――その平和な空気は、一瞬にして切り裂かれた。
ドゴォォォォォォォォォンッッ!!!!!
「な、何だ!? 何事だッ!?」
宇宙港の手前数キロの地点で、凄まじい爆発音が轟き、高級車の車体が激しく横揺れした。カガリが思わず叫び、アレックスは咄嗟にハンドルを強く握り直して急ブレーキを踏む。突如として巻き上がった爆炎と黒煙が、視界を完全に遮った。
「敵襲ッ! カガリ、伏せろ!」
待ち伏せていたかのように現れたのは、国籍不明のモビルスーツ部隊だった。車が急停車した瞬間、前後の大型装甲車から飛び出してきた2名の熟練歩兵が即座に行動を開始した。彼らは身を挺してカガリとアレックスの盾となるように周囲に展開する。
「代表、こちらへ! 我々が守ります、移動を!」
歩兵たちは自動小銃を構え、周囲の物陰や不審な動きを鋭い眼光で警戒しながら、二人を車から安全な遮蔽物へと誘導し、迅速な護衛を開始した。だが、敵の狙いは明らかにオーブの首長たるカガリの命。容赦のない対地銃弾が地面を抉り、土砂を跳ね上げる。
その時、彼らのインカム、そして随伴する全MSの回線に、強烈な割り込み通信が入った。オーブの司令室からではない。それは、この宙域のバックアップとして極秘裏に待機させていた、**【私専用の私設艦隊】**の最新鋭旗艦ブリッジからの、私の緊迫した指示だった。
『カガリ! アレックス! 聞こえる!? 私の艦隊のレーダーが敵の増援を捉えたわ! ジェダ、アンクシャ! カガリを船に乗せるために、先に走らせて! 敵をここで食い止めるのよ!』
「了解ッ!!」
私の命令に、ジャンプ警戒を行っていたジェダ護衛仕様のパイロットたちが即座に反応した。5機のジェダ護衛仕様は強靱な脚部スラスターを爆発させ、車列の前に割って入るように着地。携行していたショートマシンガンを両手で構え、突撃してくる敵の量産型MS部隊へ向けて、凄まじい面制圧の対空・対地射撃を開始した。
バリバリバリバリバリバリッ!!!
激しい銃撃の嵐が空間を埋め尽くし、突撃してきた敵MSの胸部装甲を火花と共にガリガリと削り取る。一機が堪らず後退した瞬間、ジェダの一機が再びジャンプ。上空からショートマシンガンを叩き込み、敵の頭部メインカメラを吹き飛ばして沈黙させた。ジェダたちの猛烈な面制圧迎撃によって、敵の進軍ルートが一瞬にして火の海と化し、完全に足止めされる。
「アレックス、今だ! 走れッ!!」
歩兵たちに守られながら、隙を突いて再び車へと飛び乗ったカガリが叫ぶ。アレックスはクラッチを繋ぎ、アクセルを床まで踏み込んだ。高級車は猛烈な白煙を上げながら、ジェダたちが抉じ開けた突破口をすり抜け、戦闘区域からの強行脱出を図る。
しかし、敵もさるもの。上空の雲を切り裂き、ザフトの旧型機をベースにした不気味な【ジンの改修型】が3機、背部スラスターを最大出力にして凄まじいスピードで急降下、飛来してきた。そのうちの1機が、重斬刀をこれでもかと振りかぶり、カガリたちの乗る車へと容赦なく自由落下の一撃を見舞おうとする。
「行かせるかよぉッ!!」
その刃が車の屋根を切り裂く直前、上空を旋回していた2機のアンクシャが動いた。
アンクシャは飛行形態のまま突入すると、敵の脳頭前方をかすめるように超高速で交差。そのまま空中で鮮やかな【変形】を遂げ、MS形態へと移行しながら、両腕のウェポン・バインダーからビームサーベルを文字通り一瞬で起動させた。
ギシィィィィンッッ!!!
まばゆいピンクの光刃が、ジンの改修型の実体剣と真っ正面から激突し、凄まじい衝撃波と金属音を周囲に撒き散らす。アンクシャはその圧倒的な推力と大気圏内での機動性を活かし、空中を受け流しながらもう一振りのサーベルでジンのモノアイを一刀両断。強引に敵の残存機を押し込み、空中戦へと引きずり込んでカガリたちの足止めをしてくれた。
「すまない、助かる!」
バックミラーでアンクシャたちの鮮烈な空中格闘戦、そして地上でショートマシンガンを激しく乱射しながら敵を圧倒するジェダたちの奮戦を確認したアレックスは、ギアをトップに入れ、さらに車を加速させる。
目指す宇宙港のシャトルまでは、あと【8キロ】。
敵のロケット弾がかすめ、爆風で車体が浮き上がりそうになりながらも、アレックスは荒れ狂う戦場の中を、その卓越したドライビングテクニックで遮二無二走り切った。タイヤが悲鳴を上げ、融解した装甲の火花を浴びながらも、高級車はついに8キロの死線を完全に駆け抜け、シャトルが待つ最終ハッチへと滑り込んだ。
『よくやったわ、二人とも! すぐにシャトルを発射させて! 大気圏にいる私のデルタプラスが、上空の安全を完全に確保するわ!』
私設艦隊のブリッジから、コンソールを叩きながら叫ぶ私の声に、カガリは荒い息を吐きながら力強く頷いた。再び回り始めた激動の運命。私たちは襲撃の火の手が上がるオーブを背に、真実を確かめるため、アーモリーワンへと向かって宇宙へ飛び立つ――!「ハッチを開けろ! 急げッ!!」
アレックスの叫びと共に、高級車は激しいブレーキ痕を残して、宇宙港最奥の最終ハッチへと滑り込んだ。
背後では、未だにジェダ護衛仕様のマシンガン音と、アンクシャのビームサーベルがジンの改修型を切り裂く爆発音が響き渡っている。
車が止まるや否や、カガリとアレックスを左右から挟むようにして、2人の歩兵が即座に飛び出した。彼らは自動小銃を周囲の構造物へ向け、一寸の死角も作らない完璧な警戒姿勢をとる。
「代表、遮蔽物はありません! シャトルへ直行をッ!!」
「カガリ、走れ!」
アレックスに手首を引かれ、カガリは荒い息を吐きながら、無人となった薄暗い宇宙港の連絡通路を猛然と駆け抜けた。2人の歩兵がその後方を走りながら、万が一の追撃に備えて銃口を油断なく動かす。背負った任務の重さを物語るように、彼らの足音が金属製の床に鋭く響いた。
4人はそのまま、発射台に据え付けられた極秘移送用シャトルの重厚なハッチへと飛び込み、すぐさま内部からロックをかけた。
「ハッチ閉鎖! メインパワー、オンライン!」
コックピットのパイロットシートに滑り込んだアレックスが、素早い手つきでコンソールを叩く。カガリと2人の歩兵が座席のハーネスをガチリと締め付けた瞬間、船体全体が爆発的な振動に震え始めた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッッ!!!
シャトルのメインブースターが点火され、眩いナパームの炎が発射台を焼き払う。強烈なG(重力)が彼らの身体をシートへと深く押し付け、シャトルはオーブの地を蹴って、一路、青い空の向こう――大気圏の境界線へと向かって一気に急上昇を始めた。
――だが、この瞬間こそが、最も無防備で敵に狙われやすい。
シャトルの上昇軌道を先読みした敵の戦闘機部隊が、ハイエナのようにその背後から急速に接近してくる。
その時、シャトルの通信回線に、遥か上空の宇宙空間に展開する**【私設艦隊の旗艦ブリッジ】**から、私の凛とした命令が響き渡った。
『アレックス、カガリ、そのまま一気に加速して! 敵の追撃は来させないわ! ――大気圏待機中のデルタプラス、目標群を排除! シャトルを全面サポートしなさい!』
私の指示と同時に、青い空と宇宙の境界線から、一筋の深紅の残光が超音速で舞い降りた。
有人で駆動する可変型MS**【デルタプラス】**だ。私の無人武器管制、あるいはあらかじめ艦隊からインプットされた戦術データに従い、機首のビームキャノンを猛烈に連射する!
ズバァァァァァァァァンッッ!!!!!
容赦のない大出力ビームが、シャトルの背後に迫っていた敵の戦闘機を次々と宇宙の塵へと変えていく。デルタプラスはそのまま鮮やかにウェイブライダー形態(飛行形態)を維持したままシャトルの軌道へと滑り込み、完璧な背面の「盾」となった。
大気圏を突破し、摩擦の激しい炎がシャトルの船体を包み込む。激しい振動が収まり、周囲の世界が漆黒の宇宙へと切り替わったその瞬間。
キィィィィィィン……!
私の艦隊から事前に先行射出されていた、さらなる護衛の増援がシャトルの前方に姿を現した。
『リン様、ゼータプラス2機、予定ポイントにてシャトルと合流しました。これよりアーモリーワンまでの護衛任務を開始します』
艦隊のオペレーターの声が響く。
現れたのは、スマートなシルエットを持つ可変型MS――【ゼータプラス】2機。
2機のゼータプラスは、左右からシャトルのウイングサイドへと鮮やかに滑り込み、後方を固めるデルタプラスと合わせて、シャトルを完全に三角形で包み込む鉄壁の【護衛陣形】を形成した。
「すごいな……完璧な布陣だ」
コックピットのアレックスが、メインモニターに映る3機の可変MSの美しいフォーメーションを見て、感嘆の声を漏らす。カガリもまた、窓の外で自らを護るように並走する漆黒と深紅の機体たちを見つめ、安堵の息を吐いた。
艦隊のブリッジで、私は大型スクリーンに映し出されるシャトルの健在なデータを確認し、小さく微笑んだ。
『よし、そのまま安全圏を維持して巡航速度へ。目指すはプラント、アーモリーワンよ。カガリ、アレックス、そこで待ってるわ』
私の私設艦隊に守られながら、多くの想いとオーブの未来を乗せたシャトルは、新たなる運命の舞台であるアーモリーワンへ向かって、暗黒の宇宙をまっすぐに突き進んでいった――。一方、カガリたちの乗ったシャトルが遥か上空へと消え去ったオーブの地上では、凄まじい硝煙の嵐がようやく収まりつつあった。
不気味に沈黙する国籍不明のモビルスーツ部隊。
そして、その中央に毅然と立ち並ぶのは、私の私設艦隊から送り込まれた防衛部隊の姿だった。
「――全機、敵モビルスーツの完全な沈黙を確認。大破5、中破2。我が方に深刻な損害なし」
ジェダ護衛仕様のパイロットの冷徹な報告が、私の艦隊ブリッジへと届く。
地上に残された戦場は、まさに圧倒的な「蹂躙」の結果を物語っていた。
不意打ちを仕掛けてきたはずの敵モビルスーツは、一機残らずその場に激しく頽れ、完全に撃破されていたのだ。
数機はジェダ護衛仕様が至近距離から放ったショートマシンガンの超高速連射によって、装甲をハチの巣にされて爆散。またある機体は、地面を力強く蹴ってジャンプしたジェダの立体的な急降下攻撃により、頭部メインカメラごとコクピットを叩き潰されて活動を停止している。
さらに、上空から襲いかかってきたはずのジンの改修型は、飛行形態から瞬時に変形したアンクシャ2機の、一切の無駄のないコンビネーション格闘戦によって無残に切り裂かれていた。ピンクのビームサーベルの熱量によってドロドロに融解した実体剣の残骸が、地面に突き刺さって虚しく煙を上げている。
「ふぅ……。お姫様の護衛にしちゃあ、ちょっとばかり過激だったが、これなら文句はねえだろ」
アンクシャのパイロットが、ビームサーベルのスイッチを落としながら不敵に笑う。
2人の歩兵によってカガリたちの安全が確保され、8キロの死線を駆け抜けるまでの時間を、彼らは一歩も引かずに完璧に稼ぎ、なおかつ襲撃してきた敵を全滅させてみせたのだ。
艦隊のメインスクリーンで地上の完全な勝利を確認した私は、座席に深く身体を預け、小さく息を吐き出した。
「さすがは私の用意した精鋭たちね。……でも、オーブのこれだけ厳重な宇宙港を、これだけの規模で正面から襲撃してくるなんて。やっぱり、世界の歯車はもう回り始めてる」
冷たい金属製のコンソールを見つめながら、私はかつてリボンズが命を懸けて繋いでくれたこの世界の行く末を想う。
地上での脅威は全て去った。だけど、これから向かうプラント――『アーモリーワン』には、これ以上の暗雲が立ち込めているはずだ。
「ジェダ、アンクシャ、現地部隊は速やかに撤収。残骸の回収とデータの分析を急いで。私たちはこれより、シャトルの出迎え準備に入るわ」
私は冷徹に次の指示を飛ばすと、漆黒の宇宙の先、新造艦が眠るという軍事コロニーへ向けて、静かに思考を巡らせるのだった。私の私設艦隊が敷いた鉄壁の護衛陣形に守られ、カガリとアレックスを乗せたシャトルは、プラントの最新鋭軍事コロニー『アーモリーワン』の広大な軍事港湾区画へと無事に滑り込んだ。
コロニーの強固な隔壁をくぐり抜ける直前、大気圏からずっと付き添ってきた護衛機たちが鮮やかに動く。
シャトルの周囲を固めていたデルタプラスとゼータプラス2機のコックピットでは、私の艦隊に所属する腕利きのパイロットであり、私の大切な**【友人たち】**が、インカム越しに軽口を叩き合っていた。
『ふぅ、大気圏突破の追撃戦も含めて、任務完了ってところね。シャトルは無事に誘導路に入ったわ』
デルタプラスを駆る友人が、操縦桿から少し力を抜いて、巡航形態へと移行する。
『お疲れさん。流石はリン様の直属部隊だ、一機も近づけさせなかったな。俺たちゼータプラスもこれより離脱する。艦隊に帰って、美味いコーヒーでも飲もうぜ』
並走するゼータプラスの友人が不敵に笑い、スラスターを軽く吹かした。
彼ら**【友人たち】**が操る3機の可変MSは、宇宙港の入り口でシャトルを見送ると、綺麗なユーティリティ・フォーメーションを描いて反転。リンの私設艦隊が待つ漆黒の宙域へと、眩い光の尾を引いて去っていった。
ハッチが開き、シャトルから降り立ったカガリと、ボディーガードのアレックス。
二人が案内されたのは、厳重なセキュリティに囲まれた、アーモリーワンの**【室外にある基地の軍港のような場所】**だった。
見上げるほどに巨大なザフトのナスカ級やローラシア級宇宙軽巡洋艦がドックに並び、周囲では無数のクレーンや作業用ポッドが忙しなく動き回っている。重油と金属の匂いが漂う、圧倒的な軍事拠点の熱気。
その軍港のデッキの片隅で、長い髪を風(コロニー内の人工気流)に揺らした男――プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルが、穏やかな笑みを浮かべてカガリたちを待っていた。
「ようこそおいでくださいました、オーブ首長国連邦代表、カガリ・ユラ・アスハ代表。このような騒々しい軍港の現場での会談となり、申し訳ありません。新造艦の視察も兼ねて、ここで直接お話ししたくてね」
「……いや、構わない。丁重な出迎え、感謝する、デュランダル議長」
カガリが周囲の軍事威容に気圧されまいと、緊張を孕んだ声で応じる。
そんな二人の最高指導者が対峙する軍港デッキの左右には、いかなる奇襲や暗殺の危険も許さない、鉄壁のクロス・ガード陣形が敷かれていた。
カガリの背後を固めるのは、オーブ・リン私設艦隊側から先行して搬入されていた、幾何学的なスプリッター迷彩が施された重厚な**【ジェダ迷彩仕様】。
そしてデュランダル議長の背後には、ザフトが誇る無骨な名機【ジン2機】**が、重斬刀と突撃銃を携えて、威風堂々と直掩護衛についている。
異なる陣営の、だけど今はこの場所で二人を絶対に護るという、ジェダ迷彩仕様とジン2機による強力な共同ガード。巨大なモビルスーツたちが微動だにせず、鋭いモノアイとセンサーを周囲に光らせている光景は、軍港の緊迫感をより一層引き締めていた。
アレックスはサングラスの奥の目を鋭く動かし、ジェダ迷彩仕様とジン2機の完璧な配置を確認する。
「(室外の軍港という死角の多い場所だが、リンのジェダとザフトのジンが完全に連携して周囲をロックしている……。これなら、どんな潜入部隊でも手は出せないな)」
デュランダル議長は、自らのジンの横に並び立つ、最新鋭のジェダ迷彩仕様を見上げ、その柔和な瞳の奥に一瞬だけ深い知性を光らせた。
「おやおや、実に素晴らしい護衛機だ。我がザフトのジンと並んでも、些かも見劣りしないどころか、その威容には圧倒されますよ、カガリ代表」
「我が国の安全保障の一端だ。これくらいの警戒は、今の世界情勢では当然だろう」
カガリは毅然と言い放ち、巨大な宇宙戦艦が鎮座する軍港を見据えた。
私の友人たちが宇宙を護り、地上ではジェダ迷彩仕様とジン2機が目を光らせる中、世界の運命を左右する二人の代表による、緊迫の青空会談が、この巨大な軍事拠点の真ん中で静かに始まった――。デュランダル議長とカガリ代表による、張り詰めた空気が漂う軍港での青空会談。
その緊迫したトップ会談の現場から少し離れた臨検ドックの影で、ザフトの最新鋭機『インパルス』の受領のために待機していた若き赤服のパイロットたち――シン・アスカとルナマリア・ホークは、信じられないものを見たという表情で、カガリの背後に佇む巨大な影を凝視していた。
「おい、ルナ……。あそこに立ってるモビルスーツ、何だよ……。あんな機体、ザフトの新型にも、連合の新型のデータにも入ってないぞ」
シンが怪訝そうに眉をひそめ、赤い瞳を鋭く尖らせる。
その視線の先にあるのは、幾何学的なスプリッター迷彩に身を包み、重厚なショートマシンガンを微動だにせず構えている**【ジェダ迷彩仕様】**だった。そのただならぬ威容と、明らかにザフト製でも連合製でもない洗練されたシルエットは、軍港の中でも異彩を放ちすぎている。
「な、何あれ……!? オーブのお姫様の護衛にしては、ちょっと不気味っていうか、凄まじい威圧感なんだけど……。えっ、ザフトのジン2機と並んで議長たちをガードしてるの?」
ルナマリアもまた、驚きを隠せない様子で『!?』と顔を見合わせ、腰のホルダーに手を当てながらその未知の機体に釘付けになっていた。
そんな二人の動揺を見透かしたように、彼らの後ろから、低く冷静な声が響いた。
「驚くのも無理はない。あれは既存の三大勢力……いや、この世界のどこの国家のリストにも載っていない機体だ」
「レイ……!」
振り返ると、同じくザフトの赤服を纏った白髪の少年、レイ・ザ・バレルが、いつもの氷のように冷徹な、だけどどこか深い知識を湛えた瞳でジェダ迷彩仕様を見つめていた。
「レイ、お前あの機体が何だか知ってるのか?」
シンの問いかけに、レイは静かに頷き、腕を組んだまま解説を始める。
「あれは、オーブ軍の正規の機体ではない。……国家の枠組みを超え、独自の意志で世界の戦火を監視し、時に調停者として介入する独立した軍事組織――通称、**【独立艦隊】**の主力量産機『ジェダ』の、拠点防衛・特殊作戦用迷彩仕様だ」
「独立艦隊……? 国家に属してない独立した艦隊が、あんな最新鋭のモビルスーツを持ってるっていうの!?」
ルナマリアが信じられないといった風に声を上げる。
「ああ。あの艦隊を率いているのは、2年前のヤキン・ドゥーエ戦役の最後、世界を滅ぼしかけたジェネシスの最後の一発を、自らの機体を盾にして完全にねじ伏せ、世界を救ったと言われる伝説の少女……。その人が個人的に組織した精鋭部隊だ」
レイの口から語られる「独立艦隊」と「少女」という名。その重い言葉に、シンはふっと息を呑み、苦い表情を浮かべた。2年前のオーブでの惨劇、そしてヤキン・ドゥーエの戦い――。
「世界を、救った少女……」
シンが拳をぎゅっと握りしめる。
「ザフトの議長直轄のジン2機と、独立艦隊のジェダ迷彩仕様が、こうして並んでトップの護衛についているのは、現在のプラントと独立艦隊が、互いの力を認め合い、不可侵かつ協力的な関係を築いているという無言の証明でもある。手は出さないことだ、あれの戦闘能力はザフトの最新鋭機にも匹敵する」
レイの冷徹な説明を聞きながら、シンとルナマリアは改めて、微動だにせず周囲を威圧するジェダ迷彩仕様のモノアイを見上げた。