※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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33話

オーブ国防軍の作戦室。ホログラムの戦術マップを囲み、カガリさん、キラ、マリューさん、そして私――リンは、緊迫した作戦会議の真っ只中にいた。

「敵の物量は、こちらの予想を遥かに超えているわ」

マリューさんが厳しい表情でマップを指し示す。

「アークエンジェルとクサナギ、そして避難民を乗せた臨検船を無事に宇宙(そら)へ逃がすためには、ただ防衛ラインを維持するだけでは絶対に足りない。打ち上げの瞬間、全推力を上昇に奪われる船は完全に無防備になる。どうやって船の護衛をしきるか……これがこの作戦のすべてよ」

「……僕とアスランの二機が前線へ出て、上空の防衛線を極限まで広げる」

キラがマップの赤い敵進軍ルートを睨みながら言った。

「臨検船のルート上に配置された対空防御陣地をアストレイの部隊で死守しつつ、僕たちが前衛で連合の主力量産機『ストライクダガー』の第一波を叩く。連合が送り込んできた**【新型のガンダム3機】**――カラミティ、フォビドゥン、レイダーが来たら、僕とアスランで引き受けて、絶対に船に近づけさせない」

「だがキラ、さっき現れたあのもう1機の新型はどうする?」

カガリさんが拳を机に叩きつけ、悔しげに声を潜める。

「格闘戦特化の、あのストライクスタインだ。アストレイの部隊を一瞬で制圧したあのスピードと四本のビームサーベル……あれに打ち上げ中の船の推進部を狙われたら、一撃で終わりだぞ」

その言葉に、私は胸を締め付けられるような痛みを覚えて、自分の膝の上で両手を強く握りしめた。

あのリボンズの、泣き出しそうなほど必死な叫び。そして、生体チップによって無理やり引き裂かれた、あの悲痛な絶叫が耳の奥でリフレインする。

リボンズをどうするか――。

会議では、ストライクスタインが現れた場合はフリーダムとジャスティスが迎撃し、最悪の場合は「撃破も辞さない」という方針で一応のまとまりを見せた。それしか船を守る方法がないからだ。

「よし、各自配置に就いてくれ。これがオーブの、私たちの最後の戦いだ!」

カガリさんの号令とともに、大人たちやキラが次々と作戦室を後にする。けれど、私はその場に立ち尽したまま、動くことができなかった。

(撃破なんて、絶対に嫌……。大人たちに操られて、頭痛に苦しめられながら私を探しているリボンズを、どうして私たちが撃たなきゃいけないの……!?)

胸の奥から湧き上がる衝動に突き動かされ、私は走り出した。みんなとは違う方向――一人で司令部のテラスへと向かったカガリさんの背中を、独断で追いかけた。

バッ、と激しく扉を開けて、潮風に髪を揺らされながら、私はカガリさんの背中に向かって声を絞り出す。

「カガリさん……っ! 頼みが、あるの……!」

「リン……? どうした、作戦会議は終わったはずだが」

振り返ったカガリさんは、私の酷く強張った顔を見て、驚いたように目を見開いた。

私は一歩、カガリさんの方へ踏み込む。涙はもう流さない。ただ、張り裂けそうな胸の痛みを覚悟に変えて、真っ直ぐに彼女を見つめた。

「次の戦闘で……もし、あのストライクスタインが出てきたら、私に行かせてほしい」

「何を言っているんだリン! あいつは、あのリボンズとかいうパイロットは、さっきアストレイの部隊を容赦なく制圧したんだぞ!? いくら知り合いだからって、今のあいつは完全に地球軍の、アズラエルの操り人形だ!」

「分かってます! 分かってるよ……っ!」

カガリさんの叫びに負けない声で、私は言葉をぶつけた。

「あの子の脳内には生体チップが埋め込まれてるの。大人の命令に逆らったら、死ぬほどの電気ショックが流れて、激しい頭痛でまともな思考もできなくなる……! でも、さっき戦ったとき、リボンズは私がパイロットだって気づいてくれた。『俺を置いていかないでくれ』って、泣いてくれたんだよ……!」

私は自分の胸元を強く掴み、必死に訴え続ける。

「リボンズは、格闘戦特化のストライクスタインで、また無理やり私たちを殺しにくる。電気ショックのせいで、狂ったように暴れるかもしれない。下手に近づけば、キラやアストレイのみんなが落とされる……。だからこそ、あの子を止められるのは、あの子の心を動かせるのは、私しかいないんだ!!」

「リン……お前……」

「私が、リボンズの盾になる。あの子の攻撃を全部受け止めてでも、あの地獄から、アズラエルの呪縛から引きずり出して、今度こそ私の隣に連れ戻す! そのために……私に、ストライカーブラストでリボンズと対峙する許可をください……!」

カガリさんは息を呑み、私の瞳の奥にある『覚悟』をじっと見つめていた。それは、一人の少女として怯える姿ではなく、大切な人を救うために命を懸ける、一人の戦士の目だった。

沈黙が戦火の風に溶けていく。やがて、カガリさんは深くため息をつくと、優しく、だけど力強く私の肩に手を置いた。

「……分かった。お前の覚悟、確かに受け取った」

カガリさんの瞳にも、熱い光が宿る。

「キラやアスランには私から伝えておく。ストライクスタインが現れたら、お前が最優先で接触しろ。キラたちには、その周囲のダガーや新型のガンダム3機を絶対に近づけさせないよう、完璧に船の護衛をしきらせる! だからリン……お前は、お前の大好きなやつを、絶対に連れ戻してこい!」

「カガリさん……っ。ありがとう……!」

カガリさんの言葉に、私の心の霧は完全に晴れた。

大人たちの都合で肉体を改造され、生体チップの激痛に苦しめられながら、今も私を探して泣いているリボンズ。

(待ってて、リボンズ……。どんなに電気を流されて頭が痛くても、私がその痛みを全部吹き飛ばしてやる。今度こそ、絶対に手を離さない……!)

オーブの空が夕闇に染まる中、私はストライカーブラストのコックピットへと向かって、力強く走り出した。「総員、第一種戦闘配置! 本艦はこれよりクサナギ、および臨検船の護衛任務に入る! 各機、総力を挙げて連合を食い止めなさい!」

マリュー艦長の激しい号令がアークエンジェルの艦内に響き渡るのと同時に、オーブの青い空が再び激しい硝煙の渦に包まれた。

地球連合軍の第二次オーブ解放作戦が、ついに始まったのだ。

海岸線の向こうから地平線を埋め尽くすように進軍してくるのは、おびただしい数の地球軍主力量産機――ストライクダガーの群れ。その圧倒的な物量を前に、オーブ国防軍のM1アストレイ部隊が必死の迎撃を開始する。

「リン、ストライカーブラスト、出ます……っ!」

カタパルトから爆音と共に弾き出された私のストライカーブラストは、大気圏離脱の準備を進める船たちの盾となるべく、激しい防衛戦の最前線へと飛び込んだ。

ドガガガガガガッッ!!!

「くっ……、なんて数なの……!?」

正面から押し寄せるストライクダガーの小隊が、容赦のないビームライフルと頭部バルカンの雨を降らせてくる。私は操縦桿を必死に引き、スラスターを吹かして空中をロールしながら光条を回避した。お返しとばかりにストライカーブラストのビームライフルを構え、迫り来るダガーの群れへとトリガーを引く。

ズドォォォォンッ!!

一機を撃破したものの、弾幕を切り裂いて別の三機が、瞬く間に私のストライカーブラストを包囲した。

左右、および頭上。完璧な連携で放たれるダガーのライフル光条が、機体の至近距離で炸裂する。

「当たってぇっ!!」

私は左に急旋回をかけながらシールドを掲げ、一機のライフル連射を強引に弾いた。衝撃でガンガンとコックピットに火花が散る中、もう片方の手でビームサーベルを引き抜き、右側から斬りかかってきたダガーの腕を根元から叩き切る!

ガキィィィィンッッ!!!

しかし、頭上から急降下してきた三機目のダガーが、私の死角からビームサーベルを突き出してきた。

「しまっ――!」

ガガガガガッッと鈍い衝撃音とともに、ストライカーブラストの肩装甲が激しく削り取られる。警告音が不気味に鳴り響く中、私は必死にペダルを踏み込み、バックパックのスラスターの推力で強引に間合いを離した。

「ハァ、ハァ……っ。一機一機が、さっきより動きがいい……!?」

ただの量産機相手のはずなのに、数に物を言わせた息をもつかせぬ波状攻撃に、私はじわじわと防戦一方へと追い込まれ、冷や汗が背中を伝っていく。

――同時刻、遥か上空の戦域。

「来たか……っ!」

キラのフリーダムガンダム、およびアスランのジャスティスガンダムの前には、あの禍々しいオーラを放つ連合の【新型のガンダム3機】が、空気を引き裂くような爆音とともになだれ込んでいた。

「アハハハハッ! 壊れろよ、フリーダムッ!!」

シャニのフォビドゥンガンダムが急加速し、ニーズヘグの巨大な刃を振り下ろす。キラはラケルタ・ビームサーベルでそれを受け止めるが、直後、フォビドゥンの背後から誘導ビーム砲『フレスベルグ』が、あり得ない軌道でぐにゃりと曲がりながらフリーダムの背後を襲った。

「くっ……!」

キラはハイマットモードの翼を広げ、間一ヴァン(髪一重)の機動でビームを回避する。だが、その回避先を完全に読んでいたクロトのレイダーガンダムが、MA形態から瞬時に変形。超高初速砲を連射しながら、巨大な鉄球『ミョルニル』を激しい勢いで叩きつけてきた。

ガシィィィィンッッ!!!

「キラ、下がれ!」

横合いから滑り込んだアスランのジャスティスが、両刃のサーベル『アンビデクストラス・ハルバード』を旋回させ、激しい火花を散らしながら鉄球を強引に弾き飛ばす。

しかし、その二機をあざ笑うかのように、さらに後方からオルガのカラミティガンダムが、背部のプラズマ収束ビーム砲『トーデスブロック』と、両腕の複列位相エネルギー砲を一斉に爆発させた。

ドバァァァァァンッッ!!!

天を割るような極大の閃光が、キラとアスランを飲み込まんと襲いかかる。二機は左右へと散りながら、それぞれのビームライフルとクスィフィアス・レール砲で猛烈な反撃の弾幕を打ち返した。空を切り裂く光条と、幾重にも重なる大爆発。あちらの戦場もまた、一瞬の油断が死へと直結する、文字通りの極限の激戦と化していた。

――キィィィィンッ! ズバァァッ!!

「これで、最後……っ!!」

地上付近の戦場。私は苦戦しながらも、翻弄してくるストライクダガーの最後の一機の懐へと死に物狂いで滑り込み、その胴体をサーベルで力任せに一刀両断にした。

ドゴォォォンと背後で巻き起こる爆炎の風を浴びながら、私はすぐさまストライカーブラストのメインモニターを激しく切り替えた。

ハァ、ハァ、と胸を上下させ、荒い息を吐き出しながら、戦場全体のサーマルセンサーと機体識別データを必死に走らせる。

「リボンズ……! どこにいるの、リボンズ……!?」

カガリさんとの約束通り、あの漆黒と深紅の格闘の化け物――ストライクスタインが現れた瞬間に私が接触し、あの子を止める。そのために、私はこの激戦を戦い抜いたのだ。

しかし、広大なモニターのどこを捜索しても、レーダーの波形をどれだけ拡大しても、あの不気味に輝く一本の『モノアイ』の反応は、どこにも見当たらない。

視界にあるのは、激しい戦闘でボロボロになったストライクダガーの残骸と、はるか上空で激しく火花を散らし、新型3機と戦っているキラたちのガンダムの光。それだけだった。

「いない……? どうして……っ、まだ出撃させられてないの……!?」

嫌な予感が胸をよぎる。

あの地獄のような電気ショックで酷い頭痛を与えられ、アズラエルに『試作型のゆりかご』という最悪の罠にハメられようとしているリボンズ。一刻も早く見つけて助け出さなきゃいけないのに、彼のストライクスタインは、この激化する戦場のどこにも、未だ姿を現していなかった――。「――っ! レーダーに急速接近する高エネルギー反応! 来ました、ストライクスタインです!!」

アークエンジェルCICからの悲痛な警告が響いた直後、上空の雲を割って、あの漆黒と深紅の巨体が戦場に舞い降りた。

四本の腕に高出力のビームサーベルを狂い咲かせた、格闘戦特化の怪物。

だが、そのコックピットにいるリボンズの瞳には、さっきまでの狂気も、アズラエルの生体チップがもたらす激痛への屈服も一切なかった。彼は、脳を焼き焦がすほどの電気ショックを自らの凄まじい意志の力だけで完全にねじ伏せ、完全に「俺」の意識を取り戻していた。

「リン……ッ!!」

「リボンズ……! 嘘、頭痛は……!? 大丈夫なの!?」

私がストライカーブラストの操縦桿を握りしめて叫ぶと、通信回線から返ってきたのは、激しい息を吐きながらも、ハッキリとしたリボンズの力強い声だった。

「ハァ……ッ、あんな大人の小細工、俺の心までは縛れねえよ……! 待たせたな、リン。お前を……絶対にその汚い手から奪い返しに来た!」

ゴォォォォォォォッッ!!!

ストライクスタインが突進してくる。周囲の地球軍からは「リンを仕留めろ」と命令されているリボンズは、軍の遠隔監視を欺くために、私のストライカーブラストと激しく刃を交え始めた。

ガキィィィィンッッ!!!

激しい火花が散る。だけど、リボンズの刃からは私を殺そうとする気配が微塵も感じられない。それどころか、ストライカーブラストの装甲を傷つけない絶妙な角度とパワーで、私のサーベルをいなし、まるで激しい戦闘を繰り広げているかのように見せかけているのだ。

「リン、そのまま俺の動きに合わせろ! 周りの雑魚は俺が片付ける!」

「え……っ!?」

その時だった。アークエンジェルを死角から沈めようと、ストライクダガーの小隊が急速接近してくるのが見えた。

「リンの仲間を……、リンが守りたいものを、ナチュラルの分際で傷つけさせるかよォッ!!」

リボンズは私とサーベルを噛み合わせたまま、スカートアーマーから伸びた二本のサブアームを瞬時に背後へと回した。

ガシィィィンッ! と、私と戦っている姿勢のまま、背後から奇襲を仕掛けてきたストライクダガーのコックピットを、サブアームの魔剣が正確無比に貫く。

ドゴォォォォンッ!!!

「嘘……っ、私と戦いながら!?」

リボンズの超人的な戦闘能力はそれだけに留まらない。

今度は臨検船の方へ向かっていくストライクダガーの群れを捉えると、私を強引に押し返すフリをしながら機体を大きく反転。すれ違いざまの凄まじい一閃で、流れ弾のように放たれた彼の斬撃が、臨検船の手前にいたダガーたちを次々と十文字に引き裂いていく。

バババババァァァンッッ!!!

「な、何なんだあの機体は!? 味方を攻撃しているのか!?」

地球軍の通信が混乱に陥る。リボンズにとっては、リンの味方こそが俺の守るべきものであり、アズラエルの軍などただの敵でしかなかった。

「危ない、リンッ! 右だ!!」

「えっ!?」

気づけば、私のストライカーブラストの死角から、別のダガーが放ったビームライフルが迫っていた。

直後、ストライクスタインのメインアームが強引に私の機体の前に割り込み、その高出力ビームサーベルを高速回転させて、迫る光条を力ずくで叩き落とした。

チュドォォォォンッ!!

「ハァ……ハァ……っ。お前には、指一本触れさせねえよ……!」

リボンズは私を完璧に護衛し、私の仲間であるオーブの船を援護しながら、再び私と視線を交わすようにストライクスタインのモノアイを輝かせた。

戦いながら、私を、そしてみんなを護る。アズラエルにどんだけ電気を流されようが、この人は私を救うために、その圧倒的な力で戦場を支配し始めていた――。キィィィィンッ! ガシィィィィンッッ!!!

ストライクスタインの四本の魔剣と、私のストライカーブラストのサーベルが激しく火花を散らす。周囲から見れば、互いの命を奪い合う壮絶な死闘。けれど、リボンズの操縦はどこまでも優しく、私の機体を完璧にコントロールしていた。

「リン、よく聞け」

通信の向こうで、リボンズが鋭く、だけど落ち着いた声で告げる。

「このままじゃ、上空の連中に俺たちの偽装がバレる。アズラエルは俺をただの道具としか思ってねえ……。このまま地球軍の言いなりになってたら、俺はまたお前を襲わされるか、その前に脳みそを弄られて完全に壊される」

「リボンズ……。そんなの、嫌だよ……っ!」

私は恐怖で胸が押しつぶされそうになった。正気を取り戻したばかりのあの子を、アズラエルたちブルーコスモスがこのまま生かしておくはずがない。

「だから、これが俺の最後の賭けだ。――ストライカーブラスト、フライトユニット固定用ロックを解放しろ!」

「えっ……!?」

言われるがままに私がコックピットのコンソールを叩いた瞬間、ストライクスタインが私の背後に回り込んだ。ガシャリッッ!!! と激しい金属音が響き、ストライカーブラストの背中に、驚くほど強固な質量がドッキングする。

リボンズが自分のストライクスタインから高出力のフライトユニットを強引に切り離し、私の機体へと強制譲渡(マウント)したのだ。

「リボンズ!? ダメだよ、そんなことしたらあなたの機体は大気圏内で飛べなく――」

「これでいいんだ! お前はこれを使って、今すぐ仲間のところへ向かいな!」

リボンズは私の言葉を遮ると、ストライクスタインを正面へと回り込ませ、その広大な胸部装甲を無防備に晒した。

「リン、俺の機体を撃て。サーベルで、このコックピットの横の装甲を思い切り引き裂くんだ!」

「できない……! そんなこと、リボンズを傷つけるようなこと、私にはできないよ……っ!」

「撃てッ!!」

リボンズが声を荒らげる。その瞳には、私の未来を守るための、絶対的な決意が宿っていた。

「機体に甚大な損傷を受けなきゃ、上空の監視の目を誤魔化せねえ! 俺が『戦闘不能でやむを得ず後退した』って形にしなきゃ、俺は今すぐここで生体チップで脳を焼き切られる! お前を逃がすための、これが唯一の方法なんだ!」

「リボンズ……っ」

涙が視界を滲ませる。だけど、ここで私が躊躇えば、リボンズの覚悟が無駄になる。リボンズを絶対に助け出すって、カガリさんとも約束したんだ……!

「……ごめん、リボンズ……っ!!」

私は泣きながら、操縦桿を強く押し込んだ。ストライカーブラストのビームサーベルが、ストライクスタインの左胸の装甲を、火花を爆発させながら鋭く引き裂く。

バリバリバリズバァァァッッ!!!

「がっ……ハァ、ハァ……! それでいい、リン……上出来だ!」

火花と黒煙を吹き上げるストライクスタイン。リボンズは激しい衝撃に耐えながら、獰猛に、だけど愛おしそうに微笑んだ。

「奴らが次の作戦に動く時、俺は絶対に、お前たちの宇宙(そら)の船を襲撃するルートに機体を入れさせる……。だからリン、お前の仲間のところへ行け。宇宙へ上がって、俺を、待ってろ……!」

「リボンズ……! 私、待ってるから! 絶対に、あなたを助けにいくからね!!」

「ああ……信じてる。――行けぇぇぇッ!!」

ストライクスタインのサブアームが、私のストライカーブラストの胸を優しく、だけど力強く突き放した。

譲り受けたフライトユニットが、爆発的な轟音と共に起動する。ストライカーブラストは驚異的な推進力で急上昇し、戦場を切り裂いてオーブの仲間たちの元へと一瞬で跳ね上がった。

バックミラーに映る、深紅と漆黒の機体。

フライトユニットを失い、胸から黒煙を吹き上げるストライクスタインは、そのまま海面へと滑り落ちるようにして、地球軍の母艦へと後退(ひ)いていく。

「待ってて、リボンズ……っ!」

私は涙を拭い、カガリさんやキラたちが死守するドゴォォォォォォォォンッ!!!!!

背後でオーブの象徴だったウズミ様の国破れての決断――モルゲンレーテ工廠の自爆の炎が天を焦がす中、私を乗せたアークエンジェル、そしてクサナギは、凄まじい轟音と共にマスドライバー『カグヤ』のレールへと滑り込んだ。

「リン、しっかり掴まってて!」

コックピットの通信からカガリさんの緊迫した声が響く。

「はい……っ!」

ガガガガガガガガガッッ!!!!!

シートに背中がめり込むほどの、凄まじい重力加速度(G)が私の全身を襲う。ストライカーブラストのコックピット全体が激しく振動し、アラートが鳴り響く。

リボンズから命懸けで譲り受けたフライトユニットをしっかりと背負い、私は操縦桿を強く握りしめて迫り来る衝撃に耐え続けた。

キィィィィィィィィン――――――ッ!!!!!

光の矢となった船は、マスドライバーのレールを一気に駆け上がり、オーブの青い大地を蹴って天へと跳ね上がる。

窓の外の景色が、青から、深い藍、そして吸い込まれるような漆黒の宇宙(そら)へと急速に塗り替えられていく。大気圏を突破する瞬間の激しい摩擦と熱、そしてそれを突き抜けた瞬間に訪れる、奇妙なまでの静寂。

フワリ、と身体が浮くような感覚――無重力の世界。

大気圏を脱出し、私たちはついに、終わりの見えない広大な宇宙の戦場へと到達した。

「ハァ……、ハァ……っ。上がれた、んだ……」

息を整えながら、私はストライカーブラストの全天周モニターを見渡した。遠くに輝く地球の青い輪郭。そして、静寂の宇宙に浮かぶ、アークエンジェルとクサナギの雄姿。

船は無事に上がった。護衛作戦は成功したんだ。

だけど、私の戦いはここから始まる。

胸元をそっと押さえると、あの別れ際にリボンズが残した力強い言葉が、今も耳の奥で熱く響いていた。

『奴らが次の作戦に動く時、俺は絶対に、お前たちの宇宙の船を襲撃するルートに機体を入れさせる……。だから宇宙へ上がって、俺を、待ってろ……!』

あの子は地球軍の目を欺くために、自らの機体を傷つけて後退した。今頃、アズラエルたちの元で、あの激しい頭痛の残響や不信感に満ちた大人たちの視線に耐えているかもしれない。でも、リボンズは必ず来る。私を、俺を迎えに、この暗い宇宙のどこかから、必ずその牙を剥いて現れるはずだ。

「リボンズ……。私はここにいるよ」

私は暗黒の宇宙の彼方を見つめ、静かに、だけど絶対に揺るがない覚悟を瞳に灯した。

「絶対に、あなたをあの地獄から助け出す。今度は私が、あなたの手を掴んで離さないから……っ!」

譲り受けた翼を静かに休ませながら、私は最愛の少年との再会の時を、そして地球軍との本当の決戦の時を、静かに待ち受けていた――。

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