貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話 作:ぽぶきち
桐一葉メトリは、学園に通ったことがない。
『心を読む異能』が発現したときから、国家管理委員会のもとで働いていた。
早々にその能力の有用性に気づいた月読ウタゲによって、情報工作および、監査隊での活動を任務として割り当てられていた。
監査隊は隊の内部を監視し不穏分子を密告・排除することを目的とした機関である。
腕は立つが、前身となった憲兵隊ほどではない。
主に諜報技能を磨き、組織だって秘密裏に工作することを目的としている。
良からぬ企みを持つ
憲兵隊、特に第二憲兵隊は、呉井マナだけでなく今は亡きその先達を含め、一隊としては史上稀に見る戦闘練度を誇っていた。
内部テロを三回防ぎ、それらすべてを真っ向から叩き潰しており、残党もすべて排除し、かつ憲兵隊に対して行われた数々の罠すら踏み抜き、返り討ちにしている。
その奇跡を模造しようとしても、このような小手先のスパイの集まりにしかならなかった。そう月読ウタゲは毒づくことがある。
桐一葉メトリは足りない戦闘技能を、諜報訓練によって磨いた。
異能操作の才能も、桐一葉メトリは優れているほうではない。
優れた異能操作は、基本的に細部まで自在に操ることができるが、桐一葉メトリにはそれができない。
思考盗聴をオフにするかオンにするか、どの五感を接続するか、それくらいの選択の幅しかなく、デフォルトの異能に至っては目を合わせれば問答無用で発動してしまう。
したがって、補うための様々な訓練が、未成年時代の桐一葉メトリに課された。
多言語学習。
他国の言語を頭に叩き込み、異能で読み取った相手の思考がどの言語であっても翻訳できるようにする。
変装。
口調を変え、見た目を変え、骨格までも操作し、別人として紛れ込めるようにする。
身体操作。
迫りくる機械的な攻撃を避け続けることで、回避術と、"認知の隙間を縫う技" を身につける。
痛覚耐性。
様々な拷問訓練を施し、諜報によって得た情報を敵に漏らさないように耐性をつける。
だがもっとも彼女の心を病んだのはこれらの訓練ではなく、ただ一つのカリキュラムだ。
異能即発訓練。
どれだけ反射的に異能を行使し、その際にどれだけの情報を盗めるかの訓練。
被検体となった
思考盗聴を行う。
他者の思考が流れてくる。
他者の嗜好が流れてくる。
他者の思想が流れてくる。
千回を超えたあたりから、桐一葉メトリは、洗面台に映る自分の顔が他人のものであるかのように感じるようになった。
他人が自分であり自分が他人である。
おぞましさに、胃の中のものを吐き出した。
『……私ぁ、ナニモンだ?』
いつもの語調の強い自分と、取り繕うときの慇懃無礼な自分。
どっちが本当の自分だろうか。
好きな音楽はなんだっただろうか。
あったはずだ。
あったはずだったが、"どれ" がそうなのか判別がつかない。
好きな食べ物はなんだっただろうか。
わからない。
どうせ選べないのだから、思い出す必要もない。
変装しようにも、取り繕おうにも、その元となる自分が見当たらない。
『誰か……』
訓練後、
桐一葉メトリがもたらした恩恵は大きかった。
どんな場所にも潜入し、特大の情報を持ち帰った。
国家の治安維持に多大な貢献をしたため、彼女は月読ウタゲのお気に入りとして、ある程度の自由も許されるようになった。
その結果、国家管理委員会の職員と会う機会も増えた。
彼女たちは、桐一葉メトリを敬った。
だが、誰一人として、
桐一葉メトリに目を合わせようとはしなかった。
『誰か……私を……』
桐一葉メトリは、さらに功績を上げた。
月読ウタゲの懐刀として、存在を恐れられ、「糸目の女がきたら逃げるか自殺しろ」という言葉が反体制勢力の間で広まった。
一度、思考盗聴で死にかけたことがあった。
思考盗聴者の対象が重度の三叉神経痛というものを患っていたのだ。
神経が乱れ、思考盗聴を中断することができなかった。
対象が自ら自殺をしてやっと、接続が強制解除された。
持続的背景痛と瞬間的激痛で、桐一葉メトリは一ヶ月ほど身体が動かせなくなった。
だが、痛みより、
『誰か……私を……見てくれ…………』
見失った自分と、自分を証明してくれる他者の不在が、
桐一葉メトリにとっては最大の痛みだった。
ゆえに、
桐一葉メトリが兼高ユウキに陥落したのは必然だった。
学園に通わず、これまで男性との接触がほとんどなかった。
痛みに耐性はあったが、快楽に耐性はなかった。
そして何より、
兼高ユウキは、桐一葉メトリと目を合わせた。
真正面から、見つめた。
だというのに、少なくとも思考盗聴までの間、桐一葉メトリが兼高ユウキを依然として調査対象とみなせていたのは、ひとえに彼女の精神力の賜物だろう。
情事を思考盗聴し、
視覚情報がない生殺しを経験し、
兼高ユウキを押し倒し、犯し、
しかし兼高ユウキにすべてを受け入れられた。
僅かに揺れる車内、
そこで、桐一葉メトリは自らが兼高ユウキの警護官たちによって "処分" されることを確信した。
そして、最期をさとって、自らを膝枕している兼高ユウキを見た。
兼高ユウキは桐一葉メトリを見下ろし、目をあわせ、
微笑んだ。
心臓がありえないくらい高鳴り、病状と見まごうほどきゅっと縮む。
だというのに、やさしく撫でる手つきが、自らの緊張をほぐし、安眠へといざなった。
(私は、このときのために生まれたのか)
このまま死にたい、と思った。
できればこのまま、揺られたまま眠り、起きないでいたい。
異名『
♢
マナさんに軽い説教と身体検査を受けたあと、
すごくいい顔で眠っている桐一葉さんを抱き上げ、寮に運ぶ。
警護官のみんなが預かろうとしてくるけど、少し顔が怖い。
危害を加えることはないけど、乱雑に扱いそうな気がしている。
「私、正妻失格よ……」
僕にそういったのは、アジサだ。
教室に僕を残してミコを助けに行き、僕と桐一葉さんを接触させてしまった。
それを悔いているのだろう。
「僕のほうこそ、ごめんね。なんとなく気づいてはいたんだ。僕に接触するために嘘をついているって」
「どうして……」
「そうだな、この人が淋しそうだったから、そんな気がしたんだ」
腕のなかの桐一葉さんは、泣き止んだ子どものようにあどけなく眠っている。
「その……襲われ、たんでしょ。その子も、救うの……?」
「救わないよ。えっちしたいだけ」
「…………私、あなたに全然釣り合わないわ」
「そうだね。かわいすぎるもん」
照れたアジサが誤魔化すように肩に拳をぶつけようとするが、負い目があるのか、アジサの拳はほどけ空で止まった。
それに僕は自分の頬を近づけた。
アジサの指先が頬を滑る感触を少しだけ味わってから、僕は寝室へ向かった。
ベッドに桐一葉さんを寝かせる。
起きるまで待とうと思い、彼女の横に寝転んだ。
今日のことを考える。
やはり、教室で行為に及ぶのは控えたほうが良いかも知れない。
今日だけで二回も人に見つかってしまった。
提供室は若干距離があるけどやはりそこでしたほうがいい。
もし難しそうなら青桐先生に相談しよう。
そういえば、青桐先生は表情が薄かった気がする。
他人の情事に出くわしたら、それこそ狭間さんのように動揺するような気がするけど、なんというか、青桐先生は驚いていないわけでも表情に出にくいわけでもなく、反応そのものが薄くなっていた気がする。
思い出すのは、青桐先生の目元の隈。
眠り戦姫なのに、眠れていない?
睡眠時間が足りないということだろうか?
そんなことを考えていると、僕も眠くなってきた。
シャワーぐらい浴びてから寝ないとなと思うも、睡魔が押し寄せ、そのまま目を閉じた。