※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

56 / 119
12話

アスランが厳しい表情でキラとカガリに告げる。

「これ以上、戦場を混乱させるな。俺はザフトとして、ミネルバとして戦う。だからお前たちは――」

アスランはカガリの瞳を見つめ、【キラとカガリにオーブの戦争参入自体を止めさせるよう言い残すと、】背を向けて【ミネルバへ帰還した。】

そして、ナラティブガンダムのコックピットへと戻ったリンは、一人シート深くへ身を沈めながら、赤く染まるダーダネルスの海を睨みつけていた。

カガリに言われたことは、確かに正論だったかもしれない。ロンド・ベルという立場に縛られ、何もできなかった自分への悔しさはある。

「だけど……それでも……っ!」

リンは拳を操縦桿に叩きつけた。

**【事情がどうあれ、】**キラがやったことは戦場をただ引っ掻き回し、ザフトの兵士たちに一方的な危機と混乱を突き落としただけだ。あの場にいたミネルバの仲間たちが、どれだけ必死に艦を、自分たちの命を守ろうとしていたか。

『誰も死なせたくない』

そのキラの言葉は美しい。だが、結果としてその綺麗事が戦場にさらなる混迷を招き、ミネルバを、そしてアスランをあれほどまでに追い詰め、傷つけたのだ。

【今のアスランと、リンにはキラ達の言う奇麗事が許せなかったのだ。】

「戦場に割り込んで、武器を壊して、それで終わりだなんて……そんなのただの自己満足よ、キラ……! あんたたちのせいで、アスランがどれだけ苦しんでるか、見えてないの……っ!?」

それぞれの信じる正義の狭間で、決定的に袂を分かつことになってしまった仲間たち。

ナラティブガンダムB装備は、主の激しい憤りと悲しみを映すように、冷たい駆動音を響かせながら混「私……、何やってるんだろ……」

膝に顔をうずめたリンの口から、掠れた声が漏れた。

誰もいない静かな海岸に、寄せては返す波の音だけが虚しく響いている。

地球の情勢をこの目で確かめるんだって、ロンド・ベルの看板を背負って、わざわざ独立して動けるように部隊まで作って……。それなのに、いざ目の前で大戦が始まったら、私はナラティブの中でただそれを見ていただけ。

「……私のバカ。何が『親友として』よ……っ!」

砂を強く握りしめると、乾いた粒が指の隙間からサラサラと零れ落ちた。その様が、まるで自分の口にしてきた理想そのもののようで、胸が酷くズキズキと痛む。

カガリの言う通りだった。私はどちらの軍にも加担しない安全な場所に隠れて、調停者ぶって、上から目線でキラたちを責めていただけ。

「キラだって、カガリだって……世界中を敵に回すかもしれないって分かってて、それでも誰かを守るために、あんな泥まみれの戦場に飛び込んだのに……っ」

誰も死なせたくなくて必死に引き金を引いたキラの悲しげな瞳が、国を守りたくて泣き叫んでいたカガリの姿が、頭に焼き付いて離れない。二人の覚悟の重さに比べたら、自分の言葉がどれだけ軽薄だったか。

「一番意気地なしで……一番口先だけで……。何一つ痛みを背負おうとしないで、綺麗事ばっかり並べてたのは……私じゃない……!」

溢れ出した涙がポロポロと膝を濡らし、砂の上に黒いシミを作っていく。

自分の無力さと、あまりの情けなさに、リンはただ一人、激しい自己嫌悪に打ちひしがれながら声を上げて泣き続けるしかなかった――激戦の余韻が残るダーダネルス海峡を離れ、ナラティブガンダムB装備を秘匿したリンは、【とある、小さな島におり】、一人きりで波の音を聞いていた、…。「私……、何やってるんだろ……」

膝に顔をうずめたリンの口から、掠れた声が漏れた。

誰もいない静かな海岸に、寄せては返す波の音だけが虚しく響いている。

地球の情勢をこの目で確かめるんだって、ロンド・ベルの看板を背負って、わざわざ独立して動けるように部隊まで作って……。それなのに、いざ目の前で大戦が始まったら、私はナラティブの中でただそれを見ていただけ。

「……私のバカ。何が『親友として』よ……っ!」

砂を強く握りしめると、乾いた粒が指の隙間からサラサラと零れ落ちた。その様が、まるで自分の口にしてきた理想そのもののようで、胸が酷くズキズキと痛む。

カガリの言う通りだった。私はどちらの軍にも加担しない安全な場所に隠れて、調停者ぶって、上から目線でキラたちを責めていただけ。

「キラだって、カガリだって……世界中を敵に回すかもしれないって分かってて、それでも誰かを守るために、あんな泥まみれの戦場に飛び込んだのに……っ」

誰も死なせたくなくて必死に引き金を引いたキラの悲しげな瞳が、国を守りたくて泣き叫んでいたカガリの姿が、頭に焼き付いて離れない。二人の覚悟の重さに比べたら、自分の言葉がどれだけ軽薄だったか。

「一番意気地なしで……一番口先だけで……。何一つ痛みを背負おうとしないで、綺麗事ばっかり並べてたのは……私じゃない……!」

溢れ出した涙がポロポロと膝を濡らし、砂の上に黒いシミを作っていく。

自分の無力さと、あまりの情けなさに、リンはただ一人、激しい自己嫌悪に打ちひしがれながら声を上げて泣き続けるしかなかった――。「……っ、うぅ……」

どれほど泣いただろうか。涙で視界がにじむ中、リンは乱暴に袖で目元を拭った。

いつまでもここで膝を抱えて泣いているわけにはいかない。傷つくのが怖いからと、このまま目を背け続ければ、本当に口先だけの意気地なしで終わってしまう。

リンは重い足取りでナラティブガンダムB装備のコックピットへ戻ると、隠蔽モードの通信回線を開き、ロンド・ベル隊の信頼できる部下へと暗号通信を入れた。

「……私よ。情けない姿を見せて悪かったわね、もう大丈夫。……お願いがあるの。ミネルバをはじめとするザフト軍の、次の明確な『目標』と進路を大至急調べて。彼らがどこへ向かおうとしているのか、正確な情報が欲しい」

まだ声は少し震えていたが、その瞳には再び意思の光が宿り始めていた。

だが、返ってきた部下からの報告は、リンの予想を遥かに超える、血の凍るような事実だった。

『――リン隊長、ザフトの動向と並行して、地球連合軍の不穏な動きを察知しました。ユーラシア西側にある、とある極秘研究所のデータです。……隊長、驚かないで聞いてください。そこでは、肉体と精神を人為的に改造された兵士――仕様としては、隊長と同じ“強化人間”の製造・調整が行われている模様です』

「……っ!? 地球連合に、私と同じ……強化人間が……?」

通信の向こうから送られてくる暗号化された施設データを電子妖精のように読み解いていくうちに、リンの顔からサッと血の気が引いていった。

脳波の強制変調、精神的なマインドコントロール、過度な薬物投与。

並べられた凄惨な実験記録の文字列が、かつて自分が味わったかもしれない、あるいは同類たちが今まさに強いられているであろう地獄の苦しみを、生々しくリンの脳裏にフラッシュバックさせる。

『すでに何人かの個体は実戦配備されているようで、コードネームは『生体CPU』。精神的な負荷が尋常ではなく、特定の『単語』に対して異常な狂乱を示す症例も確認されています』

「特定の、言葉……?」

その瞬間、リンの脳裏に、ディオキアの海岸で出会ったあのずぶ濡れの少女の姿が、鮮烈に蘇った。

シンが口にした『死』という言葉に、狂ったように頭を抱えて泣き叫んでいた、あのあどけない少女の怯え方。

『――普通じゃないわ。何かに激しくマインドコントロールされているか、強い精神的負荷を日常的に与えられている可能性がある』

あの時、自分が感じた違和感。あれは、同じ闇を抱える強化人間としての、本能的な共鳴だったのだ。

「あの子……あの子も、その施設で……っ!」

もう、迷っている暇なんてなかった。綺麗事だと自分を責めるフェーズは終わりだ。現実に、あの少女のような犠牲者が、今も冷たい研究所の奥で精神を削られているかもしれない。

「データを転送して。ロンド・ベルの任務外だけど、これは私が行かなきゃいけない」

リンは通信を切ると、ナラティブのメインスロットルを力強く押し込んだ。

サイコフレームが主の激情に呼応するように、じんわりと深紅の光を放ち始める。

「待ってて……。今、そこから狂った世界をぶち壊しに行ってあげるから……!」

大気圏内仕様のホバー音を轟かせながら、深紅のナラティブガンダムは、忌まわしき強化人間の実験施設が存在する、ユーラシアの闇へと向かって急加速していった――。シンからの悲痛な叫びのような緊急連絡を受け、ミネルバは急遽、進行ルートを変更してユーラシア西端にあるその不気味な施設へと全速力で向かっていた。

一足先に潜入したものの、強いサイコパスの残滓に当てられたのか、突然激しく精神を失調させて倒れたレイを何とかミネルバへ収容した後、シンたちは武器を握り直して、改めて冷たいコンクリートの施設内を奥へと進んでいた。

薄暗い通路の随所に転がっているのは、白衣を着た研究員らしき大人たちの死体。そして――それ以上にシンたちの目を、心を、激しく抉ったのは、無残に遺棄された小さな子供たちの変わり果てた姿だった。

「な、なんだよ……これ……。ここ、一体何なんだよ……っ!」

シンの足がガタガタと震える。部屋のあちこちには、人間を閉じ込めるための巨大なカプセルや、脳波を無理やり弄るための悍ましい実験機器が所狭しと並んでいた。

ここは、地球連合軍が人間を兵器へと改造する、極秘の強化人間開発ラボだったのだ。

「子供たちを……こんな、実験動物みたいに扱いやがって……! 汚ねえ大人どもの都合で、こんなこと……っ! 許せるかよ、こんなの!!」

壁を思い切り殴りつけ、シンは歯を食いしばって怒りに身を震わせる。

その時、背後の闇から鋭いハッチの駆動音が響き、一機のモビルスーツが滑り込んできた。深紅のサイコフレームを怪しく明滅させた、ナラティブガンダムB装備。そのコックピットから飛び出してきたリンは、シンの姿を見るなり激しく声を荒らげた。

「シン……!? なんであんたがここにいるのよ!」

「リン!? あんたこそザフトじゃないだろ、何しに来たんだよ!」

突然の乱入者に、シンは咄嗟にライフルを構え、二人は一瞬、一触即発の格闘戦へと雪崩れ込む。だが、リンはシンの腕を組み伏せながら、悲痛な声を上げた。

「やめて、シン! 私はここを壊しに来たの! 私と同じ……強化人間の実験施設だって聞いたから! これ以上、あの子みたいな犠牲者を出さないために!」

「あの子って……まさか、ディオキアのあの時の……っ!?」

リンの言葉に、シンは息を呑んで動きを止めた。目的が同じであることを察した二人は、すぐに武器を収め、共闘の誓いを交わして共に施設のさらなる捜索へと奔走する。

その頃、ネオ・ロアノークの元には「ミネルバがラボを調査している」との最悪の報が届いていた。

己の忌まわしき古巣が暴かれようとしている事実を知り、アウル・ニーダは「死にたくない、消されたくない」という極限の恐怖から恐行状態に陥ってしまう。そして、アウルがパニックで喚き散らした「死」という呪いの言葉が、同じ部屋にいたステラの脳を直撃した。

「シ、シヌの、こわい……っ! おかあさん、たすけて、シニたくないぃっ!!」

完全に暴走し、我を失ったステラは、制止する声を振り切って黒き不吉な機体――ガイアガンダムを駆り、単身ラボへと向かって飛び出していった。

「レーダーに感あり! 未確認機、本施設へ向かって急速接近中!」

ミネルバからの警告と同時に、地響きを立てて突入してきたガイアガンダムが、シンやアスランの前に立ち塞がった。

「くそっ、こんな時に邪魔しやがって! アスラン、やるぞ!」

「ああ! 施設をこれ以上壊させるな、迎撃する!」

シンとアスラン、は、突然単独で現れたガイアの猛攻を正面から迎え撃った。獣のように狂暴で、かつ悲痛な動きを見せるガイアに翻弄されながらも、シンがガイアの四肢を完璧に捕らえ、シンのインパルスがその自由を奪って地面へと叩きつける。

激しい格闘戦の末、ついに勝利を収めたシンたちは、機能を停止したガイアのコックピットハッチを強引にこじ開けた。

「終わりだ! 降りてきやがれ……っ!」

怒鳴りながらパイロットを引きずり出し、そのヘルメットを乱暴に脱がせる。しかし、中から現れた、恐怖に涙を流して怯える少女の顔を見た瞬間、シンの全身から血の気が引いた。

艶やかな金髪、大きな瞳。それは間違いなく、あの海岸で「守る」と約束した少女だった。

「嘘、だろ……? なんで……なんであんたが、こんなものに乗って……」

「ステラ……!?」

パイロットの正体がステラであったというあまりにも残酷な現実に、シンは驚愕し、言葉を失ってその場にへたり込みそうになる。そして傍らにいたリンもまた、同じ暗闇の施設で生み出された「同類」の運命の悪戯に、激しく息を呑むのだった――。「……おい、リン。さっき、自分の口で言ったよな。『私と同じ強化人間』って。……どういうことだよ」

重く、逃げ場のないシンの問いかけが、薄暗いラボの通路に響く。

腕の中で怯えて眠るステラを庇うようにしながら、シンは鋭い視線をリンへと向けた。

リンは一瞬、ハッとしたように唇を噛んだが、観念したようにナラティブの装甲に背を預けた。

「……分かったわよ。隠すつもりはなかったけど、わざわざ言うような過去でもないから。……私はね、シン。ずっと昔に、地球連合の別の施設で、人工的に能力を引き出された『一号体』……つまり、強化人間なのよ」

「強化人間……あんたが!?」

シンが息を呑む。

「時系列で言うなら、そうね……。あんたたちがヘリオポリスでコーディネイターとナチュラルの戦争に巻き込まれる、もっとずっと前の話よ。まだ世界がこんなに決定的な大戦を始める前、地球連合の一部の中枢は、コーディネイターに対抗できる『人間兵器』を作り出すための極秘プロジェクトをいくつも立ち上げていたの。そのうちの一つが、私のいた研究所だった」

リンは遠い目をしながら、忌まわしい過去の記憶をポツリポツリと紡ぎ出す。

「毎日、狂ったような薬物投与と、脳波の強制書き換え。人格なんて認められない、ただの実験体としての生活。……実はね、その研究所には、私だけじゃなくて、もう一人『リボンズ』っていう名前の男の実験体もいたのよ」

「リボンズ……?」

初めて聞く名前に、シンが眉をひそめる。

「ええ。彼も私と同じように、非人道的な実験を繰り返されて、狂気の世界を生き延びていた。……でもある日、これ以上いたら精神が壊れてスクラップにされるって分かって、私とリボンズは命懸けで檻を破って、そこを脱走したの。ロンド・ベルなんて組織も影も形もない頃の話よ。ただ生きるために、必死で逃げ出しただけ」

「脱走……自分たちの力で逃げ出したのか?」

シンの問いに、リンは静かに頷く。

「だけど、追っ手から逃げる途中でリボンズとは離ればなれになっちゃって……。私はそこから何年も必死に潜伏して、身を隠して生き延びた。あの頃は、今日生き延びることだけで精一杯だった。そんな昔から、ヘリオポリスの前からずっと、連合はこんな悍ましいことを続けてたのよ。そして今、私の目の前には、あの頃の私と同じようにボロボロにされたステラがいる……」

リンは横たわるステラを見つめ、自身の脱走劇の記憶と重ね合わせるように、悔しげに奥歯を噛み締めた。

「逃げ出した私と、逃げ出せずに兵器にされたこの子……。やっぱり、この世界はあの頃から何も変わってない。ううん、むしろ酷くなってるわ……っ」

ヘリオポリスの悲劇より遥か昔、ただ生きるために地獄を脱走した少女の告白。その過酷すぎる真実を知ったシンは、ただ圧倒され、ステラを抱く手にさらに力を込めるしかなかった――。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。