※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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NT-D(覚醒暴走)

ガガガガガガガッ!!!

完全に覚醒したNT-Dシステム。その核となるサイコフレームが、血塗られた紅い光を激しく放ちながら、周囲の空間に渦巻く「目に見えない巨大なエネルギー」を狂ったように吸い上げ始めた。

それは、少し離れた海上で今まさに死闘を繰り広げている、キラとアスランの精神。

「アスラァァァァァッ!!」

「キラァァァァァッ!!!」

ニコルを、そしてトールを失い、完全に理性を失って互いを「絶対の悪」として呪い合う二人の、凄まじいまでの**【純粋な殺意と、逃れようのないドス黒い憎悪】**。

それらが、サイコフレームという最悪の媒体を通じて、リン・ベルナルの脳内へと直接、濁流のように流れ込んできたのだ。

「あ、が、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!???」

人間の脳が耐えられる限界を遥かに超えた、他者の狂気。

キラの引き裂かれるような絶望と殺意、アスランの全てを呪うほどの憎悪が、リンの頭の中で同時に爆発する。自分の意識と二人の殺意がゴチャゴチャに混ざり合い、リンはあまりの苦しさに狂乱した。

「やめて……! 痛い、痛い痛い痛いっ!! 殺さないで、誰も殺さないでぇぇぇッ!!」

過呼吸と激痛、そして他者の狂気に責め立てられ、リンはコックピットの中で激しくのたうち回る。

身体を縛るシートベルトすら引きちぎらんばかりに暴れ、拒絶するように頭を激しく振り回した、その時だった。

ガツンッッ!!!

「う、あ……ッ!?」

凄まじい衝撃と共に、リンの額がコンソールのデバイスへと強く叩きつけられた。

鈍い音がコックピットに響き、割れた額から、ドクドクと生温かい鮮血が溢れ出す。血は一瞬で彼女の顔の半分を真っ赤に染め上げ、フロントモニターに、そして紅く光るデバイスへと飛び散り、滴り落ちていく。

だが、そのリンの血と、苦痛の叫びさえも、暴走するシステムにとっては格好の駆動燃料でしかなかった。

機体のコンソールに飛び散った血が、紅い光に照らされて禍々しく光る。

『――NT-D SYSTEM: OVER-DRIVE――』

『――TARGET SEARCHING……EMOTIONAL SYNC: MAXIMUM――』

「あああああああァァァァァァッッ!!!!! 嫌ぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

リンが涙と血にまみれ、喉がちぎれるほどの悲鳴を上げて叫ぶ。

その瞬間、リンの脳波を完全にコントロール下に置いたストライカーブラストが、ガチ、ガチガチガチッ!と、不気味な駆動音を立てて勝手に咆哮を上げた。

胸部を貫通され、内部フレームを剥き出しにした満身創痍の機体。

しかし、サイコフレームが放つ圧倒的な紅い光の粒子を全身から吹き出しながら、ストライカーブラストは山道の土煙を爆発的に吹き飛ばし、操縦桿を握る主(あるじ)の意志を完全に無視して、のそりと、凶悪な動きで立ち上がった。

感知した殺意の源――キラとアスランが殺し合う、あの地獄の海上へ向けて。

血を流し、絶叫し続けるリンを乗せたまま、暴走する紅い獣がゆっくりと歩みを進め始める。ガキィィィィィンッ……!!!

山道に倒れ伏していたストライカーブラストの巨体が、内側から爆発するような凄まじいエネルギーに耐えかねて、ミシミシと悲鳴を上げながら起き上がる。

「あああああァァァァァッッ!!!」

コックピットを埋め尽くすリンの血と絶叫に呼応するように、機体の形状そのものを創り変える、真の変貌が始まりを告げた。

バキキィィィンッ!

激しい金属音が響き渡り、肩部のフェイズシフト装甲が外側へと力任せに弾け飛ぶ。剥き出しになった内部フレームのあちこちに、まるで生き物のように禍々しい割れ目が走り、その亀裂の奥から、ドス黒く輝く紅い鉱石のような結晶物質が急速に増殖し、装甲を押し破ってドクドクと溢れ出していく。

その不気味な侵食は、一瞬で全身へと伝播した。

右腕も、脚部も、腰部も、そしてアスランのシールドに貫通されていた胸部の生々しい傷口すらも、紅い結晶が無理やり覆い尽くし、機体を一回り大きな、狂暴なシルエットへと変貌させていく。

メインカメラのツインアイの輝きが、安全な緑から、凝固した血のような赤黒い不気味な光へと澱み、戦場の闇を冷酷に射抜く。

さらに、背面に背負ったエターナルパックが、ギチギチとフレームを軋ませながら禍々しい翼のように展開し、その内部から、凶悪な輝きを放つ大型のビームサーベルが、ぬうっとせり上がってきた。

そして、仕上げの瞬間。

頭部にあった一角の角が、中央から左右へとメリメリと割れ、巨大な一対の『角』へと完全に開ききった。

「う、あ、あああァァァァァっ……!! 頭が、頭が割れる……っ!! 嫌だ、もう誰も殺させないで、消えて、消えてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!」

脳内を絶え間なく蹂躙するキラとアスランの殺意。その悍ましい精神の毒に脳を徹底的に灼かれ、額から血を流しながら、リンはただただ狂ったように苦痛の悲鳴を上げ続け、自分の頭を抱きしめることしかできない。

しかし、その意思とは裏腹に、暴走した機体はリンの苦しみそのものを燃料にして、さらに狂暴に加速していく。

もう、操縦桿はリンの命令を一切受け付けない。

全身の割れ目から禍々しい紅い鉱石を覗かせるストライカーブラストは、ただ脳内に響く「殺し合え」という他者の憎悪を消し去るためだけに、目の前にあるすべてを壊そうとする、圧倒的な破壊の化け物へと成り果てていた。

ドガァァァァァンッッ!!!

ストライカーブラストは地面の土砂を爆発的に吹き飛ばし、背部から血のような紅い光の粒子を撒き散らしながら、すべてを屠るために狂気の世界へと突撃していった。「……何、これ……」

ミリィ――ミルフィリア・ハウが、カタカタと震える指でコンソールを押さえながら、引きつった声を上げた。

トールが散った。そのあまりにも重すぎる現実を受け止める間もなく、アークエンジェルのブリッジを、さらなる異常事態の警報が襲っていた。

「山道付近に不時着したストライカーブラストより、異常なエネルギー反応を感知! システム、完全に暴走しています! この波形……キラのストライクとも、ザラ隊の機体とも違う……ッ!」

サイの声は恐怖で完全に上ずっていた。彼の手元にあるモニターには、ストライカーブラストから噴き出している、禍々しいまでの赤黒い脳波のグラフィックが不気味に波打っている。トールを失った悲しみ、そして今まさに目の前で起きているリンの異変に、サイは顔を真っ青に染めていた。

「リン……? 嘘でしょ、リン……何が起きているの!?」

カズイは頭を抱え、ただ怯えたようにモニターを見つめることしかできない。

「右舷の被弾により、本艦は未だ身動きが取れません! 誘導も、強制停止信号も一切受け付けない……! ストライカーブラスト、熱源急速に上昇! 本艦の側方を超高速で通過――キラたちのいる交戦海域へと向かっていきます!」

ナタルの悲痛な報告がブリッジに響き渡る。戦術の天才である彼女をして、今のストライカーブラストの「形状を創り変えながら突進してくる」という超常的な暴走は、完全に計算の外だった。

「リン・ベルナル……。あなた、一体何に乗せられていたの……」

マリューは、唇を噛み切りそうなほど強く噛み締め、メインモニターを凝視した。

画面の向こう、山道を爆発的に粉砕し、海面へと飛び出していったのは、かつて自分たちを優しく守ってくれた、あの白きガンダムの姿ではなかった。

通信回線は完全に途絶している。だから、リンがコックピットの奥で、割れた額から血を流し、頭を抱えて『頭が割れる! 消えてよ!』と、キラとアスランの殺意に脳を灼かれながら絶叫していることなんて、今の彼女たちには知る由もない。

ただ、不気味なほどに無言のまま。

全身の装甲が引き裂かれ、ドス黒く輝く紅い鉱石のような結晶を剥き出しにし、赤黒いツインアイを血のように光らせる化け物が、凄まじいスピードでキラたちの戦場へと肉薄していく。

「おい、冗談だろ……! あの機体、一体どこへ行こうとしてやがるんだ……っ!?」

格納庫でバスターガンダムのパイロットを監視していたコジロー・マードックも、外部モニターに映し出されたストライカーブラストの悍ましい変貌と、殺気立つ戦場へ向かうその背中に、思わず工具を床に落とした。

アークエンジェルの全員が、トールを失った絶望の底で、今度は自分たちの仲間だったはずの機体が、音もなく「すべてを壊す紅い化け物」へと変貌し、キラたちの元へ突撃していく凄まじい恐怖に、ただ息を呑んで戦慄するしかなかった。「アスラァァァァァッ!!」

「キラァァァァァッ!!!」

海面を沸騰させるほどの死闘を繰り広げるストライクとイージス。その完全に理性を失った憎悪の檻へ、上空から一条の紅い閃光が、文字通り叩きつけられるように割って入った。

ズドォォォォォォォンッッ!!!!

凄まじい衝撃波と共に海水が爆発的に跳ね上がり、キラとアスランの機体が強引に引き離される。二人が驚愕して視線を向けた先にいたのは、もはや原型を留めていない、全身から不気味な紅い鉱石を剥き出しにしたストライカーブラストだった。

「リン……さん……? その、姿……っ!?」

キラが息を呑む。だが、その困惑を置き去りにして、ストライカーブラストはエターナルパックから引き抜いた大型ビームサーベルを狂暴に振りかざし、ストライクとイージスの『両方』を同時に破壊せんと、凄まじい力で斬りかかった。

ガギィィィィィンッ!!!

「うわぁぁぁッ!?」

「な、なんだこの力は……っ、この化け物がぁッ!!」

完全にキラとアスランの二人を標的として認識し、敵味方の区別なく襲いかかる。ストライクのシールドを火花散るサーベルで力任せに押し潰し、同時にイージスの突進を容赦ない蹴撃で叩き落とす。

狂ったように連撃を繰り出すストライカーブラストのモニターの向こうで、キラは必死に通信を開き、叫んだ。

『リンさん! どうして……どうして僕たちを襲うの!? やめてよ、リンさん!!』

そのキラの必死の問いかけすら、今のリンには届かない。

届くどころか、通信回線を介してさらに流れ込んでくるキラの戸惑いと、アスランの消えない憎悪が、リンの脳をさらにズタズタに引き裂いていく。

「あ、が……あ、あああああぁぁぁぁっ!!! 痛い、痛い痛い痛いっ!! 脳みそが、溶ける、消えてよ……お願いだから消えてぇぇぇぇぇっっ!!!!!」

額から流れる血で視界を真っ赤に染めながら、リンはコックピットの座席で頭をコンソールに何度も打ち付け、狂ったように苦痛の声を上げ続ける。涙と血が混ざり合い、過呼吸で引きつった喉から漏れるのは、ただただ己を蹂躙する殺意への拒絶の悲鳴。

激しい切り合いの中で、ストライカーブラストの大型サーベルがストライクのアーマーシュナイダーを弾き飛ばし、イージスのビームサーベルを真っ向からねじ伏せていく。

「やめて、やめてよぉぉぉぉぉっ!! これ以上、誰も殺し合わないでぇぇぇッ!!!」

他者の憎悪に灼かれ、泣き叫び、狂いそうなほど苦しみもがくリン。その限界を迎えた脳波と魂の叫びに呼応するように、ストライカーブラストの背面――エターナルパックの周囲に、爆発的なサイコ・フィールドが発生した。

バリバリバリッ!!!と空間が裂けるような音が響く。

リンの脳内に流れ込んでいたキラとアスランの「殺意と憎悪」が、リンの苦しみによってサイコフレームから強制的に排斥され、背面で**【擬似サイコシャード】**として物理的に実体化を始めたのだ。空間に生じた赤黒い光の輪から、おぞましい、濁った赤黒いオーラが実体を伴って噴き出していく。

その実体化した憎悪の圧力が、真横へと一閃された大型サーベルの軌道に乗って爆発した。

ドカァァァァァンッッ!!!!

「くっ……うわぁぁぁぁぁッ!!」

「ガァァァァッ……!!」

擬似サイコシャードが放つ圧倒的な赤黒い衝撃波と、サーベルの凄まじい圧力に押され、キラのストライクとアスランのイージスが、海面を派手にバウンドしながら左右へと激しく吹き飛ばされた。

煙を吹き、体勢を崩す二台のガンダム。

それを冷酷に見下ろすのは、背中から実体化した赤黒い憎悪のオーラを激しく放つストライカーブラスト。

コックピットの中で、他者の憎悪に灼かれ、泣き叫び、苦しみもがき続けるリンの精神と完全に同調したまま、暴走する紅い獣は、さらに残虐な足取りで二機へと肉薄していく――。キラとアスランを吹き飛ばし、海面を赤黒く染め上げるストライカーブラスト。

コックピットの奥で、脳を灼くような激痛にのたうち回るリンの精神は、擬似サイコシャードが放つおぞましい奔流によって、さらなる記憶の深淵へと引きずり落とされていた。

流れ込んでくる他者の憎悪。それがトリガーとなり、リンの脳裏に、かつて自分を地獄へと突き落とした冷酷な大人たちの顔が次々とフラッシュバックする。

――『お前のための実験だ』

――『私たちは、お前を愛しているよ』

優しい言葉、偽りの微笑み。そのすべてが、自分をただの道具として扱い、最後には不要になった兵器として冷酷に処分し、殺そうとした者たちの**【嘘】**だった。

信じていたものに裏切られ、暗い実験室で息の根を止められかけた、あの底なしの恐怖と絶望。

「あ……、あぁぁぁ……っ、みんな……みんな、嘘つきだ……っ!」

トールが目の前で散った残酷な現実。キラとアスランの醜い殺し合い。そして、かつて自分を裏切った過去のトラウマ。

すべての絶望が頭の中で一つに溶け合い、リンの心は完全に崩壊した。

「みんな、嘘つきぃぃぃぃぃぃぃッッ!!!!! 私に優しくしたのも、全部嘘だったんだぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

魂をかきむしるような、リンの血を吐くような絶叫。

その崩壊した精神から放たれる狂気の脳波を受け、背後に展開する擬似サイコシャードが、空間を軋ませながら爆発的に巨大化した。もはや周囲のエネルギーを吸い尽くさんばかりに赤黒く脈動する光の輪。

それはリンの「すべてを拒絶し、消し去りたい」という破壊衝動を、最悪の形へと具現化させていく。

バチバチバチッッ!!!

アスランのシールドによって、装甲を深く貫通され、内部フレームを剥き出しにしているストライカーブラストの腕部。その激しく破損し、ショートして火花を散らしている右腕へと、擬似サイコシャードからあり得ないほどの超高出力エネルギーが強制的に集束し始めた。

バキバキと音を立て、破損したフレームがエネルギーの圧力でさらに歪んでいく。

そこから収束される輝きは、アークエンジェルの陽電子砲ローエングリン――いや、その**【100倍を遥かに超える、時空すら歪めるような悍ましい赤黒いレーザー】**となって、限界を超えて膨れ上がった。

機体自体がその負荷で自壊しそうになりながらも、破壊の光は収まらない。

「消えて、消えて、消えちゃえよぉぉぉぉぉッッ!!!」

涙と血で顔をぐちゃぐちゃに濡らし、狂ったように叫び続けるリン。

今の彼女の目に、もうキラもアスランも、アークエンジェルも映っていない。ただ、自分を裏切り、傷つけるこの世界すべてへの憎しみだけ。

破損した右腕の先から放たれる、ローエングリンの100倍の破壊の光。

リンは、自分を苦しめる過去の呪縛ごと、この島を、この海を、この戦場にある**【すべてを島ごと跡形もなく壊そうとする】**かのように、その絶対的な絶望のレーザーを解き放とうとする…「――ダメだッ!! そんなことをしたら、リンさんも……島もみんな消えちゃうッ!!」

破損した右腕から放たれようとしている、ローエングリンの100倍というあまりにも絶望的なレーザー。その破滅の光を前にして、キラのストライクがボロボロの機体を強引に動かし、ストライカーブラストを止めようと決死の突撃を敢行した。

「みんな、嘘つきぃぃぃぃぃぃッッ!!!」

過去の裏切りとトラウマに発狂し、叫び続けるリンの指が、すべてを消し去るトリガーに掛かる。まさに世界の終わりが訪れる、そのギリギリの瞬間だった。

ガシィィィィィンッッ!!!

「な、に……っ!?」

突如として上空から猛然と襲いかかったのは、アスランのイージスだった。だが、アスランの表情は、キラへの怒りだけでなく、目の前で赤黒いオーラを放ちながら見たこともない異形の姿で叫び続ける謎の機体――ストライカーブラストへの、激しい狼狽と恐怖に歪んでいた。

『な、なんだこの機体は……!? 地球軍の新型か……っ!? 一体、中で何が起きているんだ……!』

オープン回線すら開いていないため、アスランには中にいるのが「リン」という少女だということすら分からない。ただ、コックピットのスピーカーからかすかに漏れ聞こえるような、狂気と苦痛に満ちた謎のパイロットの絶叫と、島ごとすべてを消し去ろうとする圧倒的なエネルギーの奔流に、激しく息を呑むことしかできなかった。

この未知の化け物の暴走、そしてニコルの仇であるキラ。この二機を絶対にここで止めなければならない。アスランは戦慄と引き裂かれそうな葛藤の果てに、ストライクの背後から強引に組み付き、その紅い四肢でキラの機体をがっちりと拘束した。

「アスランッ!? 離せ! 今はリンさんを止めないと――」

『くっ……お前も、その化け物も……もう俺には止められない……ッ! ならば、ここで俺と一緒に……っ!!』

悲痛な叫びと共に、アスランの指が、コックピットのコンソールにあるレバーを震えながら引き下げた。

『――緊急自爆システム、作動。カウントダウン開始――』

非情な電子音がコックピットに響き渡る。

ニコルの復讐を果たすため、そして、正体不明の紅い化け物が放とうとする世界の終わりをここで刺し違えてでも止めるため、アスランが選び、起動させた絶望の自爆システム。

過去のトラウマに発狂し、誰かも分からぬまま「嘘つき」と叫びながらすべてを壊そうとするリン。

それを必死に止めようと足掻くキラ。

(この化け物は一体何なんだ――!?)と激しく戸惑い、恐怖しながらも、すべてを終わらせるために自爆を起動させたアスラン。

三人の壊れた感情が、臨界点を超えた破滅の光の中で最悪の交差を果たす。。『――緊急自爆システム、作動。カウントダウン開始――』

非情な電子音がイージスのコックピットに響き渡り、破滅への秒読みが始まる。アスランの悲痛な覚悟に拘束されたキラのストライク、そして破損した右腕からローエングリンの100倍のレーザーを放とうとする、リンのストライカーブラスト。

すべてが赤黒い絶望の光に呑み込まれ、終わりを迎えようとした、まさにその最後の瞬間だった。

ピキィィィィィン――。

リンの脳裏を蹂躙していたキラとアスランの殺意、そして過去のトラウマの濁流が、自爆の強烈な熱源エネルギーとサイコフレームの共鳴によって、ほんの一瞬だけ、奇跡のように押し戻された。

「……あ……っ」

割れた額から流れる血が目に入り、視界は赤く染まっている。過呼吸で引きつっていた喉に、冷たい空気が戻ってくる。

完全に焼き切れていたはずのリンの意識が、世界の崩壊の寸前で、一瞬だけ確実に戻ったのだ。

(私は……何を……)

目の前には、島ごとすべてを焼き尽くそうとする、自分の右腕に集束した悍ましい破滅の光。

そして、その直前で、必死に自分を止めようと手を伸ばしてくれていた、ボロボロのキラのストライクの姿。

トールを失った絶望、過去への恐怖、それらは何一つ消えてはいない。

だけど、狂気から覚めたリンの心に最後に残ったのは、世界への憎しみではなく、「これ以上、誰も失いたくない」という、ただそれだけの純粋な願いだった。

イージスの自爆カウントがゼロに到達する。

ドゴォォォォォォォォォンッッ!!!!

まばゆい閃光と共に、イージスが爆発的なエネルギーの塊となって弾けた。キラのストライクを、そしてストライカーブラストを確実に消し去るための、容赦のない熱線が牙を剥く。

「キラ君――ッッ!!!」

叫びながら、リンは動かない身体を力任せに奮い立たせ、操縦桿を限界まで押し込んだ。

暴走の駆動ではない。リン・ベルナル自身の意志が、ストライカーブラストを動かしたのだ。

ガギィィィィィンッ!

背面の擬似サイコシャードを激しく明滅させながら、ストライカーブラストは迫り来る自爆の炎とストライクの間へと、滑り込むようにその巨体を割り込ませた。

すべてを壊そうとしていたあの右腕を、今度はキラを、トールが守ろうとした大切な仲間を**【庇うための盾】**として、大きく広げて――。

ズドォォォォォォォンッッッ!!!!!

イージスの激しい自爆の炎が、ストライカーブラストの機体を容赦なく包み込み、引き裂いていく。ローエングリンの100倍のレーザーを凝縮していた右腕が、自爆の熱源と激突し、交戦海域のすべてを押し流すような、凄まじい大爆発を起こした。

「リンさん……っ!? ああぁぁぁぁぁぁッッ!!!」

爆風に吹き飛ばされながら、画面の向こうで自分を庇って爆発に呑まれていく紅き機体を見つめ、キラの絶叫が響き渡る。

白い装甲も、禍々しい紅い結晶も、すべてが圧倒的な閃光の中に溶けて消えていく。

その光の中心で、リンは確かに笑っていた。

もう、誰も殺し合わなくていい。もう、誰も死ななくていい。

すべての嘘と裏切りに満ちた世界から解放されるように、ストライカーブラストは激しい残光を残し、キラの盾となって激しく爆発散華した。

激動の運命の果てに、戦場にはただ、引き裂かれた海と、静寂だけが残されていた――。

激しい爆発の閃光が収まった戦場には、ただ、黒煙を上げる激しい波しぶきと、不気味なほどの静寂だけが残されていた。

「ストライク、イージス……そしてストライカーブラスト……共に、信号途絶……ッ!」

アークエンジェルのブリッジに、サイの悲痛な報告が響き渡る。

メインモニターに映し出されているのは、跡形もなく消え去った島の一部と、ただ白く濁った泡を立てて渦巻く海面だけだった。

「嘘……嘘よ……キラ……? リン……!?」

ミリィはコンソールにすがりつき、涙をボロボロとこぼしながら、何度も消えた光点を索敵し続ける。

だが、どれだけレーダーを走らせても、帰ってくるのは冷酷なノイズだけ。

『該当機体なし。全機、**MIA(戦闘中行方不明)**と判断――』

「そんな……二人とも、あの化け物みたいな爆発に巻き込まれて……」

カズイは恐怖と絶望でガタガタと震え、顔を覆った。

トールを失い、さらにキラとリンまでが同時にMIAになるという、あまりにも致命的すぎる現実。アークエンジェルを支えていた若い命が、一瞬にしてすべて捥ぎ取られたのだ。

「……本艦は、これよりアラスカへ向かう。航路を設定しなさい」

重苦しい沈黙を破ったのは、ナタルの冷徹な声だった。その言葉に、ブリッジ中の視線が突き刺さる。

「ナタル少尉! まだ捜索も満足にしていないのよ!? キラもリンも、もしかしたら生きて海を漂っているかもしれないのよ!?」

サイが椅子を蹴立てるようにして立ち上がり、激しい口調でナタルに詰め寄った。

「気持ちは分かる、サイ・アーガイル! だが本艦の右舷は被弾し、満身創痍だ! 敵の追撃がいつ来るかも分からないこの海域に、いつまでも留まるわけにはいかない! それが『軍』というものだ!」

「軍、軍って……っ! アンタたちは、アイツらが命懸けでこの船を守ってくれたのを、何だと思ってるんだよ! 使い捨ての道具かよ!?」

いつもは温厚なサイが、狂ったように叫び、ナタルを睨みつける。トールを失った悲しみと、キラたちを見捨てることへの怒りが、ブリッジの中で限界まで膨れ上がっていた。

「やめなさい、二人とも……っ!」

マリューが震える声で二人を制した。その顔は、誰よりも苦渋に満ちている。

マリューだって、今すぐ海に飛び込んで二人を探したかった。だが、艦長として、残された船員たちの命を守る責任が彼女の肩に重くのしかかっている。

「……ナタル少尉の言う通りよ。アークエンジェルは、これより地球連合軍本部・アラスカ基地へ移動します。……みんな、辛いでしょうけど、それぞれの持ち場に戻って」

マリューの悲痛な決断に、ブリッジは凍りついた。

サイは悔しさに唇を噛み切り、涙を流しながらコンソールを叩きつける。ミリィはただ声もなく泣き続け、カズイは絶望の眼差しで床を見つめていた。

誰もが傷つき、誰もが互いへの不信感と葛藤を抱えていた。

キラとリンという、かけがえのない盾を失ったアークエンジェル。

船員たちの心がバラバラにひび割れ、重苦しい揉め事と確執を残したまま、ボロボロの白い船は、ただ灰色の空の下、冷たいアラスカの地へと向かって、寂しく針路を向け進み始めるのだった――。

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