※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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19話

「――敵襲ッ!!」

アークエンジェルのブリッジに、サイの悲鳴のような絶叫が響き渡ったのと同時に、改修を終えたばかりの格納庫の照明が一斉に禍々しい赤色(アラート・レッド)へと切り替わりました。

ドンッ!! と激しい衝撃が艦底を突き上げ、格納庫の床が大きく揺れます。

ザフト軍のマルコ・モラシム隊による、水中用MS「ゾノ」と「グーン」の急襲。

「リンさん! まだ最終チェックが……!」

ハッチの外のタラップでキラが叫びますが、リンは迷わずコックピットのハッチを強引に閉鎖しました。

カシャァン! と重厚なロック音が響き、正面の180度アナログモニターが起動します。

左右の死角なく映し出されたノイズ混じりの画面。その視界の端には、先ほどキラが接続してくれた新しい『ツインアイ・センサー』の起動ログが静かに流れていました。

(大丈夫……バックアップのモノアイには、キラ君が何重もロックをかけてくれた。今の私は、暴走なんてしない……!)

背部には、宇宙からリンの命を繋いできた大型バッテリーユニット『エターナルパック』。

そしてそのパックから伸びた太いエネルギーケーブルが直結されているのは、両手でガッチリと保持した、戦艦の主砲クラスの破壊力を誇る独立ジェネレーター内蔵型**『メガビームランチャーパック』**。

「ストライカーブラスト、リン・ベルナル! 出撃します!!」

リニアカタパルトが激しい火花を散らし、漆黒の機体を外の世界へと押し出しました。

一歩外へ出れば、そこは荒れ狂う紅海の海原。

海面を割って躍り出てきたザフトの水中用MS「ゾノ」が、その凶悪なフォノンメーザー砲の砲口を、アークエンジェルのブリッジへと正確に向けているのが180度モニターに映し出されます。

「撃たせるかぁぁぁ!!」

リンは叫び、アームの支えがないその巨砲を、機体の腕力と自らの執念だけでゾノの正面へと力強く突き出しました。エターナルパックから莫大なエネルギーがケーブルを伝って流れ込み、ランチャーの出力ゲージが一気に跳ね上がります。

「そこを、どきなさいッ!!」

――ズガァァァァァンッ!!!

凄まじい反動が、ストライカーブラストの両腕フレームを激しく軋ませました。

しかし、銃口から放たれた極大の光条は、海面を真っ二つに割りながら、ゾノの重装甲を、そして背後の海原ごと一瞬にして蒸発させたのです。

凄まじい水蒸気が爆発的に立ち込める戦場。

しかし、これで終わりではありません。その白い霧の向こう、ストライカーブラストの死角である水中から、今度は別のグーンが獰猛なアイアン・ネイルを剥いて、至近距離へと飛び出してきました。

「しまっ――!?」

両手で抱えたメガビームランチャーは、この至近距離の強襲に対しては重すぎます。ガトリングもまだ起動しておらず、ソードパックのような大剣もここにはありません。

リンは瞬時に判断し、出力を使い果たしたメガビームランチャーをその場にパージしました。

手ぶらになった漆黒の両腕。迫り来るグーンの鋭い爪。

リンはコックピットの中で、歯を食いしばりながら腰のホルダーへと手を伸ばします。

そこにあるのは、実体刃の『アーマーシュナイダー』、そして、高出力ゆえに数十秒しか刃を維持できない切り札『短時間式ビームサーベル』。

さらに、リンはトリガーを深く押し込みました。

「来ないでぇぇぇッ!!」

バリバリバリバリッ!!!

ストライカーブラストの胸部、そして頭部から、**『95ミリMS用イーゲルシュテルン』**が凄まじい爆音と共に火線を吹き出しました。近接防御バルカンの大口径実弾が、突撃してくるグーンの頭部装甲へと容赦なく叩きつけられ、激しい火花と水飛沫を上げて敵の体勢をわずかに揺るがします。

バルカンで敵の視界と突撃を牽制したその一瞬の隙に、リンは腰から引き抜いた武器を構え、荒れ狂う波飛沫の中へと機体を踏み込ませるのでした――。

バルカンの煙がたなびく中、リンは右手のホルダーから実体刃の**『アーマーシュナイダー』**を鋭く引き抜きました。

「ハァァァァッ!!」

海面を蹴り、ストライカーブラストが突撃します。イーゲルシュテルンの弾幕で視界を奪われ、体勢を崩していた1機目のグーンの懐へ潜り込み、分厚い装甲の隙間――首の駆動系へとアーマーシュナイダーを深く突き刺しました。

超振動刃が内部メカをズタズタに引き裂き、引き抜くと同時にグーンが激しい火花を散らして沈黙します。

しかし、水面を割ってさらに2機のグーンがアイアン・ネイルを剥いて挟み撃ちを仕掛けてきました。手持ちの実体ナイフ1本では、左右からの同時攻撃は防ぎきれない――!

「リン少尉、突っ立ちっぱなしは死ぬぜぇッ!!」

激しい風切り音と共に、上空からフラガ大尉の駆るスカイグラスパーが急降下してきました。

猛烈な対空機関砲の掃射が、リンの左側から迫っていた2機目のグーンの頭部へ正確に命中し、敵の突撃を強引に弾き飛ばします。

「大尉……! ありがとうございます!」

「礼は後だ! 右のは任せたぜ!」

最高の援護を受け、リンは即座に右側の3機目へと視線を移しました。4枚のシールド(ブラスト・ディフェンダー)を右側に集中させて敵の爪をガチリと受け止め、生じた隙へ、再びアーマーシュナイダーをそのモノアイ・センサーへ垂直に突き立てます。

ドォォォォォン!!

爆発の衝撃波を浴びながら機体を反転させ、スカイグラスパーの攻撃でバランスを崩していた2機目へ肉薄。むき出しになった推進器へ向けてナイフを深く一閃。これで3機撃破。

だがその時、海原が大きく盛り上がり、これまでのグーンとは比較にならない巨体が姿を現しました。

マルコ・モラシムの駆る、重装甲の水中用モビルスーツ**『ゾノ』**です。

「ちょこまかと……小癪なガンダムめがぁッ!!」

ゾノの巨大な格闘用クローが、ストライカーブラストの胸部を目がけて振り下ろされます。リンはとっさにアーマーシュナイダーで受け止めようとしますが、ゾノの圧倒的なパワーと分厚い重装甲に実体刃が弾かれ、ナイフが手元から海へと弾き飛ばされてしまいました。

「(ダメ……! 装甲ガードも無い、アーマーシュナイダーの実体刃じゃ、あの化け物の装甲は抜けない……ッ!)」

間髪入れず、ゾノのもう一本の腕が、丸裸同然のストライカーブラストの胴体を狙って迫ります。

絶体絶命。180度モニターが真っ赤なアラートを鳴らす中、リンの左手が、腰のもう一つのホルダーへと伸びました。

引き抜いたのは、もう一つの切り札――『短時間式ビームサーベル』。

カチリ、とトリガーを押し込んだ瞬間、エターナルパックから凝縮された莫大な電力が一気に放出され、通常のサーベルを遥かに凌駕する、禍々しいほどに巨大で高出力なビームの刃が激しい火花と共に形成されました。

しかし、これはまだ開発途中の**【試作品】。圧倒的な高出力を叩き出せる代わりに、エネルギーの消費が異常に激しく、【わずか数十秒しか刃を維持できない】**という致命的な制限がありました。

180度モニターの隅で、エネルギー残量のカウントダウンが狂ったように減っていきます。猶予は、一瞬しかありません。

「これで……沈みなさいッ!!」

リンは剥き出しの両腕でしっかりと柄を握りしめ、数十秒で消えゆく決死の光刃を、ゾノの重装甲の胸部へ向けて文字通り命を懸けて突き刺しました。

ジジジジジジジ……!!

「……っ、消える、あと数秒……!」

高出力のビーム刃がゾノの鉄壁の重装甲をドロドロに融解させていきますが、ジェネレーターに達する前に、試作サーベルの寿命が尽きかけて刃が細くなっていきます。

「落っ、ちろぉぉぉぉッ!!」

リンは剥き出しの両腕に渾身の力を込め、消えゆく刃をさらに深く、ゾノの胸部の奥深くへと力任せにねじ込みました。

ドガァァァンッ!!!

試作サーベルの刃が完全にエネルギー切れで霧散すると同時に、融解した装甲の奥深く、ジェネレーターに達した熱量が大爆発を引き起こしました。

「何ぃぃぃ!? 馬鹿な、この装甲をォォォッ!!」

モラシムの絶叫を置き去りにして、ゾノの巨体が内部から激しく弾け飛びます。

リンはエターナルパックのスラスターを限界まで吹かせ、爆炎の中から間一髪でバックステップ。エネルギーを使い果たして冷え切った、ただの鉄の柄となった試作サーベルを握りしめたまま、荒れ狂う紅海へと着地しました。

ドォォォン……と重い音を立てて、隊長機ゾノが海の底へと沈んでいきます。

「ハァ、ハァ、ハァ……!」

周囲を見渡せば、すでに敵の気配はありません。

盾もレールガンも失った「素体」でありながら、手持ちのメガビームランチャーの一撃、スカイグラスパーとの連携によるグーン3機の撃破、そして寿命数十秒の試作サーベルを限界までねじ込んだゾノの撃破。

合計4機のモビルスーツを、リンは自身の技量と執念だけで完璧に討ち取ってみせたのです。

180度モニターの隅で、新調されたツインアイ・センサーのログが正常なグリーンを表示し続けています。

頭部の奥深く、バックアップ用のモノアイセンサーは、キラがかけた頑強なロックのおかげで、一度も目を覚ますことはありませんでした。

「私……暴走しないで、守れた……。キラ君、私、やれたよ……」

リンはバイザーに滲んだ汗を拭い、静かに明滅するコックピットの中で、ようやく安堵の涙を流すのでした。

「リンさん、僕も行くよ……!」

リニアカタパルトから弾き出されたストライクガンダムは、すでに「エールストライカー」を背負っていた。荒れ狂う紅海の強風に機体を煽られながらも、キラは素早くマルチロックオンシステムを起動し、海面を高速で移動するザフトの水中用MS「グーン」の光点を捉える。

「そこだっ!」

ストライクが上空から高エネルギービームライフルを連射する。しかし、水中に深く潜り込んだグーンには、水面で屈折したビームが届かない。それどころか、グーンは海面から頭部魚雷発射管を覗かせ、アークエンジェルへ向けて一斉に魚雷を放った。

「くっ、艦(ふね)には行かせない!」

キラはエールスラスターを限界まで吹かして急降下し、アークエンジェルの艦首手前に割り込んだ。左腕の対ビームシールドを構え、迫り来る魚雷を強引に盾で爆発させて防ぎきる。激しい水柱と爆風がストライクを襲い、コックピットのフェイズシフト装甲(PS装甲)ダウン警告が黄色く明滅した。

その時、アークエンジェルの対空バルカンをかいくぐり、別のグーンが海面から大きく跳躍。鋭いアイアン・ネイルを剥き出しにして、無防備になったストライクの背後へと肉薄する。

「キラ、上だッ! 避けろ!」

上空からフラガ大尉のスカイグラスパーが急降下し、大型ビームキャノンの一撃をグーンの背部に叩き込んだ。ドォンと激しい火花が散り、グーンの体勢が大きく崩れる。

「大尉! ありがとう!」

「お互い様だ! 水中の敵は厄介だぞ、気をつけろ!」

スカイグラスパーが風を切り裂いて離脱する一瞬の隙に、キラはストライクを180度反転。腰のホルダーから2本の『アーマーシュナイダー』を鋭く引き抜いた。

「ハァァァァッ!!」

着水と同時に、体勢を崩したグーンの懐へ鋭く踏み込む。フェイズシフト装甲のおかげで敵のアイアン・ネイルの反撃を完全に無効化しながら、両腕の超振動ナイフをグーンのコックピット・ハッチへと容赦なく左右から突き刺した。

ズバァァァンッ!!

内部から激しい火花を吹き、グーンが海へと沈んでいく。

その瞬間、リンのストライカーブラストが放ったメガビームランチャーの極大の光条が、遠方の海面を真っ二つに割りながらゾノを一撃で蒸発させるのが、ストライクのモニターにもはっきりと映し出された。

「……すごい、リンさん、あの重いランチャーを完全に使いこなしてる……!」

キラはリンの圧倒的な闘志に目を見張りながら、操縦桿を握り直す。

ストライカーブラストが素体(裸のガンダム)の状態で、残るグーンや隊長機のゾノを相手に決死の近接戦を挑んでいるのが見える。リンが命がけでアークエンジェルを守ろうとしているなら、自分も絶対にここで遅れを取るわけにはいかない。

「僕だって……みんなを守るんだ!!」

キラはビームライフルを構え直し、リンの死角から迫ろうとする新たなザフトの影に向けて、激しい火線を放ちながら戦場を駆け抜けるのだった。ザフトの赤い光点(敵影)が完全にすべて消滅し、終わった――そう思った、まさにその瞬間だった。

『――こちらスカイグラスパー2号機! 応答しろ、カガリ! カガリィィッ!!』

戦域全体の通信回線に、フラガ大尉の悲痛な絶叫が叩きつけられた。

「大尉……!? どうしたんですか!?」

リンはハッとして、180度モニターを凝視する。

水中モラシム隊との激闘の裏側、上空――アスラン・ザラのイージスガンダムとの激しい空中戦の末に、カガリの乗るスカイグラスパー2号機は致命的な被弾を遂げていたのだ。黒煙を吹きながら、制御を失って広大な紅海へと墜落していく2号機の光点が、モニターの端で激しく明滅している。

『スカイグラスパー2号機、ロスト……! 信号、完全に途絶えました……!!』

アークエンジェルのブリッジから、サイの悲鳴のような報告が重なる。

「そんな、カガリが……MIA(戦闘中行方不明)なんて……!」

さっきまで、盾もレールガンも無い傷だらけの「素体」で、胸部バルカンと数十秒しか持たない試作サーベルを文字通り命がけでねじ込み、ようやく4機を討ち取って完璧に守り抜いたはずだった。だが、リンの手元に残されたのは、エネルギーを使い果たして冷え切った、ただの試作サーベルの柄。その勝利の高揚感を一瞬で冷酷な現実に引き戻すように、戦場の空気は一気に凍りついていく。

「カガリィィィッ!!」

通信ウィンドウの向こうで、キラが狂ったように叫んだ。

ストライクのエールスラスターが最大出力で爆音を上げ、戦闘が終わったばかりの荒れ狂う海原へと、カガリを捜して遮二無二急降下していく。

「キラ君、待って! まだ周囲の安全が――」

必死にキラを止めようとするリンの胸を、原作の非情な展開が冷たく突き刺す。

周囲にはまだリンが撃破したゾノの爆発の水蒸気が白く立ち込め、戦闘の硝煙が濃く漂うそのど真ん中で、リンは物語の残酷な歯車が回り始めた音を、ただ激しい動悸と共に突きつけられていた。「キラ君、お願いだから落ち着いて……!」

リンは震える手で操縦桿を握り直し、ストライクの前に立ち塞がるようにスラスターを吹かせた。盾もレールガンも失った傷だらけの「素体」で、キラの視界を遮るようにその漆黒の機体を割り込ませる。

『どいてよリンさん! カガリが、カガリがそこに墜ちたんだ! 早く探さないと……!』

通信ウィンドウの向こうで、キラの瞳は完全に我を忘れて血走っていた。今にも海へ飛び込みそうなストライクの荒い挙動。

「生きてる! カガリは絶対に生きてるから!!」

リンはマイクに向かって、張り裂けんばかりの声で叫んだ。

原作の知識があるからではない。この残酷な戦場で、大切な人を失いかけて狂いそうになっているキラを、どうしても今、繋ぎ止めなければならなかったからだ。

「スカイグラスパーには頑丈な脱出カプセルがある! カガリは強い子だよ、あのくらいの爆発で死ぬわけない! だから……だからお願いキラ君、自分を見失わないで……!」

リンは必死に声を絞り出す。

手元にあるのは、エネルギーを使い果たしてただの鉄の塊になった試作サーベルの柄。エターナルパックの残量も、さっきのゾノとの死闘で限界に近い。

「周囲にまだ、ザフトの潜水艦(ボズゴロフ級)が潜んでるかもしれない……! 今のキラ君までパニックになって飛び込んだら、カガリが見つかった時に、誰がそのカガリを守るの……!?」

『あ……』

リンの必死の訴えに、ストライクの動きがピきりと止まった。キラの荒い呼吸が、通信越しに小さく漏れる。

「大丈夫……大丈夫だから。アークエンジェルも、大尉も全力で捜索してくれる。だから、まずは機体を落ち着かせて……ね?」

リンはバイザーの奥のツインアイをストライクへと向け、優しく、包み込むように語りかけた。

自分の頭部の奥深く、キラが何重ものロックをかけて守ってくれたモノアイは、今も静かに眠っている。キラがリンの暴走を止めてくれたように、今度はリンが、闇に墜ちそうなキラの心を繋ぎ止める番だった。

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