※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

19 / 119
18話

ストライカーブラストを……元の姿に、戻す?」

アークエンジェルの格納庫。マリューたちの許可を得て、リンとキラは再び漆黒の機体の前に立っていました。

砂漠の決戦で右腕のバゥ・レールガンは破断し、急造のサブアームも盾もすべてを喪失したその姿は、痛々しいほどにボロボロです。しかし、リンの告白を聞いたキラの瞳には、かつてない強い決意が宿っていました。

「うん。レジスタンスのパーツでツギハギにした『護衛仕様』も凄かったけど、あの重装備じゃ機体本来のフレームに負荷がかかりすぎる。大気圏突入時のデータを見る限り、この機体は何もつけていない『素体の状態』が一番、本来の力を発揮できるはずなんだ」

キラはそう言って、整備用デバイスをストライカーブラストの脚部や肩部に接続していきました。

「(……それに、もう二度と、あの『NT-D』なんてシステムにリンさんを乗っ取らせたくない。僕が、OSの深い階層まで潜って、あのプログラムに繋がる回路を徹底的にブロックしてみせる……!)」

キラは心の中でそう誓い、恐ろしいほどの速度でキーボードを叩き始めました。かつてヘリオポリスでストライクのOSを戦闘中に書き換えた時以上の、極限の集中力。リンが命を削って自分を守ってくれたなら、今度は自分が技術でリンを守る番だと、キラの知性が静かに燃えていました。

「ありがとう、キラ君……。私も、手伝うね」

リンはまだ少しおぼつかない足取りながらも、レンチを握り、油にまみれながら作業に加わりました。

壊れた増加スラスターを一つずつ取り外し、レジスタンスが溶接した厚手の防弾プレートをバーナーで焼き切っていきます。

剥がされた鉄板の下から現れたのは、本来の、洗練された漆黒の装甲。そして、ストライクの兄弟機であることを証明する、美しいツインアイのメインカメラの基部でした。

「ツインアイのレンズ、第8艦隊からもらった予備のパーツが残ってるわ。それを使えば、本来のカメラモードに復旧できるはずよ」

格納庫にやってきたマリューが、そう言って新しい光学センサーのパーツを差し出してくれました。リンの告白を聞き、機体への警戒を強めつつも、それでも前を向こうとする二人の若者を、マリューは見捨ててはおけなかったのです。

【 AM 11:00 】

リンとキラ、そしてアークエンジェルの整備兵たちも加わり、機体の「若返り」が急速に進んでいきます。

砂漠の砂を徹底的に洗浄し、歪んだ関節フレームの補正。右腕の破断したコネクタは完全に修復され、標準仕様のハードポイントへと戻されました。

【 PM 04:00 】

頭部ユニットの交換作業が始まります。

砂漠の闇を射抜いていた、あの不気味で鋭いピンク色の「モノアイ」を取り外し、新品のツインアイ・センサーが慎重に組み込まれました。

デバイスを接続し、キラがシステムの再起動をかけます。

カシャァン、という精緻な駆動音。

頭部のスリットの奥で、左右一対のレンズが、本来の静かな、澄んだ光を宿して起動しました。不気味な赤い明滅はどこにもありません。

【 PM 09:00 】

作業は最終段階へ。

背部に残されていた、砂漠戦用の大型バッテリー「エターナルパック」の調整。

キラはデバイスを深く潜らせ、あの「NT-D」の強制駆動プログラムを見つけ出そうと試みました。しかし、不思議なことに、プログラムの本体はデバイスのどこを探しても見つからず、まるでリンの精神と感応した時にだけ現れる「亡霊」のように、完全に鳴りを潜めていました。

「(消せない……。でも、せめてこのパックからの異常出力を抑えるリミッターだけは、何重にもかけておく……!)」

キラは自身の卓越したプログラミング技術で、精神状態に呼応して出力が跳ね上がるプロトコルに頑丈な「軛(くびき)」を打ち込んでいきました。

AM 03:00 】

そして、夜が明ける前。

そこには、砂漠の砂にまみれた異形の姿ではない、かつてヘリオポリスの地下でリンが出会った、あの洗練された姿が蘇っていました。

頭部には鋭いブラスト・ホーン(角)を持ち、脚部には多めのスラスターを備えた追加装甲。PS装甲を起動すれば周囲の光を吸い込むような深い漆黒へと染まる、ストライクの兄弟機――。

「ストライカーブラスト(GAT-X105B)」

ツインアイが静かに輝き、機体はまるで主人の帰還を待つかのように、格納庫の静寂の中に佇んでいました。

「……戻ったんだね、元の姿に」

リンはそっと、綺麗になった漆黒の脚部装甲に手を触れました。装甲の隙間(ブラッド・クラック)から漏れていたあの紅い光は、今はもう、嘘のように静まり返っています。

「うん。これで本来の機動力が戻ったはずだよ、リンさん。武装は連合の標準的なライフルとシールド、それと両腕のバルカンとサーベルだけになっちゃったけど……」

疲労で目を真っ赤にしながらも、キラは少しだけ安心したように微笑みました。

「ううん、これでいいの。大げさな盾や、壊れちゃうような大砲がなくても……私はこの子と一緒に、みんなを守るから」

元の姿を取り戻した黒きガンダム。しかし、その内部に眠る「NT-D」という呪いが完全に消え去ったわけではないことを、二人はまだ知りませんでした。それでも、仲間たちの手によって蘇った愛機を見上げるリンの瞳には、かつての孤独な絶望ではなく、共に未来へ進むための確かな光が宿っていました

「よし、これでメインカメラへのバイパス処理と、セーフティの設定は完了だよ、リンさん」

キラがデバイスから手を離し、額の汗を拭いました。

頭部の奥深く、バックアップ用のモノアイセンサーは物理的にシステムラインを切り離され、その上から新品の美しいツインアイ・センサーが被せられる形でドッキングしています。これで、もし高負荷がかかっても、簡単にあの紅いモノアイへと切り替わることはありません。

そして、機体の全容が格納庫の照明に照らし出されます。

背部には、あの宇宙からリンの命を繋ぎ、砂漠を共に駆け抜けた大型バッテリーユニット**『エターナルパック』**が、しっかりと、誇らしげにその存在感を主張しています。

砂漠の決戦で引きちぎられたサブアームや盾などのツギハギのパーツはすべて取り除かれ、代わりに第8艦隊のコンテナから回収されていたオリジナルのパーツが、本来のハードポイントへとカチリ、カチリと精密な音を立てて組み付けられていきました。

右腕にはオーバーホールされた独自の「バゥ・レールガン」。

両腕と背部のハードポイントには、本来の対ビームコーティングが施された漆黒の4枚の専用シールド「ブラスト・ディフェンダー」。

両腰には、ヘリオポリスの地下で猛威を振るった双刃の「ダブルソードカスタム」。

さらに、両腕のシールドの隙間からは、新設された「2連装ガトリングガン」の頑強な銃口が覗いています。

これこそが、リンがずっと取り戻したかった、あの宇宙でみんなを守るために戦った本来の『ストライカーブラスト』の完全な姿でした。

しかし、今回の改修はそれだけでは終わりません。

「……重い。でも、これならいける」

リンが操縦桿を握り、ゆっくりと機体の両腕を動かします。

その漆黒の両腕がガッチリと保持しているのは、アークエンジェルの貯蔵庫の奥から発見された、戦艦の主砲クラスの破壊力を誇る独立ジェネレーター内蔵型**『メガビームランチャーパック』**でした。

本来なら機体に固定するサブアームが必要なほどの超大型ユニット。ですが、今のストライカーブラストには、砂漠で壊れたサブアームは1基も残っていません。

だからこそ、リンはこの化け物じみた巨砲を、**エターナルパックの圧倒的な電力供給を背景に、両手で直接抱え込む「手持ちの超大型携行兵器」**として運用することを選んだのです。

背中のエターナルパックから太いエネルギーケーブルが伸び、両手で構えたメガビームランチャーへと直結される。アームに頼らず、機体自体のパワーとリンの技量だけで力強くその巨砲を構える姿は、洗練されたガンダムでありながら、どこか泥臭く、執念深い「泥泥の中の戦士」のような凄まじい迫力を醸し出していました。

「180度モニター、視界オールグリーン。追加武装のデータ認識も完璧だよ」

コックピットの左右に広がる180度のアナログモニターに、新調されたガトリング、ダブルソード、そしてメガビームランチャーの文字が静かに明滅します。

「ありがとう、キラ君……! 本当に、ありがとう……!」

背中にエターナルパックを背負い、本来の完璧な盾と矛を取り戻し、さらに両手には戦艦をも沈める新たな大砲を抱えた**「ストライカーブラスト(フルウェポン仕様)」**。

頭部の奥でモノアイが静かに眠りについたその黒きガンダムは、仲間たちの絆と技術によって地獄の底から完全な姿へと生まれ変わり、次なる激戦の海へと向かって、静かにその牙を研ぐのでした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。