※この作品はR-18です。

貞操逆転世界で異能と体質で差別され男性の精液を定期注入されないと動けなくなる ”眠り戦姫” たちを性欲にまかせた婚約セックスで救いまくる話   作:ぽぶきち

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第七十三話 決闘

 

 

 

 僕たちは先日のように撃剣部の演習場に来ていた。

 

 早朝の陽光が、和風な演習場に日陰を落としている。

 

 朝練で、まだ人は少ない。

 朝早くに参加するのは、今日が初めてだった。

 

「正直、意外でした」

 

 僕の隣で青桐先生は言う。

 僕の逆側に座る呉井さんが、彼女に注視する気配があった。

 

「男子様が、いくら婚約者のためとはいえ、このような場所に足繁く赴くなど」

 

 青桐先生は、確かに会話を目的として喋っている。

 しかし、

 淡い表情、

 意志を感じさせないその瞳が、

 すべてをつぶやきのような雰囲気に変えている。

 

「いえ、僕はちゃんと目的があってこの場所に来ていますよ」

「目的……?」

 

 ふっ、と息を吐く。

 僕は覚悟を決めた。

 

「青桐先生」

「……はい、なんでしょう」

「僕と決闘してください」

 

 しん、と、辺りが静まりかえる。

 さきほどまで掛け声をあげながら熱心に打ち込みをしていた部員も、ぎょっとした様子でこちらを見ている。

 

「それはつまり、貢献値を払って、ユウキ様の警護官方と手合わせしろ、ということですか」

「違います」

 

 僕は制服のネクタイに手をかけた。

 

「僕一人と、決闘してください」

 

 

 ‐‐‐

 

 

 道着を借りた。

 

 更衣室で制服から道着へと着替えながら、思い出す。

 

『青桐アオイは薬物依存に陥っています』

 

 メトリが青桐先生の思考を見て知った、彼女の秘密。

 

『以前、委員長様が使っていた廉価な睡眠負債薬。A型もしくは旧型と呼ばれるものですが、青桐アオイはこの過剰摂取によって、五感情報を正しく認識できなくなっている』

 

 その違和感は、呉井さんも気づいていたようだった。

 あの時、呉井さんが青桐先生に一本とったとき、まるで認識されていないかのように接近していた。

 

『青桐アオイは、目がほとんど見えていません』

 

 納得した。

 これまでの様々な疑問が氷解した。

 

 教室でメトリが僕を襲っているのを目撃したときは反応が薄かったのに、

 アジサとの初夜の翌日に連絡したときは大きく動揺していた。

 視覚情報と聴覚情報の違いだ。

 

 それに、メトリに襲われた時、青桐先生は「窓が開いていたから来た」と言っていた。

 

 なんで、「灯りがついていたから」と言わなかったのだろうと思った。

 

 おそらく、"動いているもの"しか認識できなかったからだ。

 窓が開いて、カーテンが揺れていたから、戸締りがされていないとわかったのだ。

 

 プリントにあった、『追記、1-21は体技大会不参加の旨、伝えること』を伝達し忘れたのも。

 予定にない追記情報を"読めなかった"からだ。

 

『睡眠負債薬の摂取を断てば、

 これまでの積もりに積もった傾眠性が表出する。

 さらには依存症状も出る。

 そして……しばらくの期間、完全な盲目状態になる』

 

 メトリは、僕が青桐先生を諦める理由を作るため、事細かに教えてくれた。

 

『A型の睡眠負債薬を摂取し続けるため、青桐アオイは校長に安価で取り寄せと融通をしてもらっています。その代わり、校長の命令に従うことを条件付けられている』

 

 青桐アオイ先生は、いまクラスから、いや、学年全体から恐れられている。

 平気そうに見えても、辛いはずだ。

 

 道着を着終わった。

 帯を締めるのに、少し手間取ってしまった。

 

 演習場に出る。

 

 すでに青桐先生は、演習場の中央に佇んでいた。

 

 端には、部員の方々、警護官、アジサとミコ。

 

 警護官のみんなとアジサとミコは、僕を見るなり目を見開いてあわあわしている。

 

「よくお似合いです」

 

 青桐先生が僕を見る。

 でも、僕の顔を見るというよりは、僕の影を捉えようとしているような視線だ。

 

 顔を振ると、そこに焦点が定まる。

 笑いかけると、青桐先生はばっと顔を俯かせた。

 

 ……なぜかアジサたちも俯いている。

 

「条件を言いますね」

 

 僕は、青桐先生に、告げた。

 

「組手をして、先に背を地面につけたほうが負けです」

「……わかりました」

「先生が勝ったら、僕に貸し一つをつくれます」

「……っ」

 

 呉井さん曰く、僕への貸しは垂涎の的らしい。

 特に、青桐先生を傀儡にしている校長にとっては。

 

 決闘することは、呉井さんにだけ伝えていた。

 メトリにも内緒にしていたから、後で謝らないといけない。

 メトリは多分、僕がこうすることを是が非でも止めるだろうから、伝えられなかったのだ。

 

「あなたが勝ったら……?」

 

 先生が、問い、僕が答える。

 

 

「青桐先生を一ヶ月ほど、監禁します」

 

 

 言った。

 部員たちがざわめく。

 

「……男子様の、いえ、ユウキ様の権限であれば、私など、決闘をせずとも」

「必要なんです」

 

 ここで青桐先生を自力で抑えられないのなら意味がない。

 これは僕に課された試練のようなものだ。

 

「受けてくれますか?」

「……はい」

「校長に許可が取れたんですね」

「…………」

 

 青桐先生は、いつのまにかつけていた片耳のイヤホンを、外した。

 

 静かに、こちらを見つめている。

 

 僕も用意をしなければいけない。

 

 ゆっくりと、襟に手をかける。

 

 そのまま、諸肌を脱いだ。

 

「なっ!?」

 

 さきほどよりも騒然とする。

 一応胸にさらしを巻いている。

 

 前世の価値観があるから抵抗はないし、むしろさらしに違和感がある。

 

「だ、男子様がそのような……!!」

「勝つためです」

 

 上半身にこの場にいる全員の視線を感じる。

 

 誰かの声が耳に入った。

 副部長、黒鉄クラハ先輩の声だ。

 

「……打撲の、痕……?」

「あ。」

 

 そのつぶやきに、気付かされる。

 

 この前の夕食の際のキスマークが体中に残っていた。

 ほとんど薄れているが、濃厚なものはまだはっきりと見て取れる。

 

 自分の顔に熱が集まっていくのがわかった。

 

「ち、違うんです。これは傷じゃなくて、キスマークで、」

 

 誤解を与えたらまずいと弁解する。

 僕につけられたキスマークのうち、強く吸引されたものをつけたのは……

 

 思わず、アジサのほうを見てしまった。

 ほとんどの視線が、僕からアジサにスライドする。

 

「~~~~~!?!?」

 

 アジサは顔から火が吹き出そうなほど真っ赤にしていた。

 その相乗効果で、僕もいっそう恥ずかしくなる。

 

「青桐先生……ちょっと落ち着く時間をください」

「は、はい」

 

 顔に手を当てて冷やす。

 

 落ち着け。

 落ち着こう。

 

「アジサ、その……照れられると僕まで恥ずかしくなるから」

「そんな格好で何言ってんのよぉ……」

「いや、アジサは……見慣れてるでしょ」

「なな、なななにがよ!?!? 見慣れてないし!! まだ全然慣れないわよ!! いつもと違うし!!」

「そっか、サラシつけてるから……」

「言うな!! 脱ぐな!! 待て!! 私たち以外に見せないで!!!!」

 

 ちょっと混乱して思わずサラシを取ろうとすると、大声で止められてしまった。

 

 語るに落ちている気がする。

 アジサが部員の方々から「流石です」とか言われている。

 

「蜜計、ですか」

「多分違います」

 

 何か納得した様子の青桐先生の言葉を否定した。

 

 段々熱が引いてきた。

 

 息を長く吐いて、集中する。

 

「手加減は、しないでください」

「……心がけます」

 

 目の前の青桐先生の実像に、意識を収束させる。

 

「…………────────」

 

 走馬灯のように、訓練時の呉井さんの言葉が脳裏をよぎる。

 

『素の勝負では、勝ち目はありません。騎士性の発動が必須です』

 

『素手での勝負であることも必須』

 

『武術は一朝一夕で身につきません。ユウキ様には、一つの型だけに絞って、邪道の訓練をしていただきます』

 

『先手を躱すこと、触れること、そして、男性の膂力という強みをぶつけること』

 

 鮮明に、青桐先生の行動を脳内で描く。

 最初に上半身は狙ってこない。

 

 近。僕に接近し、脚の間に爪先を置き、

 払。身を引こうとする僕の足を払って、

 崩。自重を乗せて僕の姿勢を崩し、

 打。持ち直そうとする僕の肩に的確に掌底を放ち、倒され、勝利をもぎ取られる。

 

「では、私が合図をします」

 

 審判を名乗り出た部員の人の声が聞こえる。

 来る。

 

「構え」

 

 腕。脚。全像。

 

 青桐先生に、勝つ。

 

 青桐先生 、勝 。

 

 

 

「始めッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 近、

 

 払、

 

 崩、

 

 

 打────

 

 

 

 

 握。

 

 

 

 打。

 

 避。

 

 貫。

 

 無用。

 

 

 打。打。

 打。引。

 

 

 転。

 

 着。

 

 力。

 

 投。

 

 押。

 

 

 押。

 

 

 

 

 

 

「ユウキ様」

 

 気づいたときには、僕は蹲っていた。

 

 真下に、青桐先生がいた。

 

 青桐先生を、体重を乗せて、倒していた。

 

「私の負けです」

 

 一気に聴覚が戻る。

 静かなうるささが耳を揺らした。

 

 僕は、

 青桐先生の片手を掴み上げ、

 唇が触れ合うくらいの距離で顔を突き合わせ、

 脚を絡めあっていた。

 

 止めていた呼吸が再開される。

 

 慌てて、体を起こした。

 

「す、すいません。痛かったですよね」

「いえ……」

 

 ほんの少しだけ、青桐先生の顔が赤い。

 

 強く掴んだせいではだけた着物を直しながら、青桐先生が言った。

 

「おみそれいたしました。見事です」

「いえ、先生が手加減していなければ」

「していませんよ」

 

 周囲は、静かだ。

 

 見ると、みんな絶句していた。

 

 呉井さんだけが僕に近づき、道着を着せ直してくれた。

 少し体が震えている。

 怖がらせたというわけでもなさそうだ。

 

「約束通り、一ヶ月、私は貴方のものです」

「……いいんですか?」

「ええ、負けたのですから」

 

 青桐先生は、一度立ち上がり、部員に伝えた。

 

「朝練は終わりです。ここにいる部員は一度家に帰るといいでしょう。

 …………更衣室を汚してはなりませんよ。

 そして私は一ヶ月ほどここに来れないでしょう。部長に従い、適宜体技大会に向けた訓練を続けること」

 

 呉井さんの肩を借りて起き上がる。

 

 青桐先生を連れて、演習場を後にすることになった。

 

 退室する直前、

 

「おい」

 

 振り返ると、黒鉄クラハ先輩がいた。

 

「先生をどうするつもりだ!!」

 

 竹刀を構え、こちらに向かってかけてくる。

 心配だろう。

 僕は青桐先生を監禁するといってしまったのだから。

 

 甘んじてその攻撃を受けてもよかった。

 

 でも、そうなると色々と黒鉄クラハ先輩の立ち位置が悪くなる気がした。

 

「呉井さん、おねが──」

「はい。」

 

 疾風のように動き、呉井さんが黒鉄クラハ先輩を取り押さえる。

 

「呉井さん、痛くしないでね」

「ぐぅ、このッ、」

「ここに残って、事情を説明してもらってもいい?」

「どこまで話しますか?」

「できるだけ、青桐先生についてはぼかしてほしい」

「了解しました」

 

 小声で「ごめんね」と呟いてから、演習場を去る。

 

 これからもアジサやミコは撃剣部に通うかも知れない。

 関係を悪くしたくない。

 でも青桐先生の今の状況についても知られたくない。

 呉井さんには無理な注文をしてしまっただろうか。

 

 車に乗って、寮へと向かう。

 

 これからが正念場だ。

 

 

 

 

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