※この作品はR-18です。

貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話   作:ぽぶきち

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第六十九話 一興の試合

 

 

 

 静かに正座する青桐先生が、こちらを凝視していた。

 木ではなく森を見るような、どこか俯瞰的な視線だ。

 ぼんやりしている、とも形容できる。

 

「顧問、こちらの殿方とそのお連れが──」

 

 黒鉄クラハ先輩が、青桐先生に説明を行う。

 仔細を話して、「演習場を共有してもいいか」と確認した。

 

「構いません。よろしければ、むしろ警護官の方々に部員へのご教示をいただきたいほどです」

 

 青桐先生は淡々と返した。

 どうぞ、と隣へと促される。

 黒鉄クラハ先輩が座布団を持ってこようとしたが、僕は断った。

 

 青桐先生の隣には、呉井さんが座った。

 だが、距離がある。

 

 人が数人座れるくらいの距離がある。

 

 青桐先生は、背後にあったヌンチャク?のようなものをずいと自分の左膝の斜め前に出した。

 

 呉井さんも、刀をベルトから抜いて自分の左横においている。

 

 呉井さんがじり、と膝を少しだけ動かすと、

 青桐先生は同じ様に少しだけ膝を動かして遠のいた。

 

 僕は立ち上がる。

 

 そのまま、呉井さんと青桐先生の間に座った。

 

「ユウキ様……」

「…………。」

 

 こんな場所で間合いを測るのはやめてほしい。

 きっとメトリから話を聞いて、呉井さんは青桐先生のことを敵対勢力だと認識しているのかも知れない。

 

「青桐先生、もう少し近寄って、僕に話を聞かせてくれませんか?」

「…………わかりました」

 

 青桐先生は、少しだけ、いや、ほんの数センチだけ僕に寄った

 ──ので、僕が青桐先生の真横に座ることにした。

 

「……!?」

 

 パーソナルスペースが大きいとか男性に抵抗があるとかではなさそうだ。

 単純に遠慮しているように見えた。

 どうしてだろうか。

 

 そして僕の隣、

 呉井さんと僕の間に、なぜかメトリが座る。

 

 アジサたちは、撃剣部の部員の方々と竹刀で打ち合いをするようだ。

 

 予想と異なり、アジサは先輩と打ち合ってほぼ互角だった。

 ミコのほうは、何回か転がされている。

 かけよりたい感情をぐっと堪える。

 

「アジサさんは、やはり膂力もありますが、少しばかり剣を振るっていた影が見えます」

「……たぶん、呉井さんと稽古していたからだと思います」

「なるほど、それで……」

 

 青桐先生は目を薄く細めて、アジサたちの練習風景を見ていた。

 ミコの攻撃が流されて倒れた。

 僕が思わず膝を上げると、横にいたメトリにそっと押し戻される。

 

 それを見て、青桐アオイ先生は少しだけ微笑んだ。

 笑った顔を見るのは、久しぶりかもしれない。

 

 立ち上がったミコが、構えを変えた。

 先輩と競り合いに持ち込んで、押し飛ばした。

 

「それに、ミコさんも凄まじい執念がありますね。その理由も、納得できるところです」

「僕は、ミコたちに強さは求めていません」

 

 そう返すと、逆隣から、

 

「だからですよ」

 

 と言葉が飛んだ。メトリが、膝からずらして僕の太ももを撫でながらそう言っていた。

 

「ユウキ様はご自分のこれまで成してきたことの大きさがいかほどかご存知ですか? 例えば私などは元々このようなセクハラをする人間ではありませんでしたが、いまでは正座したユウキ様のおみ足を真横から拝見していると自然と痛い痛い痛い痛い悪かった呉井マナやめろ肉がもげる」

 

 逆側から呉井さんに太ももをつねられたらしいメトリが悶絶していた。

 痛みに耐性のあるらしいメトリをここまで言わせるなんて呉井さんはかなりテクニカルなようだ。

 

 演習場中央に目を向けると、アジサが、先輩から明確に一本を取っていた。

 

「逆胴……?」

 

 青桐先生がぽつりとつぶやく。

 

「先生、よろしければ……」

 

 混ざって練習していた黒鉄クラハ先輩が、いつのまにか青桐先生の側へやってきていた。

 

「本日もご指南をいただけませんか」

 

 黒鉄クラハ先輩の後ろに、彼女に打ちのめされて倒れている部員の方々が見えた。

 若干息を上げながら、彼女は青桐先生に指導を請う。

 

「流石ですね。ですが今回は男子様が──」

「僕は構いませんよ」

 

 元より歓待を受けようなんて気はないのだ。

 ただ、僕は眠り戦姫の強さや武道に詳しくないから話を聞こうと思っただけだ。

 

「ぜひ、私もご指南いただきたいですね」

 

 メトリが、少し工作員モードになって青桐先生にそう語りかけた。

 

「体技大会を前にして同じ剣術家のみの戦いでは飽きるでしょう? ここは一つの余興として、私と勝負しませんか」

 

 メトリは、ジャケットを脱いだ。

 ネクタイも外すようだ。

 本気の姿が見れるかも知れない。

 

 怪我をするほど本気ではしないだろうから、僕はメトリのジャケットをたたみながら、様子を見守る。

 

 青桐先生は、無感動にメトリの提案を受け入れた。

 手で、黒鉄クラハ先輩を退かせる。

 

武具(サブウェポン)は?」

「私は使いませんが、あなたは使用していいですよ」

「なら私も徒手で」

 

 両者ともに立ち上がる。

 部員たちは自然と横にそれていた。

 打ち込みに熱中していたアジサがめちゃくちゃ驚いていた。

 

 メトリは、この前の件から青桐先生を敵視しているようだ。

 手袋を脱いで、剣呑な気配を漂わせていた。

 

 互いに挨拶をして、向かい合う。

 

「ふっ……」

「…………」

 

 メトリが、薄く目を見開く。

 目を合わせようとしているようだったが、青桐先生は少し下を見ている。

 なんというか、影を見ようとしているような雰囲気だ。

 

「──」

 

 メトリの抜き手が放たれる。

 それを、なんなく青桐先生は手でそらした。

 

 がくん、と、メトリの体から力が抜けた。

 

 脱力というより、大きな筋肉の動きを停止させられたような現象に見える。

 

 合気道というのは少し違うから、あれが青桐先生の異能なのかもしれない。

 相手を停止させる異能を使っていたというのは、ライカからもメトリからも聞いている。

 

 メトリの目は、動いていた。

 多分、人体そのもの勢いを止めることはできても、その内部で完結する動きを止めることはできないのだろう。

 

 それに、

 青桐先生の異能が触れることで発動したというのなら、

 メトリの異能だって、触れることで発動する。

 

 メトリの気配が消えた。

 消えた、ように思えたが、確かにそこにいる。

 

 体をおとすように青桐先生の後ろに潜り込んで、裾を掴んだ。

 投げるつもりだ。

 

 青桐先生は身を翻して着地するとともに、神速でメトリに掌底を放つ。速すぎて見えづらいが、たぶん掌底だと思う。

 

 メトリが、躱す。

 

 一撃、二撃、三撃。

 

 青桐先生の攻撃がメトリに当たらない。

 掴んで停止させることができない。

 

 普通、思考などを見ることが出来たとしても、相手の視点と照らし合わせて自分に向かってくる攻撃を防ぐことなど到底できないと思う。

 それらを動作として日常的に身に着けた武術家に対してならなおさら。

 しかし、メトリはできている。

 

 青桐先生の動きが止まった。

 

 メトリが焦った表情に変わる。

 

 どちらも動かない。

 

 数秒。

 痺れを切らしたのはメトリだった。

 

 ほんの少しだけ、体を傾けた。

 その瞬間、メトリの襟首が瞬時に掴まれ、一本背負いで地に押しつけられる。

 

 異能で停止させず、青桐先生はメトリのやり方で真っ向から対応したようだった。

 

「参った……」

「とてもよい動きでした。流石、ユウキ様の警護官です」

 

 青桐先生は、丁寧に応じてから、少しだけズレたメガネをもどしていた。

 

 メトリが打倒青桐先生を掲げてさらに鍛錬に熱を上げることになるかもしれない。

 あんまり無理はしてほしくない。むしろ青桐先生と定期的に鍛錬させてもらったほうが、メトリにとって健全な刺激になるような気がする。

 

「では、黒鉄──」

「その前、次は私と。」

 

 呉井さんがずいと立ち上がった。

 

「呉井警護官。私は、あなたに到底敵いませんが……」

「いえ、ぜひ学ばせていただきたい。私は、殺す方法しか知らないので」

 

 多分呉井さんは、メトリが青桐先生に負けたことで僕の警護官たちが侮られることを避けたいのだと思う。

 

 青桐先生は、自分が座っていた場所に戻る。

 部員の一人が竹刀を渡すが、手で制した。

 ヌンチャク?のようなものを掴む。

 

 よくみたらヌンチャクじゃない。

 棍が一つ多い。

 そういえばアジサが、青桐先生は三節棍を使うと言っていた。

 これがそれなのか。

 

「では、あなたがやりやすいように、首に当てたら一本ということでどうですか」

「了解しました」

 

 青桐先生が、三節棍を軽く握る。

 すると、ぱちぱちぱちと関節部が自動的に繋がって、棒になった。六尺棒と表現していいだろう。

 

 呉井さんは、アジサから竹刀を借りていた。

 

 先輩曰く、呉井さんは部内で憧れの存在らしい。

 だからだろうか、向かい合った二人を囲む部員たちは、さきほどよりも一層緊張した様子で、固唾をのんで見守っている。

 

 部長らしき人が、合図を担当すると申し出ていた。

 

「青桐担任」

 

 呉井さんは、害意も敵意もない平然とした状態でかたりかけた。

 

「よく戦えますね。その状態で」

 

 合図が叫ばれる。

 

 どちらも動かなかった。

 いや、動いた。

 

 呉井さんが、ゆっくりと青桐先生に近づいた。

 

 だが青桐先生は反応しない。

 

 すでに彼女と呉井さんの間合い以内に踏み込まれているはずだ。

 でも反応しない。

 

 いや、気づけていない……?

 

 呉井さんが竹刀を振った瞬間、

 

「……ッ」

 

 青桐先生は動いた。

 六尺棒で、迫る切先を流そうとした。

 

 だが、それよりも切先が青桐先生の首に触れる方が早かった。速かった。

 

「参りました」

 

 呉井さんは難なく勝利した。

 道場にいるものたちは、唖然としていた。

 

 そして、呉井さん自身も、少し驚いていた。

 おそらく、青桐先生に勝利したことじゃない。

 

 確か、青桐先生の振るったその武具(サブウェポン)に触れたものは、動きが止まる。そうアジサから聞いた。

 武具(サブウェポン)を体の一部とすることで、その武具(サブウェポン)の接触を"触れた"判定にすることができる、ということだ。

 

 呉井さんの竹刀は青桐先生に触れたが、その後、勢いのまま青桐先生の六尺棒も竹刀に触れた。

 が、呉井さんの動きは停止していなかった。

 

 僕はそれが青桐先生が異能を発動しなかったせいだと思っていたが、同時にあの一瞬の差でそんな判断ができるのかとも思う。

 

 呉井さんは、道場の隅を見た。

 

 手に持っている竹刀を自分に渡した、アジサの方を見ていた。

 

 

 

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