※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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31話

地球連合軍からの最後通告――それは、この優しくて温かい中立国オーブの平和を、根底から叩き潰す悪魔の宣告だった。

現政権の解体と完全な武装解除。従わなければ『敵』とみなし、武力で行使する。

世界を黒と白、敵と味方だけに二分し、中立という優しさを絶対に許さないブルーコスモスの――ムルタ・アズラエルの傲慢なやり方に、オーブの首長たちは激しく苦悩し、ウズミ代表は烈火のごとく激昂した。

「(アズラエル……やっぱり、この国をめちゃくちゃにするつもりなんだ……っ)」

刻一刻と迫る猶予時間の中、オーブの街は一変した。

緊迫した避難勧告のサイレンが鳴り響き、一般の市民たちが都市部や軍施設から慌ただしく退去していく。それとすれ違うように、国防軍の戦車やモビルスーツが防衛態勢に入り、重苦しい空気が地面を這うように広がっていく。

その頃、アークエンジェル艦内でも、大きな岐路が迫っていた。

マリューさんが全クルーを前に、沈痛な、けれど確固たる声で告げたのだ。

――地球軍を脱走したこの艦で、連合という巨大な敵と戦うか。それとも、ここで艦を降りて退艦するか。命に関わる選択を、各々の意志に委ねると。

緊迫した時間が静かに流れる。

キラたちみんなが、自分の未来と、守るべきもののために必死で答えを出そうとしていた。

けれど、私の脳裏を支配していたのは、別の圧倒的な恐怖だった。

ドクン……ドクン……!

頭の奥が、割れそうなほど熱い。

2時間前、カガリさんの隣で感じたあの感覚が、連合の最後通告とともに、よりいっそう強烈な『確信』となって私の全身を縛り付けていた。

「(来る……。リボンズが……あの、おぞましい闇みたいな気配が、すぐそこまで来てる……っ)」

連合軍の降下部隊の群れ。その中に混ざって、宇宙で待機させられていたリボンズが、あの底知れない殺意と憎悪を抱いたまま、地球へと降りてくる。私を連れ戻すために、そして、アズラエルに利用されるまま、このオーブを焼き尽くすために。

「リン、大丈夫だ。私たちが絶対に守ってやるからな!」

私の異変に気づいたカガリさんが、私の手をぎゅっと握りしめてくれる。その手は少し震えていたけれど、絶対に逃げない強い意志に満ちていた。

キラも、新しく手に入れた未知の機体・フリーダムのコックピットへ向かう直前、私を見て力強く頷いてくれた。

みんなが戦う道を選び、この国と、私を守るために動き出す。

しかし、無情にも時間は牙を剥く。

連合軍が提示した通告の期限が、ついに切れた。

ウゥゥゥゥゥゥン――――――ッ!!!

オーブの青い空を引き裂くように、激しい砲撃の音が轟き、大地が大きく揺れる。

時間とともに、最悪の戦いの火蓋が切って落とされた。

押し寄せる連合軍の圧倒的な軍勢。

迎え撃つアークエンジェルとオーブ国防軍。

そしてその戦火の向こうから、私を呼ぶリボンズの、狂おしいほどの殺意の残響が、確実にこちらへと近づいていた――。ウゥゥゥゥゥゥン――――――ッ!!!

地鳴りのような重低音がオーブの海岸線を揺るがし、無数の対空砲火が青空を漆黒の爆煙で染め上げてしていく。

「全機、防衛ラインを死守せよ! 一歩も退くな!」

オーブ国防軍の指揮官の絶叫が通信に響くのと同時に、海岸線に配備されたリニアガンタンクが一斉に火を噴いた。轟音と共に放たれた超高初速の弾丸が、海上を進軍する連合軍の大型輸送艦の装甲を鋭く穿ち、凄まじい水柱と炎を吹き上がらせる。

しかし、地球連合軍の物量はそれを遥かに凌駕していた。

「撃てッ! 撃ち尽くせェッ!」

上空から迫る連合軍の戦闘機部隊が、容赦のないミサイルの雨をオーブの沿岸陣地へと浴びせる。爆発、爆発、爆発。爆風によって砂浜が吹き飛び、悲鳴と共に防衛陣地が瓦解していく。

その爆煙を切り裂いて、オーブの量産型モビルスーツ『M1アストレイ』の部隊が飛び出した。

「これ以上、私たちの国を蹂躙させないッ!!」

3機のアストレイが連携し、迫り来る連合の主力量産機『ストライクダガー』の群れにビームライフルを連射する。青白い光条がダガーの胸部を貫き、1機が派手に爆発四散した。だが、すぐさま背後から別の3機のダガーがビームサーベルを抜いて襲いかかる。装甲が激しく削れる金属音が戦場に響き渡る。

まさに地獄と化した戦場の中心で、リンの駆る**【ストライカーブラスト】**が激しくスラスターの火花を散らした。

「アストレイの部隊には手を出すなァッ!!」

リンは叫びながら、ダガーの群れに包囲されていたアストレイの前に強引に割り込んだ。薬の副作用による激しい頭痛で視界がチカチカと明滅するが、みんなを守りたいという執念だけで意識を繋ぎ止める。

ドガガガガガガッッ!!!

ストライカーブラストの両翼に装備されたガトリング砲が唸りを上げ、迫っていたダガー2機の装甲をズタズタに引き裂く。バランスを崩したダガーの隙を逃さず、リンはビームサーベルを抜いて鋭く踏み込んだ。

ズバァァァンッ!!

一閃。鮮やかな紅い軌跡がダガーの胴体を真っ二つに一刀両断にする。背後で巻き起こる大爆発の爆風を背に受けながら、リンはすぐに次なる敵へと視線を走らせた。

「ヒャハハハハ! 見ぃつけたぜ、不細工な鳥ちゃんがァッ!!」

不意に、上空から鼓膜を突き刺すような狂気の笑い声が響く。

変形した黒い影――レイダーガンダムが、猛烈な速度で急降下してきた。その機体から放たれる、ブルーコスモスのおぞましい執念の気配に、リンの脳の奥が割れそうなほど激しく拒絶反応を起こす。

ガシィィィンッッ!!!

レイダーが強烈な勢いで振り回した破砕球『ミョルニル』が、ストライカーブラストが掲げたシールドを直撃した。コックピットを凄まじい衝撃が襲い、リンの身体が激しく揺さぶられる。

「くっ……あ、ああぁッ……!」

「しぶてえんだよ! さっさとバラバラになりやがれーっ!!」

変形を解除したレイダーが、近距離から対空機関砲『アンツィール』と2連装52mm超高初速砲の先鋭な弾幕を容赦なく浴びせてくる。

リンはストライカーブラストの機動力を限界まで引き出し、激しい水飛沫を上げながら空中と海上を乱舞した。機体を横滑りさせ、間一髪でビームの雨を回避しながら、ブラストの大型砲門をレイダーの死角へと強引に捻じ向ける。

「当たってェッ!!」

ドガァァァンッ!!

リンが放った渾身のメガ粒子砲が、レイダーの盾を激しく掠め、爆炎を上げた。

「チッ、すばしっこい雑魚が……ッ! イライラさせんじゃねえよ!」

煙の中から飛び出したレイダーが、さらに凶悪な殺意を剥き出しにして迫り来る。

その時、戦場のさらに上空、はるか高い雲の向こうで、キラのフリーダムとアスランのジャスティスが、カラミティ、フォビドゥンと息をもつかせぬ超高速の空中戦を繰り広げていた。

「アスラン、左だ!」

「分かっている!」

フリーダムがクサナギの影から飛び出し、カラミティの放つ超長距離砲を紙一重で回避する。その瞬間、フリーダムのマルチロックオンシステムが起動し、無数のビームと誘導ミサイルがカラミティへと一斉に降り注いだ。

「くそがァッ! チョロチョロと!」

オルガのカラミティが激しい爆煙に包まれるが、その隙を突いてシャニのフォビドゥンが強襲する。ゲシュマイディッヒ・パンツァーでキラのビームを強引に湾曲させて無効化し、巨大なニーズヘグ(鎌)を振り下ろした。

「させんッ!」

そこへ割って入ったのが、アスランのジャスティスだった。バセル(ビームブーメラン)が鋭い回転を上げてフォビドゥンの鎌を弾き飛ばし、背面のリフター『ファトゥム-00』が分離してフォビドゥンの頭上から猛烈な特攻をかける。

初めてとは思えぬ、神業のような完璧なコンビネーション。二機のガンダムは、連合の3機をジリジリと圧倒し、戦域を押し返していく。

しかし、その激戦の最中。

レイダーと激しく火花を散らし、ストライクダガーを撃破し続けていたリンの感覚に、それは唐突に突き刺さってきた。

ドクン……! と、心臓が爆発したかと思うほどの激しい鼓動。

硝煙と爆発に満ちたこの戦場の、さらに奥。地球の重力を突き破って降りてくる、あの圧倒的な『殺意』と『憎悪』。配置に就かされ、宇宙で待機させられていたあの人が、ついにその牙を剥いて降りてくる。そして、その背後にへばりついている、ドロドロとした闇のような、言葉にできないほどおぞましい未知の巨大な気配が、確実にこの場所へ向かって加速している。

「(リボンズ……! 来る……本当に、来ちゃう……っ!)」

リンはレイダーの猛攻を必死に退けながら、戦火の向こうに広がる不穏な空を、恐怖に満ちた瞳で見つめるしかなかった――。「チッ、どいつもこいつもチョロチョロと……! 今日は引くぞ!」

「薬が……切れる……! 帰る、ボク帰るぅ……ッ!!」

フリーダムとジャスティスの猛攻、そしてリンの執念の応戦の最中、カラミティ、フォビドゥン、レイダーの『三馬鹿』の頭脳に、強制的な肉体強化の終わりを告げる凄惨な激痛が襲いかかった。禁断症状による狂乱と疲弊に耐えかねた3機は、オーブを仕留めきれぬまま、悲鳴を上げて一斉に戦域から離脱、後退していった。

激しい爆音が一瞬だけ遠のき、オーブの海岸線に安堵の息漏れが広がった――その直後だった。

ドクン……! ドクン……! と、脳の芯を直接冷たい刃で抉られるような、圧倒的な『殺意』と『憎悪』、そして狂おしいほどの『焦燥』がリンの精神を鋭く突き刺す。

「(……リボンズ……!?)」

宇宙で待機させられていたはずの彼が、今、地球の重力を突き破ってこの場所に降りてこられた理由。それは、狡猾なムルタ・アズラエルが、三馬鹿の薬切れやオーブ攻略が滞ったときのために用意していた、最悪の『一応の保険』。戦況を力ずくで圧殺するための冷酷な切り札として、彼は呼び寄せられていたのだ。

大気圏を突破し、火達磨になりながらオーブの空へと猛烈な速度で降下してくる一筋の不穏な光。

だが、今の彼を包むその精神波は、激しい怒りと、それ以上にリンを失う恐怖で完全に暴走していた。機体に組み込まれた**【擬似サイコフレーム】**から放たれるおぞましい精神波のノイズが、リボンズの脳を激しく狂わせ、すぐ近くにいるはずのリンの正確な位置を完全に遮断していたのだ。

リンの存在を感知できぬまま、狂気の少年は通信機に向かって冷徹に言い放った。

『――ストライクスタイン、リボンズ・アルマーク、出るぞ』

ゴォォォォォォォンッッ!!!

爆風と共に炎を割って現れたのは、通常の地球軍の兵器体系からは完全に逸脱した、不気味に蠢く一本の**【モノアイ】を持つ、漆黒と深紅の禍々しいモビルスーツ――【ストライクスタイン】**だった。

「ひ、地球軍の新型機……!? 待て、何だあの動きは……速すぎるッ!」

防衛に当たっていたM1アストレイの部隊が迎撃のために一斉にビームライフルを放つ。だが、ストライクスタインは驚異的な機動性で海面を爆走し、紙一重のステップで全ての光条を回避した。一切の射撃兵器を排したその機体は、純粋な**【格闘戦特化】**の怪物。

「どけッ! 邪魔をするな……!! リンはどこだ!? どこへやったァッ!!」

リボンズは通信機越しに、狂わんばかりの悲痛な叫びを上げた。その声には、リンが死んだと思い込まされている絶望と、今すぐに見つけ出さなければという壊れそうなほどの心配、そして彼女を奪った世界への激しい怒りが混ざり合っていた。

「あの研究所の大人たちに、また壊されたのか……!? どこにいるんだリン、生きてるんだろ……!? 俺が今、助けてやるから……! だから、俺を置いていかないでくれッ!!」

狂乱するリボンズの叫びと共に、ストライクスタインの太腿部、そして**【スカートアーマーから隠されたサブアーム】**が瞬時に展開した。四本の腕が、それぞれ禍々しい高出力のビームサーベルを狂ったように起動させる。

ズバァァァンッッ!!!

一瞬だった。すれ違いざま、四本の魔剣がアストレイ1機の胴体を容赦なく十文字に引き裂き、肉片を焼くような爆炎へと変えていく。

「うわあああッ!? 隊長っ!!」

「この化け物めッ!!」

残されたアストレイ2機が死に物狂いでサーベルを抜いて斬りかかる。しかし、ストライクスタインは跳躍一番、アストレイの頭部を強烈な蹴りで踏み砕き、その勢いのままもう1機の懐へと滑り込んだ。

サブアームの2本のサーベルがアストレイの両腕を根元から切断し、メインアームのサーベルがコックピットを容赦なく貫く。

圧倒的な、文字通りの『制圧』。リンを必死に探し求めるリボンズの焦燥のままに、オーブの最新鋭量産機が、まるで紙屑のように無残に破壊されていく。

「リボンズ……! やめて、もうやめてぇッ!! 私はここだよ……!!」

ストライカーブラストのモニター越しに、アストレイの部隊を無慈悲に屠り殺していくモノアイの怪物を見つめながら、リンは涙を流して叫んだ。けれど、擬似サイコフレームのノイズに狂い、リンの安否をただ心配して激怒するリボンズには、すぐ目の前で叫ぶリンの声も、その気配も、今のところは全く届いていなかった。

アズラエルの保険として戦場に解き放たれた、悲しき狂気の少年と、おぞましき格闘の化け物。

キラやアスラン、そしてリンの目の前で、ストライクスタインは凄まじい爆炎を引き連れながら、愛する少女を探してオーブの防衛線を蹂躙し続ける――。

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