貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話 作:ぽぶきち
空が唸っていた。
甲高い警報音に、人々がバタつきながら避難路を辿っている。
帰ろうとしていた蓮顕寺カナウは、運転手に言って停車させた。
ドップラー効果が収まり、いくらか聞き取りやすくなったアナウンスが響く。
《警戒警報。警戒警報。本州に
その言い方に眉をしかめることはない。
(わざわざ他の軍事拠点を避けてここに来るということは、学園……? いや、学園に世界干渉系の異能はいない、はず)
カナウは顎に右手を当てて考える。
思考に伴うように、左目から血涙が滴り落ちた。
「まさか、病院……?」
さきほどまで自らが定期診察を受けていた場所を思い出す。
国立府中医療研究センター。
そこにも、眠り戦姫はいる。
世界干渉系の眠り戦姫が。
カナウはその事実を知っていた。
なぜなら、数ヶ月前の自分も、深層で実験を受けていたから。
カナウは帰路の途中だった。
件の病院で、定期的な診察を受けていたのだ。
「すみませんが、来た道を戻っていただけますか?」
「え、あ、ですが、避難警報が」
「だからですわ。我が国の最高峰の医院が狙われている可能性があります」
カナウは思い当たった。
接近している
(もし本当にそれが目的なら、これを許せばヒノモトの未来が危ぶまれます)
胸元のネックレスを取り出し、握り込む。
空を見た。
今日は曇天だ。
灰色の雲の奥では、きっと、遠雷が鳴っている。
---
『モニターは起動しましたか?』
「はい、見えてます」
僕と亜欧堂君は、厚い鋼鉄製の扉に守られた一室で、
『やはり、医院から離れたほうが良いのでは?』
「見舞い相手がいないならそうしていましたが、もし僕がここから退けば、みんなが全力を出せないかも知れない」
『ご本人には、伝えたので』
「伝えていないです、怒られたくないですから」
戦わせたくない、というのもある。
やろうと思えば戦えるだろうが、あの体での戦闘は負荷があまりにも大きすぎる。
僕はクタシのために残るのに、そのクタシに無理をさせて回復を大幅に遅らせるのはナシだ。
クタシは、高柳に負わされた傷だけでなく、戦争帰りでそのままにしている傷もある。
安静にしておいてほしいのだ。
これはきっと。ワガママなんだろうな。
『各員に伝えます。観測によると、『
タイプは刀。
後代孫六と呼ばれる日本刀を
よって、触れる系統の能力であっても近づくことは難しいと思われます』
刀。
刀か。
警護官は基本的に武器を持っていない。相手のいらぬ警戒を引き出すことにつながるからだ。
クタシのように
どことなく、情報の中に戦場の香りがした。
『我々の代表である月読ウタゲもそちらに向かっていますが、正直間に合う距離ではありません。
ユウキ様の警護官……失礼、婚約者様のうち留守をしていらっしゃる方々がやってくるのにも僭越ながら期待したいのですが、府中市全体へ避難警報が出されている現状、
まぁ、そうか。
避難の原因である
学園寮がどのようになっているのかは知らないが、出られないというのは有り得る話だ。
『兼高様には、この場にて戦う婚約者に、指示を下していただきたい』
「僕は指揮などとったことはないですが……」
『簡単な指示を下すだけでいいのです。
…………
「…………すみません。聞こえてはいましたが、理解が追いつきません」
『
知らない。
そんなこと聞いたこともない。
『その命令権を用いて、戦え、と命令するだけでも、潜在能力を本人の意志以上に引き出すことができるのです。
能力の本質を覚醒させ、能力の干渉力を拡声することができます。
単身で
僕が
この場でメグに対し、その命令権を使えと言っているのか。
インカムから、風切音が入る。
外にいる警護官たちのマイクがオンになっている。
『ユウキ様』
メグの声が聞こえた。
『お願いします。命令してください』
命令、その意味はなんとなくわかる。
ただ、戦え、と、そう言うだけでいいのだ。
思えば、僕はメグに命令らしい命令はほとんどしたことがなかった。
「メグ、アジサ……マナ」
『…………』
「僕を守ってほしい。
それからメグ──」
『はい』
少し緊張気味なメグの声が響く。
「愛してる。僕と結婚するまで死ぬな」
『…………』
返答はなかった。
ただ、インカムの向こうで、ぼう、と猛々しい炎が吠える音がした。
---
曇天の空。
強風。
そこには四人の
神楽マツリカ。
呉井マナ。
川良メグ。
山田アジサ。
「呉井先輩、替えの下着もってませんか?」
「もうないです」
川良メグの周囲は、灼熱の炎が起こっていた。
呉井マナはその炎に、ほんの少しだけ恐怖を覚えた。
なぜなら、明らかにいつもの川良メグの炎の性質とは異なっていたから。
通常のオレンジがかった炎とは違う、血のように真っ赤な炎。
能力が変質している。
(これが、
「これヤバいです。命令受けると、その、自分が必要とされてるんだってなって、頭がふわふわします。
兼高ユウキの警護官のなかで、兼高ユウキに「命令」されたくないものは存在しない。
兼高ユウキは優しすぎるのだ。
最初こそその優しさに救われていた。
いまでも救われているが、彼女たちのなかには「もらいすぎ」という観念が渦巻いていた。
自分たちも何かを返したい。
奉仕したい。
その欲求は、
体が、兼高ユウキからの命令を求めてしまっているのだ。
それが転じて、警護官たちから山田アジサに対する羨望と尊敬は強い。
山田アジサは、初夜の日、兼高ユウキから半ば襲われるように交わっている。
警護官全員の憧れなのだ、兼高ユウキに"使われる"というのは。
呉井マナは、程度は低いものの、"使われる" 経験をしたことが何度かある。
間接源液提供前日にバスタオル姿で鉢合わせ、我慢がきかなくなった兼高ユウキに襲われたときなどがその筆頭だろう。
だが、呉井マナはその危険性も理解している。
幸福度が高すぎて、数時間動けなくなるのだ。
人は、不満だからこそ行動する。足りないからこそ満たそうとする。
すべてが満たされた気分になると、何もできなくなるのだ。
この三人の婚約者のなかで唯一、使われる感覚をしらなかった川良メグは、身のうちを駆け巡る悦楽に耐えかねたようにうずくまっていた。
いまの川良メグには、同時に主君としての命令による強制力が働いている。
それが、さらに陶酔を与えていた。
「川良、敵が来るまでには、動けるように──ッ」
瞬間、呉井マナは、手元に氷の剣を出現させる。
そして、風が来る方向へと構えた。
病院の北側から、その
「Finfi-e mi al-enis al la st-cio」
それは最初、風切り音かと思わせた。
しかし、何らかの言語だ。
その
その
抜き身の刀をそれを引きずりながら、ゆったり、ゆったりと近づいてくる。
しかしその動きが間合いを取ろうとしていることに、呉井マナは気づいていた。
なぜなら、
(来るのが、早すぎる)
相当な速度でここまで走ってきたに違いないと、直感したから。
『
その姿、軍服を着ているが、ボロキレのように汚れている。
胸元には、風穴が開いている。
曇天の薄暗さを連れてきたかのように、その場の明度が一段落ちた気がした。
ひゅーーー、
と、その『
そして、ちゃきりと刀の切先を、上げた。
「■」
姿が消えた。
カメラに映ったのは、結果だけ。
氷の剣を砕かれた呉井マナ。
呉井マナに振り下ろされた三本杉の刀剣。
そしてそれを止めている、呉井マナの左腕から伸びた紫色の氷塊。
『
『
この場で接触した。