――地球、オーブの波打ち際。
寄せては返す波の音が、私の耳の奥で優しく響いている。
さっきまで私を支配していた、戦場を焼き尽くす真っ赤な炎の記憶が、目の前の青い海へと少しずつ溶けて消えていくようだった。
「キラ……みんな……っ、わたしを……探してくれてる、の……?」
私のボロボロに引き裂かれた心に、カガリの叫ぶような言葉が、温かい光になって染み込んでいく。
アークエンジェルのみんなは、まだここにはいない。
またあのブルーコスモスの大人たちが追ってくるかもしれない恐怖、薬のせいでズキズキと痛む頭、そして大人たちに暴行された身体の痛みは、今も消えない。
近くにいるオーブの兵士さんたちが少し手を動かすだけで、ビクッと身体がすくみ上がってしまう『呪い』は、解けないままだ。
けれど――大好きなみんなが生きていて、今も必死に私を探して、ここへ向かってくれている。
その事実だけが、私をこの世界に繋ぎ止めてくれていた。
「(みんな……わたし、ここにいるよ……っ……)」
零れ落ちる大粒の涙を、カガリは嫌な顔一つせず、自分の服の袖でそっと拭ってくれた。その手の温くもりに、少しだけ強張っていた身体の力が抜けていく。
その時だった。
ゾクッ……!
突然、背筋に冷たい刃を突き立てられたような、激しい悪寒が走った。
涙で濡れた視界の向こう、はるか見上げる空――そのもっと先、冷たい宇宙の彼方から、私を呼ぶ『何か』が脳裏に直接突き刺さってきた。
「ぁ……っ、う……!?」
息が詰まる。この感覚を知っている。
ドクンドクンと胸が嫌な高鳴りをあげ、頭の奥が割れそうなほど熱くなる。
研究所の冷たいコンクリートの上、いつも私の前に立って、大人たちの暴力から庇ってくれていた、あの男の子。
「(……リボン、ズ……?)」
声にはならなかった。
けれど、脳裏に浮かんだのは、間違いなく彼――被験体番号002の姿だった。
彼が今、ものすごい怒りと、悲しみと、そして私に対する強い執着を抱いて、どこかで戦っているような……そんな禍々しい深紅の気配が、心の奥底を激しく揺さぶる。
「リン!? どうしたんだ、どこかまた痛むのか!?」
私の異変に気づいたカガリが、心配そうに私の肩を抱きしめてくれる。
その温かさに引き戻されるように、宇宙からの不気味な残響は、すっと霧のように引いていった。
「ううん……なんでも、ない……。大丈夫……」
カガリを安心させるように小さく首を振ったけれど、私の身体の震えは止まらなかった。
アークエンジェルのみんなが向かっているこのオーブ。
温かくて、誰も私を縛らないこの場所に、いつかあの地獄の記憶のすべてが、私を連れ戻しにやってくるかもしれない。
そんな予感に怯えながら、私はカガリのぬくもりに縋るように、ただ小さく丸まっていた――。「ううん……なんでも、ない……。大丈夫……」
そう言ってみたものの、私の身体の震えは一向に止まらなかった。
さっき脳裏に突き刺さってきた、リボンズの圧倒的な『殺意』と『憎悪』、そして彼のすぐ近くにある、あのドロドロとしたおぞましい『嫌な機体の気配』が、どうしても頭から離れてくれない。
私の肩を抱きしめるカガリの手が、心配そうにぎゅっと強くなる。
「大丈夫なわけあるか! そんなにガタガタ震えて……顔色だって真っ青だ。まだどこか、酷く痛むところがあるんじゃないのか!?」
真っ直ぐに私を心配してくれるカガリの瞳。その温かさに触れているうちに、私は自分の記憶の底にある、一番触れたくない地獄の引き出しを、自ら開く覚悟を決めた。
宇宙で狂気に呑まれかけているリボンズを止めるためには、この優しくて温かいカガリに、私たちのすべてを話さなきゃいけないと思ったから。
私は震える唇を必死に動かし、涙を流しながら、静かに**【過去の話】**を始めた。
「カガリ……さん……。わたし、さっき……宇宙の向こうから、リボンズの、ものすごい殺意と……見たこともない、おっきくて嫌な機体の気配を感じたの。……リボンズはね、わたしと一緒の、あの地獄みたいな研究所にいた……被験体番号002の、男の子なの……」
「研究所の……仲間、なのか?」
カガリの問いかけに、私は小さく頷いて、過去の記憶をポツリ、ポツリと溢していった。
「あの場所はね……毎日、変な薬をいっぱい注射されて、頭が割れそうに痛くて……大人たちの言う通りに動けないと、冷たいコンクリートの上で、動けなくなるまで何度も何度も殴られるの。私はいつも泣いてばかりの不良品だったから、人一倍、いっぱい暴力を振るわれて……」
思い出すだけで、身体が恐怖でガタガタと拒絶反応を起こす。カガリは何も言わず、私の手をぎゅっと握りしめてくれた。
「でもね……リボンズだけは違ったの。リボンズは、大人たちが私を殴ろうとすると、いつもその間に割り込んで……自分の身体がボロボロになるまで、私を庇ってくれたの。大人たちがいなくなると、冷たい床の上で私の頭を撫でて……『泣くな、俺が絶対にお前を守ってやる。お前を壊す世界なんて、俺が全部滅ぼしてやるから』って……いつも、そう言ってくれたの……」
それが、リボンズの生きる理由だった。私を守ることだけが、あの地獄で彼が正気を保つための、唯一の縋り代だった。
「リボンズはね、私のことが大好きなの。だから今……わたしが死んだって騙されて、世界をもの凄く憎んでる。あのアズラエルなら、そのリボンズの憎しみも、あの嫌な機体も、全部利用してこのオーブに攻めてくる……! アズラエルは、この国のことだって絶対に知ってるでしょう……!?」
一気に過去の地獄を話し終えると、私は過呼吸気味になりながら、カガリの胸に顔を埋めて激しく泣きじゃくった。
リボンズが生きている確信と、彼を包む圧倒的な殺意。そして、彼を地獄の化け物に変えてしまったブルーコスモスへの恐怖。すべてを知ったカガリは、しばらくの間、言葉を失って絶句していた。
だが、やがてカガリは、私の背中を痛いほど力強く抱きしめ返した。その瞳には、ブルーコスモスの大人たちに対する、激しい、烈火のような怒りが宿っていた。
「……そんな地獄が、あってたまるか……! 子供の肉体を薬で縛り、暴力を振るい、戦う道具として弄ぶなんて……! ブルーコスモスの奴ら、どこまで腐ってやがるんだ……!!」
カガリは悔しそうに奥歯を噛み締め、それから、優しく私の顔を覗き込んだ。
「話してくれてありがとう、リン。辛かったな……。だが、安心しろ。そのリボンズって少年がどんなに世界を憎んでいようと、お前を助けたいという気持ちが本物なら、私たちが全力で、あいつをアズラエルの呪縛から引き剥がしてやる! アークエンジェルが来たら、キラたちにも絶対にこの話をしよう。あいつらなら、きっとお前たちの力になってくれる!」
「カガリ……さん……っ」
カガリの力強い言葉と温もりに、私の心の震えが少しだけ収まっていく。
宇宙で過去の約束に囚われ、殺意の嵐の中で待機するリボンズ。そして、地球で彼の傷ついた過去ごと受け入れようとするオーブの人々。不穏な運命の足音が、少しずつ、この青い海へと近づいていた――。
被験体001シロッコ専用モビルスーツ
ジ・オ
武装
高出力ビームライフル、ビームサーベル、ジャミング発生装置、サブアーム6本、小型サーベル6本、予備サーベル2本、135ミリコンバットバルカン、大型ビームシールド
装甲は、フェムテク装甲を胴体と背部、メインカメラに着けており、、全身をPS装甲で覆い、スカート裏からは、3本のサーベルを出すことができ、横のスカート、後ろのスカートからも1本ずつ出すこと可能、背部の大型ユニットには、ジャミング装置がある
イメージ的にはZガンダムのジオで、装甲が分厚くなっていて、サイドアーマーにサブアームが仕込まれているそしてギャンのような丸型のビームシールドを装備している
一応、極厚装甲をパージすると短時間とは言え、高速戦闘が可能、そのイメージは、ドムやゲルググに似た構造になっており、円形のバーニアノズルが覗く。また、大型ユニットからシールドを射出し、シールド外縁に設けられた6基の砲口からビームを発射している。だが戦闘可能時間は10分が限界である、
(一応核融合機であり、ニュートロンジャマーキャンセラーを搭載している)