地上へと続くリフトが上がりきり、重いハッチが開いた瞬間――私の目に飛び込んできたのは、赤蓮の炎に包まれ、完全に壊滅状態となったモユランのドックだった。
あちこちで上がる黒煙、破壊された味方機、そして倒れた兵士たち。
「私のせいだ……私があのAIの調整に携わったせいで、みんなが……!」
胸を締め付けるような激しい後悔と絶望。だが、今は立ち止まっている暇はない。私は涙を拭い、目の前で蹂躙を続けるグレイズを強く睨みつけた。
「これ以上、好きにはさせないッ!!」
私はストライカーエウレカのスラスターを全開にし、背部からビームサーベルを引き抜いて、青い結晶に侵食されたグレイズへと真っ向から近接格闘戦を挑んだ。
ガキィィィィンッ!!
サーベルと装甲が激突し、火花が散る。しかし、暴走したグレイズの反応速度は異常だった。
その時、別のドックから猛烈な勢いで飛び出してきた巨大な影があった。ザフト、オーブ、連合の技術が結集した3人乗りの新造機ブレイザーフェニックスだ。
「ええいっ! 俺たちの機体が無いからといって、黙って見ているわけがないだろうが!」
「イザーク、右の出力が少しブレてる! オーブの兵士さん、ナビゲーションを頼むぜ!」
「は、はいっ! ディアッカ隊長!」
自分たちのガンダムに乗れなかったイザークとディアッカが、生き残っていたオーブの兵士1名と連携を取り、急遽この機体を起動させたのだ。
「リン、援護する! 突っ込め!!」
ブレイザーフェニックスの肩部誘導ミサイルと腕部レールキャノンが火を噴き、私の正面にいるグレイズの足元へと牽制の弾幕を張る。
一方、中破したタイタン・イェーガーの陰では、キラとシンがルナマリアの傷ついた身体に急いで包帯を巻いていた。
「ルナ、これで少しは血が止まるはずだ……!」
応急処置を終えたシンとキラは、燃え盛る戦場の中で必死に食らいつく私の機体を見上げ、声を張り上げた。
「リン! 負けるな!!」
「リンちゃん、気をつけて!」
みんなの声がコックピットに響く。
「いける……ッ!」
私はブレイザーフェニックスの援護射撃の隙を突き、踏み込もうとした。しかし――。
ズガァァァンッ!!
「きゃあっ!?」
グレイズの規格外のパワーから繰り出された強烈な一撃が、ストライカーエウレカの片腕を根元から完全に破壊した。装甲が吹き飛び、警告アラートがコックピット内を赤く染める。
「まだよ……ッ!」
私は激痛に顔を歪めながらも、肩部内蔵式3連装ミサイルを零距離で発射。爆炎がグレイズの顔面を包み、敵の巨体が大きくよろけた。
「今だ、電磁誘導ミサイルを……!」
とどめを刺そうとロックオンした瞬間、体勢を立て直したグレイズのカウンターの蹴りが、ストライカーエウレカの胴体をモロに捉えた。
「あああああっ!!」
凄まじい衝撃と共に機体は大きく吹き飛ばされ、瓦礫の山に激突。システムに次々と異常が発生し、モニターがノイズにまみれる。激突のショックでヘルメット越しに頭を強く打ち、私の意識は遠のきかけた。
「リン!!」
イザークの怒号が響く。ブレイザーフェニックスが瞬時に前線へ躍り出て、全弾発射のミサイルとレールガンをグレイズに浴びせかけた。重い連撃に、暴走グレイズの動きが完全に止まる。
「今だ……やって……!」
額から血を流し、薄れゆく意識の中で、私は最後の力を振り絞ってトリガーを引き絞った。
「落ちなさいッ!!」
ストライカーエウレカから放たれた電磁誘導ミサイルが、一直線にグレイズの胸部へ突き刺さる。
特殊な電磁パルスが敵の内部システムを駆け巡り、青い結晶体の輝きが明滅を繰り返した直後――グレイズはガクンと膝をつき、そのまま完全に強制停止した。
プシュゥゥゥ……と、機体の各所から排熱の白煙が上がる。
時を同じくして、近くのハンガーから重々しい駆動音が響いた。一応生き延びていた別のパイロットが、災害救助用モビルスーツロミオブルーを起動させ、戦闘態勢を整えて瓦礫の中から立ち上がってきたのだ。
「こちらロミオブルー……生存者の救助と、残敵の掃討に移行する!」
だが、彼が身構えた時には、すでに周囲に動く敵の姿はなかった。
タイタン・イェーガーが命と引き換えに破壊した1機。そして、私が今、強制停止させた1機。このモユラン降下地点を阿鼻叫喚の地獄へと変えた2機のグレイズの暴走は、大きな犠牲を払いながらも、ここにようやく終わりを告げたのだった。
「司令!!」
シンたちの絶叫が、激しい爆音にかき消された。
キラたちがシャッタードッグの通路を必死に駆け抜けているその頭上を、グレイズから放たれた数発のミサイルが、白煙の尾を引いて容赦なく突き抜けていった。
その視線の先――ペントコスト司令が世界へ向けて通信を発信し続けていたシャッタードッグ上部の司令室に、ミサイルが容赦なく突き刺さる。
一瞬の静寂の後、凄まじい大爆発が巻き起こった。頑強なコンクリートと鉄骨で造られていた管制塔が、内側から吹き飛ぶ炎によって粉々に砕け散り、跡形もなく完全に崩壊していく。崩落する瓦礫が雨のように地上へ降り注いだ。
「そんな……司令室が……ッ!」
キラが愕然と目を見開く。世界の危機を伝えてくれた司令の命が、一瞬にして奪われてしまった。
同時刻、モユラン島の地下最深部。
「司令室がやられた!? くそ、間に合え……!」
私は悔しさに唇を噛み締めながら、愛機**『ストライカーエウレカ』**のコックピットへ飛び乗った。
書類仕事のデータはすべて吹っ飛び、基地内の全システムがパニックを起こしている。だが、ハインラインさんが死守してくれたこの機体のシステムだけは、正常に緑色の光を放っていた。
「ストライカーエウレカ、システム起動! 出力正常、全リンク固定解除!」
ヘルメットを被り、操縦桿を強く握りしめる。
ガコンッ!という重々しい振動と共に、機体は地上へと続く大型リフトへと滑り込んだ。上昇を始めるリフト。頭上のハッチが開き、夕闇と爆煙に包まれた最悪の地上が、少しずつ目の前に広がっていく。
「キラ! シン! ルナマリア! みんな、今すぐ助けに行くから!!」
私はスラスターの出力を一気に上げ、絶望に染まる戦場へとストライカーエウレカを発進させた。
一方、地上では激しい地上戦の余波がキラたちを追い詰めていた。
「シン、こっちだ! 隠れて!」
「ルナ、しっかりしろ!」
キラとシンは、爆風で傷ついたルナマリアを抱えながら、先ほど足元に横転してきた中破したタイタン・イェーガーの巨大な装甲の影へと滑り込み、息を潜めていた。生身の彼らにとって、今の戦場は掠り傷一つが致命傷になる地獄だ。
ズシン……ズシン……。
不気味な足音を響かせ、青い結晶体に侵食された1機のグレイズが、彼らのすぐ近くまで接近してきた。グレイズは頭部のバイザーを細かく動かし、物言わぬスクラップと化したタイタン・イェーガーの様子を観察するように見下ろしている。
グレイズの銃口が、キラたちの隠れる装甲のすぐ近くを向いた。見つかれば終わる。二人が冷や汗を流し、身体を硬直させたその時だった。
「――舐めるなよ……この、化け物どもがぁぁぁ!!」
横転していたタイタン・イェーガーの、潰れかけたコックピットから、血を吐くようなパイロットの叫び声が外部スピーカーを通じて響き渡った。
まだ、生きていたのだ。オーブの兵士は執念だけで、火花の散るコンソールを叩きつけた。
キィィィンという電磁駆動音と共に、タイタン・イェーガーの辛うじて生きていた左腕が跳ね上がる。銃口が、目の前に立ち塞がるグレイズの胸元へ真っ直ぐに向けられた。
ドォォォンッ!!
至近距離から放たれた、タイタンの左腕部レールガンの直撃。超音速の弾丸が無防備なグレイズの胴体を貫き、青い結晶体ごと、その機体を木端微塵に爆砕した。
「やった……!」
シンが声を上げた。
しかし、戦場は甘くなかった。爆炎を切り裂いて、すぐさま背後からもう1機のグレイズが音もなく躍り出てきたのだ。
そのグレイズは、手にした武器を使うことすら一瞥し、冷酷にタイタン・イェーガーを見下ろした。そして、巨体を一歩進めると、タイタンの頭部コックピットに向けて、その巨大な金属の脚を容赦なく踏み下ろした。
ベキバキバキィッ!!!
おぞましい金属の破砕音が、周囲に響き渡る。
グレイズの圧倒的な重量によって、タイタン・イェーガーの頭部コックピットは一瞬にして跡形もなく圧し潰された。スピーカーから聞こえていたパイロットの荒い息遣いは、唐突にブツリと途切れ、静寂が訪れる。
「あ……」
目の前で行われた、生々しく圧倒的な暴力。
タイタンは完全に沈黙し、キラとシンはただ、中破した装甲の影で息を呑み、次の行動を狂おしいほどの焦燥の中で見つめるしかなかった。
地上へと続くリフトが上がりきり、重いハッチが開いた瞬間――私の目に飛び込んできたのは、赤蓮の炎に包まれ、完全に壊滅状態となったモユランのドックだった。
あちこちで上がる黒煙、破壊された味方機、そして倒れた兵士たち。
「私のせいだ……私があのAIの調整に携わったせいで、みんなが……!」
胸を締め付けるような激しい後悔と絶望。だが、今は立ち止まっている暇はない。私は涙を拭い、目の前で蹂躙を続けるグレイズを強く睨みつけた。
「これ以上、好きにはさせないッ!!」
私はストライカーエウレカのスラスターを全開にし、背部からビームサーベルを引き抜いて、青い結晶に侵食されたグレイズへと真っ向から近接格闘戦を挑んだ。
ガキィィィィンッ!!
サーベルと装甲が激突し、火花が散る。しかし、暴走したグレイズの反応速度は異常だった。
その時、別のドックから猛烈な勢いで飛び出してきた巨大な影があった。ザフト、オーブ、連合の技術が結集した3人乗りの新造機ブレイザーフェニックスだ。
「ええいっ! 俺たちの機体が無いからといって、黙って見ているわけがないだろうが!」
「イザーク、右の出力が少しブレてる! オーブの兵士さん、ナビゲーションを頼むぜ!」
「は、はいっ! ディアッカ隊長!」
自分たちのガンダムに乗れなかったイザークとディアッカが、生き残っていたオーブの兵士1名と連携を取り、急遽この機体を起動させたのだ。
「リン、援護する! 突っ込め!!」
ブレイザーフェニックスの肩部誘導ミサイルと腕部レールキャノンが火を噴き、私の正面にいるグレイズの足元へと牽制の弾幕を張る。
一方、中破したタイタン・イェーガーの陰では、キラとシンがルナマリアの傷ついた身体に急いで包帯を巻いていた。
「ルナ、これで少しは血が止まるはずだ……!」
応急処置を終えたシンとキラは、燃え盛る戦場の中で必死に食らいつく私の機体を見上げ、声を張り上げた。
「リン! 負けるな!!」
「リンちゃん、気をつけて!」
みんなの声がコックピットに響く。
「いける……ッ!」
私はブレイザーフェニックスの援護射撃の隙を突き、踏み込もうとした。しかし――。
ズガァァァンッ!!
「きゃあっ!?」
グレイズの規格外のパワーから繰り出された強烈な一撃が、ストライカーエウレカの片腕を根元から完全に破壊した。装甲が吹き飛び、警告アラートがコックピット内を赤く染める。
「まだよ……ッ!」
私は激痛に顔を歪めながらも、肩部内蔵式3連装ミサイルを零距離で発射。爆炎がグレイズの顔面を包み、敵の巨体が大きくよろけた。
「今だ、電磁誘導ミサイルを……!」
とどめを刺そうとロックオンした瞬間、体勢を立て直したグレイズのカウンターの蹴りが、ストライカーエウレカの胴体をモロに捉えた。
「あああああっ!!」
凄まじい衝撃と共に機体は大きく吹き飛ばされ、瓦礫の山に激突。システムに次々と異常が発生し、モニターがノイズにまみれる。激突のショックでヘルメット越しに頭を強く打ち、私の意識は遠のきかけた。
「リン!!」
イザークの怒号が響く。ブレイザーフェニックスが瞬時に前線へ躍り出て、全弾発射のミサイルとレールガンをグレイズに浴びせかけた。重い連撃に、暴走グレイズの動きが完全に止まる。
「今だ……やって……!」
額から血を流し、薄れゆく意識の中で、私は最後の力を振り絞ってトリガーを引き絞った。
「落ちなさいッ!!」
ストライカーエウレカから放たれた電磁誘導ミサイルが、一直線にグレイズの胸部へ突き刺さる。
特殊な電磁パルスが敵の内部システムを駆け巡り、青い結晶体の輝きが明滅を繰り返した直後――グレイズはガクンと膝をつき、そのまま完全に強制停止した。
プシュゥゥゥ……と、機体の各所から排熱の白煙が上がる。
時を同じくして、近くのハンガーから重々しい駆動音が響いた。一応生き延びていた別のパイロットが、災害救助用モビルスーツロミオブルーを起動させ、戦闘態勢を整えて瓦礫の中から立ち上がってきたのだ。
「こちらロミオブルー……生存者の救助と、残敵の掃討に移行する!」
だが、彼が身構えた時には、すでに周囲に動く敵の姿はなかった。
タイタン・イェーガーが命と引き換えに破壊した1機。そして、私が今、強制停止させた1機。このモユラン降下地点を阿鼻叫喚の地獄へと変えた2機のグレイズの暴走は、大きな犠牲を払いながらも、ここにようやく終わりを告げたのだった。