※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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4話

ミネルバとファントムペインがデブリ帯で血を流し合う死闘を繰り広げていた、まさにその頃。

それらの戦闘宙域から遠く離れた、不気味なほどに静まり返った別の暗黒宙域にて、世界を真の破滅へと叩き落とす【未曾有の事態】が、密かに、しかし確実に胎動を始めていた。

独立艦隊ロンド・ベルの旗艦、ラー・カイラムの広大で厳かなブリッジ。

その重厚な艦長席に深く腰掛け、プラント側の不穏な動向を監視していた私の元に、極秘に放っていた密偵からの一通の暗号通信が飛び込んできた。

液晶画面に浮かび上がったその信じがたい報告の文字列に、私の息が止まる。

『――安定軌道にあったはずの【ユニウスセブン】の移動を確認。プラントの過激派(サトーらザラ派残党)の手により、同コロニーの【地球落下計画】が実行に移された模様……!』

「……なんですって……!?」

私は思わずコンソールを両手で叩き、立ち上がっていた。

ユニウスセブン。かつての大戦で地球連合軍の核攻撃を浴び、24万もの同胞の命が消えた、あの悲劇の残骸。ザフトにとっても、プラントにとっても聖域であるはずのあの場所を、よりにもよって自国民である過激派の手で地球へ落とそうというのか。

あまりにも常軌を逸した、悪魔のような報復計画。

「嘘……そんなはずがないわ。いくら過激派だとしても、あの悲劇の象徴をそんなことに利用するなんて……」

私の胸のサイコフレームが、これまでにない冷たい、ドロドロとした『悪意』を察知して激しくザワつく。だけど、確証もないまま大部隊を動かすわけにはいかない。私は迷い、葛藤しながらも、唇を強く噛み締めて即座に命令を下した。

「……ラー・カイラムは現状の宙域を維持! 急ぎ、現地のユニウスセブンへ高速斥候の【偵察隊】を出しなさい! 本当に軌道が変わっているのか、その目で確かめてくるのよ!」

『了解! 偵察隊、発進します!』

――数時間が、まるで何年にも感じられるような地獄の待機時間だった。

ブリッジの冷たいシートの上で、私が祈るようにメインスクリーンを見つめていたその時、偵察隊からの暗号映像が遮二無二に受信された。

『――り、リン様! 報告します! 情報は……情報はすべて【本当】です!! ユニウスセブンに巨大な推進器(メテオブレイカー)が複数取り付けられており、すでに安定軌道を外れ、地球への落下コースへと加速を開始しています!!』

悲鳴のような偵察隊からの報告。メインスクリーンに映し出されたのは、ノズルから不気味な青白い光条を吹き出し、巨大な大地の質量をもって、青き清浄なる地球へとゆっくりと、確実に滑り落ちていくユニウスセブンの絶望的な姿だった。

「本当に……やるつもりなのね……! なら、迷っている暇はないわ!」

私は深紅の髪を激しく揺らし、ブリッジの全オペレーターに向けて、凛とした、だが一分の猶予もない大号令を響かせた。

「カタパルトデッキ全開放! 待機中のMS部隊から、選りすぐりの精鋭【10人のジェダ小隊】を編成! これよりロンド・ベルは、地球滅亡を阻止するため、【ユニウスセブンの破壊任務】へ向かうわ!!」

『了解!! ジェダ小隊、出撃準備!』

ハンガーへと急行する精鋭たちの足音が響く。今回の任務は、敵MSとの戦闘以上に、あの巨大なコロニーの残骸を力ずくで粉砕することが最優先だ。10機のジェダたちには、近接戦用のビームサーベルに加え、標準装備である【ビームライフル】、そして強固な防御力と面制圧能力を両立させる【ミサイル付シールド】が次々とマウントされていく。

そして、私もまた、私自身の愛機が待つ専用ハンガーへと、ノーマルスーツの気密ヘルメットを抱えて走っていた。

「私の……ナラティブガンダムを出しなさい! 私もジェダ小隊と共に前線へ出る!」

コックピットへ飛び乗ろうとした私を、ロンド・ベルのチーフメカニックが血相を変えて呼び止めた。

「お待ちください、リン様! 相手は文字通りの『星の残骸』、生半可な火力じゃあ粉砕どころか傷一つ付けられません! ナラティブの素体だけじゃあ、いくらサイコフレームがあっても質量に押し潰されちまう!」

「じゃあ、どうするのよ!? 一刻を争うのよ!」

「分かってます! だから……こいつを使ってください! 突貫で調整を終わらせました!」

メカニックがコンソールを叩くと、ナラティブガンダムの背後に、文字通り『怪物』じみた巨大な兵装ユニットが、重々しい金属音を立てて迫ってきた。

高出力の超大型ブースター、コロニーの装甲をも容易く貫く巨大な複合兵装、そしてサイコキャプチャー。ナラティブガンダムを中央に据え置き、その全身を巨大な鋼鉄の鎧で包み込んでいく――【A装備】への換装である。

ガチィィィィィィンッッ!!!!!

強力な電磁ロックがナラティブの四肢と合体し、モニターのシステムグラフィックが『A-PACKS オールグリーン』へと切り替わる。その圧倒的な火力と、化け物じみた巨躯。

「ありがと……! これなら、あの絶望だってブチ抜ける!」

『ナラティブガンダム・A装備、システム正常! カタパルト接続!』

ラー・カイラムの巨大な底面ハッチが開き、専用の大型カタパルトが、A装備を纏ったナラティブ、そして背後に控える10機のジェダ小隊を宇宙の闇へと向けた。

「リン・ロンド・ベル、ナラティブガンダム、A装備! ――行きます!!」

ドンッッッッッ!!!!!

凄まじいG(重力加速度)が私の身体をシートに押し付ける。ナラティブガンダムA装備は、大型スラスターから太陽の如き猛烈な輝きを放ち、10機のジェダ小隊を引き連れて、地球へと堕ちゆくユニウスセブンを目指し、漆黒の宇宙空間へと一閃の光となって発進していった。

人類の未来を揺るがす、星の落下の阻止。その過酷極まる死闘の幕が、今、切って落とされようとしていた――。ゴォォォォォォォォォンッッ!!!!!

ナラティブガンダムA装備の巨大なスラスターが放つ青白い光条を先頭に、ビームライフルとミサイル付シールドを強固に構えた10機のジェダ小隊は、美しい一糸乱れぬ編隊(フォーメーション)を維持したまま、急加速でユニウスセブンへと肉薄していった。

目の前に迫る、かつての悲劇の巨大残骸。

その不気味な大地を力ずくで粉砕すべく、ジェダ小隊が破壊行動の第一段階へ移行しようとした――まさにその瞬間だった。

ズバァァァァァァァンッッ!!!!!

「――ッ!? 回避ぃッ!!」

暗黒のデブリの死角から、突如として放たれた容赦のない高出力ビームの嵐が、ジェダ小隊の目の前を激しく引き裂いた。美しい編隊の隙間をすり抜ける赤と緑の無数の火線。

爆煙の向こうから姿を現したのは、プラントの過激派――サトーらが率いるザラ派残党のザフト軍MS部隊だった。彼らは、地球へ堕ちゆくこの悲劇の星を狂信的に守るため、眼の色を変えて襲いかかってきたのだ。

「プラントを、同胞を裏切ったオーブの回し者めッ! 祖国の怨念がこもったこの星の落下を、邪魔させてたまるかぁッ!!」

過激派のザフト兵が、ジンやゲイツの突撃銃を狂ったように連射しながら突進してくる。

「くっ……! なんて執念なの……!」

敵の激しい猛攻を前に、このままの密集編隊では格好の的になってしまう。ナラティブA装備のコックピット内で、私は全方位モニターに映る無数の敵影を鋭く見据え、サイコフレームを通じて一瞬で戦況を判断した。

戦力を二分し、敵の迎撃と、本命であるユニウスセブンの破壊を同時に、それも秒単位の猶予もない中で遂行しなければならない。

私は即座に通信マイクを掴み、全チャンネルに向けて凛とした、だが焦燥を孕んだ大号令を響かせた。

「各隊直ちに散開! モビルスーツの撃破は8人でやって!!」

『了解ッ!!』

私の鋭い指示と同時に、10機のジェダ小隊は火花を散らしながら四方八方へと一斉に散開した。

そのうちの選りすぐりの8機が、襲い来る過激派のザフト軍MSを食い止めるための迎撃陣形へと移行。ミサイル付シールドから無数のマイクロミサイルを一斉に信じられない密度でブチ撒け、迫り来るジンやゲイツの足止めを開始する。バリバリバリバリッ!と宇宙空間に激しい爆炎の壁が作られ、8機のジェダはビームライフルを連射して敵MS部隊と激しいドッグファイトを展開し始めた。

敵の網がほんの一瞬だけ抉じ開けられる。その出来立ての隙間へ、私はナラティブA装備の巨大なブースターを限界まで吹かして突入した。

残る2機のジェダを直掩に引き連れ、敵の激しい対空砲火の嵐をA装備の圧倒的な推力で強引に回避し、防ぎながら、私はメインスクリーンに大きく映し出された巨大な大地の塊を、憎しみを込めて睨みつける。

「目標はユニウスセブンの破壊を最優先!! ――世界を、これ以上壊させはしないッ!!」

私の絶叫とともに、ナラティブガンダムA装備の巨大な複合兵装ユニットが、その銃口をユニウスセブンの漆黒の大地へと真っ直ぐに固定した。背後では8機のジェダが命懸けで敵を食い止めている。そのすべての想いを背負い、私は地球を滅ぼさんとする星の奈落に向けて、人類の生存を懸けた最大の砲撃を放とうとしていた――。カァァァァァァァッッ!!!!!

ナラティブガンダムA装備が放った、最大出力の大型レーザーキャノン。極太の純白の熱線がユニウスセブンの岩盤を激しく融解させ、大爆発の炎がその巨体を包み込んだ――。

カァァァァァァァッッ!!!!!

ナラティブガンダムA装備が放った、最大出力の大型レーザーキャノン。極太の純白の熱線がユニウスセブンの岩盤を激しく融解させ、大爆発の炎がその巨体を包み込んだ――。

しかし。爆炎が晴れたサイコフレームの視界の向こうに、私は血の気が引くような絶望の光景を見た。

「……嘘、でしょ……!? びくとも、しない……!?」

あまりにも巨大すぎる大地の質量。ロンド・ベルの猛烈な一斉砲撃をもってしても、表面の岩盤を大きく削り落としたに過ぎず、ユニウスセブンの地球落下軌道を狂わせるほどの決定的な破壊には至らなかったのだ。

「フハハハ! 無駄だと言ったろう! この星は、我が同胞たちの無念は、もう誰にも止められんのだぁぁッ!!」

狂乱する過激派のザフト兵たちが、爆煙を突き抜けて一斉に反撃の銃弾をブチ撒けてくる。ビームや突撃銃の嵐が、砲撃直後で硬直したナラティブA装備へと容赦なく殺到した。

「しまっ――」

ズバァァァァァァァンッッ!!!

「――リン様ァァァッ!!」

私の悲鳴に呼応するように、直嗅に就いていた精鋭のジェダ1機がメインスラスターを激しく吹かしてナラティブの前へと滑り込み、マウントされたミサイル付シールドを真っ正面に構えてその巨体で私を完璧に庇った。ビームの嵐がシールドを削り、火花が宇宙に散る。流さるプロの防御。

――だが、地獄はこれだけで終わらなかった。

ゴォォォォォォォォォン……ッッ!!!

突如として、ユニウスセブン全体から、先ほどとは明らかに一線を画す不気味な重低音の振動が響き渡った。設置されていた複数のメテオブレイカー(巨大推進器)が、ついに完全同期して最大出力を開始したのだ。

地球への『最終加速』。

それにいち早く気づいた、戦線の端にいたジェダのパイロットが、火花を散らす通信コンソールへ叫び声を吹き込んだ。

『リンさん!ユニウスセブンが!加速しました!!――っ』

バシィィィィィンッッ!!!

『がはっ……!?』

「――ッ!!」

報告を叫んだその一瞬、加速の衝撃とデブリの死角から放たれた過激派ゲイツの予測不能な高出力ビームが、ジェダの胸部を冷酷に撃ち抜いた。百戦錬磨のロンド・ベルの精鋭といえど、この極限状態の油断は死に直結する。通信は激しいノイズと共に唐突に途切れ、機体は光の泡となって消えていった。

『カイルゥゥゥゥッッ!!!』

「カイルが……ッ!?」

仲間を一人失った悲しみに、私の胸のサイコフレームが激しく赤く明滅する。

だが、ロンド・ベルの精鋭たちはここで心を折るような柔なタマではなかった。戦友の戦死という最悪の現実を、怒りと冷徹な闘志へと瞬時に変換する。

『動揺するな! 奴らの狙いはリン様と、この星の破壊阻止だ! 戦闘を継続するぞッ!!』

『了解! カイルの仇は、この星をぶっ壊して地球を護ることで果たす!!』

生き残ったジェダ小隊は、過激派ザフト軍の執拗な猛攻に晒されながらも、一糸乱れぬフォーメーションを瞬時に再構築。ビームライフルを正確無比に連射し、肉薄するジンを格闘戦で蹴り飛ばし、サーベルで斬り裂きながら、リンを護るための鉄壁の防衛線を維持し、猛烈な戦闘を継続していく。

「みんな……! ――まだよ、まだ諦めないッ!!」

カイルの死を無駄にはさせない。

加速し、無慈悲に地球へとその牙を剥いて滑り落ちていくユニウスセブンを前に、私はナラティブガンダムのコックピットの中で涙を拭い、溢れ出すサイコフレームの光と共に、次なる一撃のために再び牙を剥いた――。、ファントムペインとの激しい痛み分けの初陣を終え、傷ついた艦体を補修しつつ航行していたザフトの新造艦ミネルバ。だが、休息の時間はあまりにも唐突に、最悪の形で打ち切られた。

ブリッジのメインスクリーンに映し出されたのは、あまりにも残酷な、かつての悲劇の象徴。

停戦条約締結の地であり、あの「血のバレンタイン」で多くの同胞の命が理不尽に奪われた忌むべき舞台――【ユニウスセブン】が、今、安定軌道を完全に外れ、青き地球に向けて絶望的な落下を始めているという戦慄の報だった。

「そんな……ユニウスセブンが地球へ……!?」

カガリがブリッジで絶句し、顔を蒼白に染める。

事態を極めて重く見たプラント最高評議会は、即座に動いた。

この未曾有の危機を回避すべく、プラントは**【イザーク・ジュール】**を隊長としたジュール隊(大出力の粉砕・破砕専門部隊)を現地へ急行させ、アーモリーワンから追撃を続けていたミネルバもまた、その後に続く形でユニウスセブンへと全速力で針路を転換した。

――だが、この星の落下の衝撃は、地球圏全体をも大きく揺るがし始めていた。

地球連合軍の拠点のひとつ。薄暗い作戦室で、世界を揺るがす巨星の落下を冷徹に見つめる男がいた。

死んだムルタ・アズラエルに代わり、反コーディネイター過激派組織【ブルーコスモス】の新盟主となった男、**【ロード・ジブリール】**である。

「フフフ……不謹慎な星が、自ら地球へと堕ちてくるか。これぞ神が与え給うた好機。青き清浄なる世界のために、再び狂った害虫どもを駆除する大義名分ができたというものだ……」

ジブリールは傲慢な笑みを浮かべ、闇の中で再び世界を戦火に陥れるための爪を研ぎ、ブルーコスモス連合軍の全軍へ向けて、静かに裏での実戦準備を命令し始めていた。

――同じ頃、焦熱のユニウスセブン宙域。

一足先に現地へ到達したイザーク・ジュール率いるジュール隊は、周囲に展開し、即座に巨大な粉砕器具**【メテオブレイカー】**の設置による、ユニウスセブンの破壊・破砕作業を開始していた。白服を纏い、スラッシュザクファントムのコックピットで指揮を執るイザークの鋭い声が飛ぶ。

「モタモタするなッ! 地球への落下限界時間を逆算しろ! 一刻も早くこの忌むべき遺骸をバラバラにするんだッ!」

イザークの怒号のもと、ザフトの作業用MSたちが命懸けで大地の岩盤にメテオブレイカーを打ち込み、固定していく。すべては順調に進むかに思われた。

――だが、その瞬間だった。

ズバァァァァァァァンッッ!!!!!

「――ッ!? なんだッ、どこからの攻撃だ!?」

設置作業をしていたザフトの作業用機が、デブリの死角から放たれた予期せぬビームの一撃によって一瞬で爆破され、宇宙の塵と化した。

「隊長ッ! デブリ帯の向こうから多数の熱源接近! ――こ、これは、ジン!? 旧式機の一団ですッ!」

オペレーターが悲鳴を上げる。

爆煙を掻き分けて姿を現したのは、最新鋭機ではなく、かつての大戦でザフトの主力であったはずの**【謎のジンの一団】**だった。彼らは地球を護るための破壊作業をあからさまに妨害するように、狂ったような殺意を剥き出しにして、無防備な工作隊へと容赦なく急襲を仕掛けてきたのだ!

「チッ、何が起きている!? 何故ザフトの機体が、この破壊作業を邪魔するんだッ!!」

イザークがスラッシュザクの操縦桿を激しく叩き、歯を剥き出しにする。

この宇宙の異変は、ただの天災や偶然の軌道ズレなどでは決してなかった。

地球を滅ぼさんとするプラント過激派たちの、恐るべき**【人為的な謀略】**。その狂気の裏付けが、ジュール隊の目の前で、あまりにも生々しい銃撃戦という形で突き付けられたのだ。

そして、その激しい混戦の火の海のすぐ近く――。

すでに敵と激突していた、深紅の髪の少女リン率いるロンド・ベルのジェダ小隊、そして急行するミネルバ。

様々な勢力の信念と狂気が、堕ちゆくユニウスセブンの大地で、今まさに最悪の形で交錯しようとしていた――!「ええい、この分からず屋どもがッ! 何を考えて我が工作隊を襲うかァッ!!」

イザーク・ジュールは怒りの咆哮を上げながら、スラッシュザクファントムのビーム斧(ハルバード)を激しく一閃させ、襲いかかる過激派のジンを一刀両断に叩き切った。凄まじい大爆発が宇宙を焦がす。

突如として現れたザラ派残党の謎のジン一団。その執拗な妨害に足止めを食らい、作業を中断せざるを得なくなったジュール隊は、激しい乱戦の渦に巻き込まれていた。

――だがその時、ユニウスセブンの巨大な大地の『裏側』から、ザフトの戦闘データにはない、極めて不自然かつ莫大な熱源反応と、空間を焼き尽くすような激しい閃光が、イザークの戦術モニターに幾重にも跳ね上がった。

「隊長ッ! ユニウスセブンの裏側……第一破砕宙域のさらに奥方で、大規模なモビルスーツ戦の熱源を感知! この識別信号は……ザフトでも連合でもありませんッ!」

「何だと……!? 見せろッ!!」

イザークがスラッシュザクを鋭く反転させ、巨大な岩盤の影から、不気味に明滅する星の裏側を凝視した。

そこに広がっていたのは、ジュール隊の想像を遥かに絶する、もう一つの**【極限の死闘】**の光景だった。

「……なっ、あれは……独立艦隊【ロンド・ベル】かッ!?」

イザークが思わず息を呑む。

ザフトの誰もが予想だにしなかった場所。

そこでは、地球連合の条約を無視して隠し持たれた、ロンド・ベルの精鋭たる通常カラーの**【ジェダ小隊】**が、一糸乱れぬ美しい波状陣形(フォーメーション)を展開しながら、過激派のザフト兵たちと激しいドッグファイトを繰り広げていた。

マクスたちのジェダが、ビームライフルを精密に連射してジンを次々と撃破し、肉薄するゲイツを鋭いサーベル捌きで斬り裂きながら、必死の猛闘を継続している。

そして、その精鋭たちに鉄壁のごとく守られた中心で、太陽の如き圧倒的な輝きを放つ『怪物』がいた。

全身を巨大な鋼鉄の铠――A装備で包み込んだ、深紅の髪の少女リンの駆る**【ナラティブガンダム】**。

「道を、開けなさいぃぃぃッ!!!」

全方位モニターを真紅に染め上げるサイコフレームの光と共に、リンの絶叫が宇宙(そら)へ響く。

ナラティブA装備の脚部前方に展開された、戦艦をも容易く消し飛ばす【大型レーザーキャノン(高出力メガ・ビーム・キャノン)】が臨界点を超えて激しく発光。放たれた極太の純白の熱線の奔流が、ユニウスセブンの強固な岩盤へと真っ直ぐに突き刺さり、内側から激しい融解爆発を引き起こしていた。

過激派の襲撃でカイルという大切な仲間を一人失いながらも、その悲しみを闘志に変え、地球を滅ぼさんとする星の奈落を、力ずくで**【粉砕・破壊しようとしている】**ロンド・ベルの執念の姿。

「まさか、奴ら……我々が到着するよりも前にこの異変を察知し、単独でこの星を止めに来ていたというのか……!」

ジュール隊の面々が、その圧倒的な戦闘力と、世界の破滅に命懸けで抗うロンド・ベルの姿に激しい衝撃を受け、言葉を失う。

人為的なテロによる星の落下。その狂気の裏舞台で、すでに血を流しながら戦っていたリンたちロンド・ベル。イザークたちがその真実を目撃した瞬間、激震走るユニウスセブン宙域へ、シンとアスランを乗せたザフトの新造艦ミネルバが、いよいよ猛烈な速度で突入しようとしていた――!「――本艦、これより第一破砕宙域に突入ッ! モビルスーツ隊、直ちに出撃せよッ!!」

タリア・グラディス艦長の大号令が響き渡り、ザフト最新鋭艦ミネルバが、激しい砲火の飛び交うユニウスセブンの戦域へと猛烈な速度で殴り込んできた。

カタパルトデッキから、シンのインパルスガンダム、ルナマリアのガナーザクウォーリア、そしてアスランの駆るザクウォーリアが次々と宇宙(そら)へと蹴り出される。

「こんなこと、絶対にやらせるかよッ!!」

シンが叫び、インパルスのスラスターを最大出力で吹かした。

だが、戦場に躍り出たシンたちが目撃したのは、言葉を失うほどの**【大混沌(カオス)】**の光景だった。

そこはすでに、地球を滅ぼさんとする過激派のザラ派残党、それを阻止せんとするイザーク率いるジュール隊、そして――ザフトの誰もがその参戦を予想していなかった【ロンド・ベル】の精鋭たちが入り乱れ、四つ巴の激しい銃撃戦を繰り広げる修羅場と化していたのだ。

ズバァァァァァァァンッッ!!! ドゴォォォォンッッ!!!

「何なんだ、この混戦はッ!? 敵も味方もグチャグチャじゃないか!」

ルナマリアがガナーザクのセンサーに映る無数の光点に悲鳴を上げる。

ミネルバ側は、電波妨害と入り組んだデブリのせいで、すぐ近くの裏側で戦う部隊が「ロンド・ベル」であることまでは正確に把握できていなかった。ただの「過激派と交戦中の不明部隊」としか認識していない。だが、目の前で過激派のジンが一般の作業用MSを虐殺しようとしている現実を前に、シンたちは迷わず引き金を引いた。

結果として、そこに奇妙で、歪な**【共同戦線】**が爆誕することとなった。

『ジュール隊各機、新造艦のMS部隊と連携しろ! 目の前のテロリストどもを片っ端から叩き落とすんだッ!!』

イザークのスラッシュザクがビーム斧を振り回し、過激派のゲイツを真っ二つに叩き切る。

『了解ッ! 奴らの工作員をメテオブレイカーに近づけるな!』

マクスたちのジェダ小隊もまた、一糸乱れぬ動きでビームライフルを精密連射し、シンのインパルスと背中合わせになるような形で過激派のジンの包囲網を内側から食い破っていく。

「あいつら、ザフトの新型機か……! だけど今は関係ねえ、この星を止めるのが先だッ!!」

ジェダのパイロットたちが叫び、ミサイル付シールドから無数のマイクロミサイルを一斉斉射。バリバリバリバリッ!と作られた爆炎の壁を裂いて、シンのインパルスがフォールディングレイザー(対装甲ナイフ)を手に突撃し、過激派を瞬く間にハゲタカのように切り刻んでいく。

目的はただ一つ、このユニウスセブンの地球落下を阻止すること。

政治的思惑も、国家の壁も、これまでの因縁もすべてが吹き飛んでいた。

ロンド・ベルの圧倒的な組織力、ザフト正規軍の誇り、ミネルバの最新鋭の破壊力、そして星を落とそうとする過激派の狂気。4つの勢力の信念と意地が、焦熱のデブリ帯を舞台に、激しく火花を散らして衝突し合う。

そしてその混沌の中心で、仲間を失った悲しみと怒りに身を焦がすリンのナラティブガンダムA装備が、サイコフレームを禍々しいまでに深紅に輝かせながら、大型対艦ミサイルと大型レーザーキャノンを狂ったようにユニウスセブンの岩盤へと叩き込み続けていた。

「止めなきゃ……私たちが、ここで止めなきゃ世界が終わるのよぉぉぉッ!!!」

お互いの正体を知らぬまま、だけど確かに「地球を護る」という一つの目的のために、リンのロンド・ベルと、シンのミネルバは、命を削り合う地獄の共同戦線の渦中へと深く深く沈んでいくのだった――。







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