※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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20話

戦況は瞬く間に地獄へと化す。ザフト軍の容赦のない集中砲火を浴び、アークエンジェルの巨体は悲鳴を上げるように激しく揺れ動く。

「アークエンジェル、左舷装甲破損! 防御限界を超えます!」

オペレーターの悲鳴がブリッジに響き渡る。

キラのフリーダムはアークエンジェルを死守すべく奮闘するが、押し寄せるザフトの新型機や凄まじい弾幕の前に、徐々にビームライフルやシールドなどの武装を破壊され、防戦一方へと追い詰められていく。

その時、戦場を未知の波長が包み込んだ。

突如として強制発動したナラティブのNT-D。有線式だったドラグーンがケーブルを切り離して『無線ドラグーン』へと変貌し、サイコフレームの禍々しい輝きを放ちながら空間を展開する。

「な、なんだあの光は……!? 機体のシステムが……動かん!?」

サイコキャプチャーの不可視の檻が発動し、周囲にいたザフトのモビルスーツ数機が次々と機能停止(強制シャットダウン)に陥り、成す術なく海へと沈んでいく。

しかし、その暴走する狂気は味方にまで牙を剥いた。空間を奔るサイコキャプチャーの光条が、フリーダムをも容赦なく捕らえる。

「くっ……、動けない……!? リン、やめろ、戻るんだ!!」

キラの叫びも虚しく、システムを強制停止されたフリーダムは、重力に引かれるまま激しい海面へと静かに沈んでいってしまった。

フリーダムが戦線を離脱し、アークエンジェルは完全に孤立無援となった。

「本艦はこれより急速潜行! 海底へ逃れてこの包囲網を突破します!」

マリューの決断により、アークエンジェルは水しぶきを上げて海へと潜り込もうとする。しかし、ミネルバの艦首はすでに冷徹にその姿を捉えていた。

「タンホイザー、照準固定……てぇーッ!!」

タリアの悲痛な号令とともに、ミネルバの主砲である陽電子破城砲が咆哮を上げた。

放たれた圧倒的な光の激流が、海面を割り、逃げようとするアークエンジェルの艦体に直撃する。

ドォォォォォォォォンッ!!!

凄まじい水柱と、天を突くような大爆発がベルリンの海を覆い尽くした。激しい衝撃波が吹き荒れ、アークエンジェルがあった場所には、ただ不気味な黒煙と炎だけが立ち上っていた。

戦場に一瞬の静寂が訪れる。

激しく燃え盛る爆煙の中から、ゆっくりと姿を現したのは――左肩を失いながらも、未だ宿怨の炎を絶やさない、シンのフォースインパルスガンダムの姿だった。激しい砲火が飛び交う戦場のただ中で、ナラティブガンダムのコックピットは、外界とは切り離された地獄と化していた。

「はぁっ……、あ、がはっ……!!」

突如として、頭を割り振られるような激痛がリンを襲った。

過剰に摂取した大量の薬(OD錠)の効果が、急激な戦闘の負荷によって一気に切れ始めていたのだ。

脳を満たしていた甘い霧が引き算のように消え去り、代わりに押し寄せてきたのは、凄まじい離脱症状と現実の恐怖。強烈な眩暈が視界をぐにゃりと歪ませ、モニターの光がいくつもの残像になってブレる。

胃の奥から、焼け付くような胃液とドロドロとした不快感が一気にせり上がってきた。

「うっ……、おえっ……! げほっ、ごほっ……!!」

リンは口元を強く押さえたが、込み上げる強烈な吐き気を抑えきれず、シートに縛り付けられたまま激しく嘔吐した。口の中に広がる酸っぱい苦みと血の味。涙で視界がボロボロに滲み、冷や汗が滝のように全身を流れ落ちる。

(怖い……引き金を引くのが、怖い……! 撃ったらまた、あの子(ステラ)みたいに、誰かを殺しちゃう……っ!!)

人を撃つ恐怖。自分がステラを殺したという血塗られた罪悪感。

アークエンジェルを、キラを守らなければならないという焦燥。

そして、夢で見た「大切な仲間を自分の手で殺してしまう」という最悪のイメージが、弱り切ったリンの精神を完膚なきまでに叩き割った。

「嫌だ……、もう嫌……っ! 来ないで、私に触らないでぇぇぇーーーッ!!」

パニックを起こしたリンの脳内から、生への執着、恐怖、そして世界への絶望と怨念が、混ざり合った純度の高い精神波となって爆発的に放出される。

その瞬間、機体のフルサイコフレームが、主人の狂気に呼応するように禍々しい深紅の光を放ち、激しく明滅した。

『NT-D SYSTEM――LIMIT REMOVER』

システムが、リンの意志を無視して強制起動する。

ガギィィィンッ!!!

凄まじい金属音と火花を散らしながら、ナラティブの背面に装備されていた有線式ドラグーンのケーブルが、力任せに切断された。

「な……、分離した……!? ケーブルなしで……!?」

有線という枷を自ら引き千切り、深紅のサイコフレームの輝きを纏ったドラグーンが、完全に『無線』の猟犬となって大空へと解き放たれる。ドラグーンはまるで生き物のように形を変え、空間そのものを歪めるかのように複雑な軌道を描いて展開していった。

「あは、あははははッ!! 消えろ、消えちゃえよ、全部!!」

リンは涙と吐瀉物にまみれた顔で、狂ったように笑いながら操縦桿を激しく突き動かす。

変貌を遂げた無線ドラグーンから、不可視の精神的・物理的拘束力を持つ「サイコキャプチャー」の檻が解き放たれた。空間を奔る深紅の光条が、周囲のザフト軍モビルスーツの駆動系を次々と焼き切り、完全に機能停止(強制シャットダウン)へと追い込んでいく。

しかし、暴走するナラティブとリンの怨念は、もう敵と味方の区別すらつけていなかった。

「リン!? やめるんだ、正気に戻ってくれ!!」

援護しようと近づいていたキラのフリーダムガンダムを、ナラティブのサイコキャプチャーが容赦なく捕らえる。

キィィィィィン――ッ!

「くっ……、動けない……!? 動いてくれ、フリーダム!!」

キラの必死の操作も虚しく、システムを完全に強制停止させられたフリーダムは、動力を失ったただの鉄塊となり、重力に引かれるまま激しい海面へと静かに沈んでいってしまう。

「あはは、アハハハハハッ!! げほっ、おえっ……あぁぁぁぁーーーッ!!」

画面の向こうで海に沈むフリーダムの姿を見ながら、リンは笑い、そして再び激しく吐き散らしながら、狂気と後悔の絶叫を、誰にも届かないコックピットの中に響かせ続けるのだった――。

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