貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話 作:ぽぶきち
「そういえば、1-11に新しい男子がやってきたそうです」
昼休み、里村シズさんからそんなことを言われた。
僕と里村シズさん、皆川ミナミさん、アジサ、ミコの五人でいっしょにお弁当を食べている。
同じ教室お弁当勢の女子たちからはかなり視線を感じる。
高柳君がいなくなったとき、1-11の生徒の落胆はかなりのものだったらしい。
よくよく考えてみれば当然だ。
これから自分たちに源液提供をしてくれるはずの人物が忽然としていなくなったのだから。
だとしても、なかには安堵していた人もいたらしいが。
「シズ……」
ミナミさんがシズさんにたしなめるような言い回しをする。
あんまりしないほうがいい話なのだろうか。
「大丈夫、ユウキ様は大丈夫だよ」
「……まぁ」
「どうかしたの?」
「男子の情報を他の男子に渡すことはいさかいの原因になるので」
「ああ、僕はすでに一度決闘してるからね。特にヤバいかも」
シズさんは首を横に振った。
「あなたは正妻様を救っただけです」
アジサの肩がはねる。
その背中をなでながら、僕は尋ねた。
「聞いた限りであれば温厚なお方のようなので、友好的な関係が結べるかと」
「そうなんだ。あんまり他のクラスの男子とちゃんと話せていないから、そうだといいな」
他の男子が授業にほとんど出席しないから会えないというのもあるだろうけど、若干僕が男子から避けられているのもあると思う。
目があったら決闘をしかけてくるとか思われているのかな。
入学早々に決闘沙汰を起こしたというのが、多少の恐怖を与えているのかもしれない。
「僕が男友達をつくる機会になるかもしれないと思って話してくれたんだよね。ありがとう」
「いえ……」
頬を染めたシズさんが顔をそらし、その先にいたミナミさんのほっぺをもちもちしていた。
なんだあれいいな。僕もさせてもらいたい。
流石にミナミさんのほっぺをもちもちするわけにはいかないので、アジサのほっぺをもちもちしようかと思ったが、お弁当を食べていたのでやめた。
僕の手が、アジサとは反対方向に座っていたミコにとられる。
どうやらもちもちしていいらしい。
ミコがクラスに馴染めるかは不安だったのだが、その不安も杞憂に終わった。
最初に出会った時と比べて角がとれたように言葉が優しくなっている。
僕に対してはたまに暴言を吐くことがあるけれど、多分愛を確かめるみたいな側面がある上に僕自身あまりそういうのを気にしないタイプなので問題ない。
でも、警護官たちの前ではやめてほしい。彼女たちがブチギレるから。なだめるのが少し大変だったりする。
「ミコは、異能検査どうだった?」
「不明。なんか
ミコの異能は依然としてはっきりとしていない。
アジサと同じくらい傾眠性が高いのだから、何かしら特殊な異能を持っている可能性が高いらしい。
干渉型?とかなんとか言っていたような気がするけどよく覚えていない。
彼女は眠っていた期間を考えればまだ中学生だ。
これからゆっくり、慣れていけば良い。
ちなみに、ミナミさんは「花を咲かせる異能」らしい。
彼女らしくて素敵だ。
♢
放課後、
「ユウキ様、お止まりください」
呉井さんの声を聞いて、ふいに歩みを止める。
今日は部活動見学に行こうと思っていた。
「どうかしたの?」
「誰かいます」
呉井さんの見る方向、階段の曲がり角。
そこから、白髪の女性が降りてきた。
「そのセンサーはどうなっているのですか? 先輩」
姿を見るに、その女性は警護官だった。
黒いスーツだ。
「呉井さん、知り合い?」
「いえ、まったく存じ上げません」
だとしたら、どういう意味での後輩なんだろうか。
「お初にお目にかかります。
「えっと、はじめまして。兼高ユウキです。1-12の男子です。呉井さんのお知り合いですか?」
その警護官と思わしき人物、桐一葉メトリさんは、糸目でにこやかに笑った。
「私は以前、監査隊という組織に所属していたのですが、その前身となった憲兵隊のエースだったのが、そこの呉井マナ先輩なのですよ」
彼女がそういった瞬間、周囲の空気が凍る。
それは比喩だった。
比喩だったけど、比喩じゃなくなった。
呉井さんが、足元に氷を生み出している。
そして、剣を構えていた。
幾何学的な小さな氷山が連なって、龍のアギトのように呉井さんの後ろに待機していた。
その目元は、ずっと見なくなっていた、昔のものに、少しだけ戻っている。
「地獄の釜焦げが何の用だ。酒でも汲むか」
「あーらら、随分短気ですね。──そんなに大事かよ? そこの男が」
僕は、呉井さんの肩を抱いた。
「大丈夫?」
「…………申し訳、ありません」
「その呉井さんもかっこよくて好きだけど、もう、そんな顔をする必要はないんだよ?」
「…………」
あんまり人前ですることじゃないが、必要だと思ったので、彼女の頭を抱きしめる。
呉井さんは、その場でされるがままになっていた。
「女たらしですね」
「ここに来たってことは僕に用があったんですよね。どうかしたんですか?」
「あら、心もお広い。ではさっそく要件なのですが……」
桐一葉さんは、自分の顎に人差し指を当てて言った。
「私を二重スパイにしませんか?」
「え?」
二重スパイ?
なんと、なんの?
「実は、私は国家管理委員会の手先なんですよ」
「……マナ、ダメだよ」
「……はい」
国家管理委員会。
病院で僕とミコの行為の撮影を要求してきた組織だ。
正直、へんたいさん、という認識だ。
「なんで僕にその話を?」
「いやだって、あの氷鬼がそんな顔をするようになるほどの人物ですよ。人格面は確約されたも同然。そしておそらく本人さえも知らない異能を見抜く異能持ちを保持している。現在の警護官と婚約者を見ても、そちら側を勝ち馬と認識するのは不思議な話ではないですよ」
異能を見抜く異能とはなんのことだろう。
ミコの異能のこと?
いやそれこそなんで知っているのかという話になる。
僕はミコに異能を使わせたことはないし、異能で人を選んだこともない。
「多分なにか勘違いをしていると思う」
「まぁそれでもいいですがね。
──私の異能は、『心を読む異能』。読心です。触れた
こんなふうに」
桐一葉さんの姿がかき消えた。
いつのまにか、僕の真横、ミコの目の前まで、その手が迫っていた。
が、ミコの目前で、その手が止まる。
メグが、彼女の手を掴んでいた。
「見事です」
そして桐一葉さんが、そのメグの手に、もう片方の手で触れた。
「おぉ、これは、お怒りですね。申し訳ない。
随分と慕われている。
メグが炎をまとった腕を振るう。
するりと上体をそらしてその腕を躱し、あざやかな宙返りで桐一葉さんは少しだけ距離を取った。
「もう少し見せてくれても良いではないですか」
「…………」
メグが僕の方を見た。
あくまで会話の主導権は僕にあると思っているようだ。
「あんまり、人の心は覗かないでほしい。信頼したくても信頼できなくなっちゃうよ」
「それは申し訳ない。慎みます。で、どうでしょうか?」
「二重スパイの話? 正直、僕が得たい情報なんてないよ」
「ワールドゲイザーの内容、
「何の話?」
「本当に、知らないのですか?」
一瞬だけ判断に迷ったような顔をする。
なんというか、綱渡りを見ている気分だ。
やりとりの内容はほぼわからないけど、とにかくインパクトを残して僕に自分の異能の強さを覚えさせようとしている。
そして多分、相当価値のある情報を持っていると言っている。
なんとなく、僕は桐一葉さんに近づいた。
「どうぞ」
桐一葉さんが右頬を差し出す。
僕はそれに構わず、彼女を抱きしめた。
「は?」
素っ頓狂な声が漏れる。
わけがわからないといった様子の桐一葉さんだが、嫌がる素振りはなかった。
「僕は桐一葉さんにその能力でスパイ活動なんてしてほしくないよ」
「……なるほど、騎士性ですね。ここで私を拘束すれば手元の
「なんでそんなに必死なの?」
「……やはり女たらし。こういったやり方も心得ているわけですか」
「さっきから全部、本心じゃないよね」
「は、なにが……」
背中をとんとんと撫でながら、僕は語りかけた。
「たくさん嘘ついてるでしょ。別にそれでもいい、嘘をつくのはいいけど、君が辛そうだよ」
「……知ったふりを…………」
「そうだよ、何も知らない。だから教えてよ」
「…………」
桐一葉さんは、うめくように、本当に小さく言った。
「…………やめてくれよ」
彼女の瞳が、初めて僕を見た。
糸目が少しだけ開かれていた。
その綺麗な目と、僕の視線がぶつかる。
瞳が、揺れた。
少し怪しげな雰囲気があったけど、ここまで近づいてみると、やはり綺麗な人だと思う。
異能にかかわらず、仲良くしたい。
「うそだ……」
呉井さんがあそこまで荒んでいたんだから、彼女にも何らかの過去があるのかもしれない。
それは罪とかとともに背負われているものだろうけど、僕は気にしない。
むしろ、清廉潔白な人間のほうが苦手だ。
「うそを……つくなよ」
桐一葉さんの鼓動が速くなっている。
でも僕も初対面の美人に抱きついて少しだけ緊張しているから、同じくらいの速さだ。
いっつもみんなとこうするときはキスする流れだから、ちょっと桐一葉さんの唇に目を奪われてしまう。
さすがに失礼すぎるし、警護されている男子に申し訳が立たないからしないけど。
「……」
桐一葉さんが、目をぎゅっと瞑った。
僕の腕を解いて、桐一葉さんは抱擁から抜け出した。
「いやはや、男性からの熱いハグとは、いい経験をさせてもらいました」
「もういいの?」
「…………まぁ、もしかしたら、また頼むかも知れませんね。十分な対価を用意しますよ?」
「対価なんていらないよ」
「っ……」
どこか調子が崩れたような桐一葉さんが、距離を取って僕に一礼する。
「とても有意義な時間を過ごさせていただきました、またいずれ」
「うん、またね」
桐一葉さんが去ったあと、僕はみんなに向き直る。
「メグ、大丈夫だった? ごめんね。メグの心が読まれたのに」
「問題ないです。むしろ、対応が遅れてしまいました」
「いや、いいんだ。止めたのは僕だったんだから」
呉井さんも、最初と比べて落ち着いているようだった。
ただそれでも、少し眉間に険が残っている。
僕はそれをマッサージするようにほぐした。
「ほら、いつもの美人な呉井さんだ」
「ユウキ様……」
みんなを連れて、改めて家に帰る。
今日の夜の当番はメグだったな、なんてことを考えながら。