※この作品はR-18です。

貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話   作:ぽぶきち

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第十二話 救出③

 気絶していた山田アジサは意識を取り戻した。

 

 何時間が経った?

 

 数時間?

 それとも数分?

 

 頭から垂れた血で、視界が狭い。

 

 右目は完全に機能を失っており、かろうじて見える左目も、映したくない光景ばかり映している。

 

 現在のアジサは天井から吊るされたロープに全裸のまま腕を縛り上げられており、身動きが取れない。

 

(知らなかった。こんなに、痛いだなんて)

 

 高柳は、"実験" における知識が豊富だった。

 これまでいったい何人の眠り戦姫(ソメイユ)をダメにしてきたのだろうか。

 

「俺の専属警護官はな、おもしれぇやつなんだ。何個も異能が使える。最近は『犬に化ける異能』を使わせて躾けるのが趣味でな。ずっと犬にさせたままだと、人間に戻っても舌をしまう癖が抜けなくて無様なんだよ。さすがに尊厳があんのか、犬になってもペット用トイレは使おうとしなくてだな。人間に戻ったときに腹を殴ったらおもしれぇくらい失禁しやがってさ。ま、そろそろ飽きてきたから変えようと思ってるんだが」

 

 しゃっ、しゃっと刃物を研ぐ音が聞こえる。

 

「おかしくねぇか? 俺たちは男性なのに、なんでこんなに不自由なんだ? 知らされる情報にゃ制限がかけられてるし、貢献値が低けりゃこんな辺鄙な学校に送られる。まっ、ここに来たのは俺の意思だがな」

 

 なんらかの薬剤を刃物に塗布している。

 その内容物がなんなのか、アジサは考えるのをやめていた。

 

 この男は嗜虐心だけで動いているわけではない。

 アジサはぼんやりとした意識と明瞭な痛覚の狭間でそう感じていた。

 

 実際、高柳が眠り戦姫(ソメイユ)で "実験" を行うのは、劣等感の裏返しだ。

 選ばれた人間のはずの自分が自由を得られていない。

 その矛盾から来る苛立ちを、女性をいたぶり優位に立つことで解消していた。

 

「うーん、遊びすぎたか? 全然反応しねぇな」

 

 高柳は、スイッチを押すような手軽さでアジサの太ももをドスドスと数回ナイフで刺した。

 悩むように唸りながら傷口を捻じる。

 叫ぼうにも、叫びすぎて喉が壊れていた。

 

 アジサの気力を保たせているのは、

 

(ミコは、もっと、辛かった)

 

 それだけだった。

 実際のところ、アジサが受けている傷は、ミコのそれとは比べようもない。

 高柳はそれほどまでに、人体の遊び方を熟知していた。

 

「ぅ……ぁ…………」

「お? どうした? なんか言えよ」

「ゆ、ュゥキぃ…………」

 

 ぽろぽろと左目だけから涙をこぼして、アジサはなぜか、あの男子の名前を呼んだ。

 敗北を喫した無様な自分に服をかけてくれた男子。

 自分と面と向かって話してくれた男子。

 自分が拒絶した男子。

 

 聞き取りづらいその声を反芻したあと、高柳は笑った。

 

「ははははははは!! あのおせっかいが恋しいのか? 馬鹿だな、あいつは今日源液提供だよ。どうせ眠りこけて三日は学校に来ねぇ! 前に邪魔されたからな! 俺は学習するんだよ」

「…………」

「本当にあんなやつが好きなのか? どうせ着床値も低いぜ、俺と違ってな。俺はC+だ。着床値上位20%。ほんとうはこの学園なんかでおさまる男じゃねぇんだよ。良かったな、妹は助かるぞ」

 

 最後の言葉でアジサの胸裡に不安が去来した。

 本当に、妹は助かるのだろうか。

 

 この男に提供を受けて、そしてこの男に目をつけられて、それは助かったと言えるのか?

 

「何だその顔。ああ、妹か。まぁお前が面白くなかったら、手を出すかもな」

「ゃ、やめ、て……」

「まだ喋れるじゃねぇかよ。じゃあ交渉といこうぜ」

 

 高柳は、何らかの機械を取り出した。

 それには電極が繋がれており、一本のグリップ付きの鉄の棒が収められている。

 

「これは俺の警護官の武具(サブウェポン)でな。面白そうだったから没収したんだ。あいつは俺のことを守れなくなるとか虚言を吐いていたが、顔を焼いてやったら大人しくなった」

 

 武具(サブウェポン)が引き抜かれる。

 ただの円柱の鉄の棒のように見えるが、高柳が薬剤を垂らすと、じゅ、と薬剤が蒸発した。

 

「さて、眠り戦姫(ソメイユ)が粘膜という点では防御力が一般人と変わらないってのは知ってるよな? 知ってるってか、お前の右目でもう体感しただろ?」

「………」

「妹、大事だよな?」

「……ぅ」

 

 電極で熱されているその武具(サブウェポン)が目の前に翳される。

 それがおもむろに、アジサを縛っている、天井から吊るされたロープに当てられた。

 

 しばしのあと、ロープが焼き切れ、アジサが地面に落ちる。

 

「これを、お前の股のなかに自分で入れろ」

「…………」

「そうしたら、提供もするし、お前の妹には手を出さない」

 

 カララと、目の前に武具(サブウェポン)が転がって、アジサの左目の寸前で止まった。

 

 目を上げると、悪辣な笑みをした男が立っている。

 抵抗することはできない。

 すでに体に力が入らないし、力が残っていたとしても、触れた瞬間に騎士性で自分は一般的な女性の身体能力になる。

 

 そしてなにより、ここでの自分の行動に妹の命がかかっている。

 

「ぅ、う」

 

 右腕が信じられないほど重い。

 身体能力の減退だけではない、筋肉の各所が切られ、機能しなくなっているのだ。

 

 武具(サブウェポン)を握る。

 ゆっくりとした動きで、自分の性器にその先端を向けた。

 

「ふっ、ふっ、」

 

 生存本能がやめるように全霊で指示する。

 玉のような汗が流れる。

 

 恐怖でぶるぶると震える武具(サブウェポン)の先端が、陰唇に触れた。

 

 じゅ。

 

「ぎぃ、ぐぅ……」

 

 信じられないほどの痛みが全身を駆ける。

 すでに麻痺していたと思っていた痛覚のすべてが励起し、いまやろうとしている行為を止めるように脳へ訴えかけていた。

 

「が…………」

 

 力を込める、そして、性器の奥へと、武具(サブウェポン)を挿入しようとして、

 

 武具(サブウェポン)を落とした。

 

 からん、と提供室の地面に武具(サブウェポン)が転がる。

 

「あーあ、無理だったか」

「ぁ、ぁ……」

「残念だったな。提供、できねぇわ」

「……ま、まって、まって、ください。おねがいします」

 

 アジサは高柳の足にすがりついた。

 蹴飛ばされるかと思ったが、高柳は少し気分を良くしたようだった。

 自分が圧倒的優位にいることに悦楽を覚えているのだ。

 

「じゃあ、もう一回チャンスをやるよ。今度は口だ。呑み込め」

 

 すぐさまアジサは武具(サブウェポン)を拾い直す。

 そのまま、今度は自分の口に丸い先端を向ける。

 立体視を失った視界が、円として棒を捉える。

 

「っ…………」

 

 ずいっ、と自分に近づける。

 

 本能的恐怖が駆け巡るのを無理やり押し込んだ。

 自分はもう死んだのだ、と思い込んだ。

 

 そして、口の中に、一気呵成に武具(サブウェポン)を入れ込んだ。

 

 

 

 

 

 ──────はずだった。

 

「……ぇ?」

 

 最初に感じたのは、温かい感触。

 唇に触れる、人肌の温もり。

 

 自らの口元に手の甲が添えられていた。

 

 アジサの唇は、その手の甲にキスするように触れている。

 

 その手は横から伸びていた。

 右横にいる誰かが、アジサの口内に侵入しようとした武具(サブウェポン)を手のひらで止めており、皮膚が焼ける音が聞こえる。

 

 右目が潰れたアジサは、右側にいるその人物をうまく捉えられなかった。

 

「遅くなった」

 

 アジサが聞いたことのある声で、

 

 いつもより少し低い声で、兼高ユウキはそう言った。

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 納得した。

 

 扉に鍵をかけていなかったのは、あまりの拷問の末に眠り戦姫(ソメイユ)から反撃されたときでも逃げられるようにするため。警護官がいつでも入ってこれるようにするため。

 

「お、お前ぇ! なんで! 源液提供のはずだろ!」

「終わったよ」

 

 僕は、山田さんを抱えて、壁に座らせる。

 全裸の山田さんの体には、目を背けたくなるような痛々しい痕がある。

 制服の上を脱いで、彼女にかけた。

 

 彼女が指が白くなるほど握っていた鉄の棒のようなものを、指を一本一本開くようにして放させる。

 

「大丈夫だよ」

 

 僕の左手は鉄の棒の鉄部分を握ったままでかなり痛いが、彼女が受けてきたものに比べればどうということはない。

 そのまま、彼女から遠ざけるように地面に置いた。

 

「少し待っててね」

「ぁ……」

 

 山田さんが僕の首を見た。

 詰め襟の制服は彼女にかけていて、喉仏を隠すためのマフラーもしていない。

 

 僕の首に何があるのだろうと思い至って、この前呉井さんからつけられたキスマークがあったなと思い至る。

 だがそれだけだ。きっと山田さんが僕の首を見たのも、そのあと少しだけ目を見開いたのも、偶然だろう。

 

 高柳、に向き直る。

 

「嘘だろ、源液提供に行かなかったのか?」

「だからもう行ったんだよ。僕の着床値はA+だ。疲れていないし、そのまま学校に来た」

 

 カバンから取り出した源液提供の資料を掲げる。

 できるだけ、山田さんにも伝わるように。

 

「彼女と、彼女の妹さんは、僕の婚約者にする」

「ふざけっ、あ、ありえねぇだろ! A+がこんなとこにいるはずねぇ! 文書偽造だ、癒着しやがったな!!」

 

 片手で頭をかきむしって高柳が口角から泡を飛ばして叫ぶ。

 

「君の心情は知らない。正義や倫理を語るつもりもない。僕が少数派なのは知っている」

「この、くそっ!」

「だから、君の世界では君が正しいのかもしれない。君の宗教を否定するつもりはない」

「ばかに、しやがって……!」

「僕は、個人的動機でしか動かないようにしているんだ。

 ────いまの僕はね、君の敵だよ」

 

 過去は変わらない。

 トラウマを変えるには、根幹を叩くか、根強く治療するか、上書きするか。

 この経験は、このままだと彼女の深いトラウマになる可能性がある。

 

 だから、ここでこの男を叩きのめして、恐怖の存在になり得ないことを彼女に認識してもらう必要がある。

 

 高柳の目が、地面を向いている。

 視線を追うと、山田さんがさきほどまで握っていた鉄の棒のようなものがあった。

 

「使うわけ無いだろ」

 

 それを遠くに蹴飛ばして、僕は首をこきりと鳴らす。

 

「来いよ」

「う、うぉおおおおお!!!」

 

 高柳が恐慌しながら殴りかかる。

 僕はそれを、避けなかった。

 一度受け止めてから完膚なきまでに叩きのめす。

 

 返すように、僕は拳を振り抜いた。

 

「ぶぇ!!」

 

 斜めに体勢を崩した高柳が、よろよろと机にすがりついてなんとか立ち上がる。

 

「君が怪我で入院した分、僕がみんなに提供するよ」

「し、死ねッ!」

 

 飛んでくる拳を、そのまま掴んで止めた。

 

「は……ぁ?」

 

 呆然とする彼の表情を見ながら、ゆっくり力を込める。

 

「い、いでぇ! いでっ、離せてめぇ!!」

「いいよ」

 

 ぱっと手を放つと、勢い余って高柳は後ろに机に向かって倒れ、薬品のようなのものを机上からいくつも落とした。

 

 高柳が手を後ろに回す、がちゃがちゃと音を立てて、何かを探しているようだった。

 

 そして、ノコギリのような刃のナイフを握った高柳が、攻防逆転といった様子で、汗を垂らしながら笑った。

 

「へ、へへ、殺す、殺してやる」

「そうなんだ。僕は君を殺さないよ。殺す価値もない」

「…………ッ!! 死ねやァ!!」

 

 僕はしゃがんだ。

 

 そのしゃがんだ肩に、ナイフが突き刺さる。

 

 顔は見えないが、してやったりという息遣いが聞こえてくる。

 

 だが彼はわかっていない。

 しゃがんだ、というのは語弊があったかもしれない。

 構えたのだ。

 深く、低く。

 

 肘が地面に付くくらい、低く。

 

 僕は拳を振り上げた。

 全身をひねり、体重を乗せ、関節の後先を考えないような力で、拳を高柳の顎に放った。

 

「───」

 

 彼が上体を反転させ、吹き飛ぶ。

 

 机に側頭部を打ち付け、そのままひっくり返って分厚い窓に下半身を打ち据えた。

 

 そして気絶した。

 

 

 ふ、と僕は息を漏らす。

 意識を切り替えるように少しだけ目を閉じた。

 

 そして、山田さんに向き直る。

 

 彼女は、どこか上の空になったかのような表情で、僕を含む部屋全体を見ていた。

 

 僕は、困ったような顔をして彼女の前に座る。

 

「ごめんね、すっごい痛くて泣きそう。山田さんのほうがずっと痛いはずなのに」

 

 暴力を見せてしまった僕に対し、彼女が怯えるのではないかと思った。

 だから、自分の弱さを見せるように振る舞う。

 

「ごめん、なさい……」

 

 彼女が、かすれた声で言った。

 僕は慌てた。

 

「違うよ。君のせいじゃなくて」

「ずっと……勘違い、してて……ごめっ、ごめんな、さい」

「どういうことだろう?」

 

 彼女は、ぽつりとこぼすように、小さく教えてくれた。

 

「あなたのこと……ずっと、他の男性(ひと)と……おんなじ、だと……おもってて、ほんとは、わかってた、のに、怖くて」

「うん。でも自分勝手ではあるから、あながち間違ってはいないかもね」

 

 僕は彼女を抱きしめた。

 できるだけ、患部に触れないように。

 力を入れすぎないように。

 

「だから、僕と結婚してほしい」

「……」

「婚約、結んでくれる?」

 

 こくりと、小さく、本当に小さく山田さんが頷く。

 

「君が僕と婚約してくれるなら、代わりになんだってするよ」

 

 それは、妹さんの源液提供になぞらえたものだった。

 僕は山田さんの妹さんをよく知らないから、彼女に婚約を結んでもらう対価として提供を行う運びにしようと思ったのだ。

 

 しかし、

 

「な、ら……」

 

 彼女の声は小さい。

 僕は沈黙して、彼女の口に耳元を近づけた。

 

「服、着せて、ほしい」

 

 彼女の願いはそれだった。

 僕は少し意味を考えて、納得した。

 

 彼女にかけた僕の制服に、彼女の腕を通す。

 

 そして、ボタンを一つずつ、ゆっくり留めていった。

 

 最初に出会ったときと、

 ジャージを着せたときと、

 同じように。

 

 

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