※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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14話

「……おい、誰かいるのか! 返事をしてくれ!」

「ハッチが砂に埋まってやがる、こいつをどかせ! 急げ!」

外部から聞こえる荒々しい男たちの声。二日間、死の静寂の中にいたリンの耳には、その声さえも遠い世界の幻聴のように聞こえました。

バールでこじ開けられるような鈍い音と共に、固着していたハッチが無理やり押し上げられます。その瞬間、コックピット内に差し込んできたのは、目が眩むほどに残酷な砂漠の太陽光でした。

「う、ぁ……」

二日間、暗闇に籠っていたリンの瞳が、光の暴力に悲鳴を上げます。彼女は反射的に、汚れた手で顔を覆い、さらに殻に閉じこもろうと身を縮めました。

「……なんだ、これは。ひどい匂いだ……」

「子供か? ――おい、しっかりしろ! 生きてるか!」

飛び込んできたのは、アークエンジェルの制服ではなく、土埃にまみれた防塵服を着た**レジスタンス「明けの砂漠」**の男たちでした。

彼らが見たのは、中破した漆黒の最新鋭機の中に横たわる、見るも無惨な少女の姿でした。

鼻血と吐瀉物で汚れ、カサブタだらけの顔。

ひどい異臭を放つコックピットの隅で、ガタガタと震えながら謝り続ける、壊れた人形のような姿。

「触らないで……来ないで……ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」

リンは自分を抱き起こそうとする男の腕を、恐怖に染まった瞳で拒絶しました。自分はキラを傷つけた化け物だ。汚れた自分に、誰かが触れていいはずがない。

「落ち着け、俺たちは敵じゃない! ……こいつはひどい、精神をやられてるのか……。おい、早く水を! あと担架だ!」

【砂の檻からの連行】

リンの意識は、激しい過呼吸と衰弱により、再び遠のいていきました。

自分の意志とは無関係に、温かい人間の手によって、冷たい鉄の椅子から引き剥がされます。

「(……まだ、生きてなきゃいけないの……? 誰にも、見つかりたくなかったのに……)」

眩しい光の中で、リンの視界に映ったのは、青い空と果てしなく続く砂丘。

そして、自分を救い出そうと必死に叫ぶ、見知らぬ人々の顔でした。

彼女は最後の一滴まで涙を流し尽くしたような、乾いた瞳のまま、レジスタンスの拠点へと運ばれていきました。救われたはずのその心には、依然として深い絶望の闇が、重く、暗く居座ったままでした。数時間前、レジスタンスの女性たちによって、汚れたパイロットスーツを脱がされ、砂と血にまみれた体を丁寧に拭われたリン。今は清潔な綿のシャツを着せられ、薄い毛布に包まれていますが、その表情には生気が全くありませんでした、、

「……っ、ハァ、ハァ……」

点滴の針が刺さった細い腕を、リンは虚ろな瞳で見つめていました。

コックピットの鉄の匂いや吐瀉物の異臭は消え、代わりに微かな消毒液と、砂漠の夜の冷えた空気の匂いが鼻をくすぐります。しかし、鼻血の後遺症か、それとも精神的な拒絶か、何を食べても飲んでも、鉄のような錆びた味しかしませんでした。

ゆっくり休んでいいと言われても、目を閉じればあの**「赤く染まったモニター」と「切り裂かれたストライク」**が、網膜に焼き付いた残像のように現れます。

「(どうして……私を助けたの……?)」

枕に沈んだ頭の中で、絶望が泥のように渦巻いています。

強化人間としての実験、味方を傷つけた罪、そして独り生き残ってしまった恥辱。

それらが交互に襲いかかり、彼女の体力をじわじわと削り取っていきました。

「大丈夫、もう安心だよ。ゆっくりお休み」

レジスタンスの看護役の女性が、優しく毛布を掛け直してくれました。その温かな「普通の人間」の優しさが、今のリンにはどんな刃物よりも鋭く突き刺さります。

「(優しくしないで……。私は、あなたたちが守ろうとしている平和を壊すために作られた、ただの兵器なんだから……)」

叫び出したい衝動を、枯れ果てた喉の奥に押し込めます。

彼女は、差し出された水にも、温かなスープにも、ほとんど手をつけられませんでした。ただ、壁のひび割れを数えながら、自分の存在が砂のように崩れて消えていくのを待っているかのようでした。

深夜、極度の衰弱と投与された鎮静剤の影響で、リンの意識はゆっくりと深い闇へと沈んでいきました。

けれど、それは安らかな「休息」ではありませんでした。

眠りの中でも、彼女の指先は時折、操縦桿を握るかのように痙攣し、うなされながら、誰にも届かない小さな声で謝罪を繰り返していました。

「……ごめんなさい……キラ君……。……トール……助けて……」

ベッドのシーツを血が滲むほど強く握りしめながら、リンは醒めることのない、孤独で残酷な夢の中を彷徨い続けていました。

レジスタンスの隠れ家。目を覚ましたリンは、見知らぬ天井と土の匂いに怯えながらも、自分が何者で、どこから来たのかを、弱々しい声で語り始めました。

【リンの告白:途切れ途切れの真実】

「あ……あの……私は……アークエンジェル……地球連合軍の、艦の……」

鼻血の跡が残る顔を伏せ、リンは絞り出すようにレジスタンスの男たちに伝えました。自分が守りたかった艦のこと、共に戦った仲間のこと、そして砂漠に落ちるまでの経緯。

「私は……みんなを、守らなきゃいけなかったのに……自分を制御できなくて……。キラ君を……ガンダムを、傷つけて……」

過呼吸気味になりながらも、リンは必死に説明しました。自分が「化け物」かもしれないという恐怖を抱えながら、それでも自分はあの艦のパイロットなのだと。

その話を聞いていたカガリ・ユラ・アスハが、部屋の隅から歩み寄り、通信機を片手に口を開きました。

「……なるほどな。お前が言っている『アークエンジェル』という艦、そして『リン・ベルナル』という名前……すべて繋がったぞ」

カガリはリンの枕元に立ち、少しだけ表情を和らげました。

「つい先ほど、私たちの拠点の無線に、そのアークエンジェルのマリュー・ラミアスと名乗る女性から連絡が入ったんだ。『近海に不時着したが、戦闘中に戦域から離脱し、行方不明になった漆黒の機体とそのパイロットを探している』とな」

「……マリューさんが……私を……?」

「ああ。ひどく心配していたぞ。お前を探すために、そちらからも捜索隊を出したいと言ってきた。あちらもボロボロのはずなのに、まず最初にお前の安否を確認してきたんだ。愛されてるな、お前」

マリューたちが自分を探してくれている。

自分がキラを傷つけてしまったことを知ってもなお、自分を「行方不明の仲間」として必死に追いかけてくれている。

その事実は、リンにとって何よりも強力な心の薬となりました。

「(……私、まだ、捨てられてない……。マリューさんも、キラ君も、私が必要だと言ってくれてる……?)」

キラが生きていること、そして艦の仲間たちが自分を待っていること。

リンの胸の中にあった、冷たくて暗い「兵器としての自己嫌悪」が、仲間の温かさによって少しずつ溶かされていきます。

「カガリさん……私、戻りたいです。……みんなのところに。戻って、謝って……今度こそ、自分の心で戦いたい」

リンは震える手で、差し出された水に手を伸ばしました。

二日間、自分を呪い続けていた瞳には、今はっきりと「希望」の光が戻っていました。

「(私は、実験体の『検体』じゃない。アークエンジェルの、リン・ベルナルなんだ)」

まだ体は思うように動きませんが、彼女の心はすでに、砂漠の向こうにいる仲間たちの元へと駆け出していました。

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