※この作品はR-18です。

強化人間がSEEDの世界で活躍します   作:ナラティブ

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25話

「よし、まずはジェダの換装作業から入るわよ」

私の指示で、ラー・カイラムのMSデッキは一気に活気づいた。

今回ロールアウトされたジェダの新装備は、これまでの局地戦用とは一線を画す重武装だ。整備用クレーンが、重厚なパーツを次々と機体へ吊り上げていく。

肩部と脚部へ設置される追加装甲(チョバム・アーマー)。

バックパックの左右にマウントされる3連装ミサイルポッド。

工程の最後には、機体の全高ほどもある大型要塞用ミサイルが計6セット、がっしりとマウントされた。

「よし、アタッチメントの接続、完了! システムをオンラインにします!」

整備兵の合図とともに、ジェダのセンサーが力強く発光した。追加された武装の火器管制システム(FCS)の同期、弾道制御テスト、限界重量負荷チェック――。すべての緑色(オールグリーン)のランプが灯るのを確認し、私は小さく息を吐いた。

「これなら拠点防衛や艦隊戦でも十分に渡り合えるわね」

次に、私は隣のハンガーに佇む純白の試作型ユニコーンガンダムを見上げた。

現状の武装は、ビーム・サーベルと基本兵装のみ。この先の激戦を考えると、圧倒的に手数が少ない。

(ユニコーンの武装……このままじゃ足りないわね。何か、もっと決定的な火力を……)

頭の中でいくつかのアタッチメント案が浮かんだが、私はすぐに思考を振り切った。

「……いや、武装の拡張は後回しよ。今はそれよりも優先すべき事態がある」

その時、デッキのスピーカーから副艦長の緊迫した声が響き渡った。

『リン、緊急入電よ! ヘブンズベースを脱出したロゴスの首謀者、ロード・ジブリールがオーブへと逃げ込んだわ。ザフトは彼の身柄確保を名目に、オーブへの武力侵攻を開始……! ミネルバもすでに参戦している模様よ!』

「何ですって……!? オーブに……」

胸が激しくざわついた。ザフトがオーブを打つ。そうなれば、あの地はまた地獄の業火に包まれる。何より、あのミネルバが、シンが、また憎しみの連鎖の中で引き金を引くことになる。

(行かせるわけにはいかない。これ以上、あの子に罪を重ねさせるものか……っ!)

地上の戦闘に直接介入するには、大気圏再突入の時間が必要だ。それでは間に合わない。今、宇宙にいる私にできる、最速かつ最大の介入方法――。

「……宇宙圏(衛星軌道上)からの、超長距離低高度狙撃を敢行する」

私はコンソールへ向かい、一気にデータを打ち込んだ。

「ユニコーンのサイコフレームによる極限の演算能力と、ラー・カイラムのエネルギー供給システムを同調させる。使用するのは――**『ハイパー・メガ・ビーム・キャノン』**よ」

この超高出力兵器を確実に制御し、宇宙から地上のザフト軍だけをピンポイントで撃ち抜く。そのためには、圧倒的な電力量が必要だった。

私はユニコーンの背中を見上げる。そこには、かつてC.E.71の戦いにおいてストライカーブラストに装着していた、あの**大型大容量バッテリーバックパック『エターナルパック』**が、すでに初期兵装として強固にマウントされている。

「ユニコーンの『エターナルパック』、コンデンサー回路を強制全開放! ラー・カイラムの主機から引いた外部電力を、すべてこの大型バッテリーに直結してプールさせなさい!」

私の命令で、デッキ内に太いエネルギーケーブルがのたうち、ユニコーンの背部にあるエターナルパックへと接続された。

バチバチと激しいスパークが飛び散り、パック内の大容量バッテリーが凄まじい勢いでエネルギーを満たしていく。エターナルパックの強大な電力供給能力があってこそ、この一撃は成立する。

「ハイパー・メガ・ビーム・キャノン、最終配備! 接続完了!」

クレーンによって運ばれた巨大な砲身を、ユニコーンの腕がしっかりとホールドした。宇宙から地上を睥睨する、巨大な「白き処刑人」のような威容。

「エターナルパック、電力チャージ率120%……全システム、限界同調(シンクロ)開始……」

私はまだ痛む機械の義足をペダルへ固定し、操縦桿を強く握りしめた。

目の前のメインモニターには、青く輝く地球の、その一角で火の手が上がりつつあるオーブの座標が赤く点滅している。

「待ってて、シン。私が今……その悪夢を、撃ち抜いてあげるから」

宇宙の静寂の中、ハイパー・メガ・ビーム・キャノンの砲口が、ゆっくりと地球に向けて照準を合わせ始める。その瞬間、ユニコーンの瞳が、静かに、そして鋭く輝いた。リンは震える手でエターナルパックの大容量バッテリーの接続コネクタを叩き込み、ハイパーメガビームキャノンの火器管制システムを強制起動した。

キィィィンという高周波の充填音がコクピットに響き渡る。スコープを覗き込むと、ニュータイプ能力と同調した超高度予測照準システムが、地上の大気圏の歪みを計算しながらオノゴロ沖の戦況マップを目まぐるしく更新していった。

その頃、遥か地上のオノゴロ沖では、立ち込める硝煙と割れる波濤の中で地獄のような死闘が繰り広げられていた。

「下がってくれ、カガリ様! ここは俺たちが!」

「ダメだ、オーブの国境線をこれ以上ザフトに割らせるものか! みんな、引くなッ!!」

カガリの乗る黄金のモビルスーツ『アカツキ』とムラサメ隊は、圧倒的な物量で押し寄せるザフト軍、そして牙を剥く凶悪な新型機を前に、死に物狂いで奮戦していた。しかし、怒りに燃えるシンの駆るデスティニーガンダムの前には、その必死の防壁も紙切れ同然に引き裂かれていく。

「邪魔だ、邪魔だ、邪魔だァァァッ!!」

シンの絶叫がオノゴロの海に響き渡る。光の翼を広げたデスティニーは、一瞬でムラサメ隊の戦列を食い破り、次々と撃破していった。シンの瞳は完全に狂気と憎悪に染まっている。彼の頭の中にあるのは、失ってしまった大切な二人――ステラ、そして自分のせいで死なせてしまったと思い込んでいるリンのことだけだった。

「お前たちのせいだ……! お前たちオーブやアークエンジェルが、自分たちの勝手な正義を振りかざして戦いを長引かせるから……! リンさんを軍にあんな形で引き入れて、戦いに巻き込んだのはお前たちだろ!! お前らが綺麗事を言うから、リンさんも、ステラも死ななきゃならなかったんだァッ!!」

激しい逆恨みと、二人を失ったあまりにも深い喪失感が、すべてオーブへの怒りとなって爆発する。

「お前たちが二人を殺したんだ!! 許さない……絶対に許さないぞ、オーブゥゥゥッ!!」

デスティニーは最高速度でアカツキへと肉薄し、巨大な対艦刀『アロンダイト』を容赦なく振り下ろした。ビームの刃が、アカツキのコクピットをまさに真っ二つに叩き斬ろうと肉薄する――!

――その瞬間、宇宙(そら)の彼方から放たれた、神の雷光が如きハイパーメガビームキャノンの一撃が、大気圏を貫き戦場へ垂直に突き刺さった。

「なっ――、危ねぇッ!?」

シンの種割れの直感が、直撃の寸前で『天からの絶対的な死』を捉えた。デスティニーは強引にスラスターを逆噴射させ、のけ反るようにして間一髪でその光の濁流を避ける。

しかし、極太のビームが鼻先を掠めた余波は凄まじかった。オノゴロの海を割るほどの超高熱により、デスティニーは爆風に巻き込まれ、左腕部の装甲がドロドロに焼け焦げる。内部の電気回路に深刻な熱ダメージが発生し、システムエラーの警告灯が一斉に点滅した。

「くそっ、熱っ……!? 左腕の駆動モーターが死んだ……!? 一体どこから……ッ!!」

デスティニーは体勢を大きく崩し、完全にその動きを止められた。

その圧倒的な光の軌跡を目の当たりにしたカガリは、コックピットの中で驚愕し、激しく息を呑んだ。

「な、何だ今の光は……!? ザフトの新型の武器じゃない……宇宙から、直接狙撃されたというのか……!? 一体、誰が……私を、オーブを救ってくれたんだ……!?」

空を見上げるカガリの心に、姿の見えない狙撃手への驚きと、かすかな希望が走る。

しかし、戦場はシンの硬直を見逃さなかった。デスティニーに生まれた致命的な隙へ、宇宙から降下してきた虹色の軌跡――『ストライクフリーダムガンダム』による猛烈なビームの一斉射撃が襲いかかる。

「ちっ、次から次へと何なんだよ! 誰なんだお前はァッ! 邪魔をするなッ!!」

シンは相手のパイロットがキラ・ヤマトであることなど知る由もない。ただ、次々と現れる未知の新型機を前に、デスティニーの残った右腕で必死に防戦一方へと追い込まれていく。だが、それ以上にシンの心を激しく揺さぶっていたのは、先ほどの天からの衝撃だった。

(くそっ……! さっきの上空からの狙撃……誰が俺を上から見てやがる……!? まるで、俺の動きを完全に分かっているみたいな……!)

姿の見えない恐るべき狙撃手の影に、シンは強烈な警戒を抱き、冷や汗を流していた。

一方、宇宙のラー・カイラム艦上。

ユニコーンガンダムのコクピットには、耳を突き刺すような非常警告アラートがけたたましく鳴り響いていた。

規格外の超長距離狙撃を強引に敢行した代償はあまりにも重かった。接続していたエターナルパックの大容量バッテリーは完全に空(カラ)になり、さらに機体本体の動力である核融合炉までもが限界以上の過負荷により安全装置が作動、完全に停止してしまったのだ。

プスン……という不気味な駆動音の途切れとともに、コックピットの全モニターが激しいノイズを上げてブラックアウトする。ユニコーンは完全に機能停止(シャットダウン)し、暗闇の中に沈黙した。

非常用の薄赤い照明だけがうっすらと灯る空間で、リンは操縦桿からゆっくりと手を離した。

まだジンジンと熱を持って痛む機械の義足をフットペダルから下ろし、座席のシートに深く身体を預けて、小さく息を吐き出す。

機体もバッテリーも核融合炉も、すべてが一度イカれてしまった。けれど、あの瞬間に引き金を引いたことで、確実に地上の仲間たちの窮地を救うことができたのだ。

「……よかった。ちゃんと、援護できたわね、シン……カガリ……」

真っ暗になったコクピットの中で、リンは確かな手応えを感じながら、静かに次の戦いのために息を整え始めていた。「機体の冷却、急ぎな! 外部装甲が熱で溶けかかってる、パージできる部分は全部外して!」

機能停止したユニコーンのコックピットハッチをこじ開け、リンはデッキの整備員たちに荒い声を飛ばした。熱気と焦げた匂いが充満する中、彼女は重い機械の義足を引きずるようにしてタラップを降りる。

だが、地面に足をついたその瞬間だった。

ぽた、と。パイロットスーツの手の甲に、赤い雫が落ちた。

「……え?」

自分の顔に手をやると、鼻からツーッと大量の血が流れ落ちていた。サイコフレームと接続し、規格外の超長距離狙撃の演算をニュータイプ能力で強引に処理した反動が、脳と肉体に深刻なダメージを与えていたのだ。

「リンさん! 鼻血が……っ! おい、誰かティッシュ持ってこい!」

血相を変えた整備員の一人が駆け寄り、慌てて箱ティッシュから何枚も抜き出してリンに手渡した。

「あ、ああ……悪い」

リンは乱暴に鼻を押さえながら、ふらつく身体をデッキの壁に預けた。

「リンさん、こっちもマズイです!」

別の整備員がデータ端末を抱えて駆け込んでくる。

「ユニコーンのサイコフレーム、完全にオーバーロードしてて……俺たちの手に負えません! ブラックボックスすぎて再調整のシステムを受け付けないんです!」

「クソッ……肝心な時に……」

リンは忌々しそうに舌打ちをした。サイコフレームの調整ができないとなれば、次の出撃に致命的な支障が出る。その上、繋いだばかりのジャンク屋特製の義足も、神経接続のノイズが酷く、太ももの付け根が焼け付くように痛んでいた。

「……悪いけど、機体のことはアンタたちに一旦預ける。私……少し休むわ」

限界だった。リンは整備員たちに後を託すと、医務室のベッドへと直行し、軍服も脱がずにそのまま仰向けに倒れ込んだ。

ドンッ、ドンッ……と、船外から鈍い振動が伝わってくる。

その頃、ラー・カイラムの宙域では、出撃したジェダのパイロット達が、役目を終えて宇宙空間にパージされた巨大な『ハイパーメガビームキャノン』の砲身をワイヤーで慎重に回収する作業に追われていた。

「ハァ……ハァ……」

静かな医務室のベッドで、リンは荒い息を吐きながら、ふと壁に掛けられた小さな鏡に目をやった。

そこに映る自分の顔を見て、彼女は息を呑んだ。

「……何よ、これ」

鏡に映る自分の両目。本来は深い黒色であるはずのその瞳が、不気味なほど鮮やかな『虹色』に発光していたのだ。

虹色の輝き――それは、ユニコーンのサイコフレームが最大共振した時に放つ光と全く同じだった。機体から降りてもなお、彼女の脳波はサイコフレームと深く繋がり、暴走状態を引きずっていたのだ。

(私が……機械に飲み込まれてるっていうの……?)

得体の知れない恐怖にリンが自分の両目を覆おうとした、まさにその時だった。

『こちらMSデッキ。ユニコーンのサイコフレーム、物理コアへの強制アクセス成功。これより機能の完全停止(シャットダウン)を行います』

艦内放送から整備員の声が響いた直後、フッと、リンの視界を覆っていた奇妙な万能感が途切れた。

再び鏡を見ると、さっきまで不気味に輝いていた虹色の瞳はスゥッと光を失い、元の見慣れた『黒い眼』へと戻っていた。

「……止まった」

サイコフレームの機能停止と共に、リンの身体を縛っていた見えない糸がようやく切れた。どっと押し寄せる強烈な疲労感と、義足の痛みに耐えながら、彼女は黒く戻った瞳を静かに閉じ、泥のような眠りへと落ちていった。

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