貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話 作:ぽぶきち
眠り戦姫が近づいてきている。
そう言われても正直ピンと来なかった。
『ユウキ様、お時間はよろしいですか?』
クタシが入院している場所と同じ階の会議室。
そこを借りて、僕はメトリと通話していた。
ここなら医療機器に影響はなく、回線も良いらしい。
「警報のことだよね」
『はい。誠に無礼ですが、国家管理委員会から連絡がありました。ユウキ様にとりついでくれと』
その言葉に驚いた。
国家管理委員会は、メトリを使って僕の内情を探っているはずだ。
僕に取次を願うというのは、メトリが工作員であることを明かすようなものだ。
いくらメトリ本人が最初に会った時に自らが工作員だと僕たちに宣言していたとしても、ここでそのつながりが事実であることを認めるような真似をするのだろうか。
「どういう要件かメトリは察してたりする?」
『……おおよそは』
「安全かな」
『……少なくとも、情報が抜かれることはないかと。いまのやつらに、害意はないと思われます』
「わかった、代わるよ」
了承して、メトリと数言交わす。
端末が、ざ、ざ、と音を立てる。
スピーカーモードにして、会議室の中央に端末を置いた。
会議室には、
僕と、呉井さんと、メグと、アジサがいる。
アジサの母は既に避難したらしい。
取り次ぎを待っていると、
がらり、と扉が開いた。
入ってきたのは亜欧堂君だった。
「お前も、か」
「いまちょっと話が立て込んでるんだけど」
「俺も混ぜろ。どうせ俺が話そうとしていた奴らも同じだ。政府だろ?」
これはどういうことなのだろう。
亜欧堂君も国家管理委員会と話す予定だったのだろうか?
端末の砂嵐のような音が止む。
少し荒い息遣いが、向こうから聞こえた。
『兼高、ユウキ様、でいらっしゃいますか?』
「そうです。あなたは?」
『国家管理委員会の
もちろん知らない人だ。
これまで国家管理委員会についてメトリから話を聞くこともなかった。
だから委員会の人物の名前など耳にしたこともない。
『まず、現状の説明から入らせていただきます』
「あの、今ここに亜欧堂ノゾム君もいるのですが、彼も話を聞いて大丈夫ですか?」
『亜欧堂ノゾム、様が? ……ええ、構いません。元より緊急。亜欧堂様にもご助力を要請するつもりでしたから』
亜欧堂君は、端末を睨みつけるように僕の前の席に座っている。
腕を組んで背もたれに体重を預けている。
『現在その府中センターに近づいて来ているのは、一人の
「複数名じゃないんですね」
『ルティエ・マグクラフト、という海外の
個人国際戦力として準最強レベルの
まず……ヤツの異能について説明させてください』
その名前を聞いて、少しだけ、本当に少しだけだが、呉井さんとメグが反応した。
たぶん、知っているのだろう。有名なのだろうか?
個人として、準最強レベル。
なら、一対多では勝ち目があるということだろうか?
『奴が持っているのは、『制御する異能』です。
自分を制御して、高度な技能、不退転の行動力を身につけることができます』
強い異能……なんだろうな。
異能の名前だけ聞いてもピンとこない。
例えば呉井さんの能力も、ある意味では、氷を制御する異能とも言えるのだ。
『奴は現在、──
「……? どういうことですか」
近づいてきているのに?
いやまて、そういうことか。
「眠っていても動くように、異能で制御しているんですか?」
『……! そのとおりです。奴は、自分が
とんでもない話だ。
眠った状態でも効力のある異能。
そんなことが有り得るのだろうか。
いや、異能という超常が存在している時点でいまさらかもしれない。
『ルティエ・マグクラフトは『
「……鎮圧。ならなぜ、いま?」
『殺すことはできなかったのです。死なない、といえばいいのでしょうか。できたのはルティエ・マグクラフトを海底に瓦礫とともに沈めること。動けなくすることでした。しかし──』
「そこから抜け出してきたんですね。時間をかけて」
『はい』
でも、まだ疑問が残る。
なぜ、この病院に近づいてきているのだろう。
なぜ、この病院に近づいてきているとわかるのだろう。
『兼高様と亜欧堂様には、貢献値10000と多額の謝礼をお支払いします。そのため、ルティエ・マグクラフトから府中センターを防衛していただけないでしょうか』
どこか沈痛な面持ちで、国家管理委員会の
強さも何もわからないから、僕にはすぐに答えを出すことは出来ない。
判断材料が少なすぎるのだ。
「おい」
亜欧堂君が、机をトントンと爪で叩いていた。
『亜欧堂様、でしょうか?』
「ここに近づいている理由について、まだ話していないだろう」
『それは、申し訳ありませんが……』
「この病院の地下に、ラボラトリがあるんだろ?」
『…………ッ!』
亜欧堂君はどこか確信を持っている様子だった。
「表層は市民向け、中層は医療施設、深層は実験機関。その深層で、
『…………』
「どうなんだ、おい」
指で叩くスピードが上がる。
そして、バン、と手のひらで机を打った。
苛立っている様子だった。
「俺がそいつの目的となっている
『……おやめください! いくら男子様でも……』
「でも、なんだ?」
『………………。
誓って、ルティエ・マグクラフトの同胞など、その病院にはおりません。
やつがしようとしているのは、明らかな侵略です』
言われてみれば、確かに。
普通の病院なら、わざわざ地下に向かって病棟を作る必要がないのだ。
搬入なども面倒だろう。
それなのになぜこのような地下施設を作っているのか。
やましいことがある、そう考えれば、辻褄が合う。合ってしまう。
ラボラトリは民間にもそれなりには知られている存在のはずだ。
なぜそれを隠す。
日本最高峰の医療機関という名目を借りてまで、なぜラボラトリの存在を隠すのか。
非人道的な実験をしていると考えることもできるが、そもそもどのラボラトリで行われている仕打ちも、
考えられることがあるとするなら、
隠したい
「お前たちはいつもそうだ。俺たち男には重要なことを一切話さない。特権貴族院にでも入らない限り」
『…………』
「話には乗ってやる。だが、貴族院への参入を優遇しろ。俺と、こいつが同時に入れるように」
『……稟議に回します』
通話相手の意識が、僕に向くのがわかった。
あなたはどうするのか、そう聞きたいのだろう。
「その
『……1時間後です』
思ったより時間が短かった。
まるで災害だ。
クタシを外に連れ出すには、間に合わない。
背負えばいけるか?
それでも、クタシが認めるだろうか。
───この階で入院している子にねだられたのです。まだ
───満足に動けない子なども多く、娯楽が少ないようです。
ああ。
僕は手で顔を覆った。
わかってしまう。
クタシは、まず僕に自分を置いて逃げるように懇願する。
クタシが逃げないなら僕は逃げない、そう伝えても、残るかもしれない。
もしくは、子どもを連れて逃げようとするかも知れない。
わかってしまうのだ。
そういうところに惚れたのだ。
僕は、呉井さんと、メグと、アジサを見た。
呉井さんは頷いた。
メグはピースしてる。
アジサは柔らかく笑った。
「いいかな……?」
「万難を排します」
「もちろんです!」
「たまには役に立たせて」
それが聞こえたのか、少しだけ液晶の奥から生唾を呑み込む音が聞こえた。
「兼高ユウキ」
亜欧堂君が、僕の方を見ていた。
「俺からも……頼む」
今日で一番の衝撃だった。
亜欧堂君が、僕に向かって、簡易的だが頭を下げたのだ。
そして、神楽マツリカさんもそれに目を見開いている。
「手伝ってくれ。必要なら、特権貴族院からは手を引く。他の男子と形式的な決闘をして貢献値を引いてもいい。信じないかも知れないが」
遠い記憶。
情に流され、騙されて、奪われた記憶。
ふいによみがえった。
だが、いいじゃないか。
僕は好きに生きると決めたのだ。
もう正しさとか、大義とかに囚われない。
遠望的な目標のために、身近な幸福をおざなりにはしない。
「亜欧堂君は、もしかして、誰かを助けたいの?」
それは口をついて出た。
頭を下げられる人は、
自分ではなく、他人のために動いていることが多いと思う。
「ああ……そうだ」
「この病院の、たぶん、すごく下の階で治療を受けている人がいて、助けたいんだね?」
「…………ああ」
僕は、ちゃんと亜欧堂君に向き直った。
「僕もこの場所に、お見舞いに来たんだ。
その女性は、まだ脚が悪くて、ここから出られないし、出ようとしないと思う」
「…………」
「……僕からも、手伝ってほしい。この病院を防衛したい」
僕と亜欧堂君の利害は一致した。
レイアを捨てたのも、僕を攻撃したのも、許さないほうがいいと思っている。
でも個人的な話をするなら、僕がレイアから嫌われたくないから、亜欧堂君を苦手ということにしておきたいのだ。
亜欧堂は、はは、と苦笑した。
「お互い、面倒な女にひっかかったな」
「そこがいいんだよ」
「そうだな」