貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話 作:ぽぶきち
改めて、周囲を見る。
蓮顕寺カナウさんがいた。
なぜ、ここにいるのだろう。
表情を歪めて、凄まじい顔をしている。
何かを許容できないような、認めたくないかのような顔だ。
「あなたは──」
蓮顕寺さんが言い切る前に、何かがここに飛来してきた。
ドン、何かが地面に落ちる音がする。
そこにいたのは、スーツを着た、40代ほどの女性。
「既に終わったのかしら?」
ネクタイを直しながらそう問うた。
呉井さんが、若干警戒した様子で対応する。
「失礼ですが、あなたは?」
「月読ウタゲ。日本最強の
「国家管理委員会代表……」
「助太刀に来たのよ」
その目が、僕を射抜く。
「それで、死んだのかしら?」
「……うん、眠りました。えっと……」
「じゃあ、死体はこちらが回収するわ」
「それはダメです」
なんとなく、嫌な予感がした。
この人に任せたら、僕らは何も問題がなくとも、ルティエが望まない結果になるような気がした。
「彼女は、たったいま僕の婚約者になりました」
「…………ふぅん。極悪人にして、今回の騒動を引き起こした海外の敵性
「はい。」
ルティエは、僕のお墓に入れる。
この人には渡さない。
「連帯貢献値が一時的に下がる可能性もあるわよ?」
「それは今回の報酬の貢献値10000よりも大きいですか?」
「…………」
額をおさえて、月読ウタゲさんというらしいこの人は、何かを考えているようだった。
「羨ましい限りね」
月読ウタゲさんはため息をついて、手すりに身を預ける。
タバコを取り出して火をつけずに手元で遊んでいた。
「馴れ初めは?」
ふいにそんなことを聞かれた。
意趣返しのつもりだろうか。
「みたところ、言葉も通じないようだけど」
「いえ、通じましたよ」
「そうなのね」
多分信じていないな。
ルティエさんは、ヒノモト語を話せた。
「私も彼女がヒノモト語を話しているのを聞きました。
おそらく、そこの蓮顕寺さんも聞いたでしょう」
「ええ、聞き間違いだと思いたいですが、確かに喋っていましたね」
呉井さんとカナウさんが僕の論を補強する。
それを聞いて月読ウタゲさんが眉をしかめた。
タバコを握り潰す。
「……本当に?」
「そう言われると確信はないですが……」
「ありえない…………」
階下から、誰かが上がってくる。
それは亜欧堂君だった。
神楽さんが迎えにいっていたようだ。二人で上ってきていた。
「おい、月読ウタゲ」
「……なにかしら亜欧堂ノゾム様」
「報酬はどうなる」
「特権貴族院へ同世代二人参加はおそらく認められないわ。断られるでしょうね。
貢献値の話であれば、問題なく支払われるわ」
「……そうかよ」
自己紹介を見ていたわけでもないのに、亜欧堂君は月読ウタゲさんの顔と名前を一致させていた。
やはり、なにかしらのコネクションなどがあるのだろうか?
それとも彼の情報網が広いのだろうか。
「今回の
「その数値が私が動かせる最大の値なのよ。マスメディアにあなたから訴えかけて自分の功績を周知させるなら、それを名目にさらに上乗せできるけど?」
「……チッ」
月読ウタゲさんがどこかを一瞥した。
視線を追うと、わかりやすいマイクとカメラを持った一団が少し離れた場所からこちらをみていた。
マスコミなのだろう。
避難勧告があったというのにここに来ているなんて、なかなか肝が座っているのか、野次馬根性があるのか、ジャーナリズム魂があるのか。
「それに、相性もあったでしょう? 今回は相性が悪かった。実際の戦力差でいえばもっと楽に勝てたはずだった」
「そうだな。例えば、神楽はお前に勝てる」
「…………嫌な男子様ね」
薄氷が周囲に張り巡らされ、マスコミたちから僕らを隠す。
呉井さん、こんなに大きな氷壁も作ることが出来たのか。
だが、その氷の一部が、割られた。
すぐさま張られ直したが、誰かが砕けた氷の間からこちらに走り寄ってくる。
その姿は見たことがあった。
「シズさん……?」
「ユウキ様!! よくご無事で……!!」
僕を確認すると、シズさんは体から力が抜けたのか、膝をついた。
服は制服のまま。
「えっと、そこの、男子様も……ご無事のようで」
「誰だよお前」
シズさんは亜欧堂君に一蹴されていた。
やはり基本的に
でも、僕も聞きたい。
「えっと、誰かな……?」
「……? シズ、里村シズです。
学寮は外出禁止令が出て封鎖されていたんですが、ユウキ様が、心配で……」
僕は、ルティエを抱きしめたまま、再度問うた。
「違うよね。
──
呉井さんと、メグと、アジサと、そしてカナウさん。
シズさんのことを少なからず知っている人たちが、僕を見た。
疑問の表情で。
シズさんも、僕も見た。
その表情に笑みを浮かべて。
「よ く わ か っ た ね ぇ ?」
どこか悪辣な笑みを浮かべて、シズさんもどきが立ち上がる。
ゆらりゆらりと体を動かして、楽しそうに問う。
見た目はシズさんだけど、中身は違う。
「なんでわかったの?」
「勘もあるけど、シズさんは優しい人だ。
ご無事で何より、じゃなくて、この姿を見たなら、ご無事ですか?みたいに言うと思うんだ。」
僕はいま、血みどろのルティエを抱いている。
端から見ればこの血が僕のものがどうかわからないはずだ。
「他にもさ。
シズさんは部活動に入っていないから、今日みたいな休日は、カナウさんみたいに私服のはずだよ。
避難のために学校に一時的に集合がかけられた可能性もあるけど、外出禁止令が出たんだよね?
ならおかしいよ」
「…………」
「僕が心配だから来た、とかも彼女は言わない。例え僕が心配だったとしても、僕に気負わせないように、気づいたら来てしまった、って言うと思う。
彼女は、そういう人だから」
シズさんもどきは、腹を抱えて笑った。
「はははははっ!! ホントに! ホントに王子様なんだ!!
すごいね! ちゃんと見てるんだね!!」
「いつもシズさんとはいっしょに昼食をとってるからね」
「じゃあさ、じゃあさ、私が誰か、わかる??」
両手の人差し指で自分を指しながら、シズさんもどきが問う。
すでに僕の周囲では、婚約者たちが警戒態勢に入っていた。
「根拠はない」
「いいよ!! 勘で!」
「…………」
言って良いのだろうか。
もしこれで間違っていたら怖い。
根拠はない。
間違えたら失礼どころではないし、周りの人物も聞いているのだ。
いや、でも、
間違えていた場合、別の人ということにできたりしないだろうか。
彼女と同じ苗字の人は多いだろうから。
「田中さん?」
「大っ正解!!!!」
シズさんもどきの顔と、背丈が変わる。
見たことのある。
紫がかった髪が、お団子型に結ばれている。
「田中ラグナです!」
そういった瞬間、気配が変わったのは、月読ウタゲさんだった。
何らかの異能を発動させて、田中さんを見ていた。
「つっくよみウタゲさん! 君のおかげで私の人生ちょー楽しくなりましたよ!」
「…………外国の工作員かしら?」
「え? 違うけど。なにそれこわくね?」
田中ラグナさんは、指を鳴らした。
そして、唱える。
「『Gaze』
『on』?
『BookMarks』!」
彼女の手元に、一冊の本が現れた。
月読ウタゲさんが、呆然としている。
「な、んでそれを……」
「これすごいよね。大抵の異能がわかるし」
ぱらぱらと本のページをめくる。
そこには何が書かれているのだろうか。
少なくとも、月読ウタゲさんにとっては不測の事態のようだ。
「ワールドゲイザー。
理論上すべての異能を閲覧できる書物。
最初のページと最後のページ以外のページを、任意の対象の異能説明欄に差し替えることができる……」
「…………」
「ねぇ、ウタゲさん。
この "最初のページ" と "最後のページ" 、ずっと他の人には隠していたの?」
月読ウタゲさんが、手元から光線のようなものを発射した。
しかしそれは、田中の周囲に存在するバリアのようなもので防がれた。
「いいの? ここで暴れたら、
「…………くそっ」
多分、月読ウタゲさんは僕たちや他の民間人を心配したわけではないと思う。
この病院の存続を考えたのだと思う。
それくらい、この病院は彼女にとって、もしくは国家にとって重大な場所なのかも知れない。
「
「……わかんないよ」
「ふふん、教えてしんぜよう。
最初のページに載っているのは、
始まりの
異能は『言語を分ける異能』」
…………『言語を分ける異能』。
言語を分ける、異能……?
────「ヒノモトは、元は統一国家ですからね」
────(僕も、ヒノモト語を学ぶのには苦労した)
『
ずっと疑問だった。
いくら戦争が防衛戦から大陸戦になったとはいえ、わざわざインパクトファクターの周知度を下げたりするだろうか?
なんでこの学校では、メトリのような外国語の教育を行わないのか?
なんで、僕はあんなにも、ヒノモト語の習得に時間がかかったのだろうか。
「元々はヒノモト語がワールド・スタンダードだったんでしょ?
途中から異能で言語を分けてたんだよねぇ。"分かれていたことにした" といったほうがいいのかな。
だから海外ではちょっち変な言葉が公用語になったりしてる。
おそらく、この国の人口が、一つの母国語が抱えられる最大人口なんでしょ?」
「………………」
「この言葉で、世界はある程度均衡が保てた。言語の壁があるなら攻めづらいし、守りやすい。
そしてその
『
月読ウタゲさんが、田中さんを睨む。
カナウさんが、額を抑える。
「まさか……」
「どしたー?」
「『
「おっ、気づいたかね」
「お前……まさか」
「うん、殺したよ」
田中さんは、片手を掲げた。
その手が、幻がとけたかのように本性をあらわす。
血にまみれていた。
「ふ……」
月読ウタゲさんが、長いため息をついた。
そして、胸元のマイクボタンを押して、通信を起動したようだった。
「牧近。」
『はい、ウタゲ様』
「田中ラグナを、指名手配しなさい」
『えっ、何を……』
「異能は『他者の異能を模倣する異能』」
田中さんが、嬉しそうにそれを見つめる。
「ちょっと違うけどね」
「そう」
サーカスのフィナーレのように、田中さんは両手を広げた。
「これからどうなるんだろうね!
始まりの
どうしよう、戦争は激化するのかな?
学園にもスパイがたくさん入ってきそうだよね!」
その田中さんに、雷撃が当たった。
それすらも、バリアで弾かれる。
「蓮顕寺さん、だっけ?」
「なんという、強度を……」
「なんで
あーそっか、掴まないんじゃなくて、掴めないんだねぇ?」
田中さんの両手に、どこからか流れてきたプラズマが収束する。
目が痛くなるほどの光を集めていた。
「じゃあ私、満足したので、逃げるね!」
とん、と音を立てて、田中さんの姿が掻き消える。
これも異能なのか、それとも身体能力なのか。
同時に、その数倍の物音を立てて、月読ウタゲさんが飛んだ。
きっと、田中さんを追ったのだ。
遠くの空から、雷が落ちる音がする。
それは、徐々に遠く離れていった。
僕は、ルティエの亡骸を見た。
最後の瞬間、すでに始まりの
すべての人々の母国語がヒノモト語になったと仮定するなら、
「君に、僕の言葉、通じてたのかな」
ルティエの背中を撫でて、ふいにそう呟いてみた。