※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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16話

「アークエンジェルを……撃たせない!!」

リンが叫び、コンソールを叩くと、全身の内部フレームから紅い光が激しく噴き上がりました。

アークエンジェルの左舷側に、3機のバクゥが高速で肉薄。450mm2連装レールガンの斉射が、無防備な艦のエンジン部を狙います。しかし、その射線に割り込んだのは、4枚の巨大な盾を掲げた漆黒の影。

ドォォォォォン!!

爆炎が盾を包み込みますが、リンはサブアームを自在に操り、衝撃を分散。

「(熱い……でも、耐えられる……!)」

リンの焦燥に反応し、4枚の盾の表面に紅いエネルギーの膜が結晶化し、実弾を粉々に弾き飛ばします。バクゥのパイロットたちは、自分たちの猛攻を「ただの盾」で完封する異形機に戦慄しました。

 

「次は、こっち……!」

リンは右腕に直結されたバゥ・レールガンを、砂丘を滑走するバクゥへ向けました。

機体全身から溢れる紅いエネルギーが、右腕のコネクタを通じてレールガンへと逆流。

本来の規格を遥かに超えた電磁加速の唸りが、砂漠の風を切り裂きます。

キィィィィィン――!!

放たれたのは、血のような赤い雷光。

直撃したバクゥは、回避行動を取る暇もなく、装甲を飴細工のように溶融されながら爆散しました。さらにその背後の砂丘までもが、衝撃波によって巨大なクレーターに変わります。

 

「逃がさない……誰も、行かせない……!」

戦闘が進むにつれ、リンの精神が昂り、機体との同調率が跳ね上がります。

モノアイが激しく左右に振り切れ、残像を引きながら周囲の熱源を次々とロックオン。頭部の角(ブラスト・ホーン)が紅く明滅し、目に見えない圧力(ジャミング)を周囲に撒き散らし始めます。

背後の死角から飛びかかってきたバクゥに対し、リンは背中を向けたまま、増加スラスターを一気に噴射。爆発的な加速でバクゥの頭上を飛び越し、空中で旋回しながらシールドの角でバクゥの頭部を叩き潰しました。

「リンさん! 助かる!」

キラのストライクが、リンが作った隙を突いてバルトフェルド隊の陣形を切り裂きます。

「キラ君、前だけ見て! 後ろは、私が全部止めるから!」

4枚の盾でアークエンジェルの周囲に絶対的な防御圏を築き、近づく敵を右腕の「赤い雷光」で消し去るリン。

その姿はもはや「護衛機」という言葉では足りない。

アークエンジェルを傷つけるものすべてを拒絶し、焼き尽くす**「孤独な要塞」**。

砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルドは、自身のラゴゥからその凄まじい戦闘力を見つめ、冷静な分析を捨て、戦士としての本能を昂ぶらせました。

「あの紅い光……あの子、機体に喰われているのか? それとも、機体を従えているのか……?」

リンの荒い呼吸とともに、背部のエターナルパックが、まだ見ぬ真の姿を現そうと、内側から激しく軋みを上げ続けていました「キラ君には……触らせない!!」

リンの叫びと共に、ストライカーブラスト護衛仕様が砂を巻き上げ、ストライクの背後に着地しました。その姿は全身から漏れ出す紅い光に包まれ、まるで陽炎のように揺らめいています。

キラを狙うバクゥのレールガン斉射。リンは4枚の盾(クアッド・アイギス)を扇状に展開し、全ての弾丸を正面から叩き落としました。

「(……コックピットは狙わない。機体だけを、止める……!)」

リンの暴走に近い集中力が、モノアイの走査精度を極限まで引き上げます。

右腕のバゥ・レールガンが、リンの意志を汲み取るように赤黒く放電。彼女はキラから学んだ「精密射撃」と、機体の「暴力的な出力」を無理やり制御下に置きました。

キィィィィィン――!!

放たれた赤い雷光は、1機目のバクゥの頭部センサーと脚部付け根を正確に貫通。コックピットを数センチ逸れた破壊。

動力源を絶たれたバクゥは、爆発することなく砂漠に崩れ落ちました。

間髪入れず、2機目のバクゥがビームサーベルを展開して飛びかかります。

リンはレールガンを撃たず、増加スラスターを逆噴射。機体を一瞬で沈ませると、ツギハギのサブアームに保持された大型シールドで、敵の懐へ潜り込みました。

「そこ……どいて!!」

盾の角がバクゥの胴体を強打。紅いエネルギーを纏った盾は、物理的な打撃以上の衝撃波を叩き込み、コックピットブロックだけを残して敵の四肢をバラバラに粉砕しました。

「な、なんだあの動きは……! コックピットを外して、機体だけを無力化しているのか!?」

周囲で包囲網を築こうとしていた他のバクゥのパイロットたちに、戦慄が走ります。

リンのモノアイは、キラと戦うラゴゥをもその視界に捉えていました。

全身のブラッド・クラックから溢れる光が、砂漠の夜を不気味に赤く染め上げます。

鼻血がシートに滴りますが、リンの指先は驚くほど静かに、次々と迫る敵の「駆動系」だけをロックオンしていきます。

「……キラ君。ラゴゥに集中して。雑音は全部、私が消す」

次々と沈んでいくバクゥ。しかし、そのどれもが爆発せず、ただ物言わぬ鉄の塊となって砂に埋もれていきます。

リンが振るう4枚の盾とレールガンは、もはや「兵器」ではなく、愛する仲間を守るために世界を拒絶する**「絶対的な壁」**となっていました。

エターナルパックが、リンの「不殺」と「守護」の矛盾した激しい熱量に反応し、内側から激しい金属音を立てて咆哮を上げています。。激戦が続く中、バルトフェルド隊の波状攻撃はさらに激しさを増します。リンの「不殺」を貫く戦い方は、必然的に敵を足止めする時間を長引かせ、機体への負荷を極限まで高めていきました。

「くっ……まだ来るの……!?」

リンのモノアイが、砂丘の影から次々と現れるバクゥの増援を捉えます。右腕のバゥ・レールガンは連射によるオーバーヒート寸前。全身のブラッド・クラックからは、警報のような真っ赤な光が激しく明滅していました。

左右から迫るバクゥのビームサーベルが、ストライカーブラストを切り裂こうと襲いかかります。リンは4枚の盾を必死に操り、キラの背後とアークエンジェルの進路を守りますが、無数の衝撃が盾の限界を越え始めていました。

ガシャァァァン!!

「あ……っ!」

ツギハギのサブアームに保持されていた大型シールドの1枚が、度重なるレールガンの直撃に耐えかねて粉砕されます。さらに、左腕にマウントされた盾も、敵のミサイル斉射を受け、装甲板がひしゃげて地面に転がりました。

「(盾が……足りない……! このままじゃ、みんなが……!)」

リンの視界が、鼻血と過呼吸で白く霞みます。残された2枚の盾も火花を上げ、機体全身が悲鳴を上げていました

絶体絶命の瞬間。リンの耳に、聴き慣れた、しかし今は何よりも心強い通信が飛び込んできました。

「リン少尉、無理をしないで! ゴットフリート、うてぇッ!!」

マリューの鋭い号令と共に、アークエンジェルの主砲が大気を震わせました。巨大なビームの奔流が、リンの背後に迫っていたバクゥの群れを一掃します。

「バリアント、照準固定! リンの周囲の敵を排除して!」

ナタルの冷静な、けれど必死な指示。

「お嬢ちゃん、一人で背負い込みすぎなんだよ! 弾幕張るぜ!」

バジルールやサイ、カズイたちの声と共に、艦の至る所から対空防御火器が火を吹き、リンを包囲していた敵機を押し戻します。

「みんな……。……私を、助けてくれてるの……?」

モニター越しに見えるアークエンジェルの勇姿。自分を守るために放たれる無数の光。

今まで「自分が守らなければ」という強迫観念だけで戦っていたリンの心に、温かい衝撃が走りました。

かつては絶望し、砂の中に沈もうとした自分。

機体を「呪いの道具」としてしか扱えなかった自分。

でも今、みんなが自分を「仲間」として、必死に守ろうとしてくれている。

「(……私は、一人じゃない。みんなと一緒に、帰るんだ……!)」

リンの頬を涙が伝い、鼻血と混じり合います。しかし、その瞳にはかつてないほど力強い光が宿っていました。

彼女の感情の昂りに呼応し、機体全身から溢れていた暴走気味の紅い光が、一瞬にして**「静かな輝き」**へと変化しました。

壊れかけの残りのシールドが、紅い光の膜に包まれ、修復されるかのような神々しさを放ちます。

エターナルパックが低く、頼もしく拍動しました。

「ありがとうございます……皆さん。……行きます!!」

アークエンジェルの援護射撃という「盾」を背負い、リンは再び前を見据えました。壊れた盾を捨て、残された武装を握り直す彼女の動きには、もう迷いはありませんでした。

キラのストライクとバルトフェルドのラゴゥ。互いの全力を出し尽くした激突の末、勝負は決しました。機体は大破し、逃げ場を失ったラゴゥを前に、キラは通信を開きます。

「……もうやめてください! 降伏を! お願いだ……!!」

必死の呼びかけ。しかし、バルトフェルドは静かに微笑み、戦士としての誇りを捨てずに最後の一歩を踏み出します。

「……負け惜しみは言わんさ。だがな、坊主……戦争には、終わり時ってのがあるんだ」

直後、激しい爆炎が砂丘を飲み込みました。

「バルトフェルドさぁぁぁぁぁん!!」

キラの絶叫が砂漠の空に虚しく響き渡り、ストライクはその場に崩れ落ちます。

その凄惨な決着の傍らで、リンは冷徹なまでの正確さで「仕事」を完遂していました。

アークエンジェルの援護を受け、壊れかけた2枚の盾を掲げたストライカーブラストは、キラとラゴゥの決戦に手出しをさせまいと、残るバクゥ隊を完全に封殺していたのです。

「(……終わらせる。これ以上、誰も失わせない……!)」

リンのモノアイが、キラの慟哭に反応して激しく明滅します。全身のブラッド・クラックから溢れる紅い光は、もはや怒りではなく、深い悲しみを湛えた残光のように砂漠を照らしていました。

最後のバクゥが、死に物狂いでリンに飛びかかります。しかし、リンは増加スラスターの噴射で、最小限の動きでそれを回避。

右腕のバゥ・レールガンから放たれた「赤い雷光」は、バクゥの動力部と頭部センサーのみを正確に、物理的に「刈り取り」ました。

「これで……最後!」

ドォォン……と、最後の一機が砂に伏します。

爆発音は一つもありません。リンの周囲には、原型を留めたまま沈黙したバクゥの山が築かれていました。鼻血が頬を伝い、極限の集中から解かれたリンの身体は激しく震えていましたが、彼女は最後までコックピットを撃ち抜くことはありませんでした。

 

爆煙の向こう、跪くストライクと、黒煙を上げるラゴゥの残骸。

リンは、残されたシールドを下ろし、静かにキラの元へ歩み寄ります。

「……終わったよ、キラ君」

機体から漏れる紅い光が、徐々に収束し、静かな漆黒の装甲へと戻っていきます。背中のエターナルパックも、激しい拍動を止め、深い沈黙に入りました。

仲間たちを守り抜き、バルトフェルド隊をほぼ一人で「制圧」しきったリン。しかし、勝利の歓喜はありません。ただ、砂漠の風が吹き抜け、壊れた機体と少年の泣き声だけが、戦場に静かに満ちていました

「……っ、あ……」

リンがわずかにレバーを動かそうとした瞬間、バゥから奪い取り、無理やり紅いエネルギーを流し込み続けていた右腕の大型レールガンが、内部から激しい火花を上げました。

「キィィィィィン……!」という嫌な金属音とともに、コネクタ接続部が赤熱して破断。重厚な砲身が、まるで力尽きたように砂漠へと脱落しました。他機種の武装を強制的にオーバーロードさせ続けた代償は、武装そのものの完全破壊という形で現れたのです。

追い打ちをかけるように、背中から異様な破壊音が響きます。レジスタンスが廃材を組み合わせて作り上げ、リンの「護衛」を支え続けたサブアームが、度重なるシールドの激突と、機体フレームの異常振動に耐えきれず根元から大破しました。

火花を散らしながら、サブアームは最後の一枚の盾を掴んだまま砂の上へと崩れ落ちます。

1日で作り上げた「新生ブラスト」の象徴だった追加武装は、キラを、そしてアークエンジェルを守り抜くという役目を果たし、無残な残骸へと姿を変えました。

右腕は武装を失い、背中のサブアームももぎ取られたその姿は、ボロボロで無惨なものでした。

しかし、装甲の隙間――ブラッド・クラックから漏れていた紅い光は、今はもう暴走することなく、役目を終えた安堵感のように静かに、弱々しく瞬いているだけです。

「(……終わったんだ。……守れたんだよね……)」

リンは鼻血を拭う力もなく、傾いたシートに身を預けました。

レールガンも、サブアームも、4枚の盾も。

すべてを失い、再び漆黒の孤独な姿に戻ったストライカーブラスト。

それでも、その機体はまだ生きていました。

そして何より、アークエンジェルの仲間たちも、涙に暮れるキラも、みんな生きている。

砂漠の太陽が沈みゆく中、満身創痍の黒き機体は、慟哭を続けるストライクの傍らに静かに膝を突き、その長い一日に幕を下ろしました。

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