※この作品はR-18です。

貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話   作:ぽぶきち

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第二十九話 田中ラグナ

 

 

 

 

 どこか生暖かい視線が突き刺さっている。

 

 2日の欠席。

 僕とアジサは学校に来なかった。

 

 そして水曜、昼休み。

 

 僕は膝の上に乗ったアジサに抱きつかれている。

 教室で。

 

 三日間、休憩を挟みつつ過剰返済(オーバーフロー)を繰り返した僕の正妻は、どうやら色々と天元突破したようで、チャイムがなるやいなや僕から何かしらの成分を補給するためにこのようにしがみついてきた。

 

「あのー、アジサ、さん?」

「……」

「ご飯、食べてからにしない?」

 

 一応、腰と腰が離れているのは理性が残っている証拠だと思いたい。

 ミナミさんとシズさんが向かいにいるが、お弁当をもって集まりながらもどこか戸惑っている様子だ。

 

「姉ちゃんも理性溶けることあるんだ……」

「けっこうあるよ」

 

 ミコがりんごをかじりながら意外そうに姉を見ている。

 そういうミコも、最初のときは僕にコアラみたいに抱きついていたのをアジサに咎められていたはずだ。

 

 とりあえず、アジサの背中をさすりながらあやし、できるかぎり早期に正気に戻れるように努める。

 

「そんなだとユウキに嫌われちゃうよ」

 

 その言葉で初めてアジサが顔を上げる。

 僕のほうを潤んだ瞳で見つめた。

 

「嫌いになる?」

「ならないよ」

 

 答えを聞くと、ほっとしてまた僕の首元に顔を埋めた。

 

「お熱いねぇ」

 

 アジサに首筋をはむはむされていると、クラスメイトの一人がいつのまにか僕の斜め前にいた。

 

 お団子が特徴的な女の子が、僕の近くの机に座っていた。

 そこ委員長の机だよ。

 

 確か名前は──、

 

「田中さん、だよね?」

「そそ、田中ラグナ。よろぴ」

 

 ピースをする田中さんに、どこか他の人とは違う印象を感じる。

 

「田中いつも入ってこないのに、どうかしたの?」

 

 ミナミさんが意外そうにしている。

 思えばいつかのときも、ミナミさんと田中さんは仲が良さそうだった。

 

「いやー、なんというかね」

 

 小首をかしげながら、田中さんはつんつんとアジサさんの肩を叩く。

 

 少し不機嫌そうな顔をしたアジサが彼女に振り返った。

 

「ねぇご正妻、見えてる?」

「……なにがよ」

「……見えてないならいいや」

 

 アジサは一瞬だけあたりに視線をさまよわせたあと、また僕に向き直った。

 

「田中さんは確か、強い人だっけ」

「強いの基準によるけどねー。ユウキっちの警護官には敵わないし、いいんちょーにも負けたし」

「ああ、確か、風を操って戦ってた気がする」

「そそ、私もいいんちょーも風を司る系統の異能なんだよね」

 

 田中さんはポケットからハンカチを取り出す。

 ハンカチは、田中さんの手のひらの上で端を持ち上がらせ、縦に細長くロールしだした。

 

「私のは、つむじ風を起こす異能。これだーけぃ」

「いや、スゴイよねそれ」

「戦略級を集めまくってる男子様に言われてもね」

 

 ちらりと、田中さんは僕の後ろにいる警護官たちに目をやった。

 これまで廊下で待機していた警護官だったが、僕が青桐先生などに上申して教室での警護を可能にしてもらった。

 

 クラスメイトたちには難色を示されるかも知れないと考えたが、思いの外みんな快く受け入れてくれた。

 

「そういやさー、また警護官増えてんね」

「ああ、メトリだね。とても優秀な人だよ」

「どっかに喧嘩売るの? いまの二年みたいな権力闘争がお好み?」

「売らないよ。あと、二年生ってそうなの?」

 

 二年では権力闘争が行われている。

 初耳の情報だ。

 

 シズさんを見ると、彼女は箸を止めた。

 

「事実です。二年生は対立している男子によって二派閥に分かれているのだとか」

「息苦しそうだね」

「私たちは恵まれました」

 

 権力欲が強い男子が多いと少しだけ聞いたことがあったが、やはり学年が上がる頃には僕たちの年代も同じ様になるのだろうか。

 今のところ高柳君と雅楽川君しか知らないけど、どちらも自分の趣味嗜好を優先するタイプの男子だった。そして僕もどちらかといえばそのタイプだ。

 

 周囲への影響を考え、操作する。

 そういうのは僕には向かない。向かなかった。

 

「田中さんもいっしょにお昼食べる?」

「ユウキ様、それは……」

 

 言いづらそうにシズさんが何かを伝えようとする。

 学食を食べるなら今ここにいないはずだし、何か他に理由があるのだろうか。

 

「田中は1-10の……失礼。他の男子の、お気に入りです」

「えっ、そうなの?」

「いや、知らんけど……。え、私そんなこと言われてんの? こわくね」

「なんでお前が知らないんだよ」

 

 ミナミさんのクイックな連続パンチが田中さんに飛ぶ。

 田中さんは華麗なスウェーですべて避けていた。なにあれすごいな。

 

「戦闘訓練の際にいたくお気に召されたようですね。警護官にすると息巻いているのだとか」

「でも、委員長が勝ったんでしょシズ」

「委員長は、ユウキ様のお気に入りでしょ」

 

 婉曲的ながらも他の男子の話を普通にされるのは、僕が信用されていると思って良いのだろうか。

 

 委員長は僕のお気に入りというのは、どちらかといえば正しい。

 少なくとも僕が委員長が好きだ。

 源液提供では僕を頼ってほしいと言っているのだから、それはある意味告白みたいなものなのかもしれないし。

 

 だが委員長は最近目を合わせてくれない。

 

 何か我慢しているような雰囲気がある。

 もしかしたら泥眠状態(アンアライブ)が近いのかも知れない。そうであるなら早めに声をかけてほしいものだ。

 もちろん、本人が嫌じゃなければの話だけど。

 嫌われていたらどうしよう。

 やはり横乳を見すぎたのが悪かったのだろうか。

 最近の委員長はなぜか胸を強調するポーズを授業中にとることが多いから、どうしても目を引かれてしまうのだ。

 

「そうかもね。委員長もミナミさんもシズさんも、みんな僕のお気に入りになるかな」

「……」

「……へへ」

 

 アジサが僕を抱きしめる力が強くなる。

 タップアウト代わりに背中の上側をなでる。

 服を着た状態だと、ちょうど背中をさする位置にブラのホックがあるため撫でづらい。

 腰をぎゅっとしてもいいのだが、そうなると確実にアジサは発情するので危うい選択肢だ。

 

 田中さんは「珍しい王子様だこと」と言いながら自分の席に戻っていった。

 

 アジサが顔を上げる。

 だがその目は僕を見ていなかった。

 

 どこかアジサの背後の、教室の扉とかに意識を向けている気がする。

 

 

 

 

 ♢

 

 

 

 

「近況はそんな感じかな。警護官も増えて、なんか、政治家になった気分」

「なるほど」

 

 病室。

 僕はクタシ──笠屋舟クタシに世間話として、最近知ったことや起こったことを話していた。

 

「その新しい警護官は、多言語を操ることができるのですね。相当に優秀です」

「そういえば、学園では外国語を学ばないよね」

「そうですね。敵の言葉がわかればいざというとき迷いますから」

 

 いわゆる、バルバロイというやつなのだろうか。

 外国語を学ばせれば工作などには役立つだろうが、寝返りやいざというときの決断の鈍りに繋がる可能性がある。そうするくらいなら別のカリキュラムを受けさせたほうが良い。そんな考えなのだろう。

 

「そういえば、クタシの学生時代について聞いたこと無かったかも」

「面白いことなどありませんよ。私は劣等生でしたから」

 

 劣等生という言葉に首を傾げる。

 クタシの異能は僕の警護官三人を足止めするほどには強かったはずだ。

 

「私は眠ったものの異能を借りることはできますが、眠った相手に触れなければいけませんし、相手が起きれば切れますし、最大二つまでしか設定することができませんから」

「学園だと、泥眠状態(アンアライブ)に陥った人はいなかったのかな」

「いました。ですが、目の前で倒れ、触れたことはありませんでした。私が異能を使えるようになったのは、徴兵から帰還しラボラトリを訪れるようになってからです」

 

 となると、徴兵時はほとんど異能無しで戦っていたということなのだろうか。

 

 僕は警護官として活動していたクタシしか知らなかったけど、彼女の苦難はそのずっと前から続いていたものだったのかも知れない。

 

 クタシの頭を抱き寄せる。

 

「生きていてくれてありがとう。君がもし諦めていたら、僕は君みたいな素敵な人に出会えないままだった」

「あ……」

「僕を失望させたかったんでしょ? ずっと言ってるけど、僕は異能で人を見ていないよ」

「…………私は、人ではなく、眠り戦姫(ソメイユ)──」

「人だよ」

 

 頭に回した手で、クタシの包帯をとる。

 彼女たちの自然治癒能力は非常に高いが、それでも火傷などを治すのは難しい。

 

 僕はその痕を撫でながら、服を脱ぐ。

 

 クタシの目線が、僕の肌にぶつかる。

 

 なんとなく何がしたいのか見て取った。

 

「えっと、さわる?」

「…………」

 

 彼女の手をとって僕の腹部にあてると、そのままさわさわと、こそばゆい手つきで僕の腹筋を確かめる。

 息が荒くなっている。

 

「じゃあ、提供……いや、抱くからね」

「…………」

 

 期待するような視線に答えるように、僕は彼女の頬にキスを落とした。

 

 

 





下村シズ:呉井さんのお弁当をこっそり学習している。
委員長:ちからをためている。
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