※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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21話

紅海の激闘から二日後。

アークエンジェルの目の前には、ついに目指すべき中立国「オーブ」の領海線が見え始めていました。しかし、その行く手を遮るように、空と海を割って最悪の追撃者が襲いかかります。

アスラン・ザラのイージス、イザークのデュエル、ディアッカのバスター、ニコルのブリッツ――ザラ隊の4機のガンダムです。

幾度もの敗北を経て、彼らの連携は以前とは比較にならないほど強固で、苛烈なものに進化していました。バスターの超長距離砲撃がアークエンジェルの対空防御を強引に削り、ブリッツがミラージュコロイドを駆使して死角から肉薄します。

「くっ、以前より動きが速い……!? コンビネーションが完璧すぎる……!」

キラのエールストライクがビームライフルで応戦しますが、デュエルとイージスの絶妙な十字砲火に退路を断たれ、防戦一方に追い込まれます。

そして、リンのストライカーブラストもまた、限界を迎えていました。

右腕のレールガンも、左腕のシールドも無い、何もかもを削ぎ落とされた漆黒の「素体」。エターナルパックのスラスターを限界まで吹かしてイージスの可変攻撃を紙一重でかわし、胸部バルカンと腰のアーマーシュナイダーだけで必死に食い下がりますが、圧倒的な火力差の前に装甲が次々と火花を散らします。防ぐ盾が無い左腕が、デュエルのビームサーベルの熱線を浴びて激しく火花を吹き上げました。

(ダメ……! 武器も盾も無いこの素体じゃ、4機の連携をこれ以上抑えきれない……ッ!)

アラートが鳴り響くコックピット。新調されたツインアイのログが赤く明滅し、アークエンジェルもまた、集中砲火を浴びて艦体を大きく傾かせていました。

まさに絶体絶命。その時、全戦域の通信回線に、厳格で冷徹な警告音声が割り込んできました。

『――ザフト軍、および地球連邦軍艦艇に告げる。こちらは中立国オーブ軍である。汝らの戦闘行為は、我が国の領海を侵犯している。直ちに戦闘を中止し、速やかに領海から退去せよ』

オーブ領海を目前にした、非情な退去宣告。

このままでは、アークエンジェルはザラ隊の餌食になるか、中立国に拒絶されて行き場を失うかの二択しかありません。ブリッジでその通信を聞いていたカガリは、居ても立ってもいられず、インカムをひったくるようにして叫びました。

「待て! 私はオーブ前代表ウズミ・ナラ・アスハの娘、カガリ・ユラ・アスハだ! アークエンジェルを、この艦を入れてくれ!!」

自分の素性を明かし、必死にすがるカガリ。

しかし、オーブの国防司令官ティリングの返答は、冷酷なまでに動じないものでした。

『……たとえ代表の娘の言葉であっても、国家の理念は曲げられん。繰り返す、直ちに退去せよ』

「そんな、嘘だろ……! カガリの言葉でもダメなのか!?」

通信越しに聞くキラの絶望的な声。

次の瞬間、オーブ領海沿岸の防衛砲台が一斉に火を噴きました。

凄まじい光条が、アークエンジェルと、それを追い詰めていたザラ隊のガンダムたちの周囲へ容赦なく降り注ぎます。激しい水柱が海原を埋め尽くし、爆風がストライカーブラストの機体を大きく揺らしました。

ついに中立国からも牙を剥かれた――そう誰もが絶望した、その瞬間。

アークエンジェルの艦長席のマリュー・ラミアスだけが、目の前のモニターを見て目を見開きました。

「……レーザー着弾予測、本艦を完全に外れている!? これは……!」

降り注ぐ砲撃は激しい音と水柱を上げてはいるものの、アークエンジェルには一発も直撃していません。それどころか、ザラ隊の4機をアークエンジェルから強引に引き離すように、絶妙な配置で着弾していたのです。

『アークエンジェル、我が方の砲撃の煙に紛れ、指定の座標へ微速前進せよ。島にある秘密ドックへ収容する』

ティリング司令官の密かな通信が、マリューへと届けられます。

激しい砲撃の煙幕と水柱に遮られ、ザラ隊が完全に視界を奪われている隙に、満身創痍のアークエンジェル、そしてストライクとストライカーブラストは、導かれるようにオーブの隠れドックへと滑り込んでいきました。

岩壁が閉まり、激しい波音が遠のいていく暗いドックの中。

ハッチが完全に閉じられたのを確認し、リンはコックピットの中でようやく深く息を吐き出しました。

しかし、オーブのこの救助の手は、決して無償の慈善奉仕ではありませんでした。

ドックの照明が点灯すると同時に、アークエンジェルに対してオーブ軍から明確な「条件」が提示されます。

オーブ側の狙いは三つ。

一つ目は、地球軍の最新鋭機でありながら、オーブの技術(モルゲンレーテ社)が関わっている**『ストライクガンダムの持つ実戦データ』の回収。

二つ目は、連合の技術体系のどこにも存在しない、大破寸前の謎の機体『ストライカーブラストのデータ確保と技術供与』。

そして三つ目は、それらのデータを差し出す代わりに行う、武器も盾も無くボロボロになった『ストライカーブラストの完全な改修(アップデート)』**。

これらを条件として飲むことで初めて、彼らはこの隠れドックに身を潜めることを許されるのです。

格納庫の中で、リンはコックピットハッチを開け、見上げるほど巨大なオーブの整備クルーたちが自機を取り囲んでいく様子を見つめていました。

右腕のレールガンも、左腕のシールドも無く、あの数十秒しか持たなかった試作サーベルの柄だけを握りしめて生き残った、漆黒の素体ガンダム。

(ストライカーブラストの改修……。オーブの技術で、この子は新しく生まれ変わるんだ……)

傷だらけの愛機の胸部にそっと手を当てながら、リンはこれからの展開に張り詰めた視線を向けるのでした。

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