貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話 作:ぽぶきち
夏休みが始まった。
そして、
クタシさんが退院した。
火傷の跡も、その他の古傷も完治していた。
退院日はもちろん知っていたので、迎えに行った。
行ったのだが、
「クタシ……?」
「なんでしょうか」
病院から帰って少し経った。
横から、クタシがしなだれかかっている。
警護官の制服である軍帽とコートを着ているから、なんというか、少しばかりの背徳感を感じる。
「もう五時間はこうしてるけど……」
「あと六時間はこうさせてください」
体をまさぐられているわけでも、行為を期待されているわけでもない。
ただ、くっつかれている。
左腕を抱きしめられている。
悪の総督にでもなった気分だ。
僕が右手で酒をたしなめば、一廉の大悪党に見えるかも知れない。
そのときにはクタシには着物を着てもらいたい。
「お嫌ですか……?」
「いやじゃない、ただ……」
「ただ…………?」
「暑くないかなって。その服」
僕は目線を飛ばした。
その先には、警護官の制服が畳んで置かれている。
特注した夏物だ。
「生地が違いますね」
「夏用に作ってもらったんだ。暑いかなって」
一応コートなども用意している。
さすがに着ないだろうとは思っていたが、クタシさんは常に正装で臨むタイプのようだ。
怪我は完治したはずだが、手袋もコートも軍帽もすべて着用している。
さすがに部屋だから軍帽は脱いでほしい。
いやこれたぶん、そんな暇がないだけだな。
それに、ちょっと気になる部分もある。
「手袋、変えた?」
「はい、厚手のものを」
以前に付けていた少し薄手のグローブとは違う、少しごわっとした手袋。
なぜそんなものと思ったが、するすると取り外したクタシさんを見て納得した。
その左手には、指輪が嵌っている。
「ダメだったでしょうか?」
「ダメじゃないよ。付けてくれて嬉しい」
クタシを迎えに行くために今日はしていないが、そろそろ他の婚約者に指輪を渡すことになる。
そうなったら遠からず、呉井さんやメトリ、クタシが指輪を隠す必要もなくなるだろう。
さすがにもっと指輪を渡すまでの期間が伸びるなら特注のグローブも買いに行くのだが。
「必要なものがあれば揃えるから言ってね」
「これ以上、必要なものなど……」
「あるよ。クタシは警護官である前に僕の婚約者だ。僕のワガママを聞くと思って、君のワガママを聞かせてほしい」
ちょっと恥ずかしいからそっぽを向きながら言う。
ちらりとクタシのほうへ振り向いたときには、唇が迫っていた。
キスとともに、僕はそのまま押し倒される。
視界の下で、クタシの肢体が艶めかしく動くのがわかった。
「あんまりそういうことばかり言っていると、こういう目にあいますよ」
ベッドに押し倒された僕は、クタシの大きな体に包まれる。
シャツの襟を引き下げて、鎖骨の下あたりまでクタシさんから見えるようにする。
「どういう目にあうの?」
「…………」
「この前クタシにつけられたキスマーク、もう消えちゃった」
クタシの息が荒くなる。
僕を見る目に、明らかに情欲が混ざっていた。
「今日はみんなに言って、担当日を空けてもらったんだ」
「っ……」
「今日一日は、僕はクタシのものだよ?」
最後に、僕はクタシに「おかえり」と言おうとした。
ここがクタシの帰るべき場所だと伝えるために。
だが言えなかった。
唇を塞がれてしまった。
僕は、ずっと口を塞がれたまま、クタシと下半身でも繋がった。
下だけすっぽんぽんになったクタシ。
ゆっくりとしていて、それでいて絡め取るような腰使い。
声を出すこともせず、激しい行為の音もない。
ただねっとりとしたえっちに、僕は五回ほど射精した。
その間、一度も唇を離さなかった。
アジサが夕飯の用意を伝えるために部屋をノックするまで、僕たちはずっと繋がっていた。
嬌声が聞こえずいつものようなまぐわいの音もしないえっちだったので、僕が眠っていると勘違いしたアジサは、起こそうと扉を開いて、そして赤面した。
‐‐‐
食事中。
僕の左は、クタシ。
僕の右は、レイア。
「……♡」
クタシは僕のこめかみに額を押し付けている。
レイアは大人しいと見せかけつつ、僕のふとももの付け根あたりを撫でてアピールしている。
正面に座っているミコが言った。
「大型犬と小型犬じゃん」
言い得て妙かも知れない。
あまりこう例えるのは適切ではないのかも知れないが、どことなくクタシには、昔近所の公民館近くで飼われていた大型犬の雰囲気がある。
クタシが、じわ、と目に涙をためた。
「ちょ、ちょごめんって。馬鹿にしたわけじゃなくて、なかよくなりたくて……その」
「違います。すごく嬉しいんです。私はずっと、見てるだけでしたから」
そうだった。
クタシには、僕が日頃撮った写真を送っていた。
乞われて自撮りを送っていたが、まめに今日あったことなども写真付きで共有していた。
この前花見をしたときには舞い落ちる桜を動画に撮って送ったはずだ。
割烹着を着た呉井さんが、お茶を注ぎつつ言った。
「あなたにも、ユウキ様の警護官として働いてもらいます」
「光栄です……」
クタシの呉井さんを見る目が、前と少し違うような気がする。
なぜだろうと思っていたら、次の言葉でその疑問が氷解した。
「呉井マナ、あなたが『
やはりルティエは有名な
クタシが若干固唾を飲んで尋ねていた。
「あなたは、刀を帯びていました」
「いえ、私だけの戦果ではありません。あなたも知っているでしょう。その場にいたすべての警護官と数多の助力あってのものです。それに、結局あの
呉井さんはこともなげに、返す。
しかし、どこか決意じみたものが声色に混じっていた。
「次はああはなりません。あなたも、鍛えさせてもらいます」
「承知しています。」
こういう固い会話をしているなか、僕はシリアスな雰囲気に負けて、正面でもっきゅもっきゅと食べ物を咀嚼しているミコを見ていた。
シマリス……?
見ていると僕もお腹が減ってきた。
ミコの食べっぷりは食欲増進色より効果があるかも知れない。
ちょっと気まずそうにしながらも口元に食べ物を運ぶ動作は止まっていない。
「ともかく、強い人が来てくれてよかったっす!」
「私は、強くは……」
「強いっすよ! 私たち三人を止めたんすから!」
ライカの言葉に、アジサ、委員長、メトリが、びくりと肩を震わせる。
まじかよ、という瞳でクタシを見ていた。
あと──シズさんもそういう目をしていた。
ライカに握手された手をぶんぶんと振られて、クタシはとまどいながらもどこか嬉しそうだ。
メトリも握手を願い出ていたが、メグにたしなめられていた。
多分、思考を読んで叛意がないかどうか確かめようとしているのだと思う。
僕は、台所のほうに目をやった。
女性が一人、そこで調理をしている。
アジサたちの母、山田ミコトさんだ。
お義母さんだ。
花見のあと、彼女から詳しく話を聞いた。
最近変わったことはなかったか、とか、そういうのだったと思う。
『フィットネスに通いました、健康のために……。
あ、そういうのではない……? そうですよね……』
『予定していない空調のメンテナンスの業者の方がいらっしゃいました。
どうやら政府の環境管理対策の一環のようで……。
調べると確かにそういったものがありましたので、招きました……』
お義母さんの言葉に、メトリは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
『絶対に盗聴器をしかけられています。管理委員会の常套手段です』
これまでの任務のなかで、そういったことをメトリ自身何度もしたことがあるらしい。
多くの場合は、新人工作員の仕事の付き添いという形で、実際に手ずから仕掛けたことはないとのことだったが。
話し合った結果、お義母さんは、家政婦という体でここに住んでもらうことになった。
しかし、これまでの仕事や近所の付き合いなどがあるはずだ。
それをいきなり断ち切って学園寮で働くというのは無理があるのではと思った。
しかし、
『私はその、前々からご近所の方には退去をもとめられていたので』
退去をもとめられていた。
最初は聞き間違いかと思った。もしくは意味を取り違えているのか、なにか致し方ない事情があるのかとも。
事実は、迫害だ。
お義母さんは、
だから、その血に
同じ空気を吸うと、自分も、もしくは自分の子どもが
そんなありもしない噂をまことしやかに囁かれ、玄関には「出ていけ」や「薄汚れた血」と張り紙をされ、家を長く開けると部屋を散々に荒らされ、金目のものは無くなっている。
庭にはゴミが投げ込まれる。
何をされるかわからないから、飼っていた猫も里子に出すしかなくなった。
それがメトリが読み取った情報だった。
僕は勘違いしていた。
もっと早く、彼女をここに連れてくるべきだった。
彼女を一人にするべきではなかった。
僕はお義母さんを抱きしめ、告げた。
『僕といっしょに暮らしてください』
お義母さんは、困ったように笑って、頷いた。
『あの子たちに妬けちゃうわ。こちらこそ、ユウキ様がいいなら……』
お義母さんには、この場所で、アジサたちといっしょに暮らしてもらう。
必要なら、婚約だってしよう。
そう決めた。
正直、台所に立っている彼女に目を引かれるのは、前世の妻に似ているからだ。
体型も見た目も何もかも違うが、まとっている雰囲気に若干の名残があった。
仕事で使っていたエプロンの予備を、現在の料理時につけているからだろうか?
前世の妻も、スーパーの店員で、出会ったときにはエプロンをつけていた。
だからつい心を惹かれてしまう。
しかし、これは妻の投影であって、お義母さんそのものを見ているわけでもないなと思う。
これから、お義母さんについても知っていけたら良い。
ふと見ると、アジサが僕の視線を追っていたようだった。
おもむろに髪を解いて、低いポニーテールにして肩の前にもってきた。
お義母さんの髪型を真似ている。
そのまま自分の胸をもちあげて僕にアピールした。
反応に困る。それは。