紅海の激闘から二日後。
アークエンジェルの目の前には、ついに目指すべき中立国「オーブ」の領海線が見え始めていました。しかし、その行く手を遮るように、空と海を割って最悪の追撃者が襲いかかります。
アスラン・ザラのイージス、イザークのデュエル、ディアッカのバスター、ニコルのブリッツ――ザラ隊の4機のガンダムです。
幾度もの敗北を経て、彼らの連携は以前とは比較にならないほど強固で、苛烈なものに進化していました。バスターの超長距離砲撃がアークエンジェルの対空防御を強引に削り、ブリッツがミラージュコロイドを駆使して死角から肉薄します。
「くっ、以前より動きが速い……!? コンビネーションが完璧すぎる……!」
キラのエールストライクがビームライフルで応戦しますが、デュエルとイージスの絶妙な十字砲火に退路を断たれ、防戦一方に追い込まれます。
そして、リンのストライカーブラストもまた、限界を迎えていました。
右腕のレールガンも、左腕のシールドも無い、何もかもを削ぎ落とされた漆黒の「素体」。エターナルパックのスラスターを限界まで吹かしてイージスの可変攻撃を紙一重でかわし、胸部バルカンと腰のアーマーシュナイダーだけで必死に食い下がりますが、圧倒的な火力差の前に装甲が次々と火花を散らします。防ぐ盾が無い左腕が、デュエルのビームサーベルの熱線を浴びて激しく火花を吹き上げました。
(ダメ……! 武器も盾も無いこの素体じゃ、4機の連携をこれ以上抑えきれない……ッ!)
アラートが鳴り響くコックピット。新調されたツインアイのログが赤く明滅し、アークエンジェルもまた、集中砲火を浴びて艦体を大きく傾かせていました。
まさに絶体絶命。その時、全戦域の通信回線に、厳格で冷徹な警告音声が割り込んできました。
『――ザフト軍、および地球連邦軍艦艇に告げる。こちらは中立国オーブ軍である。汝らの戦闘行為は、我が国の領海を侵犯している。直ちに戦闘を中止し、速やかに領海から退去せよ』
オーブ領海を目前にした、非情な退去宣告。
このままでは、アークエンジェルはザラ隊の餌食になるか、中立国に拒絶されて行き場を失うかの二択しかありません。ブリッジでその通信を聞いていたカガリは、居ても立ってもいられず、インカムをひったくるようにして叫びました。
「待て! 私はオーブ前代表ウズミ・ナラ・アスハの娘、カガリ・ユラ・アスハだ! アークエンジェルを、この艦を入れてくれ!!」
自分の素性を明かし、必死にすがるカガリ。
しかし、オーブの国防司令官ティリングの返答は、冷酷なまでに動じないものでした。
『……たとえ代表の娘の言葉であっても、国家の理念は曲げられん。繰り返す、直ちに退去せよ』
「そんな、嘘だろ……! カガリの言葉でもダメなのか!?」
通信越しに聞くキラの絶望的な声。
次の瞬間、オーブ領海沿岸の防衛砲台が一斉に火を噴きました。
凄まじい光条が、アークエンジェルと、それを追い詰めていたザラ隊のガンダムたちの周囲へ容赦なく降り注ぎます。激しい水柱が海原を埋め尽くし、爆風がストライカーブラストの機体を大きく揺らしました。
ついに中立国からも牙を剥かれた――そう誰もが絶望した、その瞬間。
アークエンジェルの艦長席のマリュー・ラミアスだけが、目の前のモニターを見て目を見開きました。
「……レーザー着弾予測、本艦を完全に外れている!? これは……!」
降り注ぐ砲撃は激しい音と水柱を上げてはいるものの、アークエンジェルには一発も直撃していません。それどころか、ザラ隊の4機をアークエンジェルから強引に引き離すように、絶妙な配置で着弾していたのです。
そう、これはオーブ軍による、世界を欺くための**【救助の偽装攻撃】**でした。
『アークエンジェル、我が方の砲撃の煙に紛れ、指定の座標へ微速前進せよ。島にある秘密ドックへ収容する』
ティリング司令官の密かな通信が、マリューへと届けられます。
激しい砲撃の煙幕と水柱に遮られ、ザラ隊が完全に視界を奪われている隙に、満身創痍のアークエンジェル、そしてストライクとストライカーブラストは、導かれるようにオーブの隠れドックへと滑り込んでいきました。
岩壁が閉まり、激しい波音が遠のいていく暗いドックの中。
ハッチが完全に閉じられたのを確認し、リンはコックピットの中でようやく深く息を吐き出しました。
しかし、オーブのこの救助の手は、決して無償の慈善奉仕ではありませんでした。
ドックの照明が点灯すると同時に、アークエンジェルに対してオーブ軍から明確な「条件」が提示されます。
オーブ側の狙いは三つ。
一つ目は、地球軍の最新鋭機でありながら、オーブの技術(モルゲンレーテ社)が関わっている**『ストライクガンダムの持つ実戦データ』の回収。
二つ目は、連合の技術体系のどこにも存在しない、大破寸前の謎の機体『ストライカーブラストのデータ確保と技術供与』。
そして三つ目は、それらのデータを差し出す代わりに行う、武器も盾も無くボロボロになった『ストライカーブラストの完全な改修(アップデート)』**。
これらを条件として飲むことで初めて、彼らはこの隠れドックに身を潜めることを許されるのです。
格納庫の中で、リンはコックピットハッチを開け、見上げるほど巨大なオーブの整備クルーたちが自機を取り囲んでいく様子を見つめていました。
右腕のレールガンも、左腕のシールドも無く、あの数十秒しか持たなかった試作サーベルの柄だけを握りしめて生き残った、漆黒の素体ガンダム。
(ストライカーブラストの改修……。オーブの技術で、この子は新しく生まれ変わるんだ……)
傷だらけの愛機の胸部にそっと手を当てながら、リンはこれからの展開に張り詰めた視線を向けるのでした。
【ストライカーブラスト・オーブ秘密ドック大改修メニュー】
1. 頭部バルカンシステムの強化
【改修内容】: これまでは牽制用だった頭部バルカンを、内部機関からゴリっと総入れ替え。装弾数を大幅にアップさせ、一発一発の火薬・威力を極限まで引き上げた**「大口径・高威力バルカン」**へと変貌します。
【効果】: 近接戦で敵のセンサーを破壊するだけでなく、グーンやゾノクラスの装甲ならゼロ距離でハチの巣にできるほどの凶悪な火力に進化!
2. 両腕部・捕獲用ネット(アンカー・ネット)の追加
【改修内容】: 盾を失った両腕のスペースに、オーブの技術で作られた特殊超耐熱ワイヤー製の**「捕獲用ネット射出ユニット」**をそれぞれ増設。
【効果】: 突進してくる敵ガンダムや水中用MSを網で絡め取り、一瞬の隙を強制的に作り出す! 近接格闘へ持ち込むための最高の布石に。
3. 腰部:『改良型中型アーマーシュナイダー』への換装
【改修内容】: 左右のサイドアーマーに収納されていた標準サイズのアーマーシュナイダーを撤去。代わりに、一回り刃が大きく、超振動の周波数を跳ね上げた**「改良型中型アーマーシュナイダー」**を新造してマウント!
【効果】: これまで弾かれていたゾノ級の分厚い重装甲も、バターのように真っ二つに切り裂く威力を手に入れた。
4. コックピット周りの徹底強化
【改修内容】: リンの命を守るため、シート周りや隔壁にオーブ製の最新複合装甲(ラミネートインサート)を限界まで追加。さらに、180度モニターの追従性と衝撃吸収ダンパーを最新型へアップデート。
【効果】: 敵ガンダムの直撃を受けても耐えられる堅牢なシェルとなり、コックピット内の安全性は改修前とは比べ物にならないレベルへ。
5. スラスターのエネルギー調整
【改修内容】: エターナルパックと機体各所のスラスターのエネルギーバイパスを最適化。無駄なエネルギー消費を徹底的にカットし、推力配分をより洗練させる。
【効果】: 近接格闘時の爆発的なダッシュ力(瞬発力)が向上し、さらに機動力の維持時間(燃費)も大幅にアップ!
6. ビームサーベルの大改良(短時間式 ⇒ 通常試作サーベルへ)
【改修内容】: あの数十秒しか持たなかった「短時間式サーベル」の柄をバラし、オーブの技術でエネルギーコンデンサと内部リミッターを完全改良。
【効果】: ついにあの圧倒的な高出力を維持したまま、普通の戦闘で何分間も戦い続けられる**「実戦用試作ビームサーベル」**へと完全進化! これでもう、カウントダウンに怯える必要は無い!
「……すごい、これなら……!」
火花が散り、無数の重機が動き回るドックの中で、リンは新しくパーツが組み込まれていく愛機を感動したように見上げています。
何もかも失ったボロボロの素体だったストライカーブラストが、オーブの技術によって、リンの戦闘スタイルに特化した「最高に尖った近接特化ガンダム」へと変貌していく……。
「うん、機体のハードウェアはオーブの技術で完璧になった。……でも、これじゃまだ動かせないよ」
新しく組み込まれた強力なバルカン、両腕のネット、そしてエネルギー効率の変わった試作サーベル……。あまりにも多くの機能が一気にアップデートされたため、ストライカーブラストのOS(オペレーティングシステム)の書き換えと、デバイスの同調(マニュアル調整)が完全に追いついていませんでした。
そこに、「手伝うよ、リンさん」とノートパソコンを抱えたキラが歩み寄ってきます
「バルカンの口径が大きくなったせいで、発射時の反動で機体の軸がブレちゃうみたいだ。……うん、ジャイロの補正数値を書き換えるね。これでトリガーを引いた瞬間、足首と膝のスラスターが自動で逆位相の微噴射をして、反動を完全に相殺できるようにしたよ」
カタカタカタ……と、キラの指が猛スピードでキーボードを叩きます。これにより、動きながら大口径バルカンを撃っても、絶対に照準がブレない完璧な射撃制御が完成しました。
「ネットを飛ばすワイヤーの張力とテンションのデータが、まだOSに入ってない。これじゃ、動く敵にうまく当たらないよ。リンさんの戦闘データから『敵を捕まえる時の間合い』を計算して、予測偏差のアルゴリズムを組み込むね」
キラはリンの過去の格闘戦の癖をすべて分析し、リンが「ここだ!」と思った瞬間に、敵の移動先へ先回りしてネットが広がるよう、照準デバイスを極限までチューニングしてくれました。
「ナイフが一回り大きくなった分、腰のサイドアーマーの重量バランスが変わってる。左右の旋回時にコンマ数秒のラグが出るから、運動性能の基本プログラムを書き換えて……よし、これで素体の時と同じ、いや、それ以上のスピードで動けるはずだよ」
4. 『実戦用試作ビームサーベル』の電力供給コード書き換え
「ここが一番大事だね……。数十秒の制限は無くなったけど、オーブの基本OSのままだと、ビームの出力を抑え込むリミッターが働きすぎちゃうんだ。エターナルパックからの電力供給ラインのバーストプログラムを一部解除して、リンさんが欲しい時に、いつでもあの最大出力を引き出せるように書き換えたよ」
「……これで、デバイスの調整はすべて完了だよ、リンさん!」
キラがパチンとノートパソコンを閉じ、額の汗を拭いながら爽やかに笑いかけます。
オーブの最先端のハードウェアに、キラの天才的なOSプログラミングが組み合わさった瞬間でした。
モニターに表示されたストライカーブラストの全ステータスが、怪しい赤から、完全な同調を示す綺麗な「グリーン」へと一斉に変わっていきます。
頭部の奥深く、キラがかけた頑強なロックのおかげでバックアップ用のモノアイは静かに眠ったまま。新調されたツインアイのログが、キラの調整によってこれまで以上に鋭く、力強い光を宿して暗いドック内を照らしました。
「ありがとう、キラ君……!」
リンがコックピットの中で操縦桿に手を添えると、まるで自分の手足のように滑らかに、そして爆発的なパワーを秘めて機体が脈打つのが伝わってきます。
「……皆さん、ここを見てください」
ドックの片隅で、キラは緊張した面持ちでオーブのチーフ整備士を呼び止めていました。彼のノートPCには、ストライカーブラストの深層OS内に隠されていた、謎のプログラムコードが映し出されています。
「これは……『NT-D』。僕たちが見てきたどんなOSとも違う、機体の限界を強制的に突破させる未知のシステムです。今の改修で機体は強固になりましたが、もしリンさんが激しい格闘の最中に感情を高ぶらせてしまったら……このプログラムが勝手に起動して、機体を制御不能にするかもしれません」
キラは真剣な眼差しで整備士たちに訴えます。
「もしもの時のための緊急停止用パッチを、プログラムの根幹に書き込みたいんです。オーブの技術で、このシステムを『リンさんの意思』に従うように、あるいは最悪の場合は僕の遠隔操作でシャットダウンできるように調整できませんか?」
オーブの整備員たちはモニターを凝視し、「なんて複雑なコードだ……これ、本当に連合の機体なのか?」と驚愕しながらも、キラの卓越したプログラミング技術に押され、その未知なる「NT-D」の解析と封じ込めに着手し始めました。
その頃、リンはアークエンジェルのマリュー艦長やナタル・バジルールら、ブリッジのクルーたちと重要な会議のために艦内へと向かっていました。
「……というわけで、オーブとの技術供与の件、リンさんには直接説明を聞いてもらいたい。今回の改修で、あなたの機体は私たちの戦力の中でも最重要視されているの」
そう言われてブリッジへ向かっていたリンは、ふと格納庫の方向を振り返ります。
今の自分には、アークエンジェルの皆との信頼関係を築くための対話が必要でした。リンが不在の間、愛機の最後の起動試験と微調整を任せられるのは、もうキラしかいません。
リンは通信機越しに、格納庫で作業を続けるキラに声をかけました。
「キラ君、ごめんね。艦長たちとの打ち合わせが少し長引きそうなんだ。……私のストライカーブラストの起動試験と、調整後の最終チェック、お願いしてもいいかな?」
通信の向こう側で、キラが少し驚いたように顔を上げ、すぐに微笑んで答えます。
『……わかったよ、リンさん。責任を持って、完璧に仕上げておくね』
キラはリンの言葉に、不思議な安堵感を覚えていました。
かつては自分がリンを「守る」ためだけにロックをかけ続けていたけれど、今はリンが自分を信頼し、自分の大切な機体を委ねてくれている。その事実が、キラの中で少しだけ、アスランとの戦いに向かう恐怖を拭い去ってくれます。
キラが整備士たちと共に、ナラティブガンダムの――いや、ストライカーブラストの起動スイッチに手をかけます。
「メインフレーム、接続。全システム正常……OSアップデート、完了」
キラが慎重に起動シーケンスを入力すると、ドック全体に重厚な駆動音が響き渡りました。
オーブの手で増強された新型バルカン、捕獲用ネット、そして中型アーマーシュナイダー。全てが美しく整列し、リンの戦闘データを継承したOSが静かに脈動を始めます。
「さあ……動くよ。君の新しい翼だ」
キラの指先が最終コマンドを叩くと、ストライカーブラストのツインアイが、まるで生きているかのような鮮やかな輝きを放ちました。
リンが不在の格納庫で、キラの手によって、真に生まれ変わった漆黒の機体が立ち上がります。「メインシステム、オールグリーン。……うん、完璧だ。これならリンさんも――」
キラがストライカーブラストのコックピットに乗り込み、数分間のテスト運用を行っていた、その時だった。
――バチバチッ!!!
「う、あ……ッ!?」
突如、コンソール全体が血のような赤に染まり、警告音が格納庫中に鳴り響いた。
OSの最深部に眠っていたはずの『NT-D』が、パイロットスーツ越しにキラの生体波動を検知し、強制起動したのだ。
次の瞬間、キラの脳内に、言葉にならない巨大な「意思」と「プレッシャー」が津波のように押し寄せてきた。頭を内側から締め付けられるような激しい頭痛。まるで自分ではない何者かの戦意が、直接脳の神経を侵食してくるような、おぞましい感覚。
「が、はっ……! なんだ、これ……脳に、直接……!?」
キラが苦しみに顔を歪め、操縦桿を握りしめたその刹那。
ガチ、リ。
『――システム、強制シャットダウン。NT-Dプログラム、緊急停止します』
コックピットに無機質なシステム音声が流れ、脳内をかき乱していた嵐のような干渉が、嘘のようにピタリと止まった。
キラが事前にオーブの整備員たちと仕込んでおいた緊急停止用パッチと、キラのコーディネイターとしての強靭な精神力が、暴走しかけたシステムを間一髪でねじ伏せたのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」
シートに深く背中を預け、荒い息を吐きながら汗を拭うキラ。
ドックのスピーカーから、慌てふためいたチーフ整備士の声が飛び込んでくる。
『おい!! 大丈夫か、キラ少年! 今、機体のバイオセンサーの数値が異常に跳ね上がったぞ! 一体何が起きたんだ!?』
キラは通信のインカムを叩き、まだ少し震える声でマイクに向かって報告を返した。
「……すみません、大丈夫です。さっき話していた『NT-D』というシステムが、僕の脳波に反応して勝手に起動しかけました。でも、仕込んでおいた停止パッチがすぐに機能して、システムを落とせました」
『脳波に反応だと……!? 馬鹿な、そんなサイコミュの発展型のようなシステムが、本当に組み込まれていたというのか……』
オーブの整備員たちは、モニターに表示された異常なデータを見て戦慄していた。
だが、ハッチを開けて外に出たキラの視線は、システムデータではなく、ストライカーブラストの**「機体そのもの」**へと釘付けになっていた。
(……おかしい。さっき、頭の中に何かが流れ込んできたあの数秒間……)
キラはキャットウォークから、漆黒の機体の胸部や肩の装甲を凝視した。
一瞬だけ、本当に一瞬だけ、強固なはずの外装装甲に**「細い割れ目(スリット)」**が入り、その隙間から、まるで剥き出しの骨格のような、不気味に赤く明滅する内部フレームが覗いたような気がしたのだ。今は何事もなかったかのように装甲は閉じているが、あれは確実に見間違いではなかった。
(あのシステムが起動すると、装甲が割れて、中のフレームが露出する……? まるで、機体そのものが姿を変えるみたいに……)
背筋に冷たいものが走る。リンはこの恐ろしいシステムを内包した機体で、ずっと戦ってきたのだろうか。
だが、キラはすぐにその恐怖を頭を振って追い出した。
今はあの不気味な割れ目の謎に怯えている時間はない。もうすぐリンがアークエンジェルの人たちとの打ち合わせを終えて戻ってくる。彼女が戻ってきた時に、この機体が完璧な状態で動かせなければ意味がないのだ。
「……いいえ、それよりもデバイスの調整を続けます。バルカンとネットの同調値を、もう一度チェックさせてください。NT-Dの停止パッチの感度も、あと数パーセント上げます」
『お、おい、無理はするなよ……?』
「大丈夫です。リンさんのためにも、この機体を最高の状態にして渡したいんです」
キラは再びコックピットへ潜り込み、ノートPCを膝の上で開くと、猛烈な勢いでキーボードを叩き始めた。
謎のシステムの恐怖よりも、大切な仲間であるリンを二度と危険な暴走に巻き込ませないという強い想いが、キラの指を動かしていた。
次の話はモルゲンレーデの話とかカットして出航するとからはじまるので!