※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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14話

「カガリ様……! オーブの、未来を……!」

大型モニターの端に、深紅のガンダムに引かれて戦場から離脱していくストライクルージュの姿を捉えたトダカ一佐は、その顔に静かな、だけどすべてをやり切ったような笑みを浮かべた。

「ト、トダカ一佐ぁ! もうダメだ、この艦は沈む! 早く、早く私を安全な場所へ避難させるんだ!」

腰を抜かして床にへたり込み、情けなく喚き散らすユウナ・ロマ・セイラン。トダカはその姿を冷徹に見下ろすと、傍らに立つ部下たちへ向けて鋭く命じた。

「――ユウナ様を強制的に救命艇へ移送しろ! 残りの動ける者も全員、退艦だ!」

「は、一佐はどうされるのですか!?」

「私は残る。この艦は、オーブ軍の旗艦『建御雷』だ。ザフトの盾となり、皆が逃げるための時間を稼ぐ!」

トダカのその不退転の覚悟に、部下たちは涙を呑んでユウナを引きずりながら退艦していった。一人ブリッジに残ったトダカは、舵を大きく切り、満身創痍の巨大な船体をミネルバの前線へと堂々と向かわせる。

その頃、天空では凄まじい爆発が巻き起こっていた。

フリーダムの圧倒的な猛攻の前に、アスランのセイバーガンダムが五体バラバラに破壊され、海へと墜落していく。

「アスラン!!」

我に返ったキラは、そのまま海面へ目を向け、一直線に突撃してくるオーブの旗艦『建御雷』の姿に息を呑んだ。

「だめだ……! もうやめるんだッ!」

キラはフリーダムを急降下させ、その旗艦を救おうと必死に手を伸ばす。だが、時すでに遅かった。

「お前たちが……お前たちのせいで、オーブの兵士たちは……!!」

コックピットの中で、完全に鬼神の如き形相と化したシンのインパルスが、大型ソード『エクスカリバー』をギラリと激しく突き立てて割り込んできた。怒りと悲しみに脳を支配されたシンは、目の前に現れた巨大な旗艦に対し、一切の躊躇なくその巨大な刃を振り下ろした。

ズバァァァッ!!!

爆炎と共に、真っ二つに両断される『建御雷』。

そのブリッジの中で、トダカ一佐は最後まで誇り高く敬礼を捧げながら、業火の中に消えていった。かつて自分が助け、プラントへと送り出したあの少年シン・アスカが、今の自分を討ち取った張本人だとも知らずに。そしてシンもまた、自分が壊した艦の中に、かつての恩人が乗っていたことなど知る由もなかった――。

「トダカ一佐ぁぁーーーッ!!」

遠い非戦闘海域から、その凄惨な爆発を目撃したカガリの絶叫が通信回線を震わせる。

「カガリ、見ちゃダメ!!」

ナラティブガンダムのコックピットで、リンもまたその不条理な光景に唇を噛み締め、血が滲むほど拳を握りしめていた。

戦場は、すでに地獄そのものだった。

セイバーを落とされたアスランは、激しい負傷と精神的ショックに塗れながらも、辛うじて戦線を維持していた。だが、これ以上の戦闘継続は不可能と判断したタリアの指示により、ミネルバが大きく舵を切り、ゆっくりと後退を始める。

「くそっ……! キラ……お前は……ッ!!」

アスランは悔しさに血を吐き出すような声を漏らしながら、ミネルバの退路を開くように、自らもボロボロの機体を引きずって後退していった。

残されたのは、精神的な疲弊と機体の損傷を抱えたキラのフリーダムだけだった。SEEDが切れ、息を荒らげるキラの背後に、今度はシンのインパルスが復讐の刃を向けて迫る。

「まだだ……! まだ終わらせないぞ、フリーダムーーッ!!」

「キラ、下がって!!」

その絶体絶命の窮地に、リンのナラティブガンダムB装備が立ちはだかった。

背面のバックパックから、二基の有線式遠隔攻撃端末(ドラグーン)が、まるで深紅の蛇のように鋭く射出される。

シュゥゥゥンッ! ズババババッ!!

「な、何だ、この動きはッ!?」

シンのインパルスの目の前で、リンの有線式ドラグーンが正確無比な牽制レーザーを網の目のように張り巡らせた。サイコフレームを開放していないにもかかわらず、リンの純粋な強化人間としての空間認識能力が、シンの獰猛な突撃を完璧に足止めする。

「ここは私が食い止める! キラ、早くアークエンジェルへ戻りなさい!」

「リン……、すまない……っ!」

リンの必死の援護射撃に守られながら、キラのフリーダムは辛うじて反転し、アークエンジェルへと後退していく。

「邪魔をするなぁぁッ! どけよ、その新型ガンダムゥッ!」

狂ったようにビームを放つシンに対し、リンは有線式ドラグーンを手元に呼び戻しながら、ナラティブのシールドで激しい衝撃を受け止めた。

「もう十分でしょう、シン……! これ以上、誰も追わせないわ!」

ドゴォォンッと海面を割る水柱の向こう側へ、リンはナラティブを急速に後退させ、キラたちの殿(しんがり)を完全に務め上げる。血に染まったクレタ沖の海に、ただ虚しい爆煙だけがいつまでも立ち込めていた――。アークエンジェルの薄暗い通路を、リンはヘルメットを抱えたまま、重い足取りで歩いていた。ナラティブガンダムのコックピットから降りた今も、あのクレタ沖で散っていったムラサメ部隊の悲壮な精神波の残滓が、強化人間としての彼女の脳裏にべっとりと張り付いて離れない。

ふと前方に目をやると、MSデッキの片隅に、数人のオーブ軍兵士たちが固まって立っているのが見えた。

先ほどの激戦の中、アークエンジェルが文字通り命懸けで救い上げ、合流を果たしたオーブ軍の生き残りたち――アマギ一尉をはじめとする有志のパイロットたちだった。

「カガリ様……っ!」

アマギたちが一斉に敬礼を捧げた先には、パイロットスーツ姿のまま、今にも崩れ落ちそうなほど肩を震わせているカガリがいた。その隣には、彼らを静かに見守るキラとマリューの姿もある。

「アマギ……、みんな、無事だったのか……」

カガリの声は掠れ、涙で完全に潤んでいた。「トダカ一佐は……建御雷(タケミカチ)は、本当に……」

アマギはゆっくりと頭を上げると、胸の奥の悔しさを堪えるように奥歯を噛み締め、トダカから託された最後の言葉をカガリへと伝えた。

「――トダカ一佐は、最後にこう仰いました。『オーブの意志は、カガリ様と共にここ(アークエンジェル)にある。躊躇うな、行け』と……!」

「っ……、トダカが……! あいつが、私の代わりに……っ!」

カガリはついに堪えきれず、顔を覆って激しく泣き崩れた。

自分の未熟さのせいで、国をユウナたちに奪われ、同盟という鎖に縛られた恩人や兵士たちを、自らの手で死なせてしまった。そのあまりに重すぎる罪悪感に、彼女の心は千々に引き裂かれていた。

そんなカガリの前に、アマギは一歩踏み出し、迷いのない真っ直ぐな瞳で告げた。

「カガリ様。我々は、理念を失い、地球連合の言いなりになって他国を侵略する今のオーブ軍のやり方に、どうしても従うことはできませんでした。トダカ一佐が命を懸けて我々をこの船に繋いでくださった意味を、無駄にはしたくないのです」

アマギの後ろに控えるパイロットたちも、一斉に力強く頷く。

「どうか、我々をこのアークエンジェルに置いてください! ユウナたちの私物ではない、本当の『オーブの理念』を取り戻すために……カガリ様と共に、もう一度戦わせていただきたいのです!」

涙を流しながらも、誇り高く己の血を滾らせるオーブの戦士たち。

その覚悟の言葉を聞いたキラは、一歩前へ出ると、彼らの痛みを包み込むように優しく、だけど確かな温かさを持って微笑んだ。

「ありがとう、アマギさん。……みんなが来てくれて、本当に嬉しいよ。僕たちのやっていることは、世界から見ればただの我が儘かもしれない。でも、君たちのその強い想いがあるなら、僕たちはまだ、間違わずに進めると思う」

マリューもまた、深く頷いてアマギたちの手を取った。

「歓迎します、オーブ軍の皆さん。このアークエンジェルを、あなたたちの本当の家として使ってください。共に、この狂った戦火を止めましょう」

「感謝いたします……っ!」

アマギたちの顔に、ようやく微かな希望の光が宿る。

壁の影からその光景を静かに見つめていたリンは、ふぅ、と胸の仕えを降ろすように小さく息を吐き出した。

(トダカ一佐……。あんたが命を懸けて遺した種火は、ちゃんとここに届いたわよ。……綺麗事だって、意気地なしだって、これだけの奴らが本気で集まるなら、それはもう、世界を動かす本物の『力』よね)

リンは自嘲気味に微笑むと、抱えていたヘルメットを強く握り直した。

まだ世界は泥沼のままだし、あのシンやアスランとは決定的に決裂してしまった。だけど、このアークエンジェルに集う不器用な仲間たちのために、自分もまた、あの深紅のナラティブと共に修羅の道を歩み続ける覚悟を、改めて静かに燃え上がらせるのだった――。

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