山田アジサには妹がいる。
双子で生まれてきて、取り上げるのが遅かったほうだ。
山田ミコ、という名前の妹だ。
妹が
あまりにも早熟だった。
『この時期から提供者を探すのは現実的ではない。薬剤を用いて1年後まで待つべきだ』
医者はそう言った。
無知な自分よりも、専門医のほうが症状について詳しいのだろうと、山田アジサは納得したふりをした。
そして、妹、山田ミコの性格を矯正しなければと奮起した。
アジサは知らなかったことだが、
妹のミコは、いじめられていた。
中学校1年の頃から、多感で好奇心旺盛な同級生の嗜虐の的とされていた。
アジサが気づかぬほど陰でひっそりと行われていたそれ。
その反動で、誰も信じきれなくなり、他者につっけんどんな態度をとって自らの心を防衛するようになった。
ミコは口が悪い。
このままでは、学園に入学したあとも男子に見初められる可能性は低い。
そうならないよう、今のうちから口先だけでも直しておくべきだと考えたのだ。
だが、むしろミコの態度は悪化した。
なぜなら、周囲の環境が変わったから。
かつてこの国に甚大な被害をもたらした存在であり、男性を独占するとされ、なおかつ人口増加に寄与しない。
普通なら中学校卒業間近に
ミコに、逃げる道はなかった。
一度止んでいたいじめが再開した。
最初は様子見だった。
だが、一度得たトラウマというのはなかなか消えないものだ。
ミコは気が強いように振る舞っているが、いざ彼女たちに囲まれると足がすくんで何もできなくなる。
それがバレるのにそう時間はかからなかった。
リンチなどは日常茶飯事だった。
グループチャットから退室させ、学級の追加事項を伝えず、忘れ物をした彼女をクラス中が嘲笑う。
髪を切る。
服を盗む。
給食に虫や薬剤を入れる。
学内での自慰行為を強要し、本人のケータイでその動画を撮って、それを学内にいた唯一の男子の連絡先に送る。
最後は、男子に対する嫌がらせとして教員一同によってミコが激しく罰せられ、謹慎と反省文の提出を要求された。
アジサがミコへのいじめに気づいたのは、このときだった。ミコがそういうことをする人間ではないと誰よりも知っていたから。
教員たちの予想に反して、男子はむしろミコという存在に大きな興味を見せた。
『
これにはミコも、そしてアジサも驚いた。
ミコは、男子の自宅に招かれた。
もしこの良縁が続けば、学園に入ってから血眼で源液提供者を探す必要もなくなるかも知れないと、アジサは期待した。
そしてそれはただの期待に終わった。
男子はミコに興味があった。
厳密に言えば、
『体が丈夫らしいね』
どこか期待の眼差しをするミコを、男子は地下室へと連れて行った。
そしておもむろに彼女の四肢を拘束し、男子は実験と称してミコに様々な痛みを与えた。
『切り傷ができないわけでもないのか』
『痛みは人並みにあるのか。そうじゃないとやりがいがないよね』
『粘膜は強化されているわけじゃないみたいだ。これはあんまり知られていないのかな』
『すごい、みてみて。本当に男が触ると弱くなるんだ。さっきよりナイフが深く入る』
『下剤とかは効きづらいけど、さすがに医療用だと効果があるんだね』
机に数々の器具を陳列し、その多様さが地獄が終わらないことを意味していた。
ミコは舌を噛んで死のうとした、だが死ねなかった。
アジサは最初こそ不思議に思うだけだった。
一晩経っても妹が帰ってこない。
連絡はないが、もしかすると男子から寵愛を賜っているのかも知れない。そんなことまで考えていた。
二日帰って来ず、不安で教員を訪ねた。
三日帰って来ず、アジサは男性宅に突貫した。
『ちょうどつまんなくなってきたから返すよ。もう悲鳴もあげなくなったし』
男性警護官が、ボロボロになった妹を渡してきた。
怒り心頭で掴みかかろうとするのを、警護官が止める。
『君まで被害者にするわけには行かない、君がいなくなったらこの子をどうやって助ける』
耳元で警護官からそう囁かれた。
悔しさと自らの浅はかさに涙がこぼれる。
いくら先生に事の次第を訴えても、首を横に振るだけだった。
加害者が男性なのだとしたらなおさら、被害届が受理されることはないだろう。
この世界は男性によって回っている。
男性が貴重資源だから、というだけの理由ではない。
多くの人々は知る由もないが、特権貴族院という男性で構成された組織によってヒノモトという国家は運営されている。
立法草案の作成権限を、特権階級の男性が握っているのだ。
そんな世界で、被差別階級の
ミコは、ほとんど喋らなくなった。
アジサが無理に話しかければ、「うるさい」「でていって」と返すだけ。
ただ部屋に一人でいるときはいつも泣いているのを、アジサは知っている。
ある日から、ミコは完全に喋らなくなり、泣かなくなった。
『どうやら、
かつて1年待てばいいと告げた医者は、あっけらかんとした顔でそう言った。
そしてその上から絶望が重なった。
アジサは倒れた。
43℃の熱。
肉体が変容し、アジサも
アジサは異能に目覚めた。
それは『異能を拒絶する異能』。
高い身体能力と対
学園に入学できたのは、ある意味で幸運だと自分に言い聞かせた。
『ここで、ミコの提供者をみつける』
そう決意した。
そう決意しないと、正気でいられなかったのかもしれない。
学園に入ってわかったことは二つ。
一つ目は、
「自分はかなり強い」ということ。
すくなくとも自分と同じくらいの膂力を持つのは、新入生代表の蓮顕寺カナウくらいのものだ。
そして二つ目は、
「自分ももうすぐ
妹と同じ、能力が高いゆえに、傾眠性が強い。
最後の源液提供から
自分や妹の場合は、おそらく二ヶ月。
睡眠負債薬も最近は効きが悪くなってきた。
アジサはひどく焦っていた。
どこかで男性との接点を持たなければ、
戦闘訓練の時間、高い傾眠性から見学をしていたアジサは、ぼんやりと思った。
接点があれば、自分の強さを売り込めるはずだ。
そういう確信があった。
だから、この戦闘訓練で強そうな女子を見つけたらとりあえず喧嘩を売ろうなどと突拍子もないことを考えていた。
ちらりと校舎のほうを見ると、男子の一人が運動場を見ている。
1-10の男子だ。
遠くから、クラスでもっとも戦闘技能に優れるのは誰か、観察している。
「隣、いいかな?」
そう問うてきたのは、1-12の男子だった。
名前を兼高ユウキ、というらしい。
欲が出た。
1-10の男子よりも、この男子が提供者になってくれたなら、どれほどいいことかと。
自分のクラスの男子は横暴だ。それが、昔ミコを痛めつけたあの男子と重なっていた。
アジサは、兼高ユウキの警護官に喧嘩を売った。
そして、あっけなく敗北したのだ。
補修を受けさせてきた体育教師によると、その警護官はかつてヒノモトの戦場を変え、
『氷鬼』というのは、確か資料集に載っているのを見たことがあった。
だが、もっと悪鬼のような表情だったはずだ。だから気づけなかった。
『そいつだけじゃない。他二人も異常だ。黒髪のほうも氷鬼に準ずる程度には強い、だが怖いのは緑髪のほうだ。どちらも名前は聞いたことがない。生ける伝説に、異能が割れていない正体不明の戦略級
世界征服でもするつもりなのかね、と体育教師は笑っていた。
強いだけでは、ダメなのだ。
アジサは、氷鬼に勝てるビジョンが浮かばなかった。
能力で劣っているからではなかった。
何か、在り方の差があるような気がした。
『どうすれば、いいのよ』
1-10の男子に戦闘訓練で能力を示すのには失敗した。
むしろ、その男子は1-12の強者に興味を持っているようだった。
兼高ユウキが自分に着せたジャージを、ぎゅっと握った。
男子から初めて受けた優しさ。
もしかしたら、という気持ちになる。
兼高ユウキは、他の男性と違うのかも知れない。
そんな気分で、翌日、彼が学生玄関に来るのを待った。
ジャージを返すというのは名目だった。
ただ見たかったのは、どういう人となりをしているのか。今一度はっきりと。
こちらの会話に、まるで十年来の幼馴染のような親しみで返してくる。
他の男子のような蔑む視線を感じない。
むしろ、少しえっちな視線を感じる気がするが、それは気のせいだろう。だとしても、そうだったらと少し妄想してしまう。昨日ジャージを嗅ぎながら彼の名前を叫んで深夜まで自分を慰めていたのは、そのせいで洗濯が間に合わなくなりそうだったのは、誰にも秘密だ。
話の流れで、白髪の警護官が自分に詰め寄ってきた。
自らを打ちのめした氷鬼。
その髪からは、確かに兼高ユウキと同じ匂いがする。
だが、ふと首筋に目線が向かって、動揺した。
その首には、傷があった。
おそらく、昨日つけられたばかりのもの。
昨日といえば、自分と彼女が戦ったことが記憶に新しい。
彼女は伝説の
そして、自分は惨敗したが、彼女の斬撃は受けなかった。
もし、それが、誤算だったとしたら?
ユウキは彼女の失態と、それによる自分の囲っている
『あの、あなたは……それでいいの?』
『それでいい、とはなんでしょうか?』
『……いや、わからないなら、いいわ…………』
勘違いしていた、とアジサは思った。
男性はそういう生き物なのだ。
女性はそういう生き物なのだ。
童話のように、仲睦まじく暮らせることなど有りえない。
それがうまくいくのは、女性が妥協したときだけ。
自分なら良い。
体の見える部位であろうがなかろうが、蹴られても殴られても、それが愛する人であれば許せる。
例え、夜に骨を折られても、朝に兼高ユウキの声と顔で話しかけてくれるのなら、むしろ望むところだった。
でも妹が殴られているのを見るのは嫌だ。
そう思ってしまった。
妹はもう十分に傷ついた。
これ以上傷つくのはみたくない。
だが、時間もない。
アジサは、目標を変えた。
1-10のクラスメイトの男子でもない。
ジャージをかけてくれた王子様のような男子でもない。
1-11の男子。
高柳オキト。
源液提供の代わりに、人命以外は保証しない"遊び"に付き合うことを条件とする少年。
『妹を救ってくれる?』
『いいぜ。でも相応の実験には付き合ってもらう』
高柳の提供室。
様々な拷問器具が置かれている。
古典的なアイアンメイデンやファラリスの雄牛まであるそれを見て、少し身が震えた。
でも、この方が良いのだ。
ない希望を抱くよりは、ある現実を受け入れたほうがずっと楽だ。
妹の声がこだまする。
自分のことが分かるわけがないと、放っておいてほしいと言ってきたのを覚えている。
そうだ。自分はいじめられてもいないし、拷問じみた実験も受けていない。
だから、これが終わったら、少しは寄り添ってあげられるだろうか。
『服を脱げ』
アジサは、服を脱ぎ払う。
体が少し震えているのは、寒さだけのせいではないだろう。
『相変わらず、女ってのは気持ち悪い体しているな。蟻みてぇだ』
高柳は、立てかけてある一本の金属バットを手に取る。
そして、アジサに向かって大きく振りかぶった。
────ミコ。お姉ちゃん、証明するから。
今も眠ったままの妹に祈る彼女の頭を、バットが強く打ち据えた。