激しい戦闘が一段落し、仮設の司令所に集まったリン、アスラン、キラ、コノエ艦長、そしてマリューたちは、モニターに映し出される甚大な被害状況を重苦しい沈黙の中で確認していた。そして、命を賭して世界へ危機を知らせてくれたペントコスト司令が戦死したという事実が伝えられると、全員が沈痛な面持ちで言葉を失った。
「僕のせいだ……僕がもっと早く異変に気づいていれば、司令を死なせることも……」
キラは深くうつむき、強く拳を握りしめて自分自身を責め立てた。
しかし、その言葉をアルバート・ハインラインが冷静な声で遮った。
「自分を責めるのはおやめなさい。あれは一個人の力でどうにかなる問題ではありません。あなたは大丈夫です」
その毅然とした言葉に少しだけ空気が引き締まる。マリューがすかさず彼に問いかけた。
「ハインラインさん……フリーダム、デスティニー、インパルス、それにストライカーエウレカの修復は終わるの?」
「私を誰だと思っているのです。全責任は私が持ちましょう。3時間……きっちり3時間で修復を終わらせてみせます」
ハインラインは自信に満ちた声で断言した。すでに、ディアッカたちはプラントで暴走したグレイズの部隊を制圧するため、いち早く宇宙へと発進している。彼らも立ち止まっている暇はなかった。
一方、静まり返る医務室では、ベッドに横たわるルナマリアがゆっくりと意識を取り戻していた。
「ルナ! 気がついたか……!」
ずっと傍について彼女を心配していたシンが、安堵に顔を歪める。そこへ、静かにアスランが入ってきた。いつもなら顔を合わせるなり喧嘩が始まる二人だが、今回ばかりは纏っている空気が違った。アスランはベッドの前に立つと、静かに告げた。
「シン、ルナマリア。お前たちはこの作戦から抜けろ」
「……っ! なんでだよ!」
シンは弾かれたように立ち上がり、怒りを露わにして叫んだ。
「俺だって戦う! 絶対に参加するからな!」
「私も……参加します」
ルナマリアも痛む身体を堪えながら、アスランの目を真っ直ぐに見て言った。決して引こうとしない二人の強い意志を前に、アスランは少し心配そうな表情を浮かべたが、やがて小さく息を吐き、その覚悟を理解して静かに頷いた。
その頃、リンは一人、基地の最下層にある秘密の地下格納庫へと足を運んでいた。
薄暗い空間の中で静かに鎮座しているのは、厳重に封印されている純白の機体――ユニコーンガンダム。
見上げるほどの巨体を前に、リンは考える。主力機は3時間で直るとはいえ、世界中で起きているこの絶望的な状況を前にして、果たしてそれだけで足りるのだろうか。
「もしかしたら……いつかこれを使う時が来るかもしれない」
リンはメインコンソールを操作し、いざという時のために、ユニコーンガンダムの封印を解く『鍵』を機械に作らせ始めた。迫り来るさらなる脅威に対抗するため、純白の獣を目覚めさせる準備が誰にも知られることなく静かに進められていく。
そして約束の3時間が経過し、アルバート・ハインラインは宣言通りに全機体の修復と実戦に向けた調整を完了させた。彼は休む間もなく、修復を終えたデスティニー、インパルス、フリーダム、そしてストライカーエウレカをミレニアムの格納庫へと次々に搭載していく。さらに戦力を補強するため、基地に残存していたジェガン13機と、可変機構を持つゼータプラス6機もミレニアムの戦力として配備された。
出撃の準備が慌ただしく進む中、リンは格納庫でハインラインを呼び止めた。
「ハインラインさん、あの……開発を進めていた『新型モビルスーツ』はどうなりましたか?」
「制作はすでに完了していますよ。今は偶然にも、プラント側へと送られているところです」
ハインラインの淡々とした報告を聞き、リンは小さく息を吐いた。プラントにはディアッカたちも向かっている。あちらに新型があるのなら、とりあえずは大丈夫だろうと少しだけ安堵する。
そこへ、艦橋のマリュー艦長から出撃の呼び出しが入った。リンは急いでミレニアムに乗り込み、ハインラインもまた技術サポートとして艦に同乗することになった。
すべての準備を整え、ミレニアムは黒煙のくすぶるモユラン島を後にし、大空へと重々しく発進した。
一方、場面は変わり、暗躍する組織「ユーリカ」の拠点。
薄暗い司令室で、組織のトップに君臨する強化人間、パプテマス・シロッコが冷たい目でモニターを見つめていた。
「シロッコ様、報告します。各地におけるグレイズの暴走計画は、見事成功いたしました」
部下からの報告を聞き、シロッコは余裕を感じさせる笑みをわずかに浮かべた。
「ふん……順調だな。となれば、次に目障りな動きを見せるのはモユランの生き残り……ミレニアムだろう」
彼は即座にミレニアムの撃破を作戦に組み込み、迎撃部隊の編成を命じた。ハイザック、ウィンダム、ギャプラン、メッサーラといった戦力を要求したが、まともに動かせる機体は8機しか揃わなかった。
「数が足りんな。仕方がない、半壊している105ダガーと、鹵獲したジンを4機出せ。弾除けくらいにはなるだろう」
シロッコは不満げに指示を出し、かき集めた混成部隊を艦に載せて発進させた。
さらに彼は、別動隊にも指示を飛ばす。暗礁宙域に浮かぶ小惑星エレニアのドックから、修復を終えたばかりの巨大な悪魔、デストロイガンダムが不気味なスラスターの光を放ちながら出撃していった。