「あ、アークエンジェル……キラ、たちは……。みんな、無事、なの……っ?」
縋るような瞳で問いかけるリンに、カガリはハッとして、少し苦しげに顔を歪めた。
嘘をついて安心させるべきか、それとも現実を伝えるべきか――だが、カガリは誤魔化さず、真っ直ぐにリンを見つめて今の状況を伝えた。
「ああ、キラもマリューさんたちも無事だ! ……だが、アークエンジェルは、まだこのオーブには到着していないんだ。激しい戦闘を切り抜けながら、今まさにここへ向かっている最中のはずだ」
「まだ……ここには、いない……?」
一番に会いたかったアークエンジェルがまだこの島に到着していないという事実に、リンの瞳に深い不安の色が広がる。
「すまない、お前が一番会いたい奴らは、まだ少し遠いところにいる……。でもな、リン! あいつらは絶対に諦めない。お前がブルーコスモスに連れ去られてから、キラだって、マリューさんたちだって、一瞬だってお前のことを忘れたりしなかった! お前を助け出すために、今も必死で戦いながらここを目指しているんだ!」
「キラ……みんな……っ、わたしを……探してくれてる、の……?」
カガリの必死の言葉に、リンの目から大粒の涙が溢れ出し、砂浜にポタポタと落ちていく。
まだアークエンジェルはここにいない。またブルーコスモスの大人たちが追ってくるかもしれないという恐怖、術後や暴行による肉体の激しい痛みは今も消えない。大人が手を振るだけで身体がすくみ上がってしまう『呪い』はかかったままだ。
けれど、大好きな仲間たちが生きていて、自分を求めてこのオーブに向かってくれているという事実だけが、リンのボロボロに引き裂かれた心に、微かな、けれど確かな救いの光を灯していた――。
そして同時刻プラントから190キロ離れた地域にて
「これより、被験体002によるネオ・ジオングの戦闘テストを開始する。……全機、突撃。奴を塵にしろ!」
暗黒の宙域を包囲するザフト軍のモビルスーツ200機、そしてナスカ級宇宙軽巡洋艦12隻。その大軍勢を前にして、ネオ・ジオングの中心に据えられたコックピットの中、少年――**【リボンズ】**は、感情の消えた冷徹な瞳でただ前方のモニターを見つめていた。
キィィィィィン――ッ!
ザフト軍との戦闘の火花が、ついに切られた。
「侵入機を確認! 各機、一斉に突撃せよ! 包囲して叩くぞ!!」
ザフトの主力であるジンの一隊が、殺気立ってネオ・ジオングへと急速に接近する。一斉に重突撃銃を構え、まさに攻撃を仕掛けようとした――その瞬間だった。
ガシャァァァンッ!!!
「……次から次へと、うじゃうじゃと……!」
リボンズの不快げで冷淡な呟きと同時に、ネオ・ジオングの背面にマウントされた**【六本のアーム】**が、まるで獲物を狙う大蛇のように一斉に展開した。
ドボボボォォォォンッッッ!!!
アームの先端から放たれたのは、空間そのものを焼き尽くさんばかりの**【圧倒的な大型レーザーの奔流】**。
一本一本が戦艦の主砲クラスの出力を誇る凶悪な光条が、十重二十重に重なり合って暗黒の宇宙を真昼のように照らし出す。
「な、なんだこの光は!? うわぁぁぁぁぁぁッッ!!」
「熱い、装甲が溶ける!? 盾がもたない、うわぁぁぁぁっ!!」
「回避が間に合わな――ギャァァァァァッッッ!!!」
接近していたジンの一隊は、まともな防御も、回避の行動すらとる余裕を与えられず、次々と凄まじい光に呑み込まれていった。コックピットに響き渡るパイロットたちの絶望的な悲鳴は、彼らの機体が爆発、四散すると同時に冷たく掻き消えていく。
「ふん……本当に、うじゃうじゃと鬱陶しいな……!」
リボンズが冷徹にアームを操るたび、巨大なレーザー光線が容赦なく宇宙をなぎ払い、群がるジンを次から次へと焼き払っていく。
たった一撃、そして僅か数秒。
ネオ・ジオングがその六腕を軽く一振りしただけで、迫り来るザフト軍のモビルスーツの大半が**【ほとんど沈められる】**という、あまりにも絶望的な破壊劇。
爆発の炎がリボンズの瞳を赤く染める。リンが地球の海を血に染めたのと呼応するかのように、宇宙の彼方でもまた、ブルーコスモスに縛られた『化け物』が、圧倒的な蹂躙劇を始めようとしていた―ー。
「ひ、怯むな! 残存部隊、散開しろ! 距離を保ちつつ、距離を保って包囲網を再構築するんだ!」
最初の一撃で壊滅的な打撃を受けながらも、ザフト軍の生き残った部隊が必死の抵抗を試みる。
生き残った数十機のジンが一斉にスラスターを吹かし、ネオ・ジオングの死角へと回り込むように四方八方へと散った。ナスカ級巡洋艦12隻からも、残された対空バルカンや主砲、さらには誘導ミサイルが文字通り網の目のように放たれ、リボンズの駆る巨躯へと殺到する。
ドカァン! バリバリバリバリッ!!!
凄まじい数のミサイルがネオ・ジオングの外殻に命中し、宇宙空間に巨大な爆炎のドームを作り出す。
だが、その炎を切り裂いて現れた超巨躯は、傷一つついていなかった。それどころか、ハル(外殻)から発生したサイコシャードの輝きが、ザフト側の放った実体弾やミサイルを至近距離でことごとく自爆させていく。
「……そうだ。俺を鬱陶しがらせるな」
コックピットの中、リボンズの脳裏に、かつて研究所の冷たいコンクリートの上で、共に血と泥にまみれた少女の姿がフラッシュバックした。
――リン。
自分と同じように薬物を投与され、大人たちから凄惨な暴行を受け、涙を流しながら「痛い」と泣いていた、あの小さな少女。
ブルーコスモスの報告書では、彼女は地球での実験中に暴走し、戦艦を沈めた挙句に海の藻屑となったと処理されていた。大人たちは彼女を「出来損ないの不良品」と呼んで嗤っていた。
「俺の唯一の理解者を……俺たちをただの道具として扱い、リンを壊した世界なんて……!」
ドクン、とリボンズの心臓が激しく波打つ。
彼の瞳が怒りと憎悪の深紅へと染まった瞬間、ネオ・ジオングの全システムが彼の激情と同調し、限界を超えた出力を叩き出した。それはまるで、死んだと聞かされたリンの無念を晴らすため、彼女を地獄に突き落としたこの世界すべてに対する、苛烈な**【敵討ち】**のようだった。
「死ね……! リンを苦しめた世界の一部として、お前たちも全員、塵になれぇぇぇッ!!」
リボンズの咆哮と共に、ネオ・ジオングが真の牙を剥く。
ガシャァァンッ! キィィィィィン――ッ!
背面の六本のアームが再びうねりを上げ、生き残ったザフトの部隊へ向かって殺戮の嵐を巻き起こした。
一機のジンが機動力を活かしてネオ・ジオングの背後に肉薄し、重突撃銃を至近距離から連射する。
「これならどうだぁぁぁッ!」
だが、リボンズは振り返りもせず、一本のアームを後ろへ払うように動かした。アームの先端から放たれたレーザー光線が、ジンの胴体を一瞬で縦真っ二つに両断する。
「ぎゃあああああああッッ!?」
パイロットの悲鳴と共に機体は爆発。リボンズはその爆炎を突き抜けるようにネオ・ジオングを前進させ、今度は逃げ惑う別のジンの一隊へと襲いかかった。
アームの先端がバラバラの方向を向き、まるで生き物のように個別にザフト機をロックオンしていく。
ズババババババババッッ!!!
「うわぁぁぁ! 横からレーザーが、防げな――!」
「隊長! 助けて、助け――あがぁぁぁぁっ!?」
宇宙空間の至る所で、ジンの悲鳴が通信回線を埋め尽くする。リボンズは冷酷に、そして確実に彼らを追い詰め、レーザーの熱線で次々と焼き払っていく。装甲がドロドロに溶け、内部のプロペラントタンクに引火して木っ端微塵になるジン。盾を構えて防御姿勢をとった機体も、ネオ・ジオングの圧倒的な火力の前には紙切れも同然であり、盾ごと肉体をも焼き尽くされた。
「おのれ化け物め! 艦首主砲、撃てぇぇぇっ!!」
ナスカ級巡洋艦の一隻が、距離を詰めてきたネオ・ジオングへ向けて大口径のエネルギー砲を放つ。
激しい光条がネオ・ジオングの胸部を直撃した――かに見えたが、リボンズは機体の前面に展開したメガ粒子砲のメガ・キャノンでそれを容易く相殺。それどころか、倍以上の威力の光線を撃ち返した。
ドゴォォォォォンッッッ!!!
「ひいぃぃっ! 第一、第二巡洋艦が瞬時に消滅!!」
「ダメだ、バケモノだ! 勝てるわけがない!!」
ナスカ級の巨体が光の渦に呑み込まれ、一瞬で光の塵へと還る。
戦闘はもう交戦などと呼べるものではなかった。それはリボンズという『狂気』による、ザフト軍への容赦なき殺戮回廊。リンの敵を討つという妄執に囚われたリボンズは、狂ったように操縦桿を叩きつけ、笑いながらレーザーを撒き散らす。
「あははははは! どうした、ザフトの精鋭が聞いて呆れるぞ! もっと抗え、もっと俺を楽しませろ!!」
ズバァン! ドカァン! バリバリバリッッ!!
逃げるジンをアームで捕らえ、そのまま握り潰して爆発させる。
別の機体には至近距離から大型レーザーを浴びせ、コックピットごと蒸発させる。
また一隻、ナスカ級のエンジンを撃ち抜いて誘爆を起こさせ、宇宙に巨大な火の玉を作り出す。
次から次へと、うじゃうじゃと群がっていた光は、リボンズの手によって確実に、そして凄惨に消されていった。宇宙に響くのは、ザフト兵たちの絶望の悲鳴と、リボンズの狂気に満ちた笑い声だけだった。
残るナスカ級はあと僅か。周囲に浮遊していた200機のジンは、今や数えるほどしか残っていない。
真っ赤な爆炎の光に照らされながら、ネオ・ジオングの巨躯は、まだ見ぬ地球のリンへ捧げる鎮魂歌のように、さらなる破壊を求めて、残った敵へとその凶腕を伸ばすのだった――。怒涛のレーザーでザフト軍の大半を焼き尽くし、壊滅へと追い込んだネオ・ジオング。だが、200機もの大群を相手に限界を超えた超火力を連射し続けた代償は、あまりにも大きかった。
ピピピピピピッ……ッ!!
『――警告。ハル(外殻)ユニットのエネルギー残量、限界数値を突破。大出力レーザー、およびメガ・キャノン強制停止』
機体を包んでいた禍々しい真紅の光が、不規則に点滅を始める。あれほど宇宙を焼き尽くしていた六本のアームから放たれるレーザーの火線が、プツンと音を立てるように一斉に掻き消えた。
「ちっ……! もうエネルギー切れかよ、これだから試作型は……!」
リボンズが苛立ちを露わに操縦桿を叩く。背面の巨大な推進器も出力を落とし、ネオ・ジオングの巨躯は暗黒の宙域に完全に急停止した。
「おい、見ろ! 奴の光線が止まったぞ!」
「エネルギー切れだ! 機動力が落ちている、今ならやれる!」
「仲間たちの仇だぁぁぁ! 包囲して近接戦闘に持ち込め!!」
ネオ・ジオングが沈黙したのを見逃さず、生き残っていたわずかなジンの部隊が、ここぞとばかりにスラスターを最大出力で噴射。手にした重斬刀(実体剣)をギラつかせながら、ネオ・ジオングの死角を突いて一斉に肉薄、近接戦闘を仕掛けてきた。
前後左右、退路を断つように突撃してくるジン。リボンズを包囲し、その巨大な装甲へ重斬刀を叩きつけようとした――その瞬間。
「……ハッ。近寄れば勝てると思ったかよ? 馬鹿どもが」
リボンズの冷酷な嘲笑と共に、彼の脳内から溢れ出た狂気のサイコ・ウェーブが、ネオ・ジオングの胸部コアから一気に増幅されて放たれた。
キィィィィィン――ッ!!!
ネオ・ジオングの周囲に、眩い金色の光の輪――**【サイコシャード】が爆発的に展開する。それは、周囲のモビルスーツの電子回路やシステムを強制的に支配する、恐怖の【試作型サイコミュジャック】**だった。
「うわっ!? な、なんだこの光は……ぐあぁっ!?」
「く、駆動系が……機体が勝手に動く!? 操縦桿が効かないぞ!!」
突撃してきたジンたちのコックピット内のモニターが次々とノイズで砂嵐に変わり、機体の制御が完全にザフト兵の手から奪い去られた。
「あははは! いい気分だろ? 今からお前たちの身体は、俺のモノだ!」
リボンズが薄笑いを浮かべながらサイミュコントロールを介入させると、ジャックされたジンたちは、まるで糸の切れたマリオネットのように不気味な動きを始めた。
ガキィィィンッッ!!!
「な、何をやってるんだお前! やめろ、俺だ!!」
「違う、身体が勝手に……うわぁぁぁぁっ!!」
操られたジンたちは、隣を並走していたはずの味方のジンに向かって、手にした重斬刀を容赦なく振り下ろした。装甲が引き裂かれ、味方同士の同士討ちが宇宙空間で次々と巻き起こる。
「ギャァァァァァッッ! 頼む、止まってくれ!!」
「狂ったか! 撃て、撃ち落とせぇぇぇっ!!」
恐怖に狂ったザフト兵たちの悲鳴が無線を埋め尽くす。
リボンズが指先を少し動かすだけで、操られた機体は互いに突撃銃を至近距離で撃ち合い、重斬刀でコックピットを貫き合う。ザフト軍の生き残りは、ネオ・ジオングに触れることすらできず、自分たちの仲間だった機体に蹂躙され、自滅していくのだった。
「どうだ、リン。俺たちの力を玩具にした大人どもの軍隊が、互いに殺し合ってるよ……」
操られたジンたちが爆発していく光の中に、リボンズは静かに微笑む。
エネルギーが切れようとも、彼の執念とネオ・ジオングの呪いの力は、ザフトの残党を最後の最後まで絶望の淵へと叩き落としていくのだった――。ジャックしたジン同士の凄惨な同士討ちが終わり、最後の一機が光の塵と化して爆発した。周囲に漂っていたナスカ級の残存艦隊も、今や一隻残らず完全に制圧されていた。
「フゥ……ハァ……。これで、邪魔者は消えた……」
リボンズは激しい戦闘の負荷で息を荒らしながらも、ネオ・ジオングのコックピットから降り、後方で待機していたブルーコスモスの運用母艦へと帰還した。
リボンズが向かったのは、作戦の全権を握る大人たちが集まる**【艦橋(ブリッジ)】**だった。
自動扉が開き、ボロボロのパイロットスーツ姿の少年が現れると、ブルーコスモスの高官やオペレーターたちは不快そうに視線を向けた。
「おい、被験体002。勝手に艦橋へ入るな。要求があるなら大人しく自室で――」
「約束が違うぞ、大人ども」
リボンズは高官の言葉を冷酷に遮り、感情の消えた深紅の瞳で睨みつけた。
「俺はテストを完璧に終わらせた。戦闘データを渡す代わりに、地球で死んだことになっている**【リンを捜索する】**……それがお前たちと俺の『約束』だったはずだ。今すぐ次の薬を投与して、リンを捜索しろ。あいつは絶対にどこかで生きている。探せ、今すぐにだ!!」
薬の副作用による肉体の激痛に耐えながら、リボンズは約束の履行を必死に叫んだ。だが、ブルーコスモスの連中は、ハナから生体CPUとの約束など守る気はなかった。高官は鼻で嗤い、冷酷に告げる。
「……ハッ、分を弁えろ、被験体002。道具との約束など、いちいち真に受けると思ったか? リンだと? あの不良品ならとっくに処分された。もう探す価値もない」
ハナから守る気のなかった約束。リンの生存を信じるリボンズの願いを、大人たちは嘲笑と共に踏みにじった。
「約束を……破ったな……ッ!」
次の瞬間、リボンズの脳内で何かが切れた。
彼は肉体に刻まれた恐怖の呪縛を純粋な『怒りと憎悪』だけでねじ伏せ、【その剥き出しの肉体一つで、約束を破った大人たちへ容赦なく掴みかかった。】
ドンッ! ガシャァァンッ!!
「な、何をする、離れ――ギャァァァァッ!?」
リボンズは強化された強靭な身体能力に任せ、近くにいた高官の胸ぐらを掴んで計器のコンソールへと猛烈な勢いで叩きつけた。火花が散る中、叫び声を上げる警備兵の腕を掴んでへし折り、その拳で顔面を何度も何度も殴りつける。
「約束を守れと言っているんだ……! 俺を騙して、リンの捜索を放り出した代償を払えぇぇぇッ!!」
ドカッ! バキィッッ!!!
リボンズは狂ったように拳と蹴りを叩きつけ、そこにいたブルーコスモスの高官や警備兵たちを力任せに床へぶちのめし、【何人かを生死の境を彷徨うほど、純粋な暴力で半殺しにした。】
艦橋の床が大人たちの鮮血で赤く染まり、絶叫と鈍い打撃音が響き渡る。自分たちに牙を剥くはずがないと高を括っていた生体CPUが、約束を破られた怒りで凄まじい暴力の嵐を振るうその異常な姿に、生き残ったオペレーターたちは恐怖で腰を抜かし、ガタガタと震え上がった。
「ひ、ひぃぃぃっ! やめろ、助けてくれ!! 誰かこいつを止めろ!!」
「……早く回線を開け。約束通り地球の全ネットワークにアクセスして、リンを捜索するんだ。今すぐやれ。従わないなら……次はお前たちの番だ」
拳を血で真っ赤に染め、髪を振り乱したリボンズが、恐怖に怯えるオペレーターの胸ぐらを掴み上げ、冷酷にモニターへと押し付ける。
約束を破り、半殺しにされた大人たちが床でのたうち回り、うめき声を上げる中、リボンズは純粋な力と恐怖でブルーコスモスを完全に支配し、地球にいるはずの最愛の少女――リンの捜索を力ずくで開始させるのだった――。恐怖に顔を青ざめさせたオペレーターが、血に染まったコンソールを震える指で操作する。
リボンズの圧倒的な暴力の前に、もはや彼らに拒絶する選択肢など残されていなかった。通信回線が強引に地球へと繋がれ、艦橋のメインモニターに激しいノイズが走る。
やがて砂嵐が晴れ、画面に映し出されたのは――見慣れた、しかしこれ以上ないほど傲慢な笑みを浮かべた一人の男の姿だった。
「やぁやぁ、ずいぶんと賑やかなお茶会をしているじゃないか、被験体002。……いや、リボンズ、だったかな?」
画面の向こうから声をかけてきたのは、ブルーコスモスの盟主であり、生体CPUたちの地獄の最高責任者――**【ムルタ・アズラエル】**だった。
「アズラエル……!」
リボンズは血に染まった拳を握り締め、画面の中の男を憎悪の篭もった瞳で睨みつける。艦橋の床で半殺しにされた高官たちが「た、助けてくれ、代表……!」と血を吐きながら這いずり回っているというのに、アズラエルはその光景を面白がりすらして見下ろしていた。
「宇宙でのテストデータは素晴らしかったよ。エネルギー切れからサイコミュジャックでザフトを自滅させるなんてね! だけど……せっかくの優秀な『道具』が、約束を破られたくらいでそんなに怒り狂うなんて、教育が行き届いていないなぁ」
「黙れ……! 俺はお前の言う通りに敵を皆殺しにした! なのに、この母艦の大人どもは約束を破ってリンの捜索を拒否した。だから代償を払わせたまでだ」
リボンズは一歩モニターへと歩み寄り、息を荒げながらアズラエルに迫る。
「アズラエル、お前なら知っているはずだ。地球で死んだことになっているリンは、本当はどこにいる? 今すぐあいつを探し出せ!」
その必死の要求を聞いたアズラエルは、芝居がかった様子でふっと肩をすくめ、歪んだ笑みをさらに深くした。
「リン、ねぇ……。ああ、あの不器用で泣いてばかりいた不良品(おんなのこ)のことか。安心するといい、彼女なら死んでなんかいないさ。ただね……」
アズラエルの目が、冷酷な色を帯びて細められる。
「彼女は我々の戦艦を沈めて、大切な実験体を道連れに逃げ出した『裏切り者』だ。……そして今、地球のオーブ連合首長国とかいう、これまた生意気な理念を掲げる国にチョロチョロと逃げ込んで、保護されているようだよ?」
「オーブ……! リンは、そこにいるんだな……っ!」
リンが生きている。その確信を得た瞬間、リボンズの胸に狂おしいほどの歓喜と、それを追い詰めようとするブルーコスモスへの激しい怒りが同時に湧き上がった。
「だったら、今すぐ俺を地球へ下ろせ! 俺がネオ・ジオングでオーブへ行き、リンをこの手で連れ戻す!!」
「ハハハ! いいね、その意気込みだ!」
アズラエルはパチパチとわざとらしく手を叩き、狂気に満ちた笑みを浮かべて画面越しにリボンズを見据えた。
「ちょうどいい。私も、そのナチュラルの面汚しであるオーブと、彼らが隠し持っている『おもちゃ』、そして裏切り者のリンには、きっちりと落とし前をつけさせたいと思っていたところなんだ。すぐに次の調整薬と、地球への降下ルートを用意させよう。……行ってくれるよね、リボンズ? 我々の偉大なるブルーコスモスのために、そして、君の可愛いリンを取り戻すためにね!」
「……言われなくても、そうする」
アズラエルの思惑など、どうでもよかった。
リボンズは血を流す大人たちを冷酷に見捨て、ただ地球の『オーブ』という地にいる最愛の少女の姿を思い描く。
待っていろ、リン。今度は俺が、その地獄からお前を救い出してやる――。
宇宙の彼方で、狂気と執念の獣が、ついに地球へと牙を向こうとしていた。「……なんだと?」
リボンズの顔から、一瞬にして温度が消えた。
アズラエルは画面の向こうで、クスクスと小馬鹿にしたような笑い声を響かせている。
『まあ、そう焦らないでほしいな。ネオ・ジオングほどの巨体を今すぐ地球へ下ろすとなると、色々と大人の事情ってものがあるんだよ。大気圏突入のシミュレーション、軌道確保、それにオーブを確実に叩き潰すための布陣……ね? 君は次の調整薬でも打って、大人しく宇宙(うえ)で待機していなさい』
プツン、と通信が一方的に切れる。
再び静まり返った艦橋で、リボンズは激しい苛立ちとともに、血のついた拳をコンソールに叩きつけた。
「チッ……! 待機だと!? 大人どもめ、いつも俺たちを天秤にかけやがって……!」
今すぐにでも地球へ飛び降りたい衝動に駆られる。だが、アズラエルの命令に背けば、地球への降下手段そのものを失いかねない。
大人たちに利用されているのは百も承知だったが、今は宇宙で待つしかなかった。
――それにより、リボンズには、予期せぬ『時間』ができることになった。
半殺しにした高官たちが床でうめき声を上げる中、リボンズは彼らを一瞥もせず、一人静かに艦橋の窓へと歩み寄った。巨大なガラスの向こうには、青く輝く地球がぽつんと浮かんでいる。あの中の、オーブという場所に、リンがいる。
「待機、か……。なら、少しは考える時間ができたってことだな」
リボンズは自分の制服の袖で、拳についた大人たちの返り血を乱暴に拭い取った。
怒りと憎悪で荒れ狂っていた胸の奥が、リンの生存を知ったことで、少しずつ静かな色を取り戻していく。
「……リン」
小さくその名前を呟くと、研究所の冷たい暗闇の中で、いつも自分の後ろを泣きながらついてきた少女の姿がありありと脳裏に蘇った。
あいつと再会できたら、俺は最初になんて声をかければいいんだろうか。どんな話をすればいいんだろうか。
『リボンズ……痛いよ、苦しいよ……』
いつも薬の副作用や大人たちの暴力に怯え、そう言って泣いていたリン。
もし、オーブという場所でその傷が少しでも癒えているなら、俺のこの血塗られた手を見て、あいつは怯えてしまうだろうか。それとも、また前みたいに、俺の服の裾をぎゅっと掴んでくれるだろうか。
「……まずは、生きててよかったって、それだけ伝えればいいか」
いや、あいつのことだ。俺のボロボロになった姿を見て、自分のせいだと泣き出すに決まっている。
「泣くな、って怒ってやる。俺はお前を助けに来たんだって、もうあの大人たちの檻には戻さないって……そう言ってやるんだ」
それから、あいつがオーブでどんな風に過ごしていたのかも聞いてみたい。ブルーコスモスのいない世界が、どんなに温かかったのかを。もしあいつがその温かさを気に入っているなら――俺がこの手で、その場所ごと大人どもから奪い取って、あいつの居場所を守ってやればいい。
「待ってろよ、リン……」
宇宙の静寂の中、地球を見つめるリボンズの瞳には、先ほどまでの狂気ではなく、ただ一人の少女を想う純粋で、それゆえに強固な決意の光が宿っていた。
再会の時に交わす言葉を何度も心の中で繰り返しながら、少年は静かに、地球へ降り立つその瞬間を待ち続けるのだった――。
リボンズ
強化人間ナンバー002,
調整を施されたコーディネーターすら、撲殺できる力を素で持っている、
実験体の子どもたちからは人気を得ており、みんなのお兄ちゃんでもあるが、リンを、みんなを頑張って助けようとしたが、、その時にはエクステンデッドになっており、その時にはリンは脱走していたのと、モビルスーツ技術は、種割れキラと張り合える、
実験体関連のときに怒っている際は唯一種割れキラと、種割れアスランと戦闘可能で、どちらかの機体を落とすことが可能であり、一応サイコフレームテストはサイコフレームを起動させることができなかった
使用機体は、ストライクスタイン
格闘性能を格段に上げ、超距離戦も特化しており、宇宙世紀でいう、シナンジュスタインと、ジ・オのような機体でありスカート裏からは、サブアームを出し近距離戦闘が可能であり、背部には増設されたプロペラントタンクもあり、頭部は、シナンジュっぽくバルカンは8門も、あり、ストライカーブラストの試作型であり、エターナルパックもどきをつけているが、他の装備に変換不可能
オリジナルシナリオ編に登場
被験体番号001シロッコ
21歳の青年であり、サイコフレームのテストを始めて受けた人間だが、テストの結果サイコフレームを起動できずほかの研究所に回されるが、研究者達を懐柔し、研究所から消息不明になり、FREEDOM編まで消息不明、
一応サイコフレームの破片を集め、機体を調整し、鹵獲した機体をもとに
モビルスーツの製作をして動いている
彼の使用モビルスーツは、ジ・オと、ジ・オクロスである
そしてFREEDOM編と、DESTINY編最後ではブルーコスモス残党を集め、オリジナル編では
宇宙に行き宇宙にて新型モビルスーツデナンゾンを与え、そして新組織ユーリカを作りプラントと、連合の居住区を攻撃し、テロ組織として動き回っている(彼はキラと同じで技術力が凄い)